坂道のソラ

sakamichi no sora

坂道のソラ
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神139
  • 萌×255
  • 萌21
  • 中立6
  • しゅみじゃない23

--

レビュー数
29
得点
984
評価数
244
平均
4.2 / 5
神率
57%
著者
朝丘戻 

作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます

イラスト
yoco 
媒体
小説
出版社
フロンティアワークス
レーベル
ダリア文庫
シリーズ
坂道のソラ
発売日
価格
¥619(税抜)  
ISBN
9784861346330

あらすじ

恋は、夜のバスの坂道みたいに寂しいものだと思っていた。高校生の河野一吹は、毎朝バスで乗り合わせる会社員の大柴賢司と親しくなる。悩みを抱えていた一吹を彼は優しい言葉で救ってくれる人だった。やがて互いを深く知ったふたりは自分を変えるために彼女をつくろうと約束する。しかし賢司と過ごすにつれ、一吹は自分の恋がとても近くにあることに気づいてしまい…。

表題作坂道のソラ

大柴賢司,33歳,IT関連会社の副社長
河野一吹,一人暮らしをしている高校2年生

その他の収録作品

  • あとがき
  • 三年後のソラ

レビュー投稿数29

言葉の繊細さ

救ってもらったことを文字と心のなかだけで片づけて、実際会って一緒に肩を並べているときにはうやむやのままっていうのが違和感だ。文字の世界からもう一度とりだして、ありがとうの一言ぐらい声で言っておきたかった。


言葉の大切さや繊細さが深々と伝わってきて、改めて作家さんて凄いなあと思いました。一吹の誠実さや賢司のかける言葉ひとつひとつが素敵だったり可愛らしかったり優しくて。一吹は主人公で悩む心理描写は多いけれど、バスにのる乗客の観察眼や告白現場での受け答え、何より賢司への真剣で誠実であろうとする気持ちに尊敬のような気持ちを持ちながら読みました。賢司の一挙手一投足に一喜一憂する一吹、それを可愛いと言う賢司、どちらもフワフワと萌えました。私の語彙力。。
大人の賢司(私のイメージは◯田啓太さん)と高校生の一吹だけど、真剣に自分のことを考えながら伝えていくコミニュケーションが読み応えがありました。
言葉に対して考えたりするシーンがいくつかあって考えさせられたのですが、特に他人がミチルに当てた言葉遣いを「まるで無感動な物みたいに」と表現したところ、冷静だし、そんな風にそこに居ない人を庇えるひとになりたいなと思いました。

0

『アニマルパーク』シリーズ"(ノ*>∀<)ノ

大好きな『アニパー』シリーズの始まりの一冊。
とても好きな2人です(*´∀`*)

受け様は高校生の一吹。
攻め様は『アニマルパーク』などのゲーム会社副社長の賢司さん。
毎朝、通勤通学で同じバスに乗り合わせていた2人。

知り合いになったと思ったら、あっという間に距離が縮まって、名前で呼び合い、特別な存在になっていく。

顔が見えないからこそ、伝えられる言葉ってのもあるし、きちんと顔を見て伝えたい言葉や想いもある訳で。
バスの中や『アニパー』を通して、どんどん特別になっていく様子に、とってもきゅんきゅん(≧∇≦)

もうね、一吹が高校生とは思えない程、真面目で誠実で思慮深い。
こんなに一生懸命好きになってくれて、好きを伝えてくれて、可愛いしかないわ。

また、賢司さんも、誠実でなんだかんだと溺愛してるよね~( ^ω^ )
一吹を大切に可愛く思ってくれて、それを惜しみなく言葉や態度で表してくれて、はなまるな攻め様♡

相手のことを自分のこと以上に大切にしている、そんな2人の姿が、私の胸を暖かく、優しい気持ちにさせてくれます。


イラストはyoco先生。
もうピッタリとしか言えません。
『アニパー』内のキャラ、ウサギとオオカミ、めっちゃキュートです(≧∇≦)

1

幸福の中の寂しさの余韻

朝丘先生、2冊目です。
氷泥のユキを最初に読んだ時にも感じたのは文章の透明感。
さりげなく散りばめられた文章の中に、グッと胸に突き刺さるような引力のある言葉の羅列。

氷泥のユキは甘々なのに切ない。
坂道のソラは幸せなのに寂しい。
そんな感じかな。

生きている上で、少数派に属するという孤独は、どえしようもないのに、いつまでも付きまとうものだと思います。
諦めていても、どこかでは人の温もりや、認めて貰える瞬間を切望していて、いつまでも苦しい。
多分それはどんなに幸せになっても、自分自身では解決できるものじゃなくて、他人に満たしてもらえるものであって、だからこそ、一吹と賢司さんが、ずっとずっとずっと幸せでいて欲しいと絶望せずにはいられませんでした。

大事なものがある人生は寂しい。

そう言った一吹の心を、賢司さんはずっと抱きしめてほしいし、一吹は賢司さんの過去の傷も含めて真っ直ぐな愛をずっと注いで欲しい。

賢司さんは、さすが大人で、途中は少しだけ、狡い大人〜って思う部分もあったんです。
だってもう途中、一吹の心情が切なくて切なくて。
色々なものを抱えるには、まだ若いよ。
心が無防備過ぎて心配になってしまう。
それなのに一吹は、心の芯がしっかりしていて、凛としているんですよね。
そこもすごく好印象。
こんなに良い子なのに、賢司さ〜〜〜ん!って何度思ったことか。

