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英田サキの初期傑作読みきり、新たに書き下ろしを加えて待望の文庫化!!
subete wa konoyoru ni
英田さんはたま~に当たりはずれがあるので(いや、失礼)買おうかなあ、どうしようかなあと悩んでいましたが、笠井さんの表紙につられてしまいました。めっちゃカッコいい…!
読み始めてすぐに、「ハズレかも…」と思いました。受けの加持が情けなさすぎる。
自分では解決できないほどの多額の借金を抱えているのに自己破産せず。
喫茶店の開店資金を横領されても警察に訴えることもできず。
その理由が「世間体を気にして」というのだからアホなのかな?と。
さらにお金のために人を傷つけに赴くのに逆襲されて、あげく自分に銃を向けられて怖くて失禁て…。
いわゆる「カッコいい男」が出てくるのが定番のBLにおいて、加持という男は異質なんじゃなかろうか。
と思いつつ読み始めたのですが。
攻めの湊はカッコよかったですねえ。
不器用で、自分の気持ちにすら気づけない。言葉を巧みに操ることもできない。
けれど、それが過酷な幼少期を過ごしてきたからなのだと明らかになるにつれ、そして加持を愛しすぎたゆえの行動だったのだとわかるにつれ、なんだか切なくなりました。
湊と加持。
お互い言葉が足らず、すれ違ってばかりだった彼らが、再会しそして恋心を育てていく。その過程がとてもツボでした。
湊×加持のお話は前半。
後半は湊の腹心の部下である武井のお話。
湊×加持のお話の時にもナイスガイとして出てくる武井が気になって気になって仕方なかったので、彼の話が後半で出てきてちょっとテンションが上がりました。
武井と加持との会話に時々出てきた武井の恋人・亮一。
ヤクザの武井と、学校の教員をしていたという亮一がどうやって知り合ったのか。
武井が組を抜けようと思うほどの亮一との関係は。
そして、彼を失った理由は。
もう、泣けて泣けて仕方なかった。
二人が共に生活したのはたった4年。けれどその4年がとても幸せだったのだと。
武井の切ない子ども時代の話や、彼のお姉さんの話も絡み、切ないけれど、幸せだったのだろうと。
正直、湊×加持の話だけだったら☆3つか4つだったと思うのだけれど、武井の話があったからこそ評価が神評価になりました。
前半はシリアスな雰囲気ですが、徐々に甘くなり、終盤は甘々です。
裏社会が舞台なので血なまぐさい話になるときもありますが、基本加持は湊にがっつり守られているのでそれほど痛い表現もありません。苦手な方でも大丈夫かな、と。
序盤、ちょっと情けなかった加持も、湊の愛情に包まれナイスガイに成長していたのもよかったです。
笠井さんの挿絵は今回も神でした。
表紙もいい!エロさはないのに、湊と加持の表情とかがなんとも色っぽかった。
表紙を捲ると扉絵が。
縁側で花火をする武井×亮一、そして長い年月をかけてやっと想いが通じたときの湊×加持の、それぞれのイラストがカラーで(ここポイント)収録されていて、眼福でした。
あらすじに『英田ワールドの原点』と書かれていましたが、私にとってBLとの出会いの原点と言える作品です。
初めはドラマCDで感動のあまり原作が気になり新書版の本を読み、作者の他の作品も読みたくなりました。
今回文庫化に当たって書き下ろされる短編が読みたいし好きな笠井さんのイラストで読んでみたいと思いさっそく手に取りました。
ひとことで言うと読んでよかった、未読の方にも旧版既読の方にも強くお勧めしたい作品です。
加持は、従業員に金を持ち逃げされ闇金から借金をし返済に困り人を傷つることを平気で引き受けてしまいます。追い詰められたとはいえバカな男です。
湊は、次期組長候補のヤクザ。男も惚れるかっこいい男。
お互いが好きなのに不器用すぎて口にできなくて相手の気持ちが見えなくて傷つけ合って別れて8年たっての再会です。
湊は、加持に捨てられ愛されないのなら憎まれても忘れられたくないという思いが強すぎて加持に許されたくないと思っているところが最後には可愛く感じられました。
『好き』の反対は『嫌い』じゃなくて『無関心』なのだとしたら、別れて忘れられるくらいなら憎まれても自分に関心を持ってほしい記憶に残してほしいと思ったんでしょう。健気ですね。
