riceplant
awa to hikari
「ふったらどしゃぶり」から「ナイトガーデン」へと刻々と流れる時間を一顕と整、和章と柊が生きる。
「あわ」
社員旅行で伊勢神宮へ、事故の後遺症で車に乗れない整は一顕という精神安定剤と共にタクシーを無事に乗車する。交通安全のお守りの悲しい思い出が優しく色を変え、一顕が贈った赤いお守りは整の心臓を温め続ける。
親しい同僚に赤ん坊が生まれて、その幸福の形が自分とは縁遠いことに世間との隔たりを感じ寂しく思う一顕。
しかし整と生きることを自然と選ぶ一顕の強さに、整の幸せを確信できるようで嬉しい。
幽霊の出る部屋で、さみしい海女の声を聴いた一顕が、最期は一緒に逝くことのできない寂しさを思うところが胸を締め付けられる。
「ひかり」
東京へ引越す2週間ほど前に、柊は祖父の遺品整理もかねて大掃除をする。すると古い8mmフィルムが発掘されて・・・。
祖父の不在に慣れ始めた柊が『悲しいが人生の必要というものだ』と思う強さが好きだ。
その前向きな強さが和章の弱さを支えてくれるだろうから。
8mmフィルムをみて、会いたいと願い、触れられなくてもあるといまはちゃんと知っていると泣き濡れる姿も愛おしい。
映写機にやわらかな手つきで触れ、石蕗先生の気持ちを柊に語りかける和章の姿にはいまの幸せが表れている。柊を好きになったから得たものを、和章は柊に返す。
柊は和章を全幅に信頼していて、そのことは和章にとって幸せでしかないだろう。
普通の尺度で考えるとすこし歪な気もする二人なのだが、幸せの形はそれぞれ違っていていい。歪んだ分だけ愛しく想えることもあると教えてもらった。
「In The Gareden」
弔問に訪れた石蕗家からの帰り道、小さな希望を孫に託して整は過去の幼馴染みを想う。そしてその胸には一顕からの赤いお守りがある。すこしずつ繋がった物語が綺麗に終結して清々しい読後感が残った。
時の流れは敵でもあり味方でもある。
まるで友人に願うように未来に幸多からんことを願って。
さっくり内容と感想を書いていきます。
「あわ」は社員旅行の整とカズアキ。両親の事故以来、トラウマで車に乗れなかった整はここで頑張ります。だから、ナイトガーデンで車に乗ってこれたのですね。
宿泊先ではふとしたことから、離れに二人で泊まれることになって、大胆にも風呂場でエッチ致します。
そして、真夜中に聞こえる不思議な音。海女の呼吸に似た音らしく、これもなかなか雰囲気がありました。
「ひかり」は、ナイトガーデンの二人、柊と和章の話。
東京に引っ越すために納戸の片付けをしていた柊は、古びたフィルムを見つけ出します。
頼れる和章が見れるようにしてくれて、再生したフィルムに映っていたのは、在りし日の祖父母と幼い柊。
フィルムを見たあとは、甘くエチに及びました。
「in the garden」は、ナイトガーデンで訪ねてきた整と友人の裏話的な短編。
何とか車に乗れるようにはなったけど、やっぱりまだありますね。
この時の整が儚い感じで萌えました。
一穂先生は大好きなので、これからも新刊が出たら読み続けますが、またいつか整とカズアキ、柊と和章をどこかで書いていただけることを願ってます。
「ふったらどしゃぶり」「ナイトガーデン」
それぞれの番外編。
【あわ】
一顕と整は社員旅行で伊勢神宮へ。
泊まったホテルの浴室で
整が一顕にフェラするシーンにいたく興奮しました!!
「俺が好きなの。上顎の奥のふかふかしたとこ、お前のでこすられんの」
こんなことをサラリと言えてしまう整が好きだ~~~!
本番で女の子のようにアンアン喘いでいる整より
こういう積極的な整の方が断然魅力的に思えます♪
怪談話に対して
「死んだ人間には何もできないよ」という整の言葉の重み。
そんな整を支える一顕。
バスでこっそり手を握り合う二人にキュンときました。
結婚して、子どもをつくって…という「群れ」の生き方からは
外れてしまったけど、整と一緒にいられればそれでいい。
そんな風に思える一顕は本当にイイ男だなと惚れ惚れします。
きっとこれから十年後も、二十年後も
こんな風に甘く穏やかに過ごしていくのでしょう。
二人の絆の深さが感じられる短編でした。
【ひかり】
引っ越す二週間前。
柊は祖父の遺した映写機と古い8ミリフィルムを見つけて…。
まず、和章を可愛がる柊に非常ーーーに萌えました!
「けじめがない」からと柊の家には泊まらないけど
抱きしめて軽くキスしたり…とかは
結構サラリとスマートにこなすんですね!
「君」「和章さん」などと
丁寧な言葉で互いを呼び合っている二人にも萌え♪
そして祖父の映像…。
これは本当に切ないです。
大切な人の記憶がいつの間にか自分の中で風化していく恐怖、悲しみ。
そんな辛いシーンのあとに訪れる和章とのラブシーンは
今ここに生きている互いを確かめ合っているようにも思え
萌えるというよりじんわり感動しました。
消えてはまた生まれる泡や光のように
誰かと別れ、また大切な誰かと出会う人生。
そんな意味を込めての今回のタイトルなのかなと思います。
*最後の頁に引用されているのは
「ごはんができたよ」という矢野顕子さんの曲の歌詞。
太字でインパクト大ですが
ちょっと演出過剰なのではないかと思ったりもしました。
歌詞の引用は、プロローグ程度にサラリと…の方が
個人的には好みです。
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