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phantasmagoria no yoru
砂原糖子先生の御本は2冊目。
『イノセンス』がとても素晴らしくて、先生の作品を他にも拝読したいと思っていたところに、書店で見つけてお迎えしたのがこちらの作品。
新品の紙本在庫があって良かった...(『イノセンス』は電子で読んだためイラストを拝見できなかった)
そして、何から何まで完璧な作品でした。
1ページ目から引き込まれる文章。
最後までページを捲る手が止まりませんでした。
超がつくほどシリアスなストーリー。
時間軸が何度か行き来しますが、先生の手腕が素晴らしく、すんなりと頭に入ってきました。
ふたりの出会いやタイトルの意味など、徐々に明らかになっていく要素によってどんどん深みが増していって、とにかく凄かったです。
『イノセンス』に登場した"レイダーマン"なる特撮ヒーローアニメがこちらにも登場していてワクワクしました。
梨とりこ先生のイラストも素敵です。
木原音瀬先生の『月に笑う』シリーズの挿絵も梨とりこ先生のご担当ですが、先生のイラストは裏社会系の作品ととてもマッチしているなと感じました。
絶対絶対、何回も読み返すと思います。
読み終えて、余韻に浸ってしまう、それぐらい良かった。
幼なじみの再会&両片想いモノです。
時系列も現代だったり過去の話だったりします。
でも混乱することなく、スムーズに読めますし、過去のエピソードのひとつひとつが印象的で、無駄なく現在に繋がっているんですね。
あの時のあの言葉はこういう心情で、とか、あの態度はそういう流れで、とか。
切ない。
読者としては、過去エピソードの小、中、高とも二人が両片想い状態なのがわかってしまうから、とにかく切ない。
父親の跡を継ぎ、貸金業を営む艶(受け)視点で話が進むのですが、この艶がもうたまらなく好きでした。
人気子役だったときの醜聞での引退、父親の遺志を継ぐ決意、継いだ後の汚れ仕事でのストレスなど、艶は若いのになかなかの苦労人なんですよ。
母親は最低な人間ですし。
学生時代から顔はキレイなのに無表情で心を隠し、ヤクザまがいの仕事では本来人情家なのに取り立ては非情、という心身のアンバランスさが危うく思えて、読んでいて惹きつけられるんです。
人に頼ることをよしとせず、歯を食いしばって向い風に立ち向かう姿がカッコいいんです。
攻めのね、永見もね、カッコいいんですよ。
取ってつけたようですが(笑)。
艶への執着度合、良いです。
読んでいる最中はあまり思わなかったのですが、この永見…ヘタレわんこ…ですよね?
タイトルにもなっている走馬灯がとても効果的に使われていて、お話全体が幻影的で薄明かりを通して綴られている、そんな感じがしました。
ゴミ捨て場に人が転がっているという不穏な始まりは、BLではありがちで、よくあるボーイミーツボーイかと思いきや…ですよ。
読み終わった余韻が心地良くて、また読みたくなるような作品でした。
すごく好きです。時系列を外したエピソードの並べ方で煽ってくるような演出で、最初にちょっと不安な気分でスタートして、大丈夫かな…?どうなるのかな…?と恐る恐る読み進めて、徐々に明らかになる事実にすっかり魅了されて一気読みしてしまいました。
街金業の束井とバーを営む永見の幼馴染み再会愛です。迷走しまくる束井の想いと、子供の頃の気持ちを温め続けた永見の一途がめぐりめぐって成就する流れがとても好きでした。迂回する初恋パターンよき…。子役のスターだった束井のいびつな感情(周囲の思惑に翻弄される束井の人生が切ないんですよ…)を理解し受け入れる永見の包容力にも萌えました。表面的な糖度は控え目なのですが、すました表情の下で、めちゃくちゃ炎上している感情(溺愛)が見え隠れするのも最高でした。
主軸の2人のキャラクター(美形男気と男前男気)もいいんですが、周辺人物たちも面白くて(永見の元カレ・ヒラメやヒラメ兄のおしゃべりオネエ蜂木、強面だけど気のいい束井の部下たち、そして、もはやこれは執着愛では?とすら疑ってしまうほど束井の存在に固執する元・ライバルで俳優の大瀬良!)、物語に奥行きが出ています、さすがです。作品の雰囲気にドンピシャな梨とりこ先生のイラストもあいまって、迷いなしの神評価です。
砂原さんの文章が好き。呼吸に合うリズムと柔らかい文体で、するする読める。来てほしいところに来てくれるような、しっくりくる納まりの良さがある。エロシーンでは文章が清潔感を付加してくれているように感じるところも好き。
本作は長い長い両片思いのお話。といっても受けの束井は自覚するまでに驚きの期間を要しており、片思い未満かもしれない。攻めの永見は一度振られているため、束井のことは特別枠に入れておいた感じなのかな。
序盤で語られる束井の過去はとても辛いもので、はっきり言って胸糞。だがこれはただの始まりにすぎず、終盤まで影を落とし続ける。そこらじゅうに散りばめられた傷に、読みながら心がささくれ立っていくような辛さを覚える。
そうした中、束井の中で永見は最後の砦のような存在なのだとはっきりしてくる。本当に本気で自分がダメになりそうなとき、最後の最後で頼りたくなる存在。このブロマンス的な関係性にめちゃくちゃ萌えた。ここをものすごく強調したい。好き。
落ちぶれて見られようと向いていない仕事に就こうと、無意識にでも永見を心の支えにすることで束井は立っていられたのかな、と思った。
後から思い返すと永見の出番自体は少ないが、それを感じさせないほど束井の中に永見の存在を感じていた。
ストーリーは終盤にかけてめまぐるしく動く。事件の盛り上がりに永見が直接は絡まないのが残念。とはいえ、そこに至るまでに永見がやったことは、純粋な執着愛が見えて良かった。
解決後、やっとのことで結ばれる二人。心のつながりの強さはずっと感じていたので、そこに関係性を合わせるために必要な手順を踏む二人を見ているかのよう。ブロマンス作品にその先がついてきたお得感がある、みたいな。
悪には鉄槌が下り、過去も修復傾向を見せ、二人は夢に向かって新たな出発を決める。物語は綺麗に終わり、ラストにちらっと描かれる永見の明るさに救われた。
本編後にほっこりできる二人の小話なんかも読みたかったな。
序盤からしんどい展開が長く続き、最後まで読んでやっと気持ちが晴れる。途中で止めるとモヤモヤが残ってしまうため、しっかり一冊全部読み切る時間を取って読んだ方が良いと思う。
ダメ受けを書くのがお上手な砂原先生ですが、本作の束井も意地っ張りな男でしたね。
天使だった子役が、ちょっとしたことから転落していく……
かなり理不尽で切なかったのですが、攻めの永見がなかなか素敵でした。
そして、そんな攻めより素敵だったのが脇役の妻田!
