月を食べて恋をする

tsuki wo tabete koi wo suru

月を食べて恋をする
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神36
  • 萌×228
  • 萌14
  • 中立1
  • しゅみじゃない7

--

レビュー数
15
得点
335
評価数
86
平均
4 / 5
神率
41.9%
著者
沙野風結子 

作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます

イラスト
小山田あみ 
媒体
小説
出版社
イースト・プレス
レーベル
Splush文庫
発売日
価格
¥700(税抜)  
ISBN
9784781686172

あらすじ

夢に見る過去の恋人。 それが誰なのか思い出せない…大学生の恵多は十代の頃の記憶が一部欠落している。 だが、現在恵多が恋をしているのは、 一緒に暮らす叔父の章介だ。 合コンにまで口を出す過保護さに辟易しながらも、嬉しくてたまらない。 実らない想いでも、この幸せが続くならそれでいいと思っていた。 ところが、あることから二人の間に性的な雰囲気が漂い始め…。 思い悩んだ恵多は、再会した過去の恋人と付き合うが! ? 過去の傑作が大改稿のうえ新装版で登場!

表題作月を食べて恋をする

仲里章介,34歳,恵多の過保護な叔父で会社社長
仲里恵多,21歳,記憶が一部欠損している大学生

その他の収録作品

  • あとがき

レビュー投稿数15

全ての出来事は必要な試練である

 近親BLを求めて購入しました。沙野風結子先生の作品を読んだのは久しぶりでしたが、素敵な作家さんだなと本作で改めて感じました。
 あとがきで本作が改稿作品であることを知りましたが、タイトルは今回の「月を食べて恋をする」の方がロマンチックで好きです。
 ネタバレを見てから本編を読むのは本当にもったいないので、未読の方は読まない方がいいと思います。

 本作の感想をひと言で表すなら、とにかく苦しかったです。
 恵多に感情移入しすぎたのか、恵多と同様に章介の一挙一動に心を乱されたり、水面や性が引き金の発作の場面ではこちらまで頭痛や吐き気を催しそうになりました。
 このお話で一番厄介なのは、恵多の記憶が一部欠如していることです。記憶があれば物語が成立しないのは分かっていますが、これのせいで煮え切らない態度の章介と胡散臭い須藤との板ばさみになっていく恵多にかなりハラハラさせられました。
 第二に厄介だったのは章介です。章介は記憶や発作など恵多の不安定な心にしっかり寄り添えているようには見えないのに、そのわりには恵多のことを束縛して恋愛感情があるようにも見えたので、ただ単に恵多のことを好きだけど血縁関係だから叔父と甥としての距離を保っているのだと思っていましたが、恵多と須藤が接近してからは章介の不穏な話が出てくるわ本人がそれを否定しないわで、話が進むほどに章介の人物像が謎めいて混乱しました。
 だからこそ須藤の狡猾さがふんだんに発揮されていたように思います。
 本当は彼が悪者なんだろうなと分かっていながらも、章介と比べたら須藤の方が親身な対応だし恵多の恋人だったかもしれないし……とアパートから恵多を連れ出したあたりから金目当てなのが丸出しになるまで、須藤はヤンデレ気質の当て馬とばかり思っていました。
 恵多早く逃げて! と思った時にはもう手遅れで、恵多が心身ともに弱っていくのが本当につらくて、私も須藤を殺す以外に解決策はないだろうなと思いながら事態を見守りました。

