僕に全てを与え、捧げてくれた人。

遥か遠き家

haruka tooki ie

遥か遠き家
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神267
  • 萌×237
  • 萌23
  • 中立12
  • しゅみじゃない13

--

レビュー数
67
得点
1564
評価数
352
平均
4.5 / 5
神率
75.9%
著者
八田てき 

作家さんの新作発表
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媒体
漫画(コミック)
出版社
プランタン出版
レーベル
Cannaコミックス
発売日
電子発売日
価格
¥750(税抜)  
ISBN
9784829686485

あらすじ

90年代、アメリカ。
過保護すぎる親の箱庭で、死んだように生きていた少年・アラン。
旅人・ヘイデンと出会い、強烈に惹かれ合うも、
彼には一か所にとどまれない放浪癖があると知る。

共にいるためには、家出するしかない。
それはヘイデンが、誘拐犯になるということ。
それでも彼は、何もかも投げ捨て、アランを地獄から連れ出してくれる――。

その轍は、逃走経路。
しかし彼らにとっては――「二人だけの家」への、帰り道。

表題作遥か遠き家

ヘイデン・スチュワート,放浪癖の青年
アラン・サヴェリオ,狂信的カトリックの親を持つ少年

その他の収録作品

  • E.P 4.5(描き下ろし)

レビュー投稿数67

逃亡と解放

1990年代アメリカが舞台の作品です。

「赦し」ってなんだろうな…と思いました。
例え他者に赦しの言葉を与えられても、
自分自身が納得できない限りは罪意識はついて回る。
本当の意味での赦しを得て解放を求める彼等の旅路。
安住の地へ向かってーーーー。

ずっとずっと心の奥底に抱え込んだ罪意識が彼等を引き合わせたのか。

好みが分かれる作品だと思います。
人によっては何の解決にもなってないと感じるかも。
賛否両論ありそうなメリバ作品ですが、
個人的には読後はポツリと「良かった」と零れました。
うん。良かった。私はハッピーエンドだと思ってます。

『世界中 敵に回して、愛した』
『僕に全てを与え、捧げてくれた人』(帯より)
寄り添い合って安住の地に向かって走る姿に感情が揺さぶられるお話でした。


さてさて。

攻め:ヘイデンは放浪癖のある青年。
次第に壊れていく家庭環境で育ち、どこか達観しているような節も…。
実年齢はたぶん若いと思うんですが壮絶な人生経験をしている子です。

受け:アランは狂信的カトリックの親を持つ少年。
持病があって薬は必須、親から世界を遮断されて雁字搦めな生活を送る少年です。

2人はそれぞれに人には言えない罪を持っていました。
ひょんな事で知り合った彼等はシンパシーを感じたのかすぐに打ち解けて、
まるでピッタリ凹凸が合うような心地よさを覚えて仲良くなるんですね。

けれど、ヘイデンは一カ所には留まれない。

いつかヘイデンが旅立つことを知りながらアランは何でも話し、心を開いていきます。
そうすれば優しいヘイデンはまだココにいれくれるかもしれないと願いながら…。

そんなアランをヘイデンは旅路へと誘います。

当てのない旅路の中で、いつまでも付きまとう罪。
赦し、赦されることとは。
彼等にとっての幸せとは。
救いの神とはーーーーー。


私は1990年代アメリカの時代背景やカトリックの知識がなくて、
知識があればもっと深い解釈が出来るんだろうな~ともどかしいんですが…;

他人からみたら「逃亡」
彼等からしたら「帰り道」
あらすじにかかれたこの解釈がすごく刺さりました。

彼等は帰る場所(=幸せの場所)を求めているだけなんですよね…。
元来帰るべき家は奇しくも幸せを感じられるような場所ではなかった。
彼等に罪を背負わせたのは周囲の大人で、救いの手がなかった、というのもシンドイ。

なんていうか…、
ヘイデンもアランも厳密には罪は犯していないんですよ。
(ヘイデンはグレーかもだけど親の責任だと思う!)
子供に罪意識を植え付けたのは大人達なんですね…。

境遇は違えど同じ孤独を抱えて居たヘイデンとアラン。
自然に惹かれ合うようになるのは必然と感じました。
これがもう!切ないけど尊みもあってグッとくる(;///;)