このおじさん、最高でした‼︎
音信不通になった束井と永見を引き合わせたのも妻田の作戦ですよね?
そこかしこに妻田の策略?が見え隠れしていて、それが分かると思わずニヤッとしてしまう自分がいたりして、とても楽しかったです。
妻田なしには語れない作品ですよね。
もちろん、持てる財産の全てを賭けた永見の一途な愛情も良かったし、素直になった束井も可愛かった。
サスペンス要素が絡んでくるのも意外で面白かったです。
ボリュームある作品ですが、一気読みでした!
まさに【ファンタスマゴリア】に尽きる1冊。
映し出されくるくる回る走馬灯が1周、2周、3周…
山あり谷ありの人生を繰り返しながらも少しずつ螺旋状に上がっていく。
その中で、昔は気付かなかった気持ち・隠したかった感情が露わになっていき。
走馬灯が回れば回るほど
受けにとって攻めはかけがえのない存在なんだと訴えかけてきます。
なんでそこまで「心」が求めていながら無自覚でいられるのか…(ФωФ;)
無自覚だからゆえか、初恋を拗らせまくってただけにも見えました。
彼らの人生、ここぞのタイミングの悪さが重なるのがもどかしいです。
まず最初は小学校時代の告白のタイミング。
断る理由がなんとも子供らしく、それでいて家に帰ればドキドキしてたのが可愛い。
翌日本当はこう言いたかった、告白をなかったことにするつもりはなかった。
けれど平静を装った日常に飲まれ何も言えなかった。
そんな小学校時代エピソードにキュンとしました。
中学・高校は完全にすれ違い期ですね。
告白の返事をしないまま早数年。
攻めとしては受けが望んでいる「友達」に徹していただけなのだけど、
受けとしては何とも言えない燻りがますますすれ違いへと発展していき…。
きっと2人の間に流れる空気感が友情だけでないことに気付いていないのは本人ばかりですねw
読み手としてはもちろん、攻めがとっかえひっかえしてた彼氏連中も気付いてただろう…。
けれど受けは友達以上のものはないと思い込もうとして。
攻めはそれを尊重して友達のラインを踏み越えない。
なんとももどかしく焦れったく……萌える!!!(∩´///`∩)←DK好き
大学時代。きっと受けが人生で一番精神的に参ってたであろう時期。
このタイミングの悪さはその後10年の決定打となってしまった。
描写としては短いけれど個人的にはこのシーンが一番切なかったです。
受けの心の痛みが切なくて萌えに刺さりました…(;///;)←傷つき萌え
受けの生活は昔と一変してしまったけれど
自分の中に攻めの存在があるだけで会えなくても心の支えになってたのがグッときます。
そんなこんなで再会した現在。
くるくる巡る人生の中で変わっていくモノと変わらないモノがありました。
攻めは子供の時には出来なかったこと、守れなかったこと、
大人になった今度こそ絶対に諦めない強さがとてもカッコ良かった!