 物語の終盤を迎えてようやく様々な重苦しい真相が明らかになるのですが、蓄積されたモヤモヤが晴れるとともに推理小説の謎が解明された時のような爽快感がありました。
 とはいえ、章介の行動が不可解だった理由が分かると、理性的な行動も衝動的な行動も全て恵多を愛しているからこそだったんだなと合点がいくので切なくなります。次に本作を再読する時は絶対に章介に感情移入すると思うので、さらに苦しくなりそうです。
 恵多と恋人で、兄(恵多の父)に関係が知られ、猛反対され、二人の今後を話しあうために密会している間に兄が事故にあって、そのことで恵多が自責の念にかられて、あげくの果てに階段から転落した恵多は章介のことだけを忘れて……。
 これだけのことがあれば、章介が恵多にあいまいな態度をとってしまうのは当然だと思います。記憶がない方が恵多は罪悪感から解放されるし、叔父と愛しあう以外のまっとうな人生を生きられるかもしれないと思うと言えませんよね。でも、頭では理解しているのに、愛する恵多を手離せない章介が切なくて萌えました。
 恵多は恵多で記憶がない代わりに発作に苦しめられていましたが、水面は父の事故死、性は章介との許されない恋といった形で封印された記憶と結びついた無意識の罪悪感が発作を引き起こしており、章介との性行為で恵多が禁忌に対する罪悪感以上の恐怖を感じていた場面は、章介への想いが父を死に追いやったという潜在意識がそうさせたのだと思うとかなりつらいです。
 須藤に恋人だったと嘘をつかれようと、章介は悪者だとしつこく言われようと、それでも恵多は章介への恋愛感情を捨てられずに章介を守るために自分を犠牲にするところが、読後にふり返るとより感動します。
 記憶を失ってからの恵多は他の男女と恋愛できる機会が何度もあったのに、それでも章介に惹かれていました。章介は自分のことを好きになってもらおうとしたと自虐していましたが、記憶がなくても恵多自身の意思で章介を好きになったということは、章介との恋人時代は決して恵多にとって若さゆえの過ちだったわけではないことの証明になるのではないでしょうか。

 三年前だって、恵多も章介も恵多の父も誰も悪くなかったと思います。恵多の父の怒りは当然のことだし、むしろ章介を警察につき出さなかっただけ優しかったかもしれません。
 強いて言えば、章介が大人として自制するべきだったのかもしれませんが、恵多が須藤とキスした時に見せた絶望していた姿から恵多への本気度がよく伝わったので、公にできない関係とはいえ好きな人から恋愛感情を向けられたら気持ちを抑えられなくなるのは時間の問題だったと思います。
 恵多の父の死に対して恵多も章介も負い目を感じていますが、この三年間で二人は様々な苦しみを味わうという形で罰は充分受けたと思います。そして、それでも二人はこれからもずっと十字架を背負って生きていくのでしょう。
 しかし、お互いにとって苦しみを理解しあえるのも、幸せになれるのも、この二人でしか成り立たないことです。周りから祝福されない関係だと分かっていながらもお互いしか求めあえない二人だからこそ、これから先もずっと支えあいながら幸せになってほしいと思います。

 本作は官能的な場面以外に、性行為はしていなくても淫靡な空気をまとっている場面が多く、さらに小山田あみ先生の素晴らしい挿絵との相乗効果でドキドキしながら読みました。タイトルも表紙も物語の根幹を表現できていて素敵です。
 写真が欠けたアルバムや、ショースケ・ケータ呼びの音引き、恵多の左頬のえくぼなどの伏線回収もお見事で、章介はあの時どんな気持ちだったのかな、とついつい思いを馳せてしまいます。あとがきを読むと、さらに章介の恵多への本気度を知ることができて萌えました。
 苦しかったけれど、読んで損はない作品だと思います。

0

記憶喪失青年と過保護な保護者が…

『君といたい明日もいたい』の新装版です。
上記の方も読んだのですがそれに比べてとても読みやすくなっていました。

真相は知っていたので、恵多の迷走と章介のだんまりにハラハラモヤモヤでした。
章介が恵多のそばを離れられない気持ち。
逃げる恵多を強引に守って。
騙された恵多が章介を守ろうとする気持ち。
なぜ須藤の正体をお互い伝え合わないの? 

もうすれ違いが切なくて辛くて。
恵多!目を覚ませ!しっかりしろ!と言いたくて仕方ありませんでした。
でも許されない決して実らない想いから相手から逃げたかったんだよね。逃げても彼のことで頭がいっぱいなのに…。

解決はあっさりで。
はぁ、どんな気持ちで章介はこの3年間恵多と一緒に暮らしてたのかな。香水やポケットのピアス。これも恵多を守る方法だったのかな。

これで恵多の体調も治るのかな?