でも、賢司さんの心情も慮れる。年齢的には賢司さんに近いですから、色んな葛藤があっただろうに、よくぞ全て隠してたよね。それもまた大人なんでしょう。
傷付いた大人は狡くて強い。自分を隠してしまえる強さを持ってる。
だけど、2人がくっついてお互いの枷が外れてからの、安心しきった空気感、すごくほんわかしました。

描き下ろしの別作品があるみたいで、ぜひ読んでみたいです。

氷泥のユキも読み返したくなっちゃったなぁ〜〜〜
でも次のシリーズ作を先に読みたいと思います。

とにかく、幸せなのに寂しい、だけど満たされる。そんな作品でした。

ちなみに!嶋野くん!!良い奴すぎでは!!!!
ミチルちゃんへの対応!!!紳士すぎでは!!!!
こういうのをイケメンと言うんですね〜〜〜
素敵な高校生でした。

1

秀逸✧*。

ときめきながら読みました。一吹がとにかく可愛い。真剣に悩んでるのも真面目で微笑ましい。バスで乗り合わせる賢司も気遣える人で素敵。自分を変える為に彼女を作ろうって約束した事で、自分が賢司を好きな事に気づいて葛藤する一吹が切なかったし、想いが溢れて時にキツイ言葉をぶつけて落ち込んでるのも可愛くて。リアルでもアニパーでも、2人の会話が雰囲気があって好きです。振られる覚悟で想いを伝えた一吹と受けとめた賢司。付き合う事になっても男性同士で幸せになれるか悩む一吹が辛かったけど、包み込む賢司に泣きました。すごく素敵な作品。yoco先生のイラストがまた素晴らしくて、作品の世界観にぴったりで最高でした。

1

時間があるときに読んでください。

アニマルパークシリーズ第一作目。
『坂道のソラ』『窓辺のヒナタ』『氷泥のユキ』『月夕のヨル』『晴明のソラ』という順番です。『晴明のソラ』は他四作の人物が登場するのでそれ以外は、単品でも楽しめます。ですが、どの作品も少しづつ繋がっています。
夜に読みはじめたので、翌朝目が腫れて大変でした。
途中で寝なければと思ったのですが、一瞬でも目が離せず結局、最後まで読んでしまいました。二人を応援せずにはいられません。読み進めるうちに、本当に二人がいるようなそんな気分になりました。涙なしには見られないので、ハンカチ片手にどうぞ!イラストも本当に素敵で、この作品に出会えて良かったと思いました。

1

恋をしてもらえないことが、どうしてこんなに辛いんだろう。

恋は、夜のバスの坂道みたいに寂しいものだと思っていた。高校生の河野一吹は、毎朝バスで乗り合わせる会社員の大柴賢司と親しくなる。悩みを抱えていた一吹を彼は優しい言葉で救ってくれる人だった。やがて互いを深く知ったふたりは自分を変えるために彼女をつくろうと約束する。しかし賢司と過ごすにつれ、一吹は自分の恋がとても近くにあることに気づいてしまい…。

1回目よりも2回目、2回目よりも3回目の方が泣ける。

文字を追うごとに、何でもないひとことが心にチクチクと針が刺さるような気がしました。そのたびに一吹が好きになっちゃいけない、と心にストッパーをかけているような気がしてめちゃくちゃ切なかったです。

恋をして、告白する。それが男同士だというだけで、尻込み、悩んでしまう。

その想いが切なくて切なくて、号泣しました。

朝丘さんの文は一吹視点で書かれているため、賢司さんの好きになったところが文に一から十まで載っていて、こういういいな、好きだなっていうのが一つ一つ積み重なって好きになるんだなと思わずにはいられず、文章力に脱帽しました。

人を好きになるのって尊い、これに尽きます。

1

よみやすい!

繰り返される何てことない日常の中で、ふたりが出会って親密になっていくのが、前半とっても丁寧に描かれていて、その優しい世界にぐいぐい引き込まれました。

端から見れば何てことないことだけど、当人にとっては大事件だよなあって。

ただ、リアリティーをを伴って丁寧にゆっくり話が進んでいただけに、付き合い出してからのスーパーBL的急展開にどうしても私の心がついていけなかった、、、(笑)

高校生の一吹がガンガンいこうぜ的な思考になるのはわかる、しかしおぉぉい33歳副社長!!手早すぎだろ犯罪者だぞ!!(笑)と、ツッコまずにはいられなかった、、、

が、まあそれはそれとして。
嫌な人が出てこない。本当に優しい世界。大変読みやすく、楽しめました。
アバターかわいい。

0

とっても優しい気持ちになれる

読み放題で見つけて読みました。
読みほ、ありがとう〜!

