snowblack
my name is red
「雪よ林檎の香のごとく」の番外編。時間的には色々な、短いお話が入っています。
朱肉、紅玉、ナナカマド…と、赤をテーマにした短編集。
相変わらず小物の使い方が上手い!
志緒くんの、独特な鋭くて真っすぐな感性の魅力。
無自覚で熱烈でそして実はエロティズムに溢れたレポート=ラブレターに痺れました。
桂じゃなくても、やられちゃうよー。
二人の会話も相変わらずいい。
どうでもいいことですが、「肉池」という言葉、これで知りました。ほお〜
『雪よ林檎の香のごとく』同人誌9冊目。
今回は、「赤」という色の縛りでのショートストーリーが4作。
・誕生日プレゼントは大人の「証明」。内容は高校の校外学習の回想がメインの『ヴァーミリオン』
・気が退けるほど赤く染まったアレ。食べられない人と食べてしまう人、人それぞれの『カーマイン、クリムゾン』
・ナナカマドのえぐみと渋味はなくてはならないものだった『スカーレット』
・赤いというより甘い。どうしたらいいか分からない志緒が愛しく可愛い『マイネームイズピンク』
特に、私は『スカーレット』が好みでした。
ナナカマド。
私の通った小学校の坂道にも、校門から学校の玄関までびっしり植えられていました。
「美味しくないよ、食べたらだめだよ」
なんて教えられていたのに、自然とは思えないような人工的なあの、赤と橙の間でありながら嫌味なくらい深みのある色になるあの粒を、まるで志緒のように摘まんで食べた記憶があります。
そして、思ったのです。
「まず!何これ…口の中にいつまでも残るまずさ!」
この『スカーレット』を読んで居ると、彼らが口にした不味くて仕方のないナナカマドの味が私の口いっぱいに思い出されました。
そして、桂にとって、なくてはならない不味さだったのだと。
これからに向かって行く覚悟を改めて自覚したあの瞬間は、決しては甘くてはいけなかったんだな、なんて。
だってそれより数時間前に、志緒は先に舌が痺れる程の苦さを感じていたのですから(※ドラマCDブックレットより)。
鮮やかな赤ではない、少し滲むようなクセのあるような赤色が頭に浮かんだこちらの作品。
最後の最後で、ピンク、が出て来てふふっと笑ってしまいました。