0

リメイク

カバーイラスト&タイトルが素敵です。

近親ものでこんなにモラル面を横目に意識させながら萌えに繋げるのって、もはや今どきのBLじゃ珍しいし、主人公の恵多がラブむきだしなのも作者様の作風にしては新鮮。

冒頭から片思いのキュンキュンが止まらないなんて、近年の作者様の作品にしては怪しい…と訝しみながら読み進めていったんですけど、ふと既視感を覚えてリメイク作品だったと知り妙に納得しました、、

高校三年で父を亡くし、父の弟と同居している恵多。同居して3年経つが、恵多は叔父の章介に対して複雑な思いを抱いている。頭を強く打ったために記憶障害を発症し、溜められた水に対する恐怖症、セックスへの拒絶反応などの発作に悩ませられている恵多は、章介の目がないと一人で生活するのに困難を抱えています。恵多が大学生になって就活の時期に入る頃には、章介を意識し過ぎて苦しくて離れたくなってしまう。なのに章介は保護者だからと恵多を離そうとしません。恵多は辛いんだけれど嬉しいという矛盾した感情に振り回され続けて…もうそれ、恋ですね笑

それなりに無理矢理なシーンがあったり、エロも盛り込まれていて、全てが明らかになった後にボロアパートでの章介の思いを想像すると切ないです…。

ただ、二人が惹かれ合ってしまった宿命的な部分にもう一押し力を入れて欲しかったような、結末に向けてのラストスパートであわあわと泡食ってみたかったような気もしました。贅沢ですね笑

本作のプレイは意識があるのに体が動かせない状態での凌辱、でしょうか。

当時のBLらしさを作者が意図して残してくれているのか、ただわたしが一方的に汲み取っているだけなのかわからないけれど、全般的に少し前のBL感が拭えなかったかも…(記憶障害前の年齢設定が低めですし)。むしろ個人的にはそういうのが好きなんで、作者様のリメイク作品をもっと拝読してみたい欲望は滾っております。

2

切なくて苦しい、まさに夜明け系の一冊!

旧作からの加筆修正版。前作は未読。

全体的にミステリアスで謎の漂うストーリー展開。
小さな謎を散りばめつつ、
惠多くんの日常と章介おじさんとの
多少ぎこちないながらも
穏やかな日常生活展開の前半。

それが、
弁護士須藤さんの登場から怪しくなってきます。
後半は切なくて苦しい。
不安と疑いにぐらぐらする惠多くんにも、
はっきりしない章介おじさんにも
すっきりしない嫌な感じで物語が進みます。

しかし不思議なことに
ページを捲る手は止まらないのです!
この辺は沙野さんの筆力と言いましょうか、
言葉選びが美しい!

二人が想いあっているのは分かるのに、
素直になれない原因はなに⁉︎と、
常に引っかかりつつ苦しい展開!
(心情的にも肉体的にも!)

途中、多少大袈裟ではありますが、
この小説を読みながら、
マインドコントロールって、
きっとこんな風に疑心や不安の隙間に、
上手くするすると潜り込んでやられるのだなと、
ちょっと怖くなりました。

多くのレビュアーさんも書かれていらっしゃいますが、
きっと初読みと再読では違う楽しみ方が出来ると思います。

そして小山田さんの表紙が素晴らしいv
この表紙が全てを表している気がするほどです!
今風に言うなら『キュンですv』

途中苦しくて嫌な感じもするのですが、
終始二人の深い繋がりを感じつつ、
沙野さんの綺麗な言葉選びにも助けられ、
評価は「神」で!

5

読み終えた後に萌えが襲ってくる…。

幻想的な表紙に不思議なタイトル。
日常の風景から絶妙に顔を出してくる謎。
ドキドキしながら一気に読みました。

地雷がなければネタバレなしをオススメします。
初読と2週目、倍の萌えが得られますよー!!!


途中胸クソ悪くて、私は胸を掻きむしっちゃいました;
人の悪意が気持ち悪かった…。
が。それを上回る勢いで胸が熱くなります。
終始受け視点で、初読は受けのお話として読んだんですが
2周目に入り攻めの心情を慮ると切なくてパタリと倒れる。

叔父と甥の禁断の恋。
この恋に鍵をかけなくては…と必死に否定する様が
重苦しく、やるせなく、グッときます…!!!