こちらの作品、とても素敵でした。
雰囲気かな?空気感みたいなものが柔らかくて優しくて好きです。

イケメンIT副社長・賢司と男子高校生・一吹の恋です。
出会いがバスというのも情緒があっていいですね。
ゲイの一吹の片想いに思われましたが、たぶん賢司の方が一吹にメロメロです♡
一途で健気で、自分の気持ちをストレートに伝えてくる一吹は、
そりゃもう愛しいことでしょう^^

きっと、男同士じゃなかったら成立しない恋だったと思います。
男の賢司を好きになった一吹と、ゲイの一吹を好きになった賢司……
慈しみ想い合う二人が尊い。
出会って1ヶ月の恋なんて思えないし、展開の速さに違和感なんて感じません。
そのくらい、素敵で優しい2人が大好きな作品です。

yoko先生のイラストも最高!
一気に好きになりました。

2

NoTitle

評価が高いのはわかります、詩的な文章と少女漫画的とすら思える現実にいないでも居て欲しい男性像。

実際読んでいてすごく楽しかったのですがお菓子に例えれば綿菓子かマシュマロのような、口にサッと溶ける瞬間はいいけど何も残らない。

くらもちさんの『as エリス』等似たような題材で良い作品がありすぎるのかもしれないです。
決して嫌いな話ではないのですが『アニマルパーク』の他の作品も読んでみたいとは思えませんでした。

2

言葉のやり取りが、二人をググッと接近させています。

朝の空気を思い出すような澄んだ文章が心地よいです。

通勤通学に使う朝のバス。いつもの顔ぶれながら、お互いを知らない。
バス内で起きたある事で、話をするようになり二人は仲良くなっていく。
ゲイだという事もあって学校での友人との距離感に悩んでいる一吹と
姉との過去にトラウマをもつ賢司がバスで会話をかわした事で物語が始まります。

SNS上での言葉のやり取りが、二人をググッと接近させています。

好きだから本音を晒す事もあれば、
相手を傷つけまいとして自分を傷つける事になったり。
励まされて心強くなって行動できたり
焦れったいやら、切ないやら。
主人公たちの心の動きにとても魅力を感じました。

両思いになった日、最初に手を繋ぐシーンはキューンです。

一つ言えば
年上を憧れるってわかるけど、高2と30オーバーの社会人という設定はキワドイかも。
とりあえず、そこは深く考えず読みました。
私もアニパーやりたいなぁ。

1

あぁ、幸せ。

自分の好みにドンピシャな作品で、神評価以外考えられません。
あらすじは、上記を参照ください。

高校生の一吹と、IT会社副社長の賢司。包容力や経済力、すべてを兼ね備えた大人の賢司。
そして自分がゲイである為、周りとの間に壁を作って、名前を呼び合える友だちがいない一吹。
早々、互いに惹かれ合ってるんです!
男子高校生に向かって可愛いとか言わないから!賢司がノンケに思えないくらい、一吹を溺愛していて、周りからしたらすぐにわかるのに、当人たちは相思相愛に気付いていないもどかしさが、たまりません!

大きな出来事はなく、何もなかった毎日が少しずつ色付いていくストーリーが読んでいて幸せで、情景や会話のやり取りに心惹かれます。
ストーリーは先が読める内容かと思いきや後半に事件が起き、より引き込まれました。

ゲイであるが故の親への感情や、結ばれた相手との将来への不安や葛藤があり、それを全て受け止めてくれる賢司が、本当にかっこいい。

大好きな作品です。

1

男子高校生

高校生の一途な恋心が本当に真っすぐで可愛い。
悩みながらもキラキラしてます。
心情がこれでもかって具合に細かく描写されているので、痛いほど受の一吹くんの気持ち感じました。
その分、攻の賢司が全くのノンケだったのに、何が一吹くんの気持ちを受け入れる迄に至ったのかが、すこぉしひっかかりました。
攻めの視点が無いので致し方無いのですが。
二人の会話である程度気になってるのから恋情にっていうのはわかるのですけど。
まっ、それだけ一吹くんが魔性だって事ですねっ( *´艸`)

一吹くんの緩やかだけど確実に成長していく様をじっくり堪能できました。

yoco先生の絵がまた雰囲気あってて物語世界にすんなり入り込めます。
アニパーのアバター絵、可愛すぎっ!

特典SSは、友人たちとの関係性も進展して微笑ましいエピソードでした。
思わず笑っちゃいました。

良かったね、一吹っ!

4

大好きです。

何だろう?読んでいてblと言う感覚がない 
空気感がとてもキレイな恋愛小説?
言葉…もそうてすが、
語間や行間に切なさ、狡さ、そして優しさ…

ドキドキするような初恋の頃を
思い出しすような気持ちで読み終わった気がします。

本当にレビューは難しいですが、
言葉の選び方?遣い方?とても好きで、
読後感の微かな切なさや清涼感…
本当に初恋を思い描いてしまいます。
とても遠い昔ですが(笑)とても好きです。

