まりぽん812
「キス」本編→あとがき→noteのこばなし、の続きです。
苑は、仕事終わりまで待っていた明渡に戸惑いながらも、以前城戸に連れられて来たバーに明渡を誘います。
静かなバーで話しているうち、苑は、明渡と上京した日に飲んだビール、明渡を置き去りにした夏の夕方、父の葬儀の後に体を重ねたことを思い出し、心が揺れます。期待したくないのに、明渡の傍で声を聞くのが嬉しい、でも苦しい、これからどうなるのだろう、と。
別れ際、駅の改札前で唐突に苑に口づけた明渡は、「おやすみ」とあっさり帰っていきますが、いつの間にか苑のバッグに自分の連絡先を入れていました。
明渡と苑が、まるで付き合う寸前の恋人同士のようで、読んでいてドキドキします。明渡は苑に態度で「好き」と伝えてきますが、以前のように強引ではなく、苑を待っている感じがします。苑も、明渡が好きだけれど、どうしようかと迷っていて。気持ちは向き合っているのに、距離を手探りする二人が、微笑ましいです。恋をやり直しているのだなあ、と思いました。
もどかしいけれど、二人はまた必ず結ばれるのだろうな、と予感できるお話でした。ぜひ、幸せな二人も同人誌で書いていただきたいです。