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kojiki
正直、はらだ先生が手掛けられた表紙に惹かれての購入で、内容は二の次…と言うかBL編纂と言うあまりの無謀さに期待できる筈がないとたかをくくっていましたが、これはなかなかに面白かった。ようするに「古事記」の二次創作。八百万の神が八百一万(やおいよろず)の神だったり。神の精力は強いので男でも孕むし、男なのにヒメと呼ばれているのはかわいいから、兄弟同士争うのは地上のもつれ…などなど、恐れ多くも胸踊る温もりや情念、体液にまみれた奇書。ユーモアを解する方向き。
「これが兄上の・・・竿」
とは火遠理命こと、山佐智毘古(ヤマサチヒコ・♂)の言である。
私が腐っているせいなのか、
どうみても性的な意味にしか捉えられなかったのだが、
この発言をした時点ではまだ山佐智毘古とそのお相手の海佐智毘古は
BがLする関係ではなく、ただの兄と弟である。
しかし、BL古典セレクションというだけあって、その後2人の関係は
弟の山佐智毘古(兄上大好きワンコ攻め)による下克上で
兄の調教という垂涎ものになってゆく。→【弟×兄】
その他にも・・・
◆山佐智毘古の子の鵜葺草葺不合命(ウガヤフキアエズノミコト・♂)は
育ての親である叔父の玉依毘売命(タマヨリヒメノミコト・♂)と結ばれ、
後の神武天皇を授かる。→【甥×叔父】
◆あの有名な伊邪那岐命(イザナキノミコト・♂)と
伊邪那美命(イザナミノミコト・♂)の兄弟神CPの
官能的な国作りシーンから突然の悲劇が二人を分かつそのときまで・・・。
→【兄×弟】
◆天照大御神(アマテラスオオミカミ・♂)はエリートメガネの俺様攻めで
思金神(オモヒカネノカミ・♂)とオフィスラブを楽しむ関係に・・・。
→【上司×部下】
◆月読命(ツクヨミノミコト・♂)は夜の国を治める神だけあって、
金髪夜王設定で、ボトルではなく甕酒を催促してくる。
◆建速須佐之男命(タケハヤスサノオノミコト・♂)は
厨二病こじらせまくりで黄泉の国に憧れて出奔し、八俣の〇〇を退治する。
◆大国主神(オオクニヌシノカミ・♂)はお人好しの多重人格者で
逃亡先で出会ったツンデレ系ほだされ受けの須勢理毘売(スセリビメ・♂)に
一目惚れするが、2人の結婚に反対する舅の妨害工作に遭ってしまう。
しかし、嫁♂の機転により舅を返り討ちにし、駆け落ちは成功。
にもかかわらず、その後も大国主神の男漁りの旅はつづく・・・
◆天照大御神の孫のエリートサイコパス邇邇芸命(ニニギノミコト・♂)は
国を治めるために祖父から命じられ、天から地上に舞い降りる。
ある日、浜辺でビューティー木花佐久夜毘売(コノハナサクヤヒメ・♂)に
出会うが彼の気の強さに嗜虐心をそそられ、跪かせたくなってしまう。
木花佐久夜毘売への嫌がらせに彼の兄を人質に脅し、求婚の受諾を強要する。
そして、迎えた恥辱にまみれた初夜・・・
ここは鬼畜攻めと強気で健気な受けのやりとりが絶妙で、
腐の妄想心を掻き立てます。
いくつもの章の中で一番ドキドキして、
一番鼻血が出そうになったかもしれません。
夜明けの腐女子的には、その後にすったもんだあっての両想いエンドを所望・・・
とは言え解釈を広げることは可能でも、
歴史の筋を変えるわけにはいかないので、
あくまで決められた結果に向かって物語はすすみます。
でも、それは逆にいえば枠を出なければ、
その中でいくらでも好きに妄想は広げられるのだから、
それはそれでおいしいのかもしれません。
本書に登場する八百一万(やおいよろず)の神々は全員男♂です。
男だけど、神なので妊娠・出産しちゃいます。
しかし、女が男に置き換わるだけで、これほどまでに
妄想の幅が広がるなんて思いもしませんでした。
昔の日本の系譜は近親間の婚姻が多かったということもあって、
ときめきの材料があちこちに転がっているんです。
歴史とBLの相性がここまでいいなんて、
新発見だなあと新たな喜びを見つけました。
BL訳と言えど、
この時代の歴史が理解しやすく、
ただ単調にBがLするわけでもなく、
登場人物たちのキャラが濃かったり、
台詞回しやストーリー展開の面白さ(ネタ成分過多)
など読み手を夢中にさせます。
無味無臭だった神様たちに感情が色づけされ、
人間臭くなっていくことで物語がどんどん展開してゆき、
面白さが滲み出てきました。
巻末には登場神たちの神様リスト付きです。
表紙ははらだ先生とこれまた豪華な1冊でした。