しかしですね。
少しずつ罪意識を克服し、赦しを得た。と感じた矢先に本当の罪を背負ってしまう。

これもまた彼等にとても辛い影を落とします。
(作者さんインタビューを読んでマリアの立ち位置と業の深さがなんとも言えぬ…)
(『赦しと罪を同時に与える役割』ってえらいもん背負わせたな!って感じ;;)

助けてはくれない神の存在を手放しつつあったアランが、
ここから少しずつ神に赦しを乞うようになっていくのが重い。

もどかしく見守るヘイデンの心情たるや…(;ω;)
アランを救いたかったのに逆戻りしていくんですよ。
なんで?ってなるのツラ…。

ヘイデンのこと考えると感情が言葉に出来ないんですが、
ヘイデンの愛は親が子に与える慈しむような無償の愛も感じるんですよね。
与えて、見守って、アラン自身を呼び起こすような。
ヘイデンの年齢に合わない大人びた様・献身的な部分が刺さりました(;///;)

そんな風にヘイデンに愛されたアラン。
ヘイデンによって愛し愛されることを知り、
犯した罪もヘイデンが全て丸ごと受け容れてくれて。
神に求めていたことをヘイデンが全て叶えてくれるんですね。

対するヘイデンは母親を守れなかった自責の念があって。
アランを守って、愛し返してもらえて、心の解放に至った気がします。

なんかもう…こう書いちゃうと言葉が軽いんですが
2人の愛し合い方が尊いとしか言えない……(;///;)

本当の罪を犯した彼等は追われる身となるんですが、
「彼らは生きるのに必死だっただけだ」
「この事態を引き起こしたのは周囲の大人だ」
そんな言葉を発してくれる大人が1人だけ居たことが私にとって救いでした。

ホントね、それに尽きると思うんですよ。
そういう意味では悲劇だったと思えてしまうんですが、
でも彼等は彼等なりの幸せを見つけて心の底から幸せを実感してたと思う。

頼れる大人がいたら、
正しく保護してくれる大人がいたら、
神が本当に存在する世界だったなら、
彼等の生き方は絶対に違っていたはず。

もどかしさが募るけれど非情な現実の中で愛し合う彼等の姿が深く刺さる作品でした。
賛否両論あるかもですが、私にとっては神作品です。

33

過去イチの神作品

腐女子になって十年以上、数えきれないBL漫画を拝読してまいりました。
過去イチの神作品に出会いました。
拝読して二日経った今も、この世界観から抜け出せず、ずっと二人のことを考えています。
この感情をどう消化したら良いのか、誰か教えてほしい。

絵の描き込みが非常に細かく、吸い込まれそうな瞳や髪が印象的です。
何より特質すべきは言葉選びの美しさ。
帯にもありますが、

「僕に全てを与え、捧げてくれた人。僕をくれた人。」
「君に触れられるところが、僕の形を取り戻していく」
「この海だけが、俺たちの世界のすべてだ」

人生何周目になったら、こんな言葉が浮かんでくるんでしょう。
文字量、メッセージ性多めで小説のようでもありました。

テーマが重く難しく、好みが分かれる作品ではあると思いますが、
だからこそ忘れられない、唯一無二の作品でした。
読み返すのに体力がいるけれど、きっと何度も読み返してしまう神作品です。

26

残酷な世界

この2人にはこの結末しかありえなかったのだと思う。
他の作品も読みたくなり検索したが出なかった。
こちらの作品がデビュー作なら逸材としか言い様がない。
最後まで読めば、タイトルの意味が染みる。
表紙から絵が綺麗なことは分かっていたけれど、中を見たら更に綺麗。
青年たちを取り巻く世界の残酷さに辛くなる。
神様とはなんなのか。
どうか、いつか、彼らは手放しで祝福されて欲しいと願ってしまう。出会えてよかった。

18

二人は家に帰れたかな。

太古腐女子的には、何というか、懐かしいような、故郷に帰ったような気持ちになる作品でした。

二人とも、最初に逃げた瞬間からもう帰れる場所はなくて、でもそもそも今いる場所が、帰れる場所だったのかと問われれば甚だ疑問で。
二人は二人のための「帰れる場所」を探して、探した結果があそこだったのだと思います。
幸せを求めるには、二人とも自分のことを許せていなくて、だから出来ることは逃げ出すことだけで。

