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無償の愛情で救われる人間を描き、「ダ・ヴィンチ」誌上でBL界の芥川賞と評された傑作!
hako no naka
一般文芸としても出版されているだけあって、BLのお約束的な要素がほぼない、非常に読み応えのある作品でした。と同時に、我々BL愛好者が物足りなさを感じる懸念もなく、男同士の関係性の萌えがこれでもかと詰まっています。改めて木原先生の心情描写の緻密さと、あらゆる面で現実的な部分を注視し、けっして過度に美化したり省いたりして書くことのない創作への真摯な姿勢が素晴らしいなと感じました。
喜多川は堂野の何にこんなにも取り憑かれてしまったのか。ありがとうという言葉をたくさん言ってほしい、と子供っぽい直截な欲求を口にする彼でしたが、本当に罪を犯した人かどうかというよりも、堂野の心根が、今まで自分に関わってきた大人たちとあまりにも違うことを肌で感じ取り、最初から気にかかっていたのでしょうか。また、親しい間柄でさえ損得を考えて動くことはあるけれど、刑務所という冷たい空間の中で堂野は自分の存在だけで救われ、感謝を示してくれる。無条件の愛に触れたことがない彼は、まず堂野の無条件の自分への好意に途轍もない快感を覚えたのかな、なんて思いました。
子供の何かを吸収するスピードは速いものですが、堂野の情を根こそぎ自分のものにしようという喜多川の執念は凄まじく、ちょっとやそっとでは頽れません。その周りを一切顧みないひたむきさは、彼が子供のままであることを堂野に強く印象付けます。それはもちろん「いい歳なのに未熟」「社会の常識が分からない」というネガティヴな捉え方もできます。一方で、「ほとんどの人間が成長と共に持つようになる諦念や妥協がない」「大人の世界に染まらない純粋な心のまま世界を見ることができる」というポジティヴな面もあります。堂野は喜多川の後者の部分を徐々に愛おしいと思い始める自分に気付き、刑務所でも再会後も、その感情が愛なのか何なのか悩むことになる。
出所直前に芝に自分の今後を伝えず、出所後は結婚し子供も持った堂野の選択は、彼がどこまでも普通の人なんだなということをよく表しています。BL作品の登場人物だからって、刑務所で知り合った同性と添い遂げる覚悟なんて持てない、女性に欲情しなくなったわけでもない、妻子を養う生活に不満や疑問もない、ごくごくありふれた男性。安易に雰囲気に流されず、喜多川との関係を一度は断つことを選び、再会後もすぐ絆されたりせずに妻子を裏切ることのなかったその真面目さは、冴えない彼の唯一と言っていいほどの美徳でした。そんな彼が、喜多川との関係においてのみ、太陽や月のように輝く存在となる。そしてまた、彼にとっても喜多川の脇目も振らない一途な感情は、単調で時々絶望に落ち込む人生の中で、一定の光を保って温かな希望を見せてくれる、かけがえのないものなんだろうと思います。この2人の出会いは数ある物語の中でも私にとって忘れがたい、尊いものとなりました。
しんどい話が好きです。箱の中凄かったです。求めていたのはこれ!BLが好きと気づいてからBLを色々読んでましたがあまりヒットしない私はこの作品を読んで、これだー!!!となりました。本当に素晴らしい作品です。
ただ、檻の外が…箱の中は最高でした。脆弱な詐欺師もすごく面白かった。檻の外…(作中で)子ども死なせてまで二人は結ばれないとダメなのですか???完全一方通行の話が大好きなのでBLを読む時に必ずしも二人が結ばれる必要はないと思ってる、なんなら失恋エンドも大好きな私としてはくっつかずに終わればいいじゃん!!なんで!!!ってなりました。ここだけどうしても受け入れられません……
それでも箱の中だけでもすごく好きなので好きです!!!!!
BL小説の中でベスト3に入る神作品です!
