猿と人の遺伝子がほぼ同じ、と生物学者に聞いたことがあります。となると人間なんて、皆一緒。恋愛に陥った時、人はこのみんなおんなじ中から、非科学的、非合理的な理由をつけて一人を選ぶんですよね。これって壮大な思い込み、宗教の様なものかも。(恋愛教とか、、、?)人を愛した瞬間、ネガティブな感情、憎しみとかが生まれるのも、また真実。この作品の当て馬くん、超可哀想。あっさり引いたけどそこへ至る間の八千代くんへの嫉妬、藤次くんへの恨み、簡単に想像できちゃうかも、、、、。人を愛するって辛いね。愛する人が自分を選んでくれない場合も多々ありますもんね。それを書くと純文学になりますね。八千代くんが結婚した時の、藤次くんの感情の表現も美しかった。でももし、これが現実社会で起きた事なら、藤次くんの感情は汚くて、醜かったと思う。BLなので、そこはオブラートに包んで。とはいえ、人間の醜い面、自分のために人を傷つける暴力的な本質を全く描かないと、人の心を打つ作品にはなりません。作者様には今後、BLの枠組みにとらわれない、クオリティーの高い作品を目指して欲しい。全てのBLファンを満足させられないかもしれないけど、BLファン以外の新たなファンは獲得できるはず。大洋図書様、しっかりサポートしてあげてください。頑張って!
誰かが「日本では良いとされる小説は、終わり方が読者にその話の続きを考えさせる作品」と言われていましたが、長船先生の「瞞」はそんな作品だと思います。キャラクターのその後や、心の動きをいろいろ考えてしまいました。長編小説でなく、質の良い中編小説を読み終わったような読後感でした。ドラマティックなプロットを盛り上げる美しい絵。漫画や、ラノベでは殆ど見ることのないセッティング。とても個性的で惹きつけられます。明治時代でしょうか?永井荷風の「すみだ川」を思い出しました。作者様の作家性がよく現れた、芸術的な作品だと思います。作品は伝統芸能、延年会から始まっています。作者様の教養の深さが伺えます。BL、もしくは漫画の「質」の向上に一役買った作品、と言ってもいいのではないでしょうか。人間の理性では割り切れない部分が、美しく、悲劇的に描かれています。長船先生の次回作を心待ちにしております!(ひとつ、難を言わせて頂けば、コマ割りをもっと大胆にしてもいいのでは?大塚英志先生の漫画の映画的手法についての説明を読んでいるとそんな気が致します。)
一年前に2、3回読みました。一回読んだだけでは意味がわからなくて。読後感がものすごく、ずーっと忘れられない作品になりました。一年前に読んだときは、環くんのお母さんがとても気持ち悪くて、今後、どれほどの愛情と執着をみせるんだろうと思うと、書いている作家さん、神経すり減らすだろうな、と思いました。3巻目がまだ発売されなくてとっても悲しいですが、作家様、環くんのお母さんに、心を持って行かれないように、気をつけてください。(でも頑張って書いて〜)一年たってまた読み返した時の感想は、「紛れもないホラー作品」でした!環くんのような目に遭うなら、夏のお化け屋敷に何度も入った方がマシかも。志井くんの執着も、今後、常軌を逸するかもしれないし。いや既に、ちょっと逸しているかも。傑作と言うのは読者の感情に訴えるものだと思います。作品から流れ出るキャラクター達の感情が半端ない傑作です。