是非、見かけたら読んでみて下さい。
とても、ココロ惹かれる作品だと思います。

今、朝丘先生の作品を網羅しようと頑張っています^_^
読みましたら順次に拙いですかレビュー
書かせていただこうと思っています。

3

yoco先生の画力に脱帽

朝丘戻先生 「坂道のソラ」読了
何人かのフォロワさんに勧められ、読んでみて安定の朝丘先生で、読んだ後ほっこりとなった。
出会って瞬間から好感を持っていた相手に、自分の痴漢された現場に目撃され、さらにからかわれた主人公の一吹。それから毎朝話をするようになっているうちにだんだん好きになってしまって…
「もう賢二さんが知らない自分には戻れない。」「賢二さんに触れたい、抱かれたい、キスしたい。」つらい片思いをしている一吹が健気すぎて思わず泣いてしまった。
一番好きなシーンはアニパーの画面のイラストのところ。まっすぐに相手を見つめるおしゃれなオオカミと哀しそうな表情をし、やや俯いてるぼろぼろうさぎ。無言で時間が流れていても、彼らはなにかの電波で会話しているような気がする。
大晦日の告白も何度読んでも号泣してしまう。こういうかわいい健気受けにはほんと弱い…(泣)。大人ぶっても、賢二さんはやっぱりヤキモチ妬くし、ガキっぽいことをしてしまう。前から無意識に一吹に好意を持っていたけど、一吹がゲイだって知ったらやっと目覚めたかな?すごく自然な流れで二人の感情が昇華し、最後やっとくっついてくれた。
安定な癒し系だけどやっぱり朝丘先生の作品は別格。萌えと切なさで読者を翻弄する(笑)。
あとyoco先生のイラスト、今回は初の商業BLのイラストだそうだけど、見返しのところの挿絵本当に神。電子版にはちゃんとついてくれてるのかな…あの構図本当に素晴らしすぎて尊すぎて言葉にできない(涙)。yoco先生の画力本当に凄い…画面に二人を収めるだけではなく、できるだけ構図を考えながらストーリーの雰囲気を絵に出す。特に一吹が寂しそうにキッチンに座っているところ、寂しさ丸出しな後ろ姿が描かれていて、yoco先生は本当はその場面を見ながら描いたのかって思ってしまう。(例の壁ドンのお絵も見たかった涙)yoco先生を商業BLの世界に誘ってくださって、朝丘先生に感謝いっぱいです。
素敵な作品を出してくださって、本当にありがとうございました。

6

文字だから伝わる気持ち、伝わらない気持ち

サヨナラ・リアルに続いて手に取った朝丘さんの作品。
自分が普通では無い事にどうしようもない思いを抱えた一吹と、過去に囚われた大柴さん、そんな2人のお話

通学や通勤で毎日乗り合わせる乗客たち
会話を交わすことなくすれ違う人の方が圧倒的に多い中で、知り合う事ができた2人

賢司さんの過去の出来事を知って、それは偶然では無かったのだと分かりました

本当に辛い出来事を抱えている人間って、誰にも弱さを吐露できない、なのに、知って欲しい、誰かに聞いて欲しいってどこかで思ってる物だと思うんです。

印象的だったSNSでのやり取り
顔が見えない中での会話

普段は出せない本心をさらけ出せてしまう不思議な場所
打った後逡巡し、それを無かったことにして、嘘を付いてしまえる場所

そんな場所を通した事で、2人の関係は少しずつ深まっていきます

文章が兎に角美しく、言葉選びが心地よく、切ないけれど、何処かずっと幸せな気持ちで読み進められたのは、
この恋が叶わなくても、出会えて、好きになれた事が、本当に幸せだと思う、一途で健気な一吹くんの心に感化されたからからだと、それ程までに強い彼の気持ちが伝わってきました

賢司さんの年齢に限りなく近いアラサーの私ですが、一吹くんの心に入り込み過ぎて、17歳、高校2年生という立場から賢司さんを見ていたら、33歳とはこうも魅力的で、大人なのか、と驚いてしまいました!
いや、賢司さんが特別なのは重々承知してます(笑)


「俺達が出会った頃のお話だね」
「恥ずかしいです」

と、現実に2人が照れている情景が浮かぶ様な
この世界に確かに存在する2人を感じました


9

ぼろぼろウサギ

自分がゲイであると自覚し友達とうまくコミュニケーション取れなかった一吹が、初めて人を好きになり強くなっていきます。
とにかく一吹が健気で優しい作品でした。

バスで知り合った賢司のことが好きで好きで仕方ない。
でも嫌われるくらいなら、気持ちを隠して友達でいたい。
そんな一吹の葛藤がひしひしと伝わってきて切なかったです。
ぼろぼろウサギのキャラもすごくあってました。

賢司の優しく包み込むキャラも良かったです。
お互いのことは良く見ているのに、自分に向けられている思いにだけは気づけないものですね。
アニパーの二人も、リアルな二人もどちらも温かくて素敵な作品でした。

7

「傷」が繋いだ運命の赤い糸

初めて読んだ作家さんでしたが、読んでいくうちにとてものめり込みました。

三十路超え社会人と高校生の恋愛ということに初めは懐疑的でした。
共通点がなく年齢差もある、極端に言うと大人と子供で自然な恋人関係になるのって難しいのではと思うからです。
自分と照らし合わせて、ありえないという思いがあります。

しかし、今回は一吹(受け)が持っている傷が象徴的な引力になっています。
その上で2人のバックグラウンドや周囲との関係性、一人で抱えるしかない悩みなどがじっくりと書かれていきます。
2人の関係性が積み重なっていくようで、その過程が丁寧に感じたし違和感もありませんでした。
読んでいくうちに、絶対に起こりえないことじゃないのかもという気持ちに変わりました。

SNSの使い方も巧みで、妙に大人びてる高校生の一吹がアバターの力を借りて幼くなっている所など人物が多面的に見えました。
そして、賢司との出会いや友人関係を通して成長する一吹も読んでいて希望があります。

賢司(攻め)は自分の年齢と近いのもあって親近感がありました。
わりと初めから一吹に特別な好意を持っているのは分かったけど、結論を出すまでめちゃくちゃ考えたというのも分かります。
きっと結婚願望がある人にとって一番切実に考える時期ですよね。だからこそ一吹を選んだ重みも伝わりました。
手出すの早くないかなと思ったけど…(笑)

