snowblack
2014 summer
『今宵の月のように』。
時はおそらくは1990年代半ば、
ところはラスベガスだろうか……
まだ令輝(レンフイ)も若く、
現役でルーレットを回していた時代のある日、
出会った日本人ビジネスマン。
『ワンダーリング』を読んだ時に気になって、
次なるスピンオフはありやなしや?思った藤堂の兄・令輝だが
淡く美しく洒落た、そしてもの悲しいSSの主人公となって登場。
ステノグラフィカのじじい達の昔話もそうだったが、
こういう掌編の上手さときたら!
一夜限りの刹那の恋。
いや、これを恋と読んでいいのか分からないのだが、
何かが通じあって、そして何かを心の中に持ち続けるような一夜の逢瀬。
その時代の社会的な出来事の断片、
ドフトエフスキーの「賭博者」のエピソード、
(「罪と罰」と同じ時期に僅か27日間で書き上げられたという、
ルーレットで身を滅ぼす男の物語)
それらが浮かび上がらせるビジネスマンと令輝の人となりと関係、
そして思い。
そして時は流れ、今や老齢になっているだろうビジネスマンが
かつて一夜を共にした男とよく似たスタイルのディーラーを前に
ルーレットをしている。
今夜賭けるのは……
次の夜から欠ける満月より、
14番目の月が一番好き。
※あ、作者の後書きによると……令輝は「受け」だそうです!