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shizuku sitatarite
短編二本立て仕様で、一人の男を巡る現在と過去を、その相手視点で語る物語。面白い構成で、収録順に読み終わった後に再度最初の話を読み直したくなった。理彦のキャラも萌えツボにハマる感じでとても好き。
「しずく」は複雑な関係になりながらもラブラブな日々を送る春司と理彦のお話。お互いに医師としての転機を迎えても、繋がりに揺らぎはない様子。
これだけ読むとただの日常の切り取りでしかないが、後半を読むとアンサーになっているのが分かる。
「したたり」は「しずく」より過去のお話。理彦はまだ結婚しており、その妻に浮気調査を依頼された探偵視点で進む。こちらが本当に面白かった。
伶生がいくら張り付いても理彦は仕事オンリー。そんな理彦のふいの笑顔に惹かれてしまう伶生。そして離婚成立後に出会う二人のシチュエーションがすごく良くて、めちゃめちゃ萌えた。
伶生視点で散々堅物さを語られていた理彦が、ひょうひょうとした掴みどころのなさを見せ、妖しく誘う。はぐらかし方に大人の余裕が見えるとこも好き。
伶生がたぶん春司だろうと匂わせる相手と浮気するのは書き手の遊び心なのかな?ここでは伶生のタチシーンも描かれていた。
伶生と理彦はお互いの将来を見据えて別れるが、最後の伶生のつぶやきの答えが「しずく」にある。
そこに至るまでの過程は分からないし、理彦の本心はずっと見え辛い。それでも読み終わるとすっきりしているのは、先に回答ともいえるお話を読んでおり、伶生の疑問に答えられるから。読者は心配する伶生に「大丈夫だよ」と言ってあげられる材料をすでに持っている。この構成がすごく良かった。
見ようによっては(伶生視点では)アンハッピーエンドで終わるともいえるし、ハピエンカプ(春司と理彦)のBLが描写不足に感じるかもしれない。だが伶生に重きを置いて全体を見ると、それぞれの人生がキラキラしているように思える。
現実味と生活感のある空気が好きだった。登場人物たちはこの世界のどこかで生活していそうで、理彦にはBL的な魅力もしっかりある。とにかく良かった!