余裕があって格好良い大人、純粋で素直な子供とお互い思っていたようでしたが、年の差があるからこその幻想なのかなと思います。
でも2人が結ばれるために良い意味で作用した気がします。
付き合いが長くなるにつれその幻想は崩壊すると思いますが、等身大の自分達を確認しあって絆を深めていきそうです。

最後にちょっと気になった所がありました。
一吹が母親に「賢司さんはノーマル」と言うのですが、当事者がそういう言い回しってするのでしょうか。
しかもニューヨークで常に英語に触れてる母親からすれば余計に違和感を抱きそうですよね。

萌×2では足りない気がしたので神評価になりました。

8

溢れる優しさ

朝丘さんのBLものを読むのは初めてでした。
昔ノーマルもののお話は読んだことがあったので、BLも読んでみたいなーと思い、表紙もすごく優しい絵柄のこちらの本を選んでみました。

SNSのやりとりがメインなのでページ数の割にさくさく読めると思います。
現代のネット社会ならではのお話で、こういう出会いもあるんだろうなあと思いながら読んでいました。私も一時期悩みを打ち明ける場をSNSに求め、すごく助けられたことがあったので感情移入しやすかったのもあります。
一吹が一癖ある人物でしたが、そこに大柴さんも惹かれていったんでしょうね。ちょっと冷めたところありますけど、嫌な感じはしないですし。
そして大柴さん、かっこいい。トラウマを抱えているとはいえ、なんて大人な対応のできる人物なんだろう。カッコイイ。笑
優しさ溢れる作品でとてもほっとしました。

4

ほどけるような切なさと、泣きたくなるような優しさ。


朝丘戻さんの作品は初めて読みます。

読んでいてまず印象的だったのが、描写の豊かさ。

この物語は主人公である高校生の一吹(いぶき)視点で描かれているのですが、一吹の心情や抱える悩み、ふと振り返る過去の記憶等、それらが一ページ一ページにたっぷりと詰め込まれております。文章の厚みとでもいうのでしょうか。そういったものを感じて「これは読み応えあるかも」と読むのが段々楽しくなっていきました。

自身がゲイのあることを密かに自覚している一吹。
今まで友達というものを持ったこともなく、母の海外赴任で一人暮らしの高校生活を送っています。そんな誰も知ることのない心細さのなかで、ひょんなことから毎日同じバスに乗り合わせる会社員、大柴賢司(おおしばけんじ)と話すようになります。

気さくながらも細やかに自分を気遣ってくれる賢司との会話に、一吹はちょっとした憧れとともに彼と打ち解けていきます。
一吹は賢司に教えてもらった『アニマルパーク』というSNSに登録し、『ソラ』と名付けたウサギのアバターを作ります。その日からオオカミの『シイバ』こと賢司との文字の世界での会話が始まりました。

本が好きで落ち着きのある一吹は同年代から見れば少し大人びている子供。
元来の性格もあるでしょうが人間関係の希薄さも相まって、一吹は他の同級生よりもどこか純真さが見られます。賢司との会話は年の差もあるせいか余計に子供のように見えてしまいますが、不器用ながらも周りの人たちに誠実でいようとする一吹の姿は読んでいて共感できました。

賢司は穏やかで他人への気遣いのできるいわゆる大人ですが、辛い思いをしていた姉を守れなかったという過去を今でも悔やんでいます。簡単に打ち明けることのできない辛い過去を気負いなく共有できたのが一吹でした。一吹は賢司に救われたと言っていましたが、賢司もまた、過去の傷に囚われず、一心に自分を慕ってくれる一吹の姿に救われ惹かれていったのではと思います。

毎朝バスで話をして、時間の空いたときにはSNSのチャットで会話をして。賢司との会話を重ねていくうちに一吹は自分を見てくれる彼の優しい笑顔、送られる文字から滲み出る温かさに触れ、寂しさを埋める以上の感情を覚えます。
初めて自分に共感してくれた人、初めて名前を呼んでくれた人、初めて友だちになった人。初めて、恋をした人。それが一吹にとっては全て賢司でした。
しかし女性との結婚を望む賢司に想いを伝えることはおろか、ゲイであることすら言えずにいる一吹。
一人、夜の坂道のような途方もなく寂しい恋をする一吹と隣で一吹を優しく思いやる賢司。
誰かを想う切なさと寂しさ、心を救う優しさが織り込まれた一冊です。

作中、SNSでの会話が多く出てきますが、アバターの存在が二人の心情をうまく表現してくれます。お互い真摯に向き合う二人の会話は読んでいて心洗われる気持ちでした。

個人的には賢司からの視点もあったら一吹の言動に恥ずかしがる姿や一吹への気持ちの変化等が見られて、二人の感情もより伝わって良かったかなと思いました。

イラストを担当されたyocoさんをきっかけに買ったのですが、とても良いお話でした。
装丁もまた素敵です。

7

キャラが生きてる

非常に朝丘さんらしい作品だと思いました。
本当に「大人」な人物を書くのが上手い作家さんだと思います。攻めである大柴の大人な対応を見て、受けである一吹と一緒に何度ズルイと見悶えたことか(笑)
SNSを使ったネットでのかけあい、時間の流れ、気持ちの変化も上手く書かれていたと思います。

