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ryuu wa migawari no tora wo
アズ文庫も雨宮四季さんも初読みです。異世界トリップもの&切ない身代わりものは個人的に萌え要素なので買ってしまいました。
トリップものは行きたくないのになぜか知らないけれど突然召喚されて行ってしまうというのが多いのですが、現状からの逃げという理由でも漠然とですが自分から望んで行き自分の存在さえ消され居なかったことにされたことに喜ぶという主人公が珍しいパターンです。
母子家庭で苦労してきた母を見ていた虎之助は、想い人が母に恋していたを知り苦しんでいました。
母親が無責任な男に捨てられやっと出会った優しい年下の男性。でも年の差もあるし子供もいるし…と迷っているのを知って今度こそ幸せになってほしいという願いと好きな人を取られるという悲しさ、自分こそが母を守れると思っていたのに自分以上に母を守れる人に奪われる悲しさ。
嫉妬と自己嫌悪で大好きな二人を祝福したいのにできない自分を許せず、”消えたい”と願ってしまう虎之助の気持ちがとても不憫です。
そして異世界では、恋人だと思っていた部下の蘭節に裏切られ地位も力も奪われ幽閉された元王位継承者の敖蒼。
同じ顔の男を凌辱することで憂さを晴らしたいという理由で呼び出したという横暴な男です。それも虎之助の好きな人と同じ顔で。
虎之助がこの世から消えてなくなりたいと願っていたから呼びやすかったらしいのですが、寂しい気持ちとそれを癒せる存在として互いの魂が呼び合ったのじゃないのかなと思いました。
互いが身代わりとして相手を見ているのはとても切なかったですが、現状を認識した虎之助がさっさと気持ちを切り替えてここで生きていくために頑張ろうとするところに惹かれました。
蘭節は裏切りや幽閉に至る事情があったとはいえ、本当に酷い男です。
大事なものを守るためならだれを傷つけても国を売ってもいいと考えるような人間だったのに、最後はやっぱり敖蒼が王になるべきだ、裏切った罰として命を差し出すとまで言い切るのは嘘っぽかった。
解決場面があっけなくどんな方法で何をしたのかよくわかりません。2年間何もできずに幽閉されていただけなのに、やっぱり王に相応しいのは敖蒼だと言い出したと思ったら解けなかった妖術が解け悪人を追い詰め大団円というのは都合よすぎで敖蒼が虎之助を苛める回数を減らしてでももうちょっと丁寧に描いてほしかったです。
タイトル通りなのですが、それは互いにの注意書きも必要かと思うような
互いに他に好きな相手がありながらも、見た目互いに好きな相手に瓜二つの相手に
刹那的な求めをぶつけているようなお話です。
始まりは、現世日本の高校生であるハーフで母子家庭で暮らす虎之助が
同じアパートのお隣に住む龍一に失恋してしまったことから始まります。
龍一は虎之助の気持ちも知らず虎之助の父親になりたいと告げる、それは虎之助の
母親との仲を認めて欲しいと願う告白で虎之助は告白も出来ぬまま失恋。
虎之助は苦労をしてきた母親も好きで、母親を取らないで、龍一を取らないでと
双方に醜い嫉妬心を持ってしまう自分が許せないくらい優しい青年でした。
その辛さから消えてなくなりたいと願った時に異世界に飛ばされるのです。
虎之助を召喚したのは、なんと元龍太子の蒼敖で、その国の皇子なのですが、
外見は片思いしていた龍一と瓜二つながらも傍若無人で傲慢なのです。
そして、召喚された虎之助は、蒼敖を裏切り魂を弄んだとされる蘭節と瓜二つ。
蒼敖は蘭節と瓜二つの虎之助を身代わりに犯し貶める。
かなり酷いことをされる虎之助なのですが、絶対自分には向けられない好きな人に
よく似た相手からの欲情を受け入れるくらいに現世で大事な人を憎まないで済む、
心を傷めないで済むのだからと全て承知で受け入れるのです。
好きな相手に報われない思いを抱いている二人、互いに身代わり関係で、
二人共切ない感じです。
このふたりは後半ラストまで心を通わせることがなかなか無いのですが、
いつの間にか育っていた思いがラスト方面で迸ります。
もっとも、傲慢俺様で本物の龍でもある蒼敖は実はかなり子供ぽいところがあって
素直で無い意地っ張りのツンデレ気味かも知れません。
日本では古くから身近だった輪廻思想も感じられる内容だし、パラレル世界でもあり、
ファンタジ好きとしてはかなり楽しめました。