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sekigan no kishi to iyashi no hanayome
作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます
初読みの作家さまでしたが、タイトルとあらすじに惹かれ購入。
内容をざっくりと。すみません、ネタバレ含んでいます。ご注意ください。
主人公はDKの真名。
彼は友人や家族から距離を取り、日々孤独に過ごしている少年。
ある日いつも通り一人で学校からの帰路についていた時、まぶしい光に包まれ意識を失ってしまう。目を覚ました時、今までいたはずの場所ではなく、暗い森の中にいた。
ここはどこなのか、なぜここにいるのか訳もわからぬまま数日過ごす彼だが、ジークフォードと名乗る男性に出会い―。
ということで、異世界トリップものです。
真名は、トリップしてしまった世界の言葉を話すことができ、序盤で出会ったジークフォード(愛称はジーク)に拾われ、彼のもとに身を寄せることに。ルティナス王国の騎士団団長であるジークに可愛がられ、「マナ」と呼ばれ、そこで生活を始めるマナですが。
基本的に真名視点でストーリーは展開していきます。
序盤、真名がなぜ人を避けるように生きているのかわからずにストーリーは進みますが、真名視点で描かれているために理由はすぐにわかってきます。
真名には、人の怪我や病を直す力があること。
怪我を直すだけではなく、悪化させることもあること。
それゆえに家族からも疎まれ、人に悪影響を与えないように、常に孤独でいること。
この「真名の力」が、ストーリーの大きなキモになっています。
基本的に謎解きの面を兼ね備えている作品でした。
マナが持つ力の謎。
なぜ、真名が異世界トリップしてしまったのか。
ジークの本来の姿は。
が、そのあたりは読み進めていくうちに、早々に描かれています。
マナは序盤こそ孤独を抱える少年、というふうに描かれていますが、ルティナス王国の皆さんがとにかくマナに優しいんです。騎士団の偉い人(ジーク含む)達や国王に可愛がられて日々生活しているので、シリアス度はかなり低いです。
さらに、ジークがマナにべた惚れなのが序盤から透けて見えてしまっているので、とにかく甘々。ほのぼの。でした。途中、マナが誘拐されたり狙われたり、という展開もあるのですが、いつでももれなくジークが駆けつけて助けてくれるといった展開。
お約束とわかっていても、ジークのカッコよさに萌えが滾りました。
マナは健気で働き者だし。
ジークは身分も高く、騎士としても強く、そして優しく。
砂を噛むほどは甘くはなく、けれど程よい甘さがあり、痛い描写もほぼなく、安心して読める作品でした。
ルティナス王国の国王の座に誰がつくのか、というバックボーンもあり様々な設定が盛り込まれているのですが、そのどれもが少しずつ繋がっているので、読んでいて話に統一性があり読みやすかったです。
シリアスに話が動くことはほぼないので、大きな山場はありません。
マナも、いつもたくさんの人に守られているし。
国王の座を争って骨肉の争い、という感じにはならないし。
スルスル~と話は進んでいってしまうので、もしかしたらちょっと物足りないと感じる方もいらっしゃるかも。
が、個人的にはこのほど良い甘さが非常にツボでした。
あ、そうそう。
序盤、マナがトリップしてしまった時に、マナが出会うフェレット(もどき、らしい。マナが名付けた名前はユノ)が、めっちゃ可愛かったです☆
この方のお話は攻めが受けを溺愛したりお世話しまくったりする甘々なお話が多いと記憶していますが、この話も両想いになるのは最後の方とはいえ、騎士団長の付き人となった受けが騎士団長の世話をしていたはずが、いつの間にか世話される方の騎士団長が付き人を甘やかし世話をする逆転現象となっている甘々な展開です。
<あらすじ>
居場所がなく帰宅せずぐずぐずしていた楓真名(受け)は、ふと誰かに呼ばれたような気がして振り向くと、いきなり意識が途切れ気が付いたときには知らない森の中に倒れていました。怪我をしたフェレットに似た動物(幻獣ウーナ)を拾い、元気になったウーナに水や食べ物を案内されながら彷徨っていると突然襲われ、危ないところを見知らぬ男に助けられます。自分の代わりに怪我をしたそ
の男が苦しみだす様子に慌てて駆け寄ると、自分の力が吸い取られるような感覚の後意識を失ってしまうのです。
真名を助けた男はルティナス王国騎士団長・ジークフォード(攻め)で、感謝する真名に自分こそ助けられたと礼を言われるのです。
言葉は通じますが、地理や文字などどう考えても自分の世界とは違うことに気が付き、元の世界に戻れるかどうかもわからず途方に暮れます。
行くところのない真名をジークは騎士団長付きの見習いとして騎士団に置いてくれるのです。
真名は家族の傷を癒すことのできる不思議な力を持っていましたが、他人の傷を悪化させたこともあったこともあっため、得体のしれない力を家族から恐れられ孤立していました。真名自身も他人を傷つけるかもしれないということを恐れ、人と触れ合わないようにしてきたため、自分の居場所がなく孤独でした。
実は、真名はもともとこの世界の住人でウェルネと呼ばれる幻獣を祖とする癒しの力をもつ一族でした。本来の世界であるこの世界では誰に対しても癒しの力が使えるようになります。それでも過去のトラウマから力を使うことにおびえるのです。