(以下ネタバレあり感想ご注意)


冒頭は過保護な叔父にウンザリする甥…といった雰囲気。

甥:恵多は過去の一部に記憶がないけれど生活するには支障が無い感じです。しかし記憶を失った前後、父親の死のトラウマもあり、時折発作を起こすようになっていました。

叔父:章介はそれが心配の種で過保護っぷりを発揮しているという風に見えます。少々異常にも見えるけれど、それも致し方ない…と思うほど恵多の症状は酷い。

『過保護な叔父にウンザリする甥』がごく自然に描かれていて、ここからミスリードが始まっていたのか…!と感嘆しました。個人的に裏を読むのが苦手なので目に入ったままの解釈しちゃうからホンッット欺されたwここからしてすごく面白い。

そこから少しずつあぶり出される恵多の恋心。"ウンザリする甥"を演じながら自分の心に湧き上がる想いを押し止める健気さにギュンギュンします…!女の香水が匂って嫉妬したり、意地を張ってみたり。必死で必死で否定してなんとか『叔父と甥』の関係を安定させようとする。

けれど『叔父と甥』にしては時折空気が濃密で淫靡なんですよッ!バスルームで発作を起こして倒れた恵多を章介が介抱するシーン。濡れた身体をバスタオルで拭く描写があるんですが、頭の先からつま先まで丁寧に丁寧に描かれていてめちゃくちゃエロい…。なんじゃこりゃ。すごい。エロい…////

恵太の密かな片想いの行方は痛々しくしんどかったです。否定すればするほど悪い方に転がっていくような…。泥沼に足を取られて動けなくなり、思考停止させてしまうんですね。さすがに思考停止は少々イラッとしました。「ちゃんと考えて!頭動かせばわかるよ!」と願いながら読んだ。

変な方向に落ちてる恵多を友人が軽く窘めるのにちょっとホッとしたかな。章介の立場がどんどん悪くなって嫌な風に書かれ出したので、私は胸クソ悪くてしんどかったんですよ。恵多ですら章介を悪く言い出すから余計許せなくて。けれど恵多の友人だけは章介を信じてくれてて、なんかね。泣きそうになった。

悪循環が止まらない状況でようやく全てが明らかになった時は萌えで指先がビリビリ痛いし、泣けるし、切なくてギュンギュンくるしで最高でしたね…(∩´///`∩)あーー!そうだったのね!となってから、あれ?じゃあ冒頭のアレは…?と章介視点で想像を巡らすとシンドくて切なさに萌えた…。すごい。読み終えた後に更なる萌えが襲ってくるってどういうこと?すごい…。沙野さんすごい…。(五体投地)

途中趣味じゃない部分もありました。(特に恵多が章介を信じなかったのは解せない…!あんなに愛情かけられてたのに…。でも記憶がないってそういうことか。しょうがないとも思えるので気持ちを落ち着かせる)けれど読み終えた後にすぐ2周目に入る面白さがあり、読後に襲ってくる萌えは神…!月並みなことしか言えませんがすごく良かったです(;///;)

7

表紙の美しさにため息

叔父と甥の禁断の愛がテーマだが、特殊設定のない現代モノは沙野先生の作品にはちょっと珍しいかも。

3年間も自分との関係を忘れた恋人と同居しながら、攻めが悶々としてひたすら耐えている、というところがこのお話の切ないポイントだとは思うんだけど、そもそも肝心の、なぜ叔父さんが13歳も下の血の繋がった甥に恋したのか、という部分が書かれていない。
なので叔父さんの気持ちになかなか入り込めないし、甥っ子も、3年間も面倒を見てくれてる大好きな叔父さんより、クズ弁護士の言うことをなぜか信じて、まんまと騙されちゃう、というのがちょっと信じられないというか…おバカさんに思えてしまった。第三者に何を言われても、好きな人の方を信じたい、という方が私には自然に思えるんだけどな…。

中盤はひたすら受けが攻めを疑ってるし、攻めはクズにまんまと受けを取られてるし、なんかもういろいろずっと辛い。
ここまでこじれたら、もう真相を一から説明してあげればいいと思うんだけど、攻めは言葉足らずで。力づくでどうにかしようとするのも、半ばストーカー化しちゃうのも、苦手な展開だった。
ラストは受けの記憶が甦ってめでたし、なんだけど、攻めも本音ではまた受けに恋してほしかったのなら、よけいな小細工せずに、やっぱり最初から話せばよかったのになあと思っちゃう。まあ、そうなると全然違う話になっちゃうけど…。クズに社会的な制裁がないのも、微妙にモヤるしなあ…。

叔父と甥というカップリング自体は大好物だし、序盤の微妙な距離感には萌えた。介抱という名のタオルプレイはドキドキしたし。でも残念ながら、そこが萌えのピークだったかな。

特筆すべきはやはり表紙。神がかった美しさで、思わずじっと見入ってしまう。
最後まで読んでタイトルと表紙の意味がわかると、萌えが自然と沸いてくる仕様も素晴らしい。本編に萌え萌えだった方は、更に萌え萌えになりそう。攻めの透け乳首もたまらない…!
小山田先生の描く大人な年上攻めの、スパダリっぽい感じがすごく好きなので、挿絵が出てくる度にニヤニヤ見てしまう…。

4

評価は再読してから

途中で思いっ切りネタバレしています。ご注意下さい!