私は終盤にかけての二人の関係を認めてもらえず、母と口論になったシーンで涙しました。自分の感情を上手く表現できないもどかしさや好きな人を悪く言われる嫌悪で母に酷い事を言ってしまう。自分の無力感や幼さに歯がゆさを感じてしまう、そんなもどかしさにやられました。
一吹に母が言った言葉は私も似たような言葉を母に言われた経験があるので、すごくリアリティがあり、母親だからきつく、強く言うんだよなあっと感じつつ、ただ好きなだけなのに、その好きを上手く表現できない一吹にも共感を覚えました。

BLはファンタジーだと思う反面、朝丘さんの作品を読むたびこんな風に葛藤している人もきっといるんだろうなっと思わせてくれます。
同性を好きになり、恋愛する難しさ、人間関係、秘密や嘘、好きになった相手の人生を想うと臆病になってしまうジレンマ。すごくバランス良く描かれていて、途中で飽きることもなく読めました!間違いなく、おススメ出来る作品です。

5

リアルな日常の一コマ

 高校生の一吹は、通学のために毎朝バスを利用しています。毎朝の通勤、通学場面と言えば、ほぼ同じ人が乗り合わせるというのが常ではないでしょうか。まず、この設定で私は「あるある」と思いました。一吹は、服装、雰囲気から、どんな人だろうと想像したりする場面がリアルです。(笑)
 
 一吹がバスの中で、痴漢に遭ったとき助けてくれたのが、まさにかっこいいと思ってた賢司だったのですが、賢司は一吹に「アニマルパーク」をやらないかと誘うのです。賢次はそのアニマルパークを運営する社長だったのです。

 アニマルパークというのは、携帯でゲームを楽しんだり、コミュニティーサイトのことなのだそうです。作品中でも、一吹と賢司がアニマルパークで会話をする場面が登場するのですが、これもとても現代風でリアルだと思いました。

 元々自分の性癖がはっきりしていた一吹と、どっちが先に彼女ができるかなんて持ちかけてしまう賢次はちょっと酷にも思いましたが、それでも、一吹の賢司を見る視線が切ないものが見え隠れします。
一吹の母が、一吹、賢司とのお付き合いを知ったとき、猛反対してけんかしてしまう場面があるのですが、私にはここもすごくリアルに思えたのです。祖父母の前では、まるで何事もなかったかのように振る舞う二人ですが、大人と子供の境界線のような危うさも読んでいてどきどきしました。

 静かな雰囲気で物語は進んでいきますが、本当にありそうな描写、子供から大人になっていく一吹が好きです。

1

リアル感が薄い

イラストが好みだったので購入。
本当にイラストは素敵!
朝丘さんの作品を読むのは確か三冊目です。

受けの一吹は高校生で母子家庭。
母親が海外赴任中のため、一人暮らし。
自分がゲイだと他人に打ち明けられず、友人を作るのも苦手。

攻めの賢司はSNSを運営する会社の経営陣のひとりで、一吹と同じバスで通勤している。
バスで知り合った一吹をSNS『アニマルパーク』へ招待する。

まず、朝丘さんの本の中ではかなり厚い!
しかしそのほとんどが、『アニマルパーク』での短文会話に費やされており、なんだかページがもったいない。
その分をキャラの掘り下げに与えてもらいたかったです。

一吹とクラスメイトとの会話や行動は丁寧に描かれていて、一吹がそれに苦悩したりするシーンは共感できるのですが、肝心のふたりの心の移り変わりがSNS中心なのでなんだか希薄。
いつものバスの中のちょっとした出来事をきっかけにしてスローテンポな出会いと日常が描かれているのに、ふたりにリアル感がなく本の中の人物という印象を拭えず残念です。

高校生受けと年上攻めは好きな題材で日常系も大好きなのですが、日常系だからこそかえってリアル感が薄いのが気になってしまいました。
ノンケでしかも会社経営という立場にある賢司が、一吹との関係を恋愛と認識し踏み込むくだりが受け目線のためよけい分かりづらいです。
両視点だったならちょっとは違ったのかもしれません。

11

一吹の一途さは間違いなく『神』

朝の通勤通学バスで毎日見かける、同じ顔。生まれるドラマ。
高校生の一吹は、痴漢にあっている所を目撃された事がきっかけで、
IT会社副社長の賢司と言葉を交わすようになり、友達になります。

人付き合いが下手な一吹は、下の名前で呼び合うような親しい友達はいなくて。
女の子の下品な話をする同級生の林田達に馴染めず、疎外感を感じています。
自分がゲイである事も隠しているし・・・
そんな一吹を自己紹介直後から親しげに下の名前で呼び、
話題も豊富で会話が上手い賢司に、一吹は好意を持ちます。
バスで一緒になる賢司と一吹として。
アニパーでシイバとソラとして。
会話を重ねるごとに、一吹は賢司に惹かれていきます。

とにかく、一吹の心理描写が素晴らしい。
一人の不器用な少年の、悩みや想いが本当にリアルに伝わってきます。
ひとりで居ることの寂しさ、ゲイであることの疎外感をずっと押し殺して来たこと。
名前で呼び合える友達を、本当はどれほど羨ましく思っているか・・・
林田に、初めて失恋話を打ち明けられた時の、一吹の喜び。
そして思わずカミングアウトして、それを大笑いされた絶望。
なのにまだ、林田と友達になりたいと願っている一吹が、いじらしくて泣けました。

