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再会を機に、密かに慕っていた兄への恋心があふれ出す──センシティブLOVEストーリー
iki mo tomaru hodo
杉原先生作品というと、ゆっくりと恋愛感情を意識して、どんなに時間ががかかっても、とうとう思いを成就させるお話のイメージ。
この作品も、
出会ってから、いつしか恋情を意識して、でも、ずっと思いを秘めていて
その思いが、ようやく通じあっても、色んなしがらみを絶ちきる勇気が持てなくて、一度離れてしまうけど、長い時間をおいて再会した時に、結局、本当に必要で、本当に欲しいのはお互いだけだと、ようやく決心する話。
この作品の二人の場合は、両親を亡くして伯父の家に引き取られて、兄弟同然に一緒に育った従兄弟同士。
ただの幼なじみよりもずっと濃い。
そこが、いい味付けになっていました。
「幼い頃から(実は)受に恋している攻」というお題で、答姐トピでご紹介いただいて読みました。まさに息もとまるほどドキドキしたシーンもあって、とても面白かったです。彰彦の静かで優しい執着ぶりに「そう、この感じ!」と思いました笑
家族愛と恋愛――人によって価値観は違えど、この二つは基本的には別の感情だと思います。どちらも厄介で、面倒で、けれど欠けがえのない存在。その二つをただ一人の相手に感じてしまったら?どちらか一方を取ればもう一方を失うとすれば?…そんな苦悩が全編に散りばめられているお話でした。そういう意味ではとてもリアリティーがあって、何もかもがスルスルっと進むような浮ついた印象のない作品です。
とはいえ、決して暗くて重い作品ではありません。幼い頃の無邪気な二人と、思春期の余裕のない二人、そして大人になって嘘を吐くことや駆け引きを覚えて素直になれず、色んなことに怯える二人。それぞれに萌えが沢山詰まっていました。
クライマックスできちんと行動に移す二人が好ましかったです。明るい未来が待っているといいなと思いました。
静謐な文体で、家族と恋人の間を行き来する二人の10数年越しの微妙な関係が描かれています。
両親を亡くして小学生の頃伯父に引き取られ、ひとつ年上の従兄弟と育った透。
17歳の夏、彰彦から求められる形で二日間だけ関係をもった。
自分との関係を密かに続けるため、伯父家族と疎遠になる覚悟の兄。兄にそんな負担をかけたくない透は、家族に戻ろうと別れを切り出した。
11年後、疎遠だった彰彦が実家に帰ってきて、離婚したことと会社を辞め起業することを告げる。家族と揉めた彰彦がしばらく透のマンションに住むことになり、二人の関係が再び動き出します。
幼い頃から想い合っていた二人ですが、互いの将来や人生、二人の家族のことなど様々なしがらみがあり、それらを投げ打って一緒に生きるという選択は難しい。
しかし、大人になって人生の選択肢が広がったこと、気持ちを押し殺すも共に生きるも苦しいことに変わりはないと気付いたことで、ようやく二人の道が重なったのだと思います。
東京で彰彦の会社を手伝うという形で、一緒にいられる方法を見つけた二人。
先が見えないことは昔と変わらないが、二人で歩むことでそれまでの息苦しさはきっともう感じないであろうと思われる、靄が晴れたような爽やかなラストでした。
気になったのは、彰彦の心中が分かりにくい点。何でも一人で決める性格は男らしいといえばそうですが、その決断に至った過程や理由がないため行動に共感しづらい。
離婚や起業、家族に戻った透に再び手を出すきっかけなど、ストーリー上重要なあらゆる行動のプロセスが分かりにくいため、何故今更このタイミングで?という疑問が最後まで解消されませんでした。その場の雰囲気や巡り合わせによる始まりも人生には付き物かもしれませんが、物語なので何らかの決め手は欲しかったです。
嗚呼、杉原理生先生の世界だなぁ、というのが真っ先に浮かぶ感想です。
あの表紙絵の背景は、ちゃんと物語にリンクしていて。
そういう細かい事も含めて、静かに感動します。
この物語では、主人公の透が幼い頃に両親を亡くし、東京から伯父の家(日本海側)へ引き取られるところから始まります。
幼少期、小学校、中学校、高校、そして十一年後の現在と、様々な時代にお話が前後して進みます。
伯父さんの家には年の離れた長女と、一つ上の長男の彰彦がいて。
伯母さんとお祖母さん(途中まで)もいます。
伯父さんの家族も皆良い人で、家庭も裕福で、田舎ののんびり空気で幸せな毎日。
それでも透は、知らず知らずに気を使いながら生活をしていて、それが癖のようになっています。
透が唯一気を使わず甘えられる存在、それが彰彦でした。
この物語は女性が何人か出てきます。
家族でボス的存在の、七つ年上の雪絵ちゃん。