ーあの時キスしたの、覚えてる?ー

小山田あみさんの表紙イラストが素晴らしく美しい
この作品には、スルメみたいなところがありました。

初読み時には分からなかった・気づけなかった文章表現や描写の意味が
重みを持って心を打ってきたのは、再読している最中でした。
沙野さんらしさのある細やかで意味深な描写の数々に
ハッとさせられ、その巧さに唸らされたのは、再読している最中でした。

ただ、初読み時でも
最後の最後でやっと、章介の言動の意味するところが判明して
泣き笑いさせられましたが。

けれど、再読時には
章介の心中が手に取るように分かってしまうので
切なくて苦しい気持ちでいっぱいになり、涙腺は緩みっぱなしでした。

3年前までは自制心の利かなかった章介が
自制心を利かせまくって生殺し状態のまま
恵多を過保護なほどに見守り続けている姿は本当に切なくて苦しいです。

恵多が記憶の一部を喪った原因には納得がいきました。
父の事故死は当時18歳だった恵多には重すぎる罪です。
章介への想いと決して切り離すことができない父親への罪悪感。

痛みを伴う2人の関係がとても苦しいです。
でも、大人な章介の愛は深くて重くて前向きだから
恵多は激痛を伴う章介への愛を諦めることなく
2人で一緒に幸せになるのだろうと思います。

評価をつけるのは、是非、再読してからにして欲しい作品です。

10

失われた時を巡る、甘やかなミステリー。

ロマンティックなタイトルに魅かれて。
その月は、冷たいのだろうか。昼間に見上げた白い月なのか。輪郭が甘い朧なものなのか。
タイトルの意味はラスト周辺に明かされる。それは私の想像していた様な「白い月」でない事を知る。

父が事故死した時期周辺の記憶を失くした恵多は、時々発作に悩まされながら、何か「大切な」記憶を思い出そうとしている。
そして父亡き後、弱った自分の世話をしながら側にいてくれる叔父の章介に淡いけれども、躰の奥底から沸き上がるような熱情を伴って。
恋をしている。

全部読んでしまうと、シドニィ・シェルダンの何か著名な作品のようでもあり、フランソワーズ・サガンの「悲しみよこんにちは」のようでもある。不安定な記憶と共に、自分の心と、恋に向き合っていく。
父の死の真相や、恵多を取り巻く大人たちの思惑が、まだまだ子供である恵多を危険な局面に立たせてしまう、ミステリー仕立て。
ただ、途中で当て馬(?)として出て来る須藤さんがあざと過ぎて、読み手側には彼の思惑だけは分かり過ぎるほど分かってしまう。恵多はぼぅっとしてるので、ウカウカとしてその手管に落ちてしまうが。
表紙やイラストが指し示しているのに関わらず、章介の外見はちょっと違う人を想像していた。
髪はゆるいウェーブを描きながら、肩に掛からない程度に長く、真ん中で分けられ。肌は浅黒く、うっすらと髭を生やしている。というのが、私の想像で。恵多は、イラスト通りでいいかな。
抜ける様な白い肌の美少年なのだと思う。

記憶を失くしても、何度でも貴方と恋をする。というロマンティックな側面と、その綺麗さを生々しく覆うエロス‼︎ むちゃくちゃエロいです。まぁ、多くのミステリーがエチシーンを含める事を思えばフツーなのかもしれないけれど、何がエロいって、直接的な行為そのものよりも。
他の方も触れている様に、章介が風呂場で倒れた恵多を介抱してその躰を拭くシーン‼︎
恵多は、章介が介抱してくれているだけなのだと思いながら、その手に、触れる指に、タオル越しの温かさに。つい感じてしまい、後ろめたさを持つ。読み手側には章介の熱く濡れた想いが迸っていることが分かる。この男の確信犯的な劣情を感じるのだ。
13年も歳が離れているとはいえ、章介も恋に溺れるただの男だということを。
なので、実際に彼が行為に及ぶ悦びが、大人げなくて。(ちょっとだけ引きます!)
物語は常に恵多目線で語られますが、全部読んでしまってから、章介目線で読み返すとまた、熱いものを感じられるかと思うのです。それは是非。

