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akatsuki no cho
商業BLとしてはかなり挑戦的だと思いながら読んでいたら、やはり元々は同人誌だったらしいです。あとがきに四ノ宮先生が書いていらっしゃいました。
とても好みが分かれる作品だと思いました。
半分以上というか大部分は好みじゃないです。中立にしようか、しゅみじないにしようか迷いました。何しろあまりに酷いシーンばかりで、途中で挫折しそうになったからです。
では何で萌なのかというと、エピローグが良かったからです。
鈴の胡蝶の全てを包み込むような愛し方が凄く良かったです。これを読むまでビルの中に居るうちはなんとでも言えるよなとか、本当にこの2人は外の世界で生きて行けるのかとか、胡蝶は本当に変われるのかとか半信半疑だったんです。
でも四ノ宮先生の他の商業作に比べると、まとまりが無くて雑な印象は拭えないです。
そしてあの佐藤翁の死に様が書いてあって、恐怖に慄いて咽び泣いて許しを乞うようなものだったらもっと評価が上がったかもです。
それでも神評価の方がいらっしゃるので、人の好みは千差万別だと思った作品でした。
四ノ宮さんは痛い作品も多く書かれているので購入を悩みましたが、笠井さんの挿絵に釣られて購入。
ネタバレ含んでいます。ご注意を。
主人公は、高級SM倶楽部『Butterfly』のオーナーであり、男娼でもある胡蝶。
少年だった頃に家出し、そこを紅龍会の3代目であった佐藤翁に拾われ愛人として飼われていた彼。佐藤翁が急逝し、その後紅龍会の4代目を襲名した剣と直談判し、『Butterfly』の売上金を上納するという形で今現在の地位に納まっているという見目麗しい青年。
死に直結するような激しいSM行為を受けないと性的に満足できないという特殊な性癖を持つ胡蝶にとって、SM倶楽部という場所はまさに天国。
『Butterfly』には胡蝶に従順に尽くす下僕のような青年・リンがいますが、彼はとある事情から話すこともできず、また性的に不能、という状態。そんなある日、『Butterfly』で事故が起こり胡蝶が解雇されるという出来事が発生し…。
というお話。
四ノ宮作品なので、また舞台がSM倶楽部ということもあってある程度予想はしていましたが、かなり、とっても、すっごく痛いお話です。
胡蝶という青年は被虐趣味を抱えていますが、その程度がかなり重症です。死んじゃうんじゃないのかなと心配になるくらい、というのか。そして彼を愛人として囲っていた佐藤翁によって彼の被虐趣味が大きく開花されたこともあって、彼らが致すSM行為はかなりハード。痛い描写は苦手、という方には回れ右をお勧めしたい。
けれど、胡蝶の被虐嗜好は、彼の子ども時代の過酷な過去に起因していると思われ、それがなんとも切ないです。
そしてそんな胡蝶に尽くしまくるリンの存在。
リンが話せなくなり、そして不能になった原因が、これまた凄惨というか壮絶です。ちょっと斜め読みしちゃおうかなと思えるくらいハードな過去です。
そんなリンが、胡蝶に尽くし、そして救おうとする。彼の恋心が健気で萌えが滾ります。彼の愛情によって愛されることを知った胡蝶に幸あれと願ってやみません。
胡蝶は佐藤翁やSM倶楽部の客に痛いことをされますが、それ以外の彼を取り巻く人たちは総じてみんな優しく、温かい。凄惨なSM描写と、彼らの(様々な形の)愛情のバランスが非常に良い作品だったように思います。とくに紅龍会の4代目の剣さん。彼がめっちゃツボに入りました。彼のスピンオフ作品を書いていただけないだろうか。
ただ、一言いいたい。
せっかく笠井さんを起用しているのにもかかわらず、本文中に挿絵は1枚もありません(カラーの口絵は1枚あります)。なぜだ…。
大人の都合もあるのでしょうが、この点が残念で仕方なかったです。
胡蝶が自分自身の意向で痛い行為を受け入れていること、また蓮っ葉な物言いをする青年という事もあってか、ハードなSMプレイは多いものの悲惨な雰囲気は漂ってはいません。ただ、何度も書きますが、SM描写はかなり多く、またハードです。地雷の方は注意されることお勧めします。