そして何より、賢司に対する気持ちが恋愛だと気づいてからの、
一吹の想いが本当に切ない・・・胸に迫るものがあります。
いずれは家族を持ちたいと思っている、普通に女性を愛せる賢司に対して、
ゲイであることを隠して、ずっと片思いのまま友達としてでも傍に居たいと願う一吹。
とにかく、一途で一生懸命で健気で・・・
読んでいて、何度も何度も胸や目の奥が熱くなりました。
――強くなる。大人になる。呪文のように繰り返し念じる。
  強くなる。大人になる。賢司さんの幸せを、一番に優先する。
――女として生まれれば報われたわけでもないんだ。わかっている。わかっているけど、
  でも、男じゃなければ俺は、貴方が欲しいと言えたんだろうか。
ここは、号泣でした。

友情に、恋愛に、悩んで迷ってつまずいて必死に頑張る一吹に、
どうしようもなく心が囚われました。
穢れない真っ直ぐな一吹の想いが、キラキラ輝いている作品だと思います。
一吹に対する評価は、間違いなく『神』です!

ただ、肝心の攻め様の賢司が微妙・・・嫌いではないですけどね。
あと、一吹のお母さんは、私のあまり好きなタイプではなかったです。
嶋野は良かったです!名言も二つほどありました。
ただ、ミチルとくっつくのが早すぎ(笑)
片思い中が余りにも素晴らしかったせいか、両想いになってからがダレました。
駅のホームでキスとかあり得ない・・・
それで、少し全体評価は下がってます。

6

架空の世界の、ソラ。

何作か読んで、どうしても苦手な朝丘さんの作品。
最近ランキング上位に載っているこの作品は、表紙が素敵で好み!
もしや今度こそ?と期待を込めて手に取った。

が。
やはり私には合いませんでした。

母親が海外赴任中で、1人で暮らしている高校生の一吹。
本が好きで、人間関係に苦手さを感じている、健気で真面目な少年。
そんな彼が、毎朝バスで一緒になるカッコいい会社員と出会い、
親しくなる中で……

淡く優しい雰囲気、丁寧な描写、
『アニマルパーク』というSNSを上手く使っているのは面白いと思うし、
そのアバターのオオカミとボロボロウサギはなんとも可愛い!
書き残しておきたいような言葉も散見される。

ただ、根本的に、キャラクターがダメです。
こういう人物像が嫌いな訳じゃあないんですが、
このリアリティのなさが個人的には気持ち悪い。

所詮BL小説はファンタジーだと思うけれど、
どんな荒唐無稽な話であったとして、そこに自分の心と呼応する
確かな何かがあってこそ心を揺さぶられるのだけれど、
何故かこの作者の話を読んでいると、自分の根っことは違うところから
人物像が生えているとしか思えない感覚になるのです。

ごめんなさい、非常に個人的な感覚……なのかもしれません。

28

強さと弱さを多方面から感じさせる話

通勤通学バスで顔見知りから痴漢騒ぎで話すようになり、年の離れた友人から
涙が出てくるほど相手が好きになり、恋人になる話でそこに受けである高校生の
一吹の自分の性癖や人との接し方や様々な悩みと友人関係を背景にしながら
描かれるちょっぴり切なさを感じさせながらもラストはほのぼのとした雰囲気で
読み終わった後もいい意味での余韻が感じられる作品でした。

この作家さんはあまりハズレが無いくらい心に染み入るしっとりとしたストーリーを
届けてくれるのですが、この作品はそれ程心動かされるような展開では
無かったような気がします。
だからと言って面白くない訳ではないのですが、マイノリティーや友人関係
母親との関係などで他の学生よりも大人な一吹ですが、寂しさを抱えていたり、
人に本心を語るのが怖かったりと不安や悩みを賢司と出会ったことが切っ掛けで
いい方へ成長していく過程が丁寧に描かれているようでした。
ラブ的な要素と言う点ではちょっと控えめで一吹の成長記みたいな気もします。

7

健気な子供と

無自覚な大人のお話。

朝丘作品には、色んな事をいっぱい考えている健気でいい子の高校生がよく登場しますが、一吹はそんな主人公たちの中でも特にいい子。
一吹はゲイを自覚していて、朝同じバスに乗るカッコいい大人の男性に密かに興味を持っています。
そんな彼と、痴漢事件がきっかけで言葉を交わすようになり、、、
高校生の、子供のコミュニケーションスキルなんて、まだまだ発展途上。
それがSNSゲームでのアバター同士のチャットというクッションを置くことでどんどん成長していく。
そして周囲の人間ともちゃんと関係を築いていけるようになり、賢司に対する気持ちも恋愛感情なのだと自覚している。
一方、大人の賢司の方は今まで当然のようにノンケだったし、一吹が高校生なのもあって自分の一吹への感情の正体になかなか気付きません。
そんな二人なので、外から見れば既に両思いのいちゃいちゃバカップルなのに、無駄に紆余曲折したりもしますが、、、。

