明日が世界の終わりでも

明日が世界の終わりでも
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神10
  • 萌×25
  • 萌2
  • 中立0
  • しゅみじゃない2

--

レビュー数
8
得点
76
評価数
19
平均
4.1 / 5
神率
52.6%
著者
榎田尤利 

作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます

イラスト
茶屋町勝呂 
媒体
小説
出版社
笠倉出版社
レーベル
クロスノベルス
発売日
価格
¥857(税抜)  
ISBN
9784773002614

あらすじ

他の男に抱かれえる恋人を「見る」こと―それが、玲治が望に求めたセックスのやり方だった。
毎回違う男に組みしかれて乱れる望を、ただ見つめるだけの玲治。
自分では指一本触れない残酷な愛し方に傷つく望だったが、身体中に絡みつく熱を孕んだ玲治の視線は、どんな愛撫よりも望を蕩けさせた。
快楽と哀しみに翻弄されながらも、望は玲治を愛することを止められない…。
人生を変える運命の恋を描いた表題作他、二編を収録。

表題作明日が世界の終わりでも

26歳、プログラマー
19歳、学生

その他の収録作品

  • 約束
  • 集い
  • あとがき

レビュー投稿数8

もし明日世界が終わったら

抱いてくれないどころか、触るのさえも許してくれない彼氏のお話。
救いようのないわけではないのですが、最初から最後まで甘くて幸せなシーンが一度もない(甘ラブな描写がない)作品て珍しいと思います。
なので、明るいお話が好きな方には向かないかもしれません。

玲は望を好きで、望も玲を世界一好きなのに、どうしてもこうならないといけなかったのかな、とせつないお話です。
望が何故抱いてもらえないのか、触るのもダメなのか、時間をかけて聞いていたらもっと違う結末になっていたと思うのに、何故ずっと玲の言うとおりにしていたのかなあ、とも思います。

玲が望を他人に抱かせる事を望が拒まずここまできたのが不思議でした。
自分では抱かないのに浮気はダメ、て、玲のほうが上の立場にいるようでちょっと恋人として変な感じがしました。

暗い結末のお話はあまり好みではないんですが、これはこうなってしまったのは仕方ないのだからとこの先を考えている前向きさがよかったかもしれません。

玲は望のために命をかけ、望は玲のために残りの時間をすべてかけます。
世界が終わるその時まで、その日まで全てを君に費やす覚悟があるというある意味で究極の前向きかもしれません。

ここで終わりならそこまで好きだと思えなかったかもしれませんが、この表題作には続きがラストにあります。
結末は是非本で読んで欲しいなあと思います。

「約束」 「集い」
表題作「明日が世界の終わりでも」の他に入っている2編、これがとてもよかったので神評価にしました。
地味な話ですが狂気をはらんでいます。遊びなれた城下と初めての恋愛をする悠一のお話。
出会いから付き合って、その後二人がどうなったか…
最後はハッピーエンドなのですが、甘くて幸せなだけがBLの楽しさじゃないなあと思える作品でした。

この作品には会いたい人に会いにいけない、そんな臆病な人達が出てきます。
世界の終わりとは、地球が滅亡するという意味ではありません。
もし会いたいのに会いにいけないでいた好きな人が明日死んでしまったら。自分が死んでしまったら。
明日も同じ日がくるとは限らない。
明日もし世界が終わったら、とはそんな臆病な人達に一歩を踏み出させる合言葉として使われています。
途中苦しくて紆余曲折ありますが、幸せな終わりを迎えます。
命懸けの恋愛をしているカップル達のお話を、是非是非読んで欲しいと思います。

3

大好きです。

愛する者に触れてもらえないなんて、他人にだかれるなんてあんまりだ!
たとえ、幼児期の虐待が原因だとしても、代償として視力を失ったとしても・・・・・

と悲壮観を感じていましたが、長い間辛抱強く玲を待つ望の姿や、大人になった望の姿を感触でしか確かめられない玲の心情を思うと、胸が締め付けられるようです。結果的に、涙を流しながら起きる事がなくなった望が作中にいて良かった~
もう1cpの話も大好き。確かにメインよりも地味な話ですが、グッとくるものがあります。思わず泣いちゃいました。
茶屋町さんのイラストも素晴らしい。余談ですが、新装版(未読ですが)より絵は好きです