自分を許して忘れて去って行こうとしている加持に縋って自分を憎めと言う湊が、一人ぼっちにされた子供みたいでかわいそうになってしまいました。
だんだんかっこ悪くてかわいく見えてくるのですが、こっちの湊のほうがずっといい男だと思いました。
何回読んでも武井の過去話には泣かされます。亡き姉の夫である鈴原との出逢いから関係が変わっていく短い日々の中での二人の心情が切ないです。
また、鈴原が妻との愛情を大切にしつつ武井を想う気持ちの描写が丁寧で妻を裏切るわけではないというのがよくわかりました。
そして共に暮らしてお互いを大切に時を重ねていった4年後の別れがほんとに泣けてきました。
笠井さんのイラストは想像以上に素晴らしかったです。
カバーイラストの雨の中で湊の背中に狙いを定めて佇む加持の姿は、ストーリーとは異なりますが二人を分かつことになった『あの夜』の雨と再会して銃を構えることになってしまった『この夜』が一つに融け合った形で全体のイメージを表しているようでとてもいいと思いました。
長らく絶版になっていた作品の文庫版、そしてメインとなる二作は英田先生かがプロになる前に書かれた作とのことで、原点を感じられる一冊でした。
メイン二作は、表題の「すべてはこの夜に」と「夏の花」、二組みのカップリングで四人の男たちの物語です。
「すべてはこの夜に」は再会モノになると思います。借金に追いつめられた男、加持が拳銃を手に指示されるがままに誰だかも分からない相手を襲撃しにいき、その相手が大学時代の恋人で現在ヤクザの幹部、湊だった・・・という、ハードな設定がもう英田先生らしい、うん、原点を感じますね。
それで、読んでいくと、どちらも単純な人間ではなく、不器用なところも、「エス」や「デッドロック」に通じている気がします。
最初の方は実は若干、ヤクザモノにはありがちな印象もあるんですよね。それが中盤から二人の複雑な心理描写を追っていくごとに、グッと面白くなってきます。このラストは読者の想像に委ねる形になりますが、加持をここで死なせて終わらなかったのは、これぞbl!、死エンドにしなかったからこその深みが生まれたのではないでしょうか。
湊と加持の物語は「春宵一刻」、「優しい夜の中で」と続き、渋い魅力の武井の物語、「夏の花」に紡がれます。
武井と亮一の物語、「夏の花」と「春に降る雪」は切ないけど、どこまでも優しい気持ちで読めました。
ラストの「青嵐」は、今回の書き下ろしなんですね。志郎視点、原点から現在の英田先生を感じます。ちょっとした場面が洗練されているような、綺麗なエンディングでした。
葛西先生の表紙も印象的で素晴らしく、ゴクッものの挿絵もたくさんありました。
デッドロックを読まれて、英田先生をもっと読みたい方は是非。
硬質な文章の中にアツイ男たちの息づかいと、優しい甘さが感じられますよ。
新装版ということですが、今回初読みでした。
2組のカプのお話しで、どちらも良かったです。
・893となった湊と大学時代の同級生加持のカプ
・湊を支える武井と義兄のカプ
過去のすれ違いで憎み憎まれる関係だった湊と加持は、再会してから過去の真実を知り変わっていきます。
職業柄強く生きている湊も加持に対してはすごく不器用な弱さがあって、そのギャップがよかったです。
海辺のシーンは泣けました。
武井の若かりし頃の恋愛もすごく良かったです。
優しくて不器用で武井をとりまく運命が切なかったです。
湊や加持と接するときの武井は、この経験からきているんだな~と思うと、感慨深いものがありました。
本当に〇さんものは苦手なんです。
でも英田先生に笠井先生ときたし、
去年ランキング上位に長らく鎮座しておられたような記憶があるし、
やっぱり読まないってのはないよなあ と今頃手に。
ああやっぱり申し訳ございませんでした、先生。さっさと読むべきでした。
本年は態度を改めます。神です神。
先生の紡ぎだす 骨太な男たちの想いに、いいように操られ、途中 だだ泣き。
公衆の場ではあまり読まない方がいいと思います、
最後の方の小編「春に降る雪」は。
笠井先生挿絵話。
カラー口絵は 武井×鈴原の 浴衣で線香花火をする図。
キレイ。。。。せつない。
2P目は メインカプ 素っ裸入浴の図。≠絡み図。
攻めが切ない顔で受けを見上げてて こんな顔されたら
「もうあかん 陥落」な図。
