まりぽん812
富久男中継の打ち上げをしよう、と潮に誘われて、竜起となっちゃんはビールを手土産に訪問します。
潮と計が秘密の通路でつながったお隣さん同士になってからの話(「OFF AIR」収録の短編やSS「愛の夢」)には、潮の手料理がちょこちょこ出てきて、潮が手際よく作るそれらが、とても美味しそうなのです。
今回は、肉や魚介の串カツ、甘酢漬けのキャベツ、アメリカンドックが登場。温かい手作りの料理って、一緒に食べると、気持ちが温かくなって、グッと距離を縮められるものですよね。きっと潮は、なっちゃんを入れた四人でそうしたかったのだろうなと思いました。
潮の懐の広さ、計なりの毒舌コミュニケーション、竜起の天真爛漫ぶり、なっちゃんの気遣い。短いお話の中に、それぞれのキャラが出ていて、微笑ましくなりました。なっちゃんか小動物系、計がナマケモノ系とは、ぴったり!
なっちゃんの人間観察力にハッとさせられます。潮と計、それぞれの仕事への姿勢に共通するもの。それは、人に楽しんでほしい、というシンプルな気持ち。「国江田さんと都築さんて、ちょっと似てますね」。たったそれだけの言葉に、潮はなっちゃんの心の内を感じたのでしょうね。潮が返した「ありがとう」は、ビールのお礼ではなく、計を、自分たちの関係を分かってくれることへの「ありがとう」なのだろうな…と思いました。
これまでのイエス・ノーシリーズを読んで、潮は計の絶対安全地帯と理解していたのですが、そうか、こういう風に重なる部分があったのかと。小話の中にさりげなく二人の大切な部分が明かされていて、一穂さんの粋な計らいを感じます。だから、たびたびブログに公開してくださる小話も、全部読みたくなってしまいます。
次回作はまた一年後くらいでしょうか。待ち遠しいです。