3

愛の形

かつて茶屋町勝呂さんの挿絵に惹かれて手にとった、榎田本。
榎田先生は、BL界きっての安定した暖かい世界観のエンターテイメントを送り出す大作家さんだが
このところ続いている新装版の流れのお次は、この「明日は世界の終わりでも」とのこと。
この古い作品に再度脚光が当たるのは歓迎なのだが、新装版になるにあたり挿絵が変わる模様。
藤たまきさんも好きな作家さんではあるのだが、この作品には茶屋町さん!と思っていたので
それを惜しみ、旧版も手に取って欲しいとレビューを書くことにしました。

出会い、愛し合いけれどそれは痛みを伴い、それに耐えきれず別れ、事件が起こる。
不可思議から凄絶へ、でも最後にそれを越えて光が見える…そんな物語です。

              :

大学生の望の恋人は、図書館で会った美しいプログラマーの玲。
二人は確かに愛し合っているのに、彼は望を抱こうとしない、
「望が誰より大切なんだ。だから僕には絶対触れちゃいけない」と。
そしてやがて、彼は望を自分の親友である坂下に抱かせるようになる。
それを見て「視線でセックスをする」…と言う玲。
玲の真意に不安を抱きながらも、玲を愛している故にそれを受け入れる望だったが、
やがてそれに耐えきれなくなり…

玲の過去、そして玲の起こした事件、劇的な展開とで物語は終わっていく。
「たとえ明日が世界の終わりでも 僕はきみを待ち続けている」と、希望を残して。

後半はスピンオフ、『約束』。
事件から6年後、玲の親友だった美容師の坂下と中学教師・森野の話。
客として出会った真面目な森野と付き合うとうになった坂下だが、
自分の方が彼に魅せられたことを認めたくないが為に浮気をしてしまう…

最後の『集い』は森野視点。
坂下と別れて半年、定期的に送られてくる坂下の手紙に返事こそしないが、
彼を忘れられずにいる森野は、点字教室で玲とお互い縁があることを知らずに出会い
互いに怖くて待っている人に向けて一歩が踏み出せないことを話し…

そして、最後はまるで映画のラストシーンのようなエンディングに繋がります。

2

大切な約束

この表題作の終わりに
「玲、たとえ明日が世界の終わりでも、僕はきみを待ち続けている」
という文でおわっております。
このあとに書き下ろしで【約束】【集い】という主人公を表題の友人に変えた作品が載っているのですが、ここでこの冒頭の文が回収されていました。
「もし相手の命が明日までだとしても、世界は続く。その続いている世界に相手がいないだけ。
もし、相手が死んでしまったら彼がいない世界で自分は後悔しないと言えるのだろうか?」
とても深く重たい物語でした。
そういう形でしか愛を示すことのできない主人公が、一つの「約束」をもって、もう一度絆を紡ぎ出すという、それはしっかりと強く。

望の恋人の御厨玲治は決して自分で望を抱かない。
自分が選んだ相手に望を抱かせてそれを見ているだけ。
恋人の望むことならと、その視線に欲情してはいる望だが、それはだんだんと不満を呼び、触れてくれない恋人への反逆行為に出ることで傷ついた自分の復讐を御厨が犯罪者となり、そして自らの目を失うことでそれに決着をつけてしまう。
彼のそうなるに至る過去を彼の友人である城山から聞いた望は彼を待ち続ける約束をするのでした。

そして城下の話・・・
彼は不特定多数とその場限りの付き合いしかしてきませんでした。
そんな彼が真剣にのめり込んだのは、中学教師の悠一でした。
悠一も城下が好きで、毎晩夜どんなに遅くなっても電話をかけてきてほしいとお願いをして、それが二人の約束事となるのですが、
自分が彼にのめり込んでいることを素直に認めたくない意地っ張りから、浮気した夜彼との約束を破ってしまうのでした。
謝る城下に晴天の霹靂のように別れをきりだされる城下。

こうして好きな人とわかれざるを得なくなってしまったふた組みが、【約束】をキーワードに再会する話は、淡々とした中に真摯に人を好きでいる気持ちが伝わってきます。
望など7年も御厨をまつのですから!

表題の作品がかなり辛い表現がある為に、痛くて読んでいられない人もいるかもしれません。
しかし、全体を通せば人を傷つけながらもそれぞれが実に人間くさく、綺麗事だけでは生きていないんだよ、と本質を魅せられたような感覚もあり、実に実に胸に染み入る話となっているのでした。
茶屋町さんのイラストも前期のもので、とても印象的で素敵です。



2

こんな愛が、人生にあるなら

ヘビーなお話です。
勿論、それぞれのお好みがあるでしょうけれど、
これはある程度の覚悟が無いと読めない作品かもしれませんし、
受け入れられない方もいらっしゃると思います。
理解出来ない!って。