そんな攻めの姿が、受けの背中を押して、前へと歩き出す。
晴れやかで笑顔のあるラストも非常に良かったです。
束井艶は幼いころ、キッズモデルとして活躍していた。
けれど、とある事故からキッズモデルの仕事を辞めざるを得なくなる。
そんな時に出会ったのが、雑貨屋にいた永見嘉博だった。
決して女らしいとは言えない見た目の永見は、店番をしながらワンピースを着ていた。それを不思議に思う束井だったが、実はそれには理由があって……と。
そんな訳アリの二人が出会って惹かれあって、離れて、再開してくっつく……という話でした。
永見は早々に束井が好きだと自覚をしたけれど、束井はなかなか自覚ができなくて紆余曲折。
そんな二人でした。
男前の二人がお好きな方にはぜひ、オススメします。
幼馴染みの再会もの。受けが貸金業ということで、893要素もあるのかなと思ってたけど、ギリギリ法的身分の会社で安心しました。
砂原先生は、自己評価の低いヤサグレ・こじらせ系受けの書き方が本当にお上手だと思います。辛い経験をして自分の殻に引き込もってしまった理由もわかるし、根っこのところでは希望を捨ててなくて、救われたいと思ってることが伝わるから、読んでてつい応援したくなります。
そんな受けから拒絶されても諦めずに向き合い続ける攻めの一途さにも、胸を打たれました。
ファンタスマゴリアのように、様々なすれ違いや各々の思いが絡まりあって、最後には一番綺麗な模様を見せてくれる、そんな作品でした。
あらすじと表紙絵から勝手に少年時代からのほのぼの+切ない物語かと思い込んでいましたが、読んでみると、やさぐれ街金のすれ違いこじれまくった初恋の成就譚、でした。
というと身も蓋もないけど、元天使のような可愛い子役の艶(えん)が、子役同士の競争意識から起きた事故のために芸能界から消え、その頃出会った同級生永見との、タイミングの合わない恋物語が甘さ少なめで綴られて行きます。
小学生時代、中学生時代、そして高校での逸話が挟み込まれる形で物語は進みます。そこで象徴的に使われるモチーフが、永見の家にあった「ファンタスマゴリア(走馬灯)」のランプ。
回って、また回ってお前にまた会いたい、ファンタスマゴリアみたいに。
そう思いながら自分の心に気付かず、本心には蓋をして殻の中に閉じこもっていた艶と、友達としてずっとそばにいようとしていた永見。小5の時の告白から長い月日は経ってしまったけれど…。
そしてやっと永見に向き合う艶。
艶は受けだけど、「抱いてくれ」なんて言わない。『セックスしたい 今ここで、すぐ。』
永見は子供の頃からの一途さをもって艶を慈しみ、艶だって決して寄りかかってはいない。同級生の幼馴染の対等性が現れています。
二人が恋人になるのに長い時間がかかったけど、これからこれまで言えなかった沢山の言葉を重ねて想い合っていって欲しい、です。
走馬灯か!ナルホドナ(*・∀・)な一冊。
お話自体がまるで走馬灯を見ているかのような作品でしたね。
現在から過去。それから今に至るまでの流れ。
そして現在に戻る。
艶が見た走馬灯を読まされているかのような作品でした。
小さいころに出会った永見とのお話。
一人だった自分と一人だった永見。
お互いを埋めあうように一緒にいて、
好きだと告白されたのもうれしかった。
でも唯一間違ったのは、タイミング。
木曜日出なければwwwwな展開があとから考えれば
至極面白い。
テレビが見たいがために告白を断り、
断ったがゆえに距離ができた。
見たいがために、断ったのに、楽しみにしてたテレビも
ぜんぜん頭に入ってこない。
そんななんともぐるぐるから、どう二人が結ばれるかを
追いかけていくお話なのであります。
あるいみヤクザな家業に身をおきつつもな受を
よく分かっていた永見。離れていてなお~な一途さに
胸を打たれ、ハジメテなのにもかかわらず、
感じてしまう初めての=な場面がすごく良かったです。
最後、艶からセックスにさそう場面。
あれも好きだなーと思いつつ。
一気読みでした。
それもこれも冒頭の書きだしがとても気になる内容で、「これは一体どういうことなんだろう」と最後まで本を閉じることができませんでした。
そして幼少期から始まる苦しいまでの切なさ。
鎧をまとい続ける受けと、本音を隠すことが巧みな攻めの人物像がすれ違いの切なさをより引き立てていたと思います。
受けの艶(えん)はただ不憫というのではなく、不憫が生んだ歪みが描かれています。
大人になった現在の姿だけを見たら、分厚い鎧をまとったこんな人間よく愛せるなと思ったかもしれません。
しかし彼の孤独な幼少期から大人になっていく過程を見ると応援しかできなくなりました。
しかも仮面の下に隠されている優しさがたまに垣間見えて、余計たまらない気持ちになりました。
人の喜ぶ顔が好きという健気な本心も泣ける(ノД`)
ファンタスマゴリアな物語は切ないけど、それ以前に彼の両親が課した重荷もとても重大だと思います。
そこで苦しみもがく艶が本当に可哀そうでした。
彼を放っておくことができない永見の気持ちもよく分かる。
そして攻めの永見は、愛している人物は艶ただ一人というのが読んでいてそこはかとなく匂ってきました。
学生時代、艶の前で恋人をとっかえひっかえしてきたのに軽薄に見えない所が凄いと思います。
永見に本気だった子達にとっては可哀そうだけど、永見は結局艶至上主義だったんですよね。
その時にとり、友人という形は最良であって永見なりに艶をしっかり捕まえていたんだろうと思います。
後半になるにつれて永見の真骨頂を見ることができました。
お話のトーンは暗く読んでいて結構辛かったですが、こんなにも早く結ばれてほしいと願ったカップルはなかなかいないかもしれません。
走馬灯を使って艶の心情が表されていたり、2人の物語が展開されていく所がとても印象に残りなんともいえない余韻が残りました。
萌×2では足りない気がしたので神評価です。
砂原糖子さんは気になる作家さんのお一人だったのですが、
数ある作品から今作を選ぶにあたって
”ファンタスマゴリア”という耳馴染みのないタイトルと
挿絵が梨とりこさんだったことが決め手となりました。
小さな街金の社長束井艶と、バーテンダー永見嘉博の
切なくもスリリングな展開を含ませる同級生・再会もの。
幼少期のふたりの出会い、青春期のすれ違い、
大人のなってからの再会とすれ違いの果ての着地、が
今作のキーアイテムとなっている光と影が物語を紡ぐ走馬灯=
”ファンタスマゴリア”を追いかけるようにして描かれています。
長く切ないすれ違いを含め、見どころはたくさんありますが、
永見の一途な束井への想いには
萌えと共にしっかりとした読み応えと満足感を得ることができました。
元々わたしは
攻め(今回の場合永見)に厳しめの目線で物語を読む方なのですが、
永見には最初から最後までずっと好感が持てました。
特に、人気子役からの転落という苦い過去を持つ束井を
学生時代同級生たちのからかいから守るために
自分がゲイであることを飄々とカミングアウトするシーンがすごく良かった。
大人になってからも、窮地に陥った束井の元へ駆けつけたり、
自分の夢を犠牲にしてまで奔走するヒーローのような姿が、とても素敵。
(助けられる束井の方も、弱弱しいヒロインではなく、男らしさに溢れているところもgood!)