この世界では行くところのない自分を傍においてくれるジークの役に立ちたいという気持ちが強く、ジークが国王リディアの病気を治すため自分を呼び出したとわかってからは、自分のことを顧みず癒しの力を使うようになります。
ジークは前国王の第1王子ですが、正妃の息子である異母弟の第2王子リディアを国王に立て、自分は王位継承権を返上し臣下の誓いをたてています。
王位をめぐって争っている周りの思惑に関係なく仲の良い兄弟で力を合わせて国を治めることに尽力しています。
現在は近衛騎士団長として他の並ぶもののない力を誇示し、義弟を支えていました。そんな中リディアが不治の病に侵されるのです。施しようがない状態になったリディアを助けたい一心で呪術師に相談した結果、ウェルネを呼び出すことを提案されます。
ウェルネはその力により権力者によって狙われ、今ではおとぎ話でしか見られない存在となっていますが、一縷の望みをかけて呪術師に頼み、真名が召喚されたのでした。
自分の勝手で真名を召喚してしまったことを申し訳なく思い、責任をもって真名の面倒を見ようと心に誓うのですが、途中自分を顧みない真名を心配するあまり過保護な保護者になっていきます。
他の登場人物にジークの幼馴染の副団長キリエ、宰相ゼスフィート、リディア、呪術師ラトム他たくさんの団員が登場します。騎士団員は真名に対して感じのいい人そうでない人とさまざまでしたが、ジークが信頼する人たちはみな優秀で真名にも優しい人達でした。
特にキリエとゼスフィートは共通して効率や実力を重視した腹黒い人物できっと裏でたくさんの鬼畜なことをしてると思わせる人たちでした。
この二人が裏でしている数々の武勇伝をこそっと教えてほしいものです。
そして真名の1番の味方はユノ(導く者)という名付けたウーナでした。ユノは真名を主として認め傍にずっといるので、すごく癒されます。かわいいだけじゃなくユノはたびたび真名のピンチを助けてくれるとても心強い仲間でした。
命の危険から救うために異世界へ送られた受けがその世界では馴染めず、こちらの世界に召喚されたことにより自分の居場所を手に入れるという話です。
真名はとても優しい子なのに、他人を傷つけるかもしれない自分自身におびえているのがとても不憫でした。
癒しの力が必要だからとはいえ自分に居場所をくれたジークに感謝し、その居場所を守るために必死になってしまうのは今までの不遇を考えると当然かもしれませんが、心が痛みます。
リディアは真名の力をもってしても目に見えてよくなることはありません。それには理由があるのですが、申し訳なく思う真名に対して、ジークもリディアもそんな真名に感謝しあたたかく見守ってくれるので余計に焦るのです。
そんな中で王位継承争いが水面下で絡んでおり、国王派・ジーク派・その他の貴族と入り乱れ、真名も含めて狙われたり反乱が起きたりと騒動が起こります。
この騒動により真名は覚醒し、不穏な一派はおとなしくなるし、二人が両想いになるしで丸く収まったといえます。
ただ、リディアの病気は希望が見えたところで終わったので、病気が癒えたリディアのその後や覚醒した真名これからの生活は見えないままで少し残念でした。
ただ、未来を見ることができる明るい終わり方だったと思いました。
しっかりした王道ファンタジーで安心して読めました。ひねりはなかったのですが、攻めさん受けさんとも好きなタイプだったので萌2より萌です。本編370P弱+あとがき+タイトルなしの後日談SS10Pで、読み応えたっぷりでした。
お話は、夜8時過ぎ、図書館から帰る途中の真名(マナ)が誰かに呼ばれたような気がしたと思ったら白い光につつまれて、さくっと異世界トリップしてしまうところから始まります。飛んだ先は、うっそうとした森の中。とにもかくにも水や食料をと、途中でケガしたフェレットみたいな動物と一緒に歩いていた時、人声が聞こえると思ったら、横から出てきた男にかばわれて・・と続きます。
攻め受け以外の登場人物は
攻めの弟(はかなげ美形♡国王)、宰相だの騎士団の副団長(美人ツン系)だの呪術師だの人間複数に加えて、ユノ(ちっこいモフモフ♡、「キュ」等と鳴くのみ)もいて個人的には完璧セット。
騎士団副団長さんが挿絵では美形で怒ったらコワい系で好きなタイプでしたし、ユノが受けさんといつもくっついていて可愛かったです。こんな風にサブキャラ系からも盛り上げてくれるのは嬉しい。
**以下は好きだったところ
人に触れると、その人のケガや病気を治してしまうという力があって、家族から気味悪がられていたせいか、自己評価の低い受けさん。だんだん自分の在り方を認識し、最後に居場所をきちんと認識できたときの解放感が好きでした。そこの挿絵では、真名にも耳シッポが出て可愛い姿になっていてとてもお気に入りの1枚です(シーン自体はシリアスなんだけど)。
攻めさんはしっかりした王たるべき王族で、ちゃんと強いですし、きちんと受けさんを守ってくれそうなので安心。
説明あってもよかったのでは?と思う箇所が少々あるっちゃあるので萌2にできなかったのですが、好みの攻め受け+世界観であっさり丸め込まれ、主たる攻めさんと一緒にいることになって、幸せ間違いなし!と安心できた王道ファンタジーでした。
蛇足ですが、私の思った王道ファンタジー3点セットは、異世界トリップ、特殊能力、モフモフ相棒。この3つが揃えば間違いないという気がしたけどどうでしょうね?