救いは、お互いが出会えたこと。孤独な二人がやっと寄り添える相手を見つけられた。そこでまた、許されない自分に苦しんだとしても、それ以上の幸せがそこにはあったと思うので。

黄昏作品はいいな、と久しぶりに思わせていただいた名作です。

18

美しくも哀しい話

今まで読んできたBL漫画の中で1番好きです。


まず作画がとても綺麗で世界観に惹き込まれます。最後の数ページでは多くを言葉で語らずとも2人の関係や世界、重ねてきた時間が美しく描かれていて涙なしでは読めませんでした。


文章が多めで出てくる人物たちの苦しみや葛藤の描写がとにかく丁寧で繊細で心が苦しくなりました。


「神への信仰」「罪と赦し」「家庭環境」「同性愛」などたくさんのテーマがあるのに物語がシンプルで分かりやすくてでもすごく深くて。
お互いの足りないところを埋め合うように2人が愛し合う姿が素敵でした。


世界の見え方が違う2人だからこそ優しく歩み寄っていく暖かさがあって、最後まで真っ直ぐ世界と葛藤する2人が愛しかったです。


どうしようもなく哀しくて切ない気分になりたい方におすすめです。

16

儚く美しい

電子版の立ち読みを拝見してからというものレビューを見ては購入に踏ん切りがつかず悩んで悩んで悩んでやっと読む決意をしました…

結論からいうと、とにかくハッピーエンドが大好きな私でも目を離すことなく逃げることなく読める作品だったこと。
まず美しい絵や風景に心を奪われました。どこを切り取っても丁寧で理解しやすい話の流れ、そして最後まで精一杯生き抜く青年たちの姿、2度と忘れることはないと思います。いや、忘れません。
よかった…大変素晴らしいお話でした。
その言葉しか出て来ないのがくやしいです。

神という評価では表せないないくらいの作品かと。
BLだけにはとどまらないで欲しい、でも(ごめんなさい)BL枠を希望します!
購入を悩んでいらっしゃる方がいましたらどうか読んでみてください、決して心が穏やかになるような笑顔いっぱいのハッピーエンドを迎えることはないと思いますが、また異なった意味でのハッピーエンドといえるのかな、そんなマンガに出会えたことに只々感謝です。

14

映画を観たような読後感

映画を観ているようでした。絵も凄くていねいで。アランは幼い頃に牧師から酷い仕打ちを受け、狂信的な両親の元、難病もかかえて自分をどんどん追い込んでいく。ヘイデンもDVの父を母が毒殺し、母も壊れていき、止められなかった自分の罪に苛まれる。でも2人とも子どもで、何ができるというのだろう。どうにもできない。大人の所為なのに、ずっと心に咎を持って生きてる。でもそんな自分を許せずにいながらも、真面目で純粋に生きようともがいていたと思う。報われない心を持つ2人が出会えたのがせめてもの救いか。読んでて凄く苦しくなるけど2人で旅していた日々が幸せそうだけど、切ない。読み終わって、初めに出てきた「雲間から海にふりかかる光と陰のカーテン」がとっても心に残りました。

13

紙の本で買いました

ちるちるの作家インタビューで紹介されていた本。
ピクシブで試し読みして、これは紙で買おうって、勢い込んで発売すぐに買ったくせに埋めちゃっていたのをようやく発掘。
絵も内容も、紙の本でページを行きつ戻りつしながらじっくり読み込みたい作品でした。
この絵で初コミックスの新人さんだなんて末恐ろしい。
ストーリーも結構重めで、アメリカの映画にあるような、宗教観と向き合ったったお話を、日本のBLとしてわかりやすく落とし込んでいて、
もう、古の腐女子の琴線を鷲掴みにして殴ってくるような、大絶賛の神です。

13

雀影

セルフツッコミ
私がこんなに感激しちゃうと、エロこそBLなお若い方々はドン引きしちゃうだろうな。

君の隣、君の瞳の中に帰れる幸せ

 非常に読み応えのある、どこをとっても良質な作品でした。映画のようなBLが読みたい、同性愛が前面に出てないBLを読みたいという方にもオススメです。ドラマチックで一歩間違えれば要素を詰め込み過ぎ、とも評されそうな展開ではあるのですが、押し付けがましくない温度感、自然な表情、台詞などですっと心に入ってきました。