又、トイレの個室での束井の”遊び”に嫉妬心を燃やし
長年友達でいようと必死だった永見がついに束井の体に触れ、
ひとつになる展開には、萌えを感じました!
手探りで余裕のない、想いだけが先走って爆発したような感じが
個人的にすごく好みで。
勿論、お互いの気持ちを通わせた後の愛に満ちたベッドシーンも
素晴らしかったです♡どちらも必見!
エンターテイメントとしても、スリリングな展開が用意されていて
殊に終盤は、物語から目を離すことができません。
束井にとって因縁の相手である大瀬良という存在、
その彼が子供時代から抱えていた執念のような闇が印象的でした。
大瀬良を含め、
脇役たちがそれぞれしっかりとした個性を持って描かれていることも
物語を楽しむことのできる要因のひとつ。
特に束井の部下であり、保護者のような妻田は
陰の立役者といった感じで、すごく良かったな♪
小説だからこそ一層楽しめるストーリー展開と読み応えが
ぎゅっと詰まっており、幅広くおすすめできる一冊。
とっても面白かったです!
初読み作家さんです。
砂原糖子さんは、他の作品の表紙等を見る限り、
「明るい作風の作品を書かれる方なのかな」
なんて、先入観を持っておりました。
ところが、その先入観はこの作品で完全に打ち砕かれました。
ファンタスマゴリア(走馬灯)って美しい響きですよね。
今回の話は物語の奥行きが深くて…、
ちょっと陰鬱としているけど、芯はしっかりと通っていて…
そんな作品でした。
◆◆ ◆◆ ◆◆
主人公の艶(えん・受け)は、元は天使と呼ばれる子役だったが、
とある冤罪のような事故により、子役を辞め、
父親の代を継ぎ、街金の貸金業を営んでいます。
一方で、幼馴染で途中で行方を告げなかった永見(攻め)と
同窓会で出会う事になる艶。
しかし、永見(攻め)は小学5年生の時、艶(受け)に
フラレていたため、もう既に思いを伝えることはしなかった…。
でも、告白よりヒーロー物のテレビ番組を優先したなんて理由、
本当に小学生らしくて、残酷だけど可愛い理由だなぁと思いました。
しかし、随所随所で本当に「ここぞ!」という時に
艶を助ける永見。そして、同じく永見を助ける艶。
小学校、中学校、高校と一緒だったが、
「ずっと仲の良い友人」という関係ではなかった二人。
あああ、もうっ!
特にゲイだと永見が周囲にカミングアウトして、
男と付き合うようになった時は、もどかしくて仕方がなかったです。
「そんな男に永見を取られていいの、艶!?