中はメインカプ2、サブカプ1 の絡み図。その他は着衣の図。
大好きな絵はメインカプ攻めが背中から受けをぎゅ して満足そうに眠る図。
可愛い・・・・
そう、攻めが、怖い&デキる〇さんなのに、
愛情に飢えてるお子ちゃまなんです。
お話の方は、英田先生の2007年出版作品(絶版本)を新装し、
CDブックレット、販促小冊子、書下ろしをたし、
話の順番を少々入れ替えた とのこと。(中編、小編合わせて6編)
旧版しらないですが、とても読みやすかったです。
攻め:法曹界目指してたプライド高いエリートさんだったのに、
人殺しちゃったために転落。〇さんの世界へ。
親が早くに死んで、愛情というものを与えられなかった過去あり。
受け:攻めさんとおんなじ大学出身。喫茶店経営が傾き、
闇金から借りたために転落、攻めさんを撃てば金もらえるということで
襲撃しようとしたが、失敗。
武井:攻めのサポート役 いぶし銀。
志郎:攻めの舎弟、ちゃらっぽい。受けさんを見守る役。
鈴倉:武井のねーちゃんの夫。
なんかが出てきます。
攻めさんがしっぽ振ることを知らない大型犬(獰猛なドーベルマン?)な
イメージ。だんだん人間化していきます、そこがほんわり嬉しい♡
最後は「ゲロ甘」な言葉を使うことが志郎にばれ、
全身から怒りのオーラを(笑)もう笑うしかない でした。
受けさんは最初びくびくネズミ といった印象でしたが、
後半はほぼ菩薩といった印象。二人で仲良く、生き延びてほしいです。
なんてったって〇さんの世界なんで、安寧 という言葉が似合わないのが
ちと悲しい。
小編では甘いお話も書いてあるんだけど、やっぱり背景に〇さんの世界観が
ただよってるので、刹那的な甘さ のように感じてしまいます。
未来の見える形でなんとか終わっていただけたことで
本当に精神的に救われて、うれしかったです。
そういえば もう少ししたら桜の咲く季節。
海の見える丘で桜の咲くところを探してみてもいいかも。
評価に迷いはありませんでした。傑作ですね。
こういう連作短編、もっと読みたいな~と思いました。
英田先生の簡潔な表現に多くの感情をこめるスタイルは読みごたえがあって、圧倒されっぱなしでした…。
湊への憎しみを抱えて生きてきた加持と、いびつな形でずっと加持を想っていた湊の不器用な愛に痺れます。若さゆえに互いを理解しようとせず、事実を見誤ったまま離別した後、10年を経て運命的に再会した2人の愛憎劇にはドキドキしました。徐々に過去の真実が明らかになって関係性が変わっていく展開に、”なんとかなってー”と祈る読者を裏切るような事件が衝撃的でした。が、そんな状況下において希望が見えるようなラストシーンの表現、文字を追いながら身悶えました。ゆえに、その後の掌編読んだときの幸福感は半端ないです。
武井と陽一は、涙腺崩壊案件です…。彼らの間にあった愛情が、その後の武井の中に確実に息づいていて、湊やそのほか彼に関わった人たちにつながっていくような流れは連作短編の醍醐味です。なんちゅー壮大な愛の物語やねん!と感動しました。憎しみからは憎しみが、愛情からは愛情が生まれるということを改めて実感できる素晴らしい作品でした。
大大大好きな作品で、読むたびに泣いてしまう。
もはや、泣くために読んでるのかも。
文句なしの神作品なのですが、神すぎてこれを基準にしちゃうと神の基準がおかしくなっちゃうので、自分の中では殿堂入りという立ち位置にしてます。
それくらい素晴らしい!
実は旧版も既読なのですが、掲載順序が入れ替わっている本作の方が読みやすい。
そして、小冊子だった『春に降る雪』、描き下ろしの『青嵐』がいい!
旧作のみ既読の方にも是非読んでもらいたい一冊です。
加持と湊の不器用な恋に胸キュンとし、武井と鈴原の切ない恋に涙。
何度読んでも泣ける。分かっているのに泣ける。思い出すだけで泣ける。もうどうしようもないですよ。
BLというカテゴリーには収まらない人間ドラマですよ。
いつも思うんですけど、武井が麻子と鈴原という大切な人を2人も失ったのは、殺人という業を犯したからなんだろうか……と。
でも、そうじゃないといいなと。
だって、人は必ず死ぬものでしょ。
宿命からは逃れられないし、病と戦うのは勝負じゃない。
大切な人のために生きたい、生きてほしいと思うのは欲じゃなくて、愛でしょ?
