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Artemis no yurikago
シリーズ3冊を読んでみて、こちらの作品が1番好きでした。
前巻のシアの異母兄のサウロがとても賢くて、月の宮のオメガ達を守るためにとても頑張っているのです。
白の国の前王からの言いがかりに近い恨みと酷い仕打ちに胸糞悪くなりますが、それがオリカとの出会いに繋がっていました。
そしてオリカは前巻のイズマの友人ですが、彼と違う点は周りの人間に好かれて彼等を変えて行く点でした。
彼の分け隔てないフレンドリーな態度が皆を惹きつけて、自然と良い方向へと導くのです。
自らの力に驕らず、周りを尊重する素敵な人物でした。
赤国の策略から白国を救い、少なからず王宮に変革をもたらしていました。
白国の国王やアルファ達の愚かさと、黒国の国王の賢王ぶりが際立つ一冊でもあります。
私が1番最初に読んだのは「アポロンの略奪 オメガバース・契りの運命」なのですが、改めて時間のある時に読み直してみたいと思いました。
前作「リュカオンの末裔」のスピンオフです。
オメガバースもので、アルファ・ベータ・オメガの6種の性の存在する世界。
前作受け様・シアの異父兄サウロが今回の受け様です。
攻め様は前作攻め様イズマの友人だったオリカ。
シアとイズマも少し登場します。
今作だけでも読めると思うのですが、時系列的に前作の続きになっているし、国ごとの考え方の違いなど詳しく書かれているので前作から読むことをお勧めします。
アルファが統べる国・白国。白国ではすべてのオメガはアルファ共有の所有物とされ、王宮の一角、月の宮に隔離され生かされています。月の宮のオメガの長・サウロが今回の受け様です。
前作で、サウロの異父弟シアは発情期が来ないため酷い目にあっていましたが、サウロは発情期が来たため酷い目にあっていました。
アルファとオメガは番という唯一を決める制度がありますが、その中でお互い惹かれてやまない運命の番という特別な関係があります。白国では優秀な血統を残すため一対を決める番制度は否定され一般には秘匿されてきました。国王はサウロの母が運命の番だったのですが、白国の制度では番になれず、運
命の相手が自分以外のアルファとも関係をもった結果であるサウロ(国王の子はシア)を憎んでいました。
白国でのオメガの唯一の存在理由は子を孕むこと。
サウロは国王に憎まれていたため、子を孕まないようにアルファに抱いてもらえず、長年発情期に地獄のような苦しみを与えられていました。それを知らない他のオメガには子を孕まないことを嘲られ、長として他のオメガを守るために身を粉にして働き、唯一外へ出られる立場なためベータに会う機会も多くオメガを憎むベータに心無い言葉を投げかけられる。性格も歪むというものです。
身体に反して心はすっかりアルファを拒むようになってしまったサウロでしたが、国王が崩御し新国王になったため、方針変わって今度は国王の相手をしなければならなくなります。アルファを拒む気持ちが大きいサウロは不安で仕方なくなります。
アルファの数が減ってきている白国は出生率のよい黒国のオメガが欲し、白国のオメガを勝手に送りつけ、代わりに黒国のオメガをよこせといってきていました。それに対して送られてきたのが、アルファの特任外交官オリカです。
オリカは運命の番を探しにきたオリカは一目でサウロを運命の番だと気付き、サウロと番になりたいと口説き守ると誓うのです。が、なぜかオリカに対しては冷静になれないサウロは冷たい態度をとってしまいます。
アルファ・ベータ・オメガと分け隔てなく接するオリカは白国内ですこしずつ味方を作っていき、城の中は少しづつ澱んでいた空気が明るくなっていくのです。
オリカは物資が少なく疲弊している白国に改革を訴え、ベータたちに優先的に物資を分配することで白国全体の国力をあげようとします。うまく行くかと思われたのですが、ほぼ同じタイミングで白国と国境を接する赤国の使者ロイの横やりにより頓挫してしまいます。
赤国はベータのみが存在する国で一時期白国に追いやられていたのですが、じわじわ国力をつけ白国黒国以外の近隣の国を傘下に収めてきておりその立役者がロイでした。赤国は自国を衰退させた憎いアルファのいる国力の衰えた白国へと侵攻しようとしていたのでした。暗躍するロイに気が付かず、白国はいろ
いろと注文をつける黒国よりも、おいしい餌をぶら下げてくる赤国の手を取るのです。
赤国はベータしか存在しない国であるため、オメガは必要ありません。オメガの長として、サウロはなんとしても赤国の侵攻とロイの裏の企て両方を阻止しなければなりません。頼みのオリカは途中離脱を余儀なくされ、一人戦わなくてはならなくなるサウロ。
赤国の思惑に気づき焦るオリカですが、サウロは強かった。今まで伊達にアルファと渡り合っていたわけではなかったのです。
ひたすらアルファに翻弄されながらも、長としての他のオメガを守るサウロの強さには本当に脱帽です。
甘えることを知らないサウロを辛抱強く支え、心を開いてもらえるようになるま
で我慢し続けたオリカも運命の番のために頑張ったと思います。
今回の事件で白国王はサウロに対しても黒国に対しても大きな借りができたことで、きっと少しづつ変わっていくと思います。
また、頑張りやでツンデレ気味なサウロのそのギャップにオリカは興奮しすぎでサウロは子だくさんになりそうですね。きっと強いアルファが生まれると思うので、すべての人が等しく幸せになれる国になる日も近くなるのではないでしょうか。
イラストのコウキ。さんの絵はとても繊細で綺麗でした。
この方の描く子供や動物は本当にかわいくて癒されます。
ただ、サウロに関してはちょっと読んだイメージと違ってたように感じます。オメガは華奢な身体をしているはずなのに、華奢な首と書かれているサウロの首は比較的太いし、肩幅や胸回りとかがっしりしていてアルファと遜色なさそうに見えました。
今回はサウロとオリカの物語と共に、アルファにとってオメガとは何かということが話の根底にありました。
アルファとオメガが共に協力しあって暮らす黒国、アルファがオメガに子を孕むことのみを求める白国、ベータのみの赤国。
運命のいたずらでオメガのいない赤国に生まれてしまったばかりに人生を狂わせてしまったロイは気の毒でありますが、オメガを得られなかったアルファの末路は白国にとっての反面教師となったのではないかと思います。
コウキさんの絵いいと思います❤サウロもいい加減に細くきれいですきでした。真逆のこと、コメントで言ってすいません⤵