イラスト入り
kinki no mituyaku
初読み作家さまでした。
兄弟の愛憎劇という、ドロドロとしていそうなワードに惹かれて購入。
長さは短編〜中編ほどでしょうか。
兄弟ものでも、こちらの作品は義兄弟ではなく、血を分けた兄弟による兄×弟の近親相姦ものでした。
なので、義兄弟ではない兄弟ものをお求めの方にはピッタリの設定だと思います。
しかしながら、ごめんなさい。設定は良かったのですが。
以下、内容に触れる少々辛口めのレビューとなります。
どこかの国のどこかの宮殿で暮らす王子たちの物語。
煌びやかで美しく人望も厚い第一王子。
そんな、自身が欲していたものを全て手にしている、どこから見ても完璧な実兄・エドガーを羨み恨む実弟・オズワルド。
兄を殺して、自身が次期国王になろうと、兄の生誕を祝うその日に暗殺の計画を企てて…と続きます。
たしかに、開始数ページから愛憎劇の香りが漂います。
こういう雰囲気は好みですし、殺してやる!なんて勢いのオズワルドにワクワクしてしまうのです。
ただですね、オズワルドがなぜそれほどまでに兄を恨んでいるのかが強くは読み取れず、兄であるエドガーもなぜオズワルドに執着をするのかが分からなかった。
反抗しながら兄に抱かれる弟も、弟に対して歪みに歪んだ愛情を持ち、ぶつけるエドガーも良かったのですけれどね。
終盤になれば判明するのかなと期待しながら読み進めたものの、よほどの理由があったのかと思いきや、そこまで強いものがなく終わってしまったのが残念。
埋もれるのには勿体ない設定も多々ありましたし、兄王のねっとりとした執着とドロドロとした雰囲気は良かっただけにこれは少々惜しい。
うーん…全体的に、印象に残るような強いエピソードが不足していたのかも。
なんというか、これだと2人揃って拗らせた情緒不安定な人物にしか見えなくて昼ドラ的。
題材は面白いですし、着地点もやや駆け足ながら後味は良かったように思います。
きっと、もっとページ数があれば更に魅力的なお話になったのではないかなと。
作家さまの今後の作品に期待を込めて、今回はこちらの評価で。