まりぽん812
おとぎ話をモチーフに、桂と志緒の恋がみずみずしく描かれています。
「かいじゅうたちのいるところ」
恋人同士ではあるけれど、まだ体を重ねてはいない二人。志緒が高校三年生の、夏休みのお話。
志緒の妹は、絵本「かいじゅうたちのいるところ」の『たべてやるからいかないで』に、いつも大興奮。志緒は、理解できない、と桂に話します。数日後、「食う」って性的な意味が大きいしね…なんて考えながら、桂が帰宅すると、志緒が眠っていて…。
絵本のセリフそのままに、志緒に愛を告げる桂が可愛くてたまりません。初々しい二人のやり取りに萌えます。
「ぐりとぐら」
志緒が大学4年生の夏休み。おうちプールのぞき犯を志緒が追いかけた話の後日談です。
りかと妹に、カフェで“ぐりとぐらのパンケーキ”をおごり、誰にも言うなよ、とくぎを刺した志緒。桂の部屋に泊まった翌朝、パンケーキが食べたくなって、朝食に作ります。
「ぐりとぐら」のビターな読み解き方に、心を揺らされます。恋の苦さに思いを巡らせる志緒はもう大人なんだな、と感じたお話でした。
「夕鶴」
桂を好きになり、桂の昔の恋を知った、15歳の志緒。二つの恋に、「夕鶴」を重ね合わせ、やがて“大人の恋”の深さを知っていきます。志緒の真っ直ぐさが眩しいです。
初めて結ばれた後、二人はこんな話をしたのですね。思わず本編を読み直しました。
本編をもっと好きになる、素敵な短編集でした。
「かいじゅうたちのいるところ」
美夏のお気に入り絵本の話。
『たべてやるからいかないで』の場面で、キャーと手足をばたつかせて喜ぶ妹に「何がそんなにツボなのか、引く」という志緒(笑)
「食う」という表現には、性的な意味合いが含まれることがあるよな、と考える先生。
ある日、志緒が寝ぼけて呟いた「おなかすいた」という欲望の言葉に…。
志緒が高校生の頃のお話なので、悶々の時代ならではのお話。
「ぐりとぐら」
ある日、大きな卵を見つけたぐりとぐらが、森のみんなと協力して大きなカステラを作るお話。
凡人な私はカステラ美味しそうぐらいの感想しか覚えてない(笑)
朝食に志緒が作ったホットケーキを食べながら、「ぐりとぐら」の話題に。
志緒は小さい頃読んで「怖かった」と。
その感性がもう志緒らしい!!観点が違う。
志緒の感想に先生も「サスペンスになっちゃったじゃん」と、ホットケーキを食べる手が思わず止まる(笑)
「夕鶴」
15歳の志緒には分からなかったことが、時間が流れ分かるようになる。
先生の感想も「若いねー」から「志緒だね」に。
一穂さんのセンスに脱帽な一冊です。