あれだけ、小さい頃からお互いを素知らぬふりをしながらも、
大事に大事に思ってきたのに……」
と、焦れったかったです。
街金という汚れた仕事をしながらも、永見は艶を
「汚れている」という目で一度も見なかったと思います。
天使の艶。
綺麗な艶。
まるで、小学生の時に見たファンタスマゴリア(走馬灯)に映った
美しい顔と影をそのままずっと、28歳になった今も
永見は艶を美しさをそのまま投影しているように
見ているような気がしました……。
永見にとったら艶は、昔と変わらず綺麗で美しくて、
大事な存在だったのでしょう。
物語も佳境に差し掛かった時、
艶は、子役時代に冤罪のようなものに追い込んだ大瀬良と
出会い、罠にはめられてしまいます。
そこからの永見は、驚くほどにさらっと自分の身を切り捨て、
自分自身の全てを投げ打って、艶を救おうとします。
自分の夢だったバーの店まで売り払って……
ここに、優しく、包容力があり、愛しい人を大きく包み込む…
そんな永見という男の人間の大きさを見た気がしました。
エッチシーンは2回ありましたが、
2回めのラストのセックスは、二人の思いが通じあって…
美しくて……愛にあふれていて、まるで
ファンタスマゴリアに見守られているような優しく綺麗な
セックスでした。
でも、1回めのエッチシーンは……
まあ、場の勢いっていうのもあったでしょうが、
永見には、少なくとも燃えるような愛があったはずなのに、
それもみられず…ちょっと残念なエッチシーンになってしまいました。
◆◆ ◆◆ ◆◆
小学生から、長い時間をかけ、何度もすれ違いながら、
何度も想いを吐き出しながら、別々の道を歩いてきた艶と永見。
でも、これからは二人、手をたずさえて生きていくでしょう。
それを、おそらく、
ファンタスマゴリア(走馬灯)は、
優しく、灯をともしながら、見てくれれていると思います。
二人のこれからの人生に幸あらんことを。
約20年あまりの人生の歩みが丁寧に表現されていて良質の映画を見ているようなそんな感じでした。
人気子役だった艶。その人気を妬まれ若干9歳の同じ子役の男子に罠にかけられ子役を辞めざるを得なくなる。
月日は経ち艶は父の後を継いで金融業を営んでいた。ある時間違って出席で出されてしまった同窓会へしぶしぶ出席し、小学校からの同級生で唯一会いたい相手、永見に約10年ぶりに再会する。
再会してからふたりの止まっていた時が再び動き出します。
ふたりの関係を表すのに約20年あまりの長い月日を丁寧に描いています。
小学校時代の出会いから、中高校生時代のお互いへの重苦しい気持ちや葛藤、再会してからの関係と気持ちの変化。
艶を陥れた元子役の俳優は約20年経っても艶を羨み再び陥れようとしてマスコミも巻き込んでの事件が起こる。
それを永見が捨て身で助けようとするところは圧巻です。
その想いに艶も応えようと最後に同じような行動をします。これからはふたりで歩んでいくのだと。
長い長いふたりのすれ違いはようやく終わったのです。
永見が艶を本当に長いこと艶を想いつづけてきたその想いに圧倒されます。艶が永見から逃げて会えなかった間も想いつづけ、でもまた逃げていた艶も実は永見を求めていたのです。
そんな二人の物語り。絆の深さに心地良く酔いました。
カバーイラストの絵が幻想的で素敵だったので手に取りました。
走馬灯なんですね。
記憶に残る思い出も記憶の彼方になってしまった思い出も。
死に瀕したときにくるくると廻るように目の前に現れるというアレ…。
そんな束井の思い出の多くはどれも永見が関わっているような気がします。
ストーリー展開が、現在の話が進む中、子供の頃から今に至る回想が挟まれて事件が起きるまでの流れになっているのが、走馬灯を見るのようでした。
2人の出会いは小学校2年生。
天使のように可愛い有名子役がある事故から一転ダークなイメージに染まり、家庭も崩壊し望んでいなかった職につくことになった束井。
両親の死後に引き取られた痴呆が進んだ祖母のため、母の幼い頃の姿を真似て女装する永見。子供の頃から夢だった自分の店を持ちバーテンとして働いている。
永見が束井に初めて告白したのが小学校5年。
ずいぶん早熟さんですね。
その告白に束井はテレビのヒーローものが見たくて深く考えずにことわってしまったという経緯がありましたが、その後何かあると思い出すのは永見のことなんです。
ターニングポイントだったり最低な気持ちで助けを求めたり、恋愛感情はないと考えていたらしいけれどやっぱりずっと好きだったんだろうなと思います。
永見に彼氏ができて一緒に帰宅していく姿を無意識に睨みつけるように見ていたくらいには。
束井は幼い頃から母親の望みで有名子役を演じてきていつしか意思ではなく言われたまま演技するのが当たり前になってしまったんじゃないでしょうかね。
だからどんな理不尽な目にあても本気で怒ったりどうにかしようとする気が起きないんじゃないかと思いました。
けれど、永見に関してだけは、何かが引っかかりつつもその感情がどこからくるものなのか考えうことはなかったし、探ることによって何か変わって行くことが怖かたのだとおもいます。
長い長い初恋が、子役時代の仲間からの八つ当たりと逆恨みするから起きた事件によって2人を結びつけることになるのですから、忘れたい過去ではあってもそれが二人には必要なことだったんですね。
印象深い登場人物が多くて楽しませてくれました。
強面の顔でありながら若社長(束井)には忠実でその幸せのため影でいろいろ画策しくれた妻田。転職先がらしからぬところのようですが、面倒見の良さと体力で結構合っているかもしれません。
下っ端社員の紅男も頭は冴えないけれどいいキャラしているので、新しい店で明るいムードメーカーになりそうです。
幸あれ。
親のエゴで子役として有名になった後の悲劇ということで、崎谷はるひさんのミルククラウンのシリーズを思い出しました。
内容もテイストも全く違いますが。
↑だったのね・・・姐さん方と同じく「なんやソレ?」と。
さっさと辞書でも見りゃいいのに本編にその言葉が出てくるまで、ファンタとスマゴリアか?いやいやファンタスとマゴリアかもしれん、とか文節どこで切るのかなぁなどとダラダラ思っておりました。アホでした・・・
全編通して湿り気を感じます。しっぽり・しっとりという余裕のある感じでなく、読んでいる自分までじめじめヒタヒタ湿気に浸っているようでした。
