お買い得商品、セール品、中古品も随時開催中
和風ホラーの雰囲気がとても良かったです。
出版されたのは2004年、雑誌掲載されたのは2001年から02年とやや古い作品で、緑蔭の庭と揺らふ毬、の二編構成。
攻めは体育会系のフリーライター、帯刀(たてわき)壮、受けは三條初音といって、風情ある日本家屋に一人で住み、香りで人の記憶を呼び起こすといった、特殊な仕事をしています。一人でいるのは好きではないのですが、人の気に当てられてしまうので、閉鎖的な生活を余儀なくされているのです。
壮と初音は中学からの友人で、密かに抱いてきた思いが、ある怪奇事件から恋に自覚していくのが緑蔭の庭。
香炉を巡る薄暗いホラーが揺らふ毬。
現代が舞台でありながら、ノスタルジックな雰囲気でした。
ただ、初音はとても魅力的なキャラクターなんですが今ひとつ出番が少ない感じなんですよね。それが少し残念。
攻めの壮の一人称で語られているので、だからなのかもしれませんが、もっと初音には活躍して欲しかったです。
火崎勇先生は実は初めてなのですが、やはり巧い作家さんなのですね。もっと読みたくなりました。
ちるちるさんの貸本サービスを利用して五冊借りましたが、正直四冊まではスカでした(すいませんw)
でも勿論、タダで五人ぶんの作家さんを実験的に読めるのはありがたいのです。とくに私は、気に入った作家さんの本を大人買いするタイプなもんで。表紙買いどころか、あらすじ買いもあまりしたことがない。
で、この一冊は、キました。火崎勇さんは初読みの作家さんだったんですが、あと二、三冊試してみて、好みなら大人買いしちゃおっかなァ。好きだと思える作家さんが見つかるのは嬉しいです。ちるちるさんありがとー!
冒頭の10ページほどを読んだだけで、文体に安心感を覚えました。行間にニュアンスを蓄えることのできる文章だ。作家さんは無意識のうちにやってることだと思いますが、スゴイなと思う。
主人公(攻め)は、フリーライター。学生時代から仲のいい受けとは、長い親友です。
受けの家の庭先で書生風の幽霊を見て、その幽霊が受けを強姦する夢を見る。このあたり、ゾクゾクするような描写でした。怖くて、艶があって、静かなのに激しくて。
主人公はその夢で、自覚してなかった受けへの劣情に、じわりじわりと気づかされることになります。
そして──。
セックスシーンも良かったです。攻めが過剰にベラベラと言葉攻めするセックスがあまり好きじゃない私なんですが、この作品の攻めの少ない一言一言は、ツボにヒットしました。
全編に渡って、お香の妖しい薫りが漂ってます。
神に近い萌え評価です。