0

苦しい系

先生&表紙買い。ほんわり甘いのかと思ったら違った・・ドキドキどうなる話でした。最後までドキドキ苦しくてちょっと重いなと思ってしまったので萌にしました。本編230P弱+あとがき。

平日の朝、洗面台で二人歯磨きなど身支度をするシーンから始まります。デザイン事務所勤務の叔父は寝起きはゆるいクマ状態ですが、ぱりっと身支度を整えるとイケメン。色んな女の残り香をまとってきますが、必ず帰宅し、甥っ子である恵多にも外泊禁止令を出す過保護さん。というのも恵多が記憶を一部欠落していて、水の匂いがトリガーとなって動けなくなる発作をたまに起こしてしまうからで・・と続きます。

攻め受け以外の登場人物は
須藤(受け父の会社の顧問弁護士だったイケメン)、大学の友人少々といったところ。ほぼ二人+1で進む印象です。

**以下内容に触れる感想

叔父に焦がれる気持ち、父が亡くなった理由、自分が記憶を無くした理由、その記憶などを知りたくなる気持ちなどで受けさんが煮詰るので、読み進めていくうちに気持ちはぐあーーとなっていきます。なるんですけど、攻め受け共にあんまり好みドストライクという訳ではなかったからかな、萌方面ではあんまり盛り上がれず。攻めさんは甥っ子を思ういいイケメン(やや)おっさんで、受けさんは一生懸命自分と闘う子と真面目路線一色だったからかな。お仕事話があるわけでもなかったし。

攻め受けとも一生懸命!という真面目なシリアスお話がお好きな方には良いのかもと思いました。

3

はまりきれず…。

大好きな沙野風結子さんなので、迷わず作者買いしましたが、う〰️ん。高い評価の中、評価を下げて申し訳ないのですが、私は今一つ萌えきれませんでした。

設定は本当にすごくいいんです!恋人と思われる男性に湯船で温かく抱き締められる記憶(夢)を持ちながらも、父親の死をきっかけにして、その相手のことだけでなく、記憶の一部を欠落してしまって、水や性的なことに拒絶反応するかのように発作が出てしまう甥の恵多と、それを生活面でも精神面でも支える叔父の章介。

叔父甥の関係や同性愛ということに悩みつつ、記憶の欠落に苦しみながら一方的な片思いを拗らせている恵多の恋心が切なく描かれているところや、想いを募らせる1つ1つの仕草にはとてもきゅんとさせられるし、章介の異常なまでの過干渉の様子から過去に何かがあると匂わされてはいるのですが、そこは明らかにされないまま、発作で動けない恵多の濡れた体をすみずみまで拭いていく章介の描写のイヤらしいところとか(ねちっこい分、絡みよりむしろエロくて…う〰️ん、悶絶)前半はホントめちゃくちゃいいんです。

なのに、見た目が過去の恋人に似ているからといって、疎遠だった弁護士の言うことの方をほいほい鵜呑みにしてしまって、3年も一緒に暮らしてきて自分を時に過剰とも思えるほど大事にしてくれて、恋心まで募らせてしまった章介と、そんなよくわかんない人間を比べて、どうしてそっちを信じちゃうかなぁ〰️、なんでよ〰️ってところで引っ掛かってしまって…。

一方、そんな恵多の変化にストーカーまがいの執着心をみせる章介にもちょっとなぁ…って引いてしまいました。外出中に冷蔵庫に肉とかお惣菜とかって…ありがたいし、心配なのはわかるけど、おかんかってツッコミいれたくなりました。

たしかに、記憶の欠落が恵多を不安定にさせていたり、章介の方にも言えずにいることがあって二人の関係を拗らせていたのはわかるのですが、渡辺くんの「俺はこの目で見た叔父さんのほうを信じるね」というセリフがなかったら途中で放棄してしまいそうでした。結局はお互いを大切に想うあまり…ってところでかなり浮上でき、スッキリとはしましたが。

二人の抱える罪悪感と、それさえも凌ぐ愛情で最後はいい終わりになりましたが、途中あちこち引っかかってしまって、どっぷりとははまりきれずちょっと残念でした。

6

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