砂原糖子さんの作品はいくつか読んだはずなのですが、あらま新鮮!という印象で文章を楽しめました。
あるあるシーンにベスト・オブあるある文章を貼り付けたようなのとは違って、おおぉ・・・と思ってしまいましたよ。
溺れながら微かに息ができる程度に水面に顔を出してゆらゆらして、それでも空の北極星の位置を確かめているような、美人主人公ののせつない感じがイイ。
最後、街金会社をたたんで二人で生きていこうとするところで終わっていて、良かった良かったなんですが、借金完済した客と彼の息子のランドセルの場面がもう少しだけ読みたかったかなぁ(それとバッドエンドバージョンも妄想してしまいました)。
ファンタスマゴリアって何?と思った人も多いと思うが、私もその一人。
そのタイトルのちょっと不思議な響きが気になっていた作品は、
ファンタスマゴリア……「走馬灯」がキーにもなり、
全体の雰囲気を作ってもいる作品だった。
くるくると回るファンタスマゴリアのように、
8歳で出会った束井艶と永見の物語は、
現在と過去が入れ替わりながら回りながら進んでいく。
全体には明るくない物語なのだけれど、
このファンタスマゴリアの光のような、
ノスタルジックな色合いの雰囲気がある。
:
艶は、かつて一世を風靡した子役だったが
8歳の頃のとある事件をきっかけに引退を余儀なくされ
その後20年、人形のような美しい容姿はそのままに、今や街金の若社長だ。
一方小学校から高校まで一緒だった幼なじみの氷見は、
今はゲイも集まるバーの店長。
10年ぶりに再会した二人は……。
出会いは小学生の低学年。
小さな心に抱えきれない痛みと、埋められない欠損を持った二人は
健康な子どもの社会には居場所を見つけられず、
お互いといる時にだけ、息をつける関係……。
10代を経て、大人になって再会した後の波乱の顛末。
ヤクザにも関わりのある艶の仕事、
過去が絡んで事件が起こる……。
人生の裏側で様々なものを背負って生きている二人の、男前ぶりに惚れる。
先代から仕える艶の部下や、おねえのバーの客など脇役も魅力的。
そして、黒いスーツを着て、人生斜に構えて生きているような
艶の可愛らしさに胸がキュンとせずにはいられない。
氷見に関わりのある男達を、彼が心の中で
「ひらめ」だの「もじゃもじゃ」だの密に呼んでいる様や、
自身の気持ちと欲望を認めてからの率直さもいい。
最後事件は悪事は露見し正義は勝つ!というような結末で、
明るく爽快で、ちょっとユーモラスな読後感となっている。
何度も回るファンタスマゴリアのように、
長い時をかけて再会し、ついに想いを伝え合った二人に訪れた
朝の陽の光を感じさせるラストでした。
タイトル良し!
ストーリー矛盾なし!
軽すぎず、でも重すぎず!
キャラはたってる!
胸キュンあり!
読後感良し!
コメディはなし…。
いやぁ〜久々に完璧なBLを読ませて頂きました〜。
ツッコミどころもなく、勢いだけじゃなくストーリーでも読ませて、かつ萌えもあり。
しかも私の好きなワンコ攻めの要素も入ってて…なんでしょうか?この満足感w
丁寧な文章で描かれていて、全てがキラキラ輝くファンタスマゴリアのようです!
これはBL初心者からベテラン?まで幅広くオススメ出来る作品です。
タイトルが秀逸。
ファンタスマゴリアってなに?と興味を引くのと同時に、梨さんの美しく少し排他的なイラストの雰囲気がマッチしていてとっても素敵。
わたしの中の砂原さんのイメージとはかなり違いましたが、良い意味で裏切られた感じです。
受けの束井は人気子役だった過去があるものの、今は親の仕事を継ぎ貸金を営む28歳。
攻めの永見は念願だったバーを営む、束井の同級生。
同窓会で再会するまで疎遠になっていました。
小学生の頃、永見は祖母のために時折女装をしていたのですが、束井は彼をありのまま受け止めているんですよね。
そんな束井のことが永見は大好きで小五の時に告白するのですが、束井は見たいテレビ番組があったがためにスルーしてしまうんですよね。
なんともリアルに子供らしい(苦笑
そんな束井のこともずっと永見は想い続けてきました。
ファンタスマゴリアとは走馬灯のことだということですが、この作品の書かれ方は過去へ飛んだり現代へ戻ったりとクルクル回ります。
永見の想いも時に流されつつもまた束井へと戻り、束井が過去に人気子役から転落した原因も回りに回って再び束井の足元へ現れます。
そのストーリー展開に不自然さはなく、流れるように進みます。
そしてこの作品は、攻めも受けもあまりに男前です!
こういう主人公達ってめずらしいかなって思います。
束井のキラキラしたものに囲まれた幻のような過去と、あまりに現実にまみれた現在。
その現在の自分がすべて本意でなかったとしても、それでも束井は周りの人間を守るためには泥をかぶることを厭わない。
永見も学生時代から自分のすべてを束井のために投げ捨てることを厭わなかったし、それは再会を果たした現在も変わっていませんでした。
久々に女々しさのないBLを読みました。
暗い話や陰湿さもあるにはあるのですが、キチンとラストには救いがあり読後気分が良かったです。
子供時代に我が家にも走馬灯がありました。
温まると回り始めます。
この作品はまさに走馬灯ですね。
冒頭いきなり歓楽街のゴミ置き場で気を失って倒れているところをホームレスの老人にマネキンと間違われるシーンから始まるというこの物語。
タイトルのファンタスマゴリアは【走馬灯】のことだそうで、まさにくるくるまわる走馬灯のように過去と現代を行ったり来たりして物語は進んでいきます。
元人気子役として華々しい表舞台に立っていた束井は今は親の後をついで街金屋…。
そんな束井と幼馴染の永見が小学2年で出会ってから小中高を友人としてすごす過去と、同窓会で再会してからの現在が交互に描かれています。
互いにお互いを想っているのにすれ違う心がどうにももどかしくてせつなくて、読んでいて何度も胸がきゅっとしました。
これはとてもよい両片想いものだなぁと。
何度行き過ぎても何度でもまためぐり合う…ふたりの関係自体がファンタスマゴリアにリンクされていて…
現在と過去を行き来する展開が、この何年越しものすれ違う想いをさらに強調するかのようでした。
バーテンダー×街金業者ものですが、裏社会もの的なダークさはそんなに感じず、繊細でせつない印象を受けました。
Hシーンは2回ですが、どちらも甘く熱く色っぽくてとてもよかった…!!