幼馴染みで透と大の仲良しな、一つ年下の加奈ちゃん。
いつもは優しいが、切れると実はかなり怖い(?)伯母さん。
透に教訓のような事を語ってくれた優しいお祖母さん。
などなど…。
私、実はこういう「家族」だとか話し合う話とか、「女性」とのやり取りの話が大好き。
もう、男前すぎな雪絵ちゃんには惚れてしまいそうです。
伯父さんの優しい気の使い方も好きです。
加奈ちゃんも愛すべき存在でした。
なにより伯母さん!こういうお母さん沢山いるよな。
このお話、全体的にはかなり大好きなんです。
ただ、個人的にはちょっとお話に乗りきれない場面がありました。
彰彦の心情が意外とサラッと書かれるというか。
よくわからないまま進んでしまう場面が。
ちょっと、置いてきぼりをくった感じになりました。
だから、本当は萌×2にしたかったのですが。
萌と、萌×2の間くらいなので、萌に。
立ちはだかる家族という壁、己の弱さとの戦い。
そんな設定が大好きな方には、オススメ致します。
自分の好きな「スローリズム」とか「恋の記憶」とかその辺りをほうふつさせる、派手さはないがじっくりと進む物語。
激しい萌えはないもののこのテンポと紡がれる気持ち。
何よりも主人公達の障害となる背景が実に身近で突飛でない、家族や幼馴染やそういう人間関係が過去の積み重ねもあいまって
誠実に向き合う現実として表わされるのがとても良いのです。
両親を亡くし引き取られ実の子供のように育てられた透。
10年以上疎遠になっていた従兄弟の彰彦が突然仕事を辞めて帰ってきた。
しかも離婚もしたという。
新しい仕事を立ちあげるという彰彦は、長男でありながらもう家を継ぐ期待は両親にはされておらず、それが透へ向いているというしがらみ。
兄弟のように一緒に育った仲だから、
二人の想いも関係も明かすわけにはいかない、そして地元を出ることも踏ん切りがつかない。
彰彦が帰ってきたところから、過去の積みかねられた思い出が挟まれて、彼等がどういう関係だったのか、
どういう気持ちでいたのかという事が挟み込まれていきます。
それはあまりに自然で、彼等の想いを感じるのに充分すぎるほどの切なく幼い思いのやりとり。
だからこそ、透のためらいがとても身近に迫ります。
彼等の伯父や伯母、姉の雪江、幼なじみの加奈の絡みも、ほんとうに現実に、すぐそこに落ちている3次元を生きる自分たちにもスルリとあてはまるそれぞれなのです。
現実的といってしまえば、そうなのかもしれませんが
切ないというよりも、こうした現実を現実的に受け止めて決める決意。
親からすると悲しい決断なのかもしれないのですが、きっと姉や幼馴染がうまくとりなしてくれると思うのです。
そういう救いがきっとある。
透が中心の為、彰彦の結婚の理由など彼自身について不明な部分は否めないのですが、全体から見るとスルーできてしまうのでした。
等身大の彼等が、とても愛おしいと思えるお話でした。
従兄弟同士、それも長い間相愛な二人なのに好きだと言う気持ちだけでは
前に進む事が出来ないもどかしさや苦しさ切なさを感じさせる内容でした。
受けになる透は子供の頃に両親を亡くし叔父夫婦に引き取られ従兄弟たちと
分け隔てなく育てられ、それが従兄弟を恋愛感情で好きになってしまい
さらに互いが相愛だと知り、彰彦が東京の大学に進学した後に帰郷した時に
二人は結ばれる。
それは叔父夫婦が旅行で不在の二日間の出来事なのですが、一人留守番をしている
透に旅先からの様子を心配する叔母の優しい言葉に好きな人と相愛になり結ばれ
浮かれていた気持ちが次第にこの温かい家族を失うかも知れない思いに気がつく。
優しくて周りを気にしてしまう気弱な透、その透を好きだからこれ以上悩ませたくないと
今まで通りの家族でいたいと言う透の切ない思いを受け止め一人東京に戻る彰彦。
互いにそれぞれ家族として付き合う事を決めたが、いつも心には相手が住んでいる。
彰彦は思いを振り切るように前に進む為に別の相手と結婚し、透は地元に残り
めったに帰郷しない彰彦の代わりに叔父たちの側にいる。
こんな環境なら好きなだけで全てを捨てて誰かを不幸にしながら気持ちのままに
振る舞うなんて出来ないと思えるお話で、でもそれでも捨てきれない思いがあって
彰彦の離婚や起業などで再び二人は深い接点を持ってしまう。
子供の頃の未消化みたいな切ない恋心は10年経っても消えていない。
どんなに時間がたっても捨てきることが出来ない思いと大事にしていた家族。
それでも年齢を重ねただけ透も着実に大人になっていて、自分にとって捨て切れない
大事な存在を今度こそ諦めたくないと思う相手を思う切ない気持ちが伝わる感じで
晴れやかなハッピーエンドではないけれど、今後も二人で模索しながら
前に進んでいくようなお話でした。