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表題作と続編の中編2本が収録されています。竹垣の目線で進みます。
「黒いサカナ」
日常に退屈している竹垣は、ある日、隣の風呂が沸かしっぱなしになっているのに気がついて、隣人・今隅の部屋に入ります。それからイラストレーターだという彼にモデルになって欲しいと頼まれ…。
今隅が罠をかけて、竹垣をモノにする話です。
火事になったら困るので無視できないという心理を利用した風呂の音、ギャップで興味を引く変身ぶり、男を抱く姿を見せて己への思いを自覚させる…計画的に仕組まれた罠に抗うことができず、モラリストな竹垣が、心の底では欲していた今隅のインモラルに落ちていく様子が、自然に書かれています。なんだか艶っぽい指先や情景が目に浮かぶようでエロいです。黒いサカナの黒いタトゥーが良い味を出してます。
「泳ぎだすサカナ」
恋人同士になったけれど、竹垣がプライドを崩さないことが不満な今隅。そんな中、竹垣は、二人の関係を知った部下・松澤に脅されます。それを聞いた今隅は、松澤を部屋に呼んで欲しいと言い出して…。
今隅、恐るべし。
松澤の悪事を暴いてお仕置きをすると同時に、嫉妬する心を伝えて竹垣が自分を求めるように仕向けます。
結果的には今隅の思うがままになったという話ですが、今隅はワルい男ですが、酷い男ではないので、不快感はありません。
どんな場面でも、底辺にエロい流れを感じました。普通の人達が過ごす日常生活の近くにあるのに一線を画している流れ。その流れの中を、もつれあって泳いでいく主人公たち二匹の黒い魚。そんな印象でした。
日常的なサラリーマンの恋愛からは離れていますが、倒錯的なSMの世界まではいかない、そんな不思議な作品だと思いました。