そしてぐいぐい引き込まれるストーリー。
束井が子役をやめざるを得なくなった事故に大きく係わった元子役の大瀬良が、現在の束井の前に再び現れることが束井にとっても大きな転機となるのですが…
大どんでんがえしのどんでんがえしという感じで、最後まで気を抜けない展開でした…!
砂原さんの作品は、かなりな確率で読んでいるはずなのですが、ここ1~2年はちょっとSF微妙に色物な、ファンタジー色の強い作品ばかりを読んでいたような印象。
そんな折、この作品は久々にストレートなBLでした。
設定もBLの王道とも言えるおさななじみ物、それに加えて芸能界と、街金融なんていう裏稼業っぽい物までも絡めて、まさにBLの美味しいところてんこ盛り.
ファンダスマゴリア・走馬灯のように、ずっとぐるぐる続く巡り合わせ。
同じ事を繰り返し、繰り返しするだけでなく、ちゃんと追いついて、前向きに終わるところも完璧。
物語は、ゴミ集積所でホームレスに捨てられたマネキンと間違えられる、束井の姿から始まります。
サスペンスドラマのような幕開けですが、話は一旦過去へと戻り過去と現在を行き来する構成に・・・区切り区切りに、年代だけではなく表題のファンタスマゴリア由来のタイトルもあり、とても素敵です。
小五の時、永見の告白をレイダーマンを観るためにあっさりふってしまった束井。
でもそれ以来、束井は永見のことがどんどん気になっていって、いつしか心の中を大きく占める存在となっていきます。
一方、束井への恋心を秘めたまま、嫌われない距離で束井を見守り、さりげなくかばったりもしてくれる攻の永見、かっこいいです。
同窓会を契機に、再会した二人。
永見は夢を叶えて自分の店を持ち、束井は父親の事業を継いで街金を営んでいるのですが。
この束井の街金に、束井が子役生命を絶つ原因となった大瀬良が現れてから、話が急にきな臭くなっていき、冒頭のシーンへと謎が解かれていきます。
大瀬良と対峙する束井。
整形した大瀬良の顔が束井の顔に似せたものであったということに、彼の束井へのねじれた執着度合いを感じゾッとします。
立体駐車場で大瀬良の車に追い回される束井・・・もう、ハラハラドキドキで。
結果は・・・さすが、エンゼルの艶ちゃんでしたけれど(安堵)
早々に束井のピンチを悟った永見は、自分の店を売ってまでして大瀬良の情報集めの資金を作り、集積所の束井を救いにきてくれます。
「俺は、俺が大切だと思う人間の名誉を守りたかった。それだけだ」
・・・永見の男前なセリフに、クラクラ。
そして、二度目のHシーンは、本当に幸せいっぱいで。
二人の喜びがグングン伝わってきます。私にとっての幸せなHシーンベスト5に入りそう(笑)
ああ、ほんとよかった!!素直になった束井の可愛らしさは反則ですね(*'v^*)
ラスト、永見の横で笑んでいる束井。笑顔を取り戻せた束井の姿に、心からおめでとう!!と言いたくなりました。
もうですね。
この“ファンタスマゴリアの夜”は、ラストへ向かって場を支配していた負の札がすべて吹き飛ばされて、一面幸せカードになる爽快感がたまらなかったです。
二人の再会のキューピッドである外見フランケンの妻田や、二人のよき理解者になってくれるヒラメ兄の蜂木など、脇役のキャラもとても魅力的でした。
ああ、面白かった~!!