 メインキャラの過去や家庭環境に問題がある作品は山ほどあるわけですが。この作品の面白さの1つはヘイデンとアランの生い立ちが真逆な所だと思います。ヘイデンは分かりやすく恵まれなかった子供。定まらない父親、暴力や酒や薬に塗れた家と母親。今となっては孤児。一方で、アランは両親とも健在でありながら、幼い頃から敬虔なクリスチャンとして深い信仰を強要され、神を通してしか自分を見てもらえずに育った。過保護は愛ではなく抑圧と支配の結果。ヘイデンが母を愛していたのとは対照的に、アランは両親を愛したことがあったのか、最後まではっきりとは描かれないのが印象的でした。

 赦し、救い、罪、罰という言葉が何度も出てきますが、本質はそこではないと思っています。結局自分の気の持ちようなのだということを、2人はそれこそ己の人生から嫌というほど学んできたはず。わずか4歳の時に神に裏切られたアラン、子供でありながら母の共犯者になったヘイデン。人生はあまりにも酷。分かっていても、何かに縋りたい、赦されたいと願うのは人間として当然の感情ですから、そういう言葉を使うのは一種の儀式というか、並の人間らしく振る舞うために必要な心の一時的な治療みたいなものなんだと思います。

 ただ、何の心配もなく心から安堵して帰れる場所が欲しかった2人。本質はそれだけだったんじゃないでしょうか。互いにそれを得られた今回の旅はけっして過ちではなかったし、ハッピーエンドと言うのに不足はないのでは。最後まで大人の手を借りずに救われることができた2人。もちろんすべてが褒められる行為ではなかったけれど、まだ大人になりきれていない子供たった2人だけで、絶望や柵だらけだった人生から抜け出すことをやりきったのだから、これ以上の救い、結末はないと感じました。この旅はこれからも私の心に残り続けるだろうと思います。

12

映画を観てるようでした

重い!苦しい!
そんな感想が出てくる作品でしたが凄く良かったです。

日本は無宗教で、信仰の自由もあります。
しかしながら国によれば一つの宗教を信心してる所もあります。

この作品はキリスト教に信心してる家族の息子、アラン
家庭環境が劣悪でDV父親死去後、男に狂った母を持つ、ヘイデン

この育った環境の真逆な2人の逃亡劇のお話です。

一件、アランは幸せな家庭に見えるが、この作品は全く違う……
両親が熱心なキリスト教信者でアランも勿論、幼い頃は両親と神が言ってる事は正しいと疑わなかった。
ただ、ある出来事が起こるまでは………

ある出来事を境にアランはそれでも神の前に跪き、祈りを捧げる。

安住の地を持たず、ただ一枚の写真の場所が目的地だと言うヘイデンと出逢い、この街からいずれ消えるヘイデンにならと、自分が蓋をしてきた出来事を話始める。

アランの出来事を知り、ヘイデンが投げ掛けた言葉で2人はアランの育った街を去る事になる。写真の目的地を目指しながら2人の関係も無くてはならない依存関係に変わっていく。

各土地で楽しい事も沢山あった。
その反対に金を稼ぐ為にした事もあった。

展開にスピードがあり、幸せのままで過ぎていって欲しいのに、そうはならない展開に胸が詰まる。

訪れた土地で耳にした神父の名前。
アランは今までの自分を終わりにする為、またヘイデンに向き合う為にすくむ足を運んで再会した神父。(幼い頃に信心出来なくなった元凶)
許しを乞う神父を一瞥しながら神父に頼み、家に電話をかけたアラン。捜索願いを出していた両親と、殺人容疑でアランとヘイデンを追っていた警察がいる家の電話が鳴り出た父親のアランに投げた言葉。

もう悔しさしか無い言葉でした。
でも、信心深い人なら理解できるのか?
深いというか……でも親が投げ掛ける言葉としてはとても聞きたくない言葉でした。

でも、これでアランは全てを失った。
事の顛末を銃声で駆けつけて見たヘイデン。
魂の抜けたようなアランに言葉を放つヘイデン。

ここで終わって欲しかったなぁー(。>д<)
あの後にあんな結末になるとは……いや!想像は出来たが!凄く良かった終わりだったが!見たくなかったな(悲)

でも、二人は本当の幸せを見つけたのかもしれない。そう切に願ってます。

11

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