東雲月虹
choucho musubi
美夏の初恋に、自分の気持ちを重ねてみる志緒。
自分にとっては桂こそが初恋で、
片想いだからこそのドキドキを楽しむ余裕も無かった事を
勿体なく思います。
他の人ならきっと一生の内何度も経験出来るかもしれないけれど
志緒は桂しか見えないし、いらないのだから…。
教授のシンポジウムの手伝いでスーツに身を包み、
ホテルでせわしなく働いていたのに
大学の時のゼミの先生と会うと言っていた着物姿の桂を見かけます。
声を掛けたわけではないのに、視線で気がつく桂も相当。
そんな視線を送れる志緒も大概w
いや、愛なんでしょうね、単純に。
夕ご飯を一緒に食べ、珍しくお酒に酔う志緒が可愛らしい。
着物姿の先生に目を奪われているのをからかわれ、
「可愛い」と言われる事すら悔しい。
桂は表に感情を出さない様にしているだけなのに
(その実志緒が好きで好きでたまらない)
そんな桂を見抜けない。
拗ねても何でも志緒は可愛いんだものしょうがないよw
強引にキスをされ、抱き寄せられ、
慣れない着物の感触を感じて思わず帯をするっと解いてしまう。
誘ったつもりはないのに。
H描写はこの度ありませんが、そりゃもう甘い夜だったかと♪
次の日の朝、さぁどうしましょう。
着付けは実家でしてもらった為、
帯の結び方なんてわかるはずもなく、着替えもない!
同じホテルに泊まっている先生を部屋へ呼び着せてもらいますw
その間、バスルームに隠れる志緒ですが
“とにかくひとつだけを濃厚に酷使した雰囲気が出ないよう偽装を試みた。
たとえどんなに白々しかろうと。”
裏工作するあたり必死!!
それを「さっきからちょこまかちょこまか、
ディズニーのアニメみたいな動きしてるよ、お前」なんて桂にツッコまれるし。
すごく目に浮かぶ……。
お年を召した先生に商売女でも呼んだのかと言われ
「ちゃんとした、正規の恋人です」とあっさりいいのけてしまう。
志緒を先生に紹介してもいいと言ったのは冗談ではなかったのかも。
「ほどくばかりが能じゃないだろう」に対し、
「ほどくばかりが能でいいんです」
きっと志緒はちょうちょ結びくらいならしてくれる。
するっと帯を解いてくれたのは志緒だけだったから
帯は自分で頑張るんだ、と。
のろけ全開ですね……溜息。
その会話を聞いて、志緒はすぐにでもバスルームから飛び出したくなります。
いつまでもラブラブなんだから、もう!!!
今回クラフト紙になさったそうです。
このにおいがまた、すーっと嗅ぎなおしてしまいたくなります。
私は電子書籍というのは未経験なのですが
やっぱりよほどの事が無いと利用しないだろうなと改めて思いました。
手元にないと安心出来ないし
こういうにおいや手触りを楽しめるのも
本(同人誌)ならではだと思うのです。
いくらアナログと言われようとも。
そして竹美家ららさんのお描きになる桂の着物姿!!!
色っぽーーーーーい!!!
かなり良いです。せくすぃ。
『雪よ林檎の香のごとく』番外編。
作者にとってのデビュー作である通称『林檎』は、
その後もコンスタントに同人誌上で、彼らの行く末を見る事ができる作品になっている。
清冽なデビューで一気にファンの心を掴んだので(掴まれたw)人気が高いのも確かだろうが、
おそらく作者本人にとっても思い入れも大きいのだろうー。
高校生だった志緒は順調に(?)成長し、大学院生となり
作中で生まれた妹は今や小学生となった。
今回の番外編、クラフト紙に着物姿の桂(なんだよね?)が横たわっているデザインだが、
その左手の指が意味深。
中身も桂の着物姿の話だが、志緒くんの心の動きの、細やかで確かなことに
今回もまた驚かされ、愛が深まる。
決して気持ちが冷めた訳ではない、昔よりずっと好きだけれど、
「我と我が身を処しかねるような心のアップダウンは遠く、
一緒に寝るのも当たり前になった」。
そういう自身の心を見つめる描写が、非常にクールで、でも繊細で美しく、
だからこそ相手の思いがけない姿に、出会い直したようにときめく姿が熱くて甘い。
ストーリーを書いてしまえば、どうっていうことのないちょっと微笑ましい洒落たお話。
でも、一穂先生のこういう世界は、実際に手に取って読んでみないと分からない。
いつもながら、ちょとだけ出てくる脇役の存在感というか実感のあり方もいい。
*追記
色彩的に目立たないのだが、裏表紙に誤って「志緒×桂」と書かれている!(笑)
作者ブログによると…
『「たいへん!」と竹美家さんが教えてくれました、
ここへきてまさかのリバ……。(※ただの間違いであってそういう内容はありません)
志緒はちょっとやってみたいかもしれない、
でも先生は「勘弁してよ……」って言うでしょう。』(笑)
『雪よ林檎の香のごとく』同人誌11冊目。
クラフト紙のナチュラルな柔らかさと、少しはだけて胸が見えそうな着方をしている桂の着物姿のミスマッチ感に、思わず頬を覆ってしまいました。
どきどきする! 桂の流し目にどきどきします!
育てて育った、穏やかな愛情。
熱量が半端じゃなく、何もかもが必死できらめいて息苦しくて目がチカチカしたような愛情とは違う、今の志緒の心。
好きの度合いが減ったりなんかはしていないのだけれど、その恋のはじめがあまりにも特別過ぎて、今の状況の、静かな好きを考えてみたりする。
だけれど。
突然の、桂の着物姿。
……これで心が高まらない訳がない、ですよね。
もうこのあとの志緒が可愛くて可愛くて!
「今はこんな穏やか、あの頃が懐かしい」みたいに思って居た気持ちが一気に蘇ってしまうんですから、本人も自覚しているけれど、本当に夢中なんだから。
まともに顔が見れない、目が見れない。
そんな志緒が新鮮に感じます。
そして、実は桂も平気なんかじゃなかった。
平気と思われている事がもうどうしようもなくバカだと、志緒に伝える。
どうにかしたい気持ちが沸々湧いているのに、なんて。
この二人ってきっと、いつまで経っても、どこかでふと物凄い心臓の高鳴りがあったり、新鮮な気持ちが湧いたりする関係なんだろうな、と思えてならないなぁと思います。
何年経っても、何歳になっても。
「正規の恋人」。
その言葉によって、今すぐ駆け寄ってきつく抱きしめたくなるのは、それがとてつもなく特別な言葉だから。
羽織紐が、かわいいかわいいちょうちょ結びになっていますように。
「雪よ林檎の香のごとく」に感動して、
同人誌を出されているとしり、我慢できず購入に
いたりました。
16ページということで、薄いのですが、
その分、文字が細かいく、多く読める点が嬉しいです。
本作のみどころは、桂の和装なのですが、
個人的には、志緒です。
本編から数年後、もう志緒は、大人になっています。
でも、あの頃のみずみずしい心をそのまま持っているのではなく、
ちゃんと成長させている様子が嬉しかったです。
桂のことを勿論今も好きだけれど、あの頃の好きとは少し違う。
あの頃を懐かしく思っています。
好き同士でくっついた後のカップルの理想な様子です!