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anata wa sore wo gaman dekinai
表題作と続編「僕もソレが欲しくなる」が収録されています。表題作より続編が1.5倍長いという珍しい構成です。どちらも須賀目線で話は進みます。
「アナタはソレを我慢出来ない」
88ページ。須賀はウブでちょっと天然なのんびり屋。高校卒業間近の夜、須賀(受け)は一堂(攻め)から告白されて受け入れます。それから1年、それなりにラブラブな二人ですが、一堂はバイトで忙しく頻繁に会えない。おまけに、一堂は男の「本能」だからと女性と部屋でセックスをしており、隠す気配もない。男同士でも受け入れられると知った須賀は、一堂に言い募りますが…という話です。
「僕もソレが欲しくなる」
140ページ。男同士のセックスを勉強したり、一堂の趣味であるオートバイの仲間に会ったり、須賀が一堂のためにあれこれしていたところ、父親が転勤でカナダへ行くことになる。一人暮らしの準備に、バイトを増やしたからと一堂と会えなくなってストレスがたまる須賀。そんな中、俺のテリトリーに入ってくるなと一堂に言われてしまい…という話です。
須賀を傷つけたくないから抱かなかったという一堂の説明が、言い訳だと一蹴できないほど、須賀を大切にしている描写がちらばっています。可愛らしい甘さの作品です。嫉妬するからバイク仲間と会うな、というのを、友人の女性と親しくして教えるのはちょっと事前の言葉足らずで子供っぽい気もしますが、須賀に対してだけだと思えば可愛らしいです。
イラストもちょっと変わっています。1枚イラストでなく、漫画の1ページのように、コマで区切られています。複数の人物の表情が1枚に描かれていて、迫力があります。赤面する須賀と、アドバイスする足立。上半身裸でにらむ一堂と、対峙する須賀。セックスする須賀の表情3パターンを経ての、引越しで荷物を運ぶ二人の一枚絵だったので、セリフのない漫画を読んでいるような気分になりました。イラストを描かれた佐々木久美子さんのファンでしたら、ぜひ読んでみて欲しいです。
友人の足立が、須賀の相談としていい味も出していました。ゆっくりウブな大学生カップルがお好きな方に、オススメです。
高校の卒業式前夜、須賀は憧れていた友人の一堂に呼び出されて、突然の告白を受ける。
戸惑いながらも、「もっとゆっくり考えさせてくれるなら……」と一堂の特別になれることを喜んで彼を受け入れた。
それから、数ヶ月。
ゆっくり須賀のペースで勧められた恋愛で、二人でキスをして、慰めあうところまでは進んだけれど、「男同士だから身体を繋げることのできない」という一堂の言葉を素直に信じた須賀は、一堂が女の子を抱くのを黙認していた。
ところが、ある日友人に見せられたビデオから、男同士でも身体を繋げられることを知って……という感じでした。
当初、読み始めた時は、須賀に好き、と言いながら女の子を抱く一堂を「酷い男」って思ったんですけど、読み進めていくうちに、そうじゃないんだなー……っていうことは、理解できました。
須賀が大事すぎて手、出せないんだ。
でも、須賀だって年頃の男の子だから、「できる」と知れば積極的に動くし、独占欲だって持ってるんだもんね。
むしろ、根が真面目な分だけ、須賀の方が思い込んだら一直線かもしれません。
作者さんが後書きで書いてましたけど、人に「こういうことしたら喜ぶ」って言われたら、それを何のためらいもなく実行しそうだし、暴走したら一堂が望まないことまでやりだしそうですよね。
しかも「ちゃんと言葉にしてくれなきゃわからない」っていうだけの強さも持ち合わせてるから、最終的には一堂の方が尻にしかれてそうですよね……。
真面目で真っ直ぐで素直な人間ほど、思い込んだら一途だと思うので、そういう意味では扱いが大変……。
あっ、ちょっと話がずれましたが。
そんな素直な須賀を一堂が大事にしすぎて、でも大事にされながらも須賀がゆっくり成長して、二人の恋を育てていく話、でした。
ゆっくりゆったりなので、激しいアップダウンを望む人には物足りないところもあるかと思いますが、こういうゆっくり進む恋愛も、いいものだ、と思いました。