けれど、これまで色んな経験をし、幸せな事よりツライ方が多かった方にならば
わかるかも知れません。
例え、この登場人物達のような経験じゃないとしても。

榎田さんは、“痛い作品”だけでは決して終わらせない。
人としての愛が、ひたすら文から注がれてきます。
だから、読者の心を掴んで離さないんだと思います。
もちろん私も掴まれている一人ですが。

希望も未来も見えないような日も、
きっと救われる時が来ると信じられる。

自分が弱っている時に読むにはしんどいかもしれませんが
だからこそ読後前向きになれるような気がします。









1

好き過ぎてヤバイ

表題作、受けの「望」視点で語られていながらも、話が進むにつれて、攻め「御厨(みくりや)」の静かでもってマグマの様な恋情に、心が揺さぶられてどうしようもなかったです。
この2人の愛の形が歪(いびつ)だと、お互いが分っていて苦しんでいて。
愛されているのは分っていても我慢を強いられた愛だから、若い望の渇望が破裂してしまった結果が、痛すぎて悲し過ぎました。
ため息を吸い込んだ位に深く沈みました。
だけど、表題作のタイトルが、その心を掬ってくれるのです。
愛し合う2人の心と体の距離が出来てからの望の恋心が、その希望を語ってくれて、本当に嬉しかった。
「明日が世界の終りでも」の次には簡単には言えない愛の言葉が続くのです。
これ、本当に大好きです。

次2編が、表題作の希望をより繋いでくれています。
榎田先生は本当に優しい。
城下(御厨の親友)と悠一(城下の顧客)の恋を、御厨と望を少しずつ絡ませて、表題作の尖った狂気とは違う優しいテイストで進ませています。
絶妙な辻褄合わせが心地良くなって、この2編が、表題作であんなに沸き立っていた灰色の心を、ドゥドゥと落ち着かせてくれているようでした。
4人の生い立ちや戸惑いや決意が説明される度、1人1人の気持ちを大切に抱いている自分がいて優しい心にさせて貰えるのです。

自分の強欲と相手への思い遣りのバランスが不安な時、この赤い表紙を思い浮かべたら良いと思う。
この1冊全てが「神」でした。

3

切なくて温かい

表題作は玲[攻]と望[受]との切ない話、「約束」はその6年後で玲の友人の城上[攻]と悠一[受]との話、最後の「集い」はその4人が出会うエピソードで締めくくられています。

心にずしんと来るのは表題作。
玲と望は恋人同士なのですが、玲自身は決して望を抱かずに城上を始め他の男に抱かせそれを見ているだけ。
SMプレイのそれではなく玲は過去のトラウマからそうやってしか愛せない人間。
望は次第にそれに耐えきれなくなって行き、そして悲しい事件が起きます。
刑務所に入る玲に望は待っている、いつまでも待っていると伝えるんですがそれも他人を通じて伝えるのが切ない。

しかしこの話はそれだけでは終りません。
その後の2話は遊び慣れた城上とノンケで初心な悠一との恋を書きながらも同時に6年たってもずっと待っている望の姿も登場し、「集い」では出所した玲がまず悠一と出会います。
玲と望との再会シーンはあえて書かれてはいないのですがそこがまた良い。
6年の間での望の成長っぷりは城上との会話で読み取れるのですが、その望と玲がこれからどう共に歩んで行くのか。
最後のページを読み終えて、目を閉じてふうと静かに息を吐き出したくなる作品でした。

白と黒とが印象的な茶屋町さんの挿絵も見事。
挿絵はこうあって欲しいなーと思う挿絵作家さんの1人です。

1

崩壊のあとに残る希望

自分の恋人が他の男に抱かれるのを「見る」こと。
それが玲治が望に求めたセックスだった。
行為の最中、狂おしい視線を感じるものの、自分には指一本触れてこない恋人に次第に不安感を募らせて行く望だったが、玲治の性癖には深い傷の記憶に関わっていて……

訳あって自分の恋人を抱けない代わりに恋人に他の男との行為を求める男と、そんな彼を愛してしまった青年。
表題作のおそろしく重くて痛い展開とラストに、もうどうしたものかと思ったけれど、番外編的な続編に救われた気がします。
玲治の友人の美容師と、まじめだけどださい教師の話。
先生が悪い男に振り回されるだけの話かと思いきや、それだけでは終わらず心の傷にどんどん踏み込んでいきます。こちらもまたハッピーとは言い切れないところで終わるのですが、ちゃんと最後に希望は用意されている優しさ。
このあたりが榎田さんだなあと思う。

崩壊の後に残る希望。
そんなものを感じる一冊でした。

2

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