いつか武井に死が訪れたとしても、きっと怖くないし悲しくないよね。
だって、麻子と鈴原が必ず迎えに来てくれるから。
そう思うと、少し救われる気持ちになるんです。
加持と湊には後悔しないように、今を精一杯生きてほしい。
遠回りした分、たくさん愛して欲しい。
そして、志郎が本作唯一の明るさであり清涼。癒されました。
志郎にも愛する人、愛してくれる人が見つかりますように。
最後に武井が志郎に言った言葉も、重みと深みがありますよね。
あー、もう何回読むんだろう。でも、まだまだ読むぞ!
出会えて良かったと思わせてくれる作品の一つです。
今更ですが、素敵な作品をありがとうございます。
英田先生がプロになる前に書かれた作品とのことで、文字書き様は生まれながらにして文字書き様なのだな~という認識を新たにしました。
大学の同級生同士でかつて体の関係もあった、借金取りの893(攻め)と、その借金取りに追われる立場になった受けの話です。
攻めの湊が不器用で寡黙すぎて、昭和映画スターの「俺、不器用ですから」を地でいってるような人間です。そのくせ隠れ一途なんですね。そんな口下手な湊の真意に気づかずに受けの加持が勘違いしてしまう、というのは王道ストーリーですが、加持の気持ちの移り変わりが繊細な文章で綴られていて、特にマンネリ化することなく、最後まで一気読みできました。
そしてそして。湊の付き人、武井のスピンオフがまたもう……!!本編でじんわりさせて、スピンオフで号泣させるという、英田先生、流石です!先に湊×加持の不器用な愛を読んだからこそ、武井さんのお話も生きてくるし、武井さんを読んでまた本編に戻ったら、湊と加持に、ホント幸せになれてよかったね!と改めて思いました。
葛西先生の挿絵と併せて、神作品は間違いないです!
大きく分けて2カップルのお話です。
笠井あゆみ先生の描かれる2カップルがまた最高に素敵でした。
湊×加持
武井×亮一
表題作「すべてはこの夜に」と「夏の花」はプロになる前に書かれた同人誌作品だったそうです。
小説JUNEが初出とのことなので、題材に少し当時の古さが感じられるのは否めないのですが、そんなのは読み進めていくうちに気にならなくなり、どんどんお話の世界と彼らの人生に惹き込まれていきました。
特に武井×亮一のお話は涙なくては読めませんでした。
・・・というよりも武井と亮一の話がメインのような感じもうけました。
(ただ商業BL的にこちらをメインにするのが難しかったのかもしれませんが・・・)
このカップルの話があっての1冊だなと感じています。
湊と加持は同級生で、お互い本心を伝えないばかりに擦れ違い、不幸な別れからの驚きの再会。
すごくわかりにくくて不器用な攻、湊と、情けない面と優柔不断というか流されるというか憶病な、けれど心根の優しい受、加持。
ヤクザな世界に身を置く湊と彼の舎弟も含めた関係には、前半はハードで紆余曲折ありますが、後半は家族とも言える繋がりがあり、恋愛だけではない、優しくて甘いその後の生活にはほっこりします。
そしてそして、問題のもう1カップル。武井と亮一。
過去のお話なので結末はわかっているのだけれども・・・
とても素敵な優しくて切ない恋物語でした。
心がギュっとなって涙なしには読めませんでした。
地雷とか言わずにこれはぜひ読んで欲しいお話です。
人と人とが出会うことの必然を強く感じずにはいられませんでした。
この作品が初コンビだそうですが、笠井あゆみ さんの挿絵は電子版にはなかった。残念。
2007年発刊の新装版。
英田先生の、耽美風結末の人情ドラマ。
登場する人物ごとの短編集6話で、時系列で並んでいないです。
すべてはこの夜に: JUN掲載 デビュー前 :湊
春宵一刻 : 書き下ろし
優しい夜のなかで
夏の花 : JUN掲載 デビュー前 : 切ない武井の過去
春に振る雪 小冊子
青嵐 :書き下ろし :湊の今
一番古いデビュー前の作品だけど、古さを感じない。
人の基本というか、土台を成す情念を扱っている作品だからかもしれません。
読後の余韻が良かった。
英田先生の作品に登場する人物は、余り外観の美醜にしつこく拘らないのが常で、一度外観容貌について触れたら、その後はあまり触れない。行動や振舞でなんとなく美を感じるように書いてます。
外観に強く拘らない点が、好き嫌いの分かれ目になるのかも。