この主人公二人の、ちゃんと社会とつながって成長していくところがいい。
朝丘ファンじゃない人にこそオススメ。

12

表紙が好きすぎる。

さびしいのと、しあわせなのとが、何かもうカフェラテみたいに混ざり合って、でもそれが恋だよなぁと。
二人とも、大人っぽさと子どもっぽさのバランスが絶妙で、それがお互いにとって魅力でしかなく、恋人になる前の無意識に惹かれあってイチャイチャしてる感じとか、なんだそれー。
作者さんがあとがきで延々書いてられるみたいなことをおっしゃってたけど、くだらないやりとりも延々読んでられるわ。
相手の幸せを何よりも優先するんだとか、猫っかわいがりしたいとか、そんな気持ちがあふれてて、さびしいのかくすぐったいのかよくわからんでも萌えるー!という結論です。
ただ一つ残念なのは、少しでいいので攻めからの視点の文章を読みたかったなぁと。受けがかわいすぎて悶えてる気持ちを直で読みたくてしょうがないです。

6

切なさに共感

大好きな作家さんです。
今回もいつも通り、というより、いつも以上に切なくて、
読後は温かい気持ちになりました。

考え系の受だけどイラっと来ることはなく、むしろ、相手の性別問わず、
片想いの切なさがぎゅっと詰まっている気がします。
気持ちを丁寧に表現してあるので、読み進むうちに受に気持ちが
シンクロしていきました。

攻が受に告白の返事をする前後の場面の心理描写が秀逸!!
思わず涙…

最後に心から受に「良かったね~」と言いたくなる作品でした。

15

心を伝えることの大切さ

毎日通学のために乗るバスは、同じ時刻に同じ顔ぶれ。
見知った顔だけど会話もしない、ただそれだけの他人。
それが主人公が痴漢に遭ったことで見知らぬ他人の関係が動きだす。
ソラとは主人公が招待されたSNSの「アニマルパーク」で自分が作ったボロボロうさぎのアバターに付けた名前。
バスは坂道を走り、その坂の上に主人公の家はある。
クラスメイトは自分の事を「河野」と呼ぶ。
友達って下の名前で呼び捨てにするものだろうと思う。
なのにどうして自分は名字なんだろう?

本当は友達が欲しいのに自分がゲイであることから仲間の話に入って行けない事が後ろめたくて友達が作れないでいた主人公・一吹が
バスの痴漢事件をきっかけに、ちょっとカッコイイなとおもっていた大人の賢司に話しかけられ、彼に誘われた彼の会社が運営しているアニパーというSNSに招待されたことで、年上の賢司にアバターを通して本音を話す事ができるようになる。
そして友達もいつの間にか出来、賢司への心が育って行く。

一吹は決して他人を拒絶しているわけじゃない。
彼の前の席になったクラスでも人気モノの林田は女の話しかしないが、頻繁に彼に話しかけてくるし合コンにも誘ったりする。
でも一吹は林田をうっとうしいとかバカにしたりはしていない。
何気に林田にゲイであることをカミングアウトするが彼はそれを冗談のようにはしてもだからといって一吹を卑下したり嫌ったりしていないのです。カミングアウトしたのも彼なら話しても問題ないと思ったからだと思う。
このホモの噂を聞いて一吹に興味を向けてくるのが林田の友人の嶋田。
彼が一吹の友達論を聞いて、自分も人に合わせていると言っているのだが、
友達とは無理に人に合わせるものではなくて、相手に興味がわいて知りたいと思い知ってほしいと思い、そして成立していくものではないのか?と・・・
それを解らせてくれたのが、賢司との何気ないチャットと、現実での会話。

大人の賢司にとっても一吹の存在は、その腕の傷とともに気になっていた存在だったようだ。それがバスの出来事をきっかけに・・・
彼は大人だけど一吹に合わせているという感じはしない。
一吹は媚びたような態度はとらないし、堂々として歳相応のでもしっかりとしたものをもっていたから、彼と本音で話すことができたのだと思うし、賢司の仕事と関係ないから一吹に話すこともできたのだと思う。
彼には、姉に対する罪の意識があり彼女の生まれなかった子供が生きていたら一吹と同じ歳と思うと弟のようなそんな愛おしい気持ちでも見ていたようだ。
彼の視点がないので、ゲイとわかっても彼と親しい間柄は続けることはできるかもしれないが一吹の気持ちを知ってしまったらそれは悩むことになる。
ラストへ向かっての彼の決断は、決定打は・・・もう日頃のコミュニケーションの積み重ねとしか言えないので、実を言うと欲情まで行くのに無理を感じてしまった感はいなめない。

車内で化粧をする女子高生ミチルが老婆に席を譲るとか、チャラ男の不器用な片思いも、痴漢をしたひょろりんも、皆それぞれにそれぞれの性格を出してすれ違ったり関与し合ったりしていく。
一つの出来事で人間関係が変わっていく様は、実に丁寧に描写され、心も描写され、主人公については本当に自然に成立していくのが見えたのだが、面白いものだ。
もう一つ注目するのは、一吹の母子の親子関係だ。
海外赴任しているだけあって、電話口で最後に「愛してる」と口にだすその親子関係は素敵だからこそ、一吹の性癖に関しても前向きに考えてくれるに違いない。

【3年後のソラ】では一緒に暮らしている二人の姿。
そして嶋田と林田とまだ友達関係でいるし、嶋田はミチルと上手くいっているようだし、賢司の姉も健康になったのだろうか?
そんな円満な姿を垣間見た。

yocoさんのイラストが素敵だった。
アバターのソラと賢司のシウバの可愛らしいこと。
作品を邪魔しない程度に自然に溶け込んで彼らがそこに息づいているようなイラストでした。

11

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