余談ですが、艶ちゃんがハマっていたレイダーマン。
これって、イノセンスの睦くんや高潔であるということの真岸が好きだった特撮ヒーローですよね。砂原ワールドの男の子達の心を虜にするレイダーマン・・・なにか懐かしくて私まで息子達と観たことあるような気になってしまい(笑)思わずニヤリとしました^^
幼なじみで過去に攻め様から告白されて、子供心にアニメが優先で告白された日は
見たいアニメの日だったから、じっくり考えも無しであっさり男は範疇に無いなんて
一言で流してしまった過去がありながらも、唯一の友人でもあり、告白後も変わらず
接してくれる攻め様に安心しながらも、告白された事がいつまでも頭に残り逆に意識して
それでも、だったらどうしたいなんて事もあえて深く考えないように生きてきた受け様。
でも、事ある毎に思い出すのはどんなに離れていても攻め様のことだったりする。
そんな幼なじみ同士の長い微妙にすれ違った思いが、走馬灯のように現在と過去の出来事を
リンクしながら、二人が結ばれるまでの内容なのですが、かなり面白い。
受け様の背景も子役芸能人だったが、あるトラブルで業界から追い出されるように引退。
物心ついた頃から普通とは言えない生活を続け、普通の友人もいなかった受け様が
初めて得た友人が攻め様、その攻め様も初めて出会った時には女装姿だったりと
なかなか子供時代の背景もシリアスなのですが、後味の悪い重苦しさは無かったですね。
後半は受け様の危機的状況や、攻め様の一途さが染み入る内容でとても惹かれます。
幼なじみ同士だから20代後半になって、甘い恋人同士とはいかないけれど、
いつもどんな時でも心がどこかで通じ合っているような雰囲気で素敵な作品でした。
元人気子役の今は街金の金貸しをしている束井と、幼い時だった故に告白を受けてもそれに答えられず、それでも側にいた氷見の、束井の回想を中心にして10年後の再会から事が動くお話。
大雑把にどんな話かと問われればこうなのかな?
非常に静かにまさに”ファンタスマゴリア”(走馬灯)のようにクルクルと過去を見せながら展開していく話はまるで糸が絡め取られていくように、終盤に向けて全てが回収されてとても綺麗なフィニッシュを迎えました。
なかなかに「お見事!」と言うべきか。
そこに一辺の不安もなく、ようやくという安堵感があります。
氷見という男の優しさと思いやり、これが懐の深さを見せてすっぽりと包みこむようです。
初めての束井との出会いの時、彼は時々女装しています。それは祖母の為。
中学校の時、修学旅行で束井がからかわれた時に自らヤリ玉になって代わりとなる。
そして再会後、束井の為に私財を投げ打って彼を助けようとする。
彼のさりげなさと、いざという時の男前な態度。
押しつけがましくなく、さりげなく、嫌味でなく、彼の魅力が彼視点でなくとも充分に現れていました。
束井という男、彼もまた投げやりなようでいて仕事柄鬼にならざるを得ない時もあるのだが、基本、良い人なのだろう。
小学5年という幼い時の告白に振った形になってしまったが、それまでと変わらない氷見に慢心していたというわけではない。
いつか、という気持ちがありながら氷見のゲイ告白にチャンスを逃してすれ違ってしまっただけなのです。
きっと、父親が亡くなるということさえなければ、10年も開いてしまうことはなかったのかもしれないが、彼が氷見に遭いたいと思った時のまたもやのすれ違いが、彼を氷見から遠ざけてしまったのかもしれない。
そして彼は強くなったのです。
束井が子役を辞めるきっかけになった事故に関わった大瀬良という男が、またもや、クライマックスで彼に関わって、再びの大きな転機の一因をになうとは!
その絡ませ方も、彼が街金をやっているがゆえのありえなくはないものだと思えます。
この辺り、面白い見どころでもありました。
出会った時からの彼等は運命の番だった、と言ってしまうとつまらない。
しかしそう思えるほどの、内容の濃さに圧倒されました。
まさにファンタスマゴリア、読み応えも充分にありました。
「ファンタスマゴリア」=幻影、走馬灯
作中では、束井と永見の思い出の品(ランプ)であり、束井の過去の栄光であり。
何より、束井の回想が大半を占める本編自体が走馬灯。
貸金業者のアコギな世界を描いていながら、静かな感傷があり、柔らかな味わいです。
「天使」と呼ばれる人気子役だったが、ある事故でバッシングを受けて以来落ち目となり、芸能界を引退した束井。
仲良くなった永見は、祖母に亡くなった娘の代わりに女の子の格好をさせられていた。
大人に求められる虚像を演じていたという共通点から、惹かれ合ったのかもしれません。
子供の頃、永見の告白に応えられなかったことへの後悔。
大学を中退し、父の貸金業者を継がざるをえなかった出来事。
自分と違って夢を叶えた永見との再会。
カネの取立てに容赦ない束井ですが、回想のなかには、自分の部下や客、永見に対してどこか感傷があり、マネキンのように整った容姿ながら情を捨てきれない人間臭さが魅力です。
そんな束井の事務所をかつてのライバル子役・大瀬良が客として訪ね、メディアやヤクザも絡んでの騙し合いに発展。
スリルある展開ながら、子役のなれの果て二人の争いには経年の虚しさも感じられて少ししんみり。
永見は束井に昔フラレているため、あくまで友達として力になろうというスタンス。
何かあったら絶対に助けるし、実際に大瀬良からも全力で守るけど、自分の気持ちは抑えよう抑えよう…としている所に萌えがあったと思います(*´▽`*)
実はずっと前から両想いで、子供の頃の他愛ない誤解が尾を引いている関係なので、
恋愛物としてはオーソドックスな展開。
しかし束井の人生を追う物語としては、永見との関係を含めあらゆる鬱屈が終盤で一気に晴れ、ようやく夜が明けたようなラストが爽快です。
Hシーンは2回程度ですが、忍んでいた想いが一気にあふれるような熱さがあって、
再会した大人同士ならではの甘さと幸福感にあふれていました♪♪
夜の世界を描いていますが暗いだけではなく。
束井や部下の人情が表れるシーンや、永見の経営するバーでのやり取り、
芸能界に戻れば?と言われた束井の意外な答えなど笑
ところどころホッと息をつけるところに登場人物の日常を感じられる作品でした。