お恥ずかしいのですが、BLは、
漫画ばかり読んでおりましたが、この本に出会い、
BL小説の奥深さと、面白さを知り
BL小説にはまるきっかけになりました。
実在するのでは?と思うような
リアルな人物描写と、心の描写の数々に
圧倒されました。
不器用な攻めによる
受けへの並々ならない愛情とその表現の仕方が
胸を打ちます。
この不器用さに心打たれるのは、
人との距離の取り方に戸惑う
暗くも甘酸っぱい思春期を
思い出すからかもしれません。
何度読んでも、
余韻の残る素敵な作品でした。
木原音瀬先生、初読みの作品です。
全体的に物語としての完成度が高く、豚箱から始まるストーリーは惹かれるものがあり、読んでいる手が止まらない程面白かったです。
全体的に暗い作品でしたが、そのダークさに垣間見える喜多川の愛や執着心は純粋ながらも怖いものがありました。
自分的、箱の中と詐欺師編の話がしっかりしていて好きです。
檻の外は少し早足だった印象があり、穂花殺害事件は少しこじつけ感があったのでそこだけ苦しかったです。
でも、それらを抜きにしても神作品でした。
特に 人間の人間らしさは群を抜いて素晴らしいです。
この作品に出会えてよかったです。
追記。
不妊治療を10年続けている浮気相手の嫁に自分の子供を殺害されたり、
麻理子の「友達にも、みんなにも『麻理子の旦那さんは優しい人ね』って言われて、嬉しくて」発言には興奮しました。
『優しい夫』に縋っていたり、浮気した事にごめんなさいを言わなかったり、自分ばかりが不幸を被って堂野をずるいと言う所、彼女からは言葉の節々に人間の意地汚さを感じられて個人的に凄く好きです。
講談社文庫版を先に読み、どうしても[雨の日][なつやすみ]を読みたくて図書館で借りて読みました。
本編は、箱の中はひたすら読んでてしんどくて何も悪くないのに疑わないやつがバカを見る感じで、信じては騙されてってのがあってしんどい。堂野の場合、自分のせいで家族がお金騙し取られるって相当キツイな。喜多川は、藁にもすがる思いで探偵に堂野探しを依頼してるから騙されてるなんて思いもしない。盲目で闇雲。そんな姿を見て、探偵にお灸を据えてくれた刑務所で一緒だった男のおかげで堂野と再会できた喜多川。
家庭を持ち子どもまでいる堂野と再会して、家族団欒を見ながらどんな気持ちだったんだろう。でも、会うのをやめられない。切ないなー。
あの不幸な事件から一気に喜多川×堂野ルートのストーリーが加速する。母親の不倫の怨恨で犠牲になった穂花ちゃんは、本当にかわいそう。
幸せな家庭を築いていた筈が妻の不倫、娘を殺されてなんてこんな目に遭うんだ、堂野。
穂花ちゃんが懐いて16になってもまだ好きなら嫁に貰ってやるまで言ってた喜多川。
事件の真相がわかってから、どんどん太々しくやな女になっていく妻。
だからこそ喜多川と堂野の結びつきが深くなったんだけど。
本編の終わりよりも[雨の日][なつやすみ]を読んでキチンと2人の話を読み終えた感がありました。
[雨の日]は、喜多川視点のお話
感情が感じられなくて朴訥で一途でちょっと怖いくらいの執着があるので、やべえ奴感があった喜多川。喜多川に押されて流されてるのかな?って思ってたけど、ちゃんと2人が思い合ってるのがわかって、愛情を感じるお話でした。
[なつやすみ]は、元妻の息子「尚」と「堂野」と「喜多川」の尚視点のお話。
めちゃくちゃ泣いてしまった。
喜多川が案外子ども好きで、面倒見が良く子どもに懐かれるのは穂花ちゃんの時もだったけど、尚くんも喜多川の事が大好きで短い交流の中でもとてもいい時間を過ごせててとてもいいエピソードでした。
読者として喜多川の最後まで見届けられたのも良かったです。死に別れがメリバではなく幸せな人生を全うできた1人の男の最後として捉えることが出来ました。
今後、何処かで多くの人がこの[雨の日][なつやすみ]が読めるようになればいいのにと思います。
私自身も所持していつも読める状態になりたい。
この作品は大きなBLの枠の端っこにある作品だと思います。
一口にボーイズラブと言ってもコメディタッチや甘々、エロ、禁断もの、青春もの、など色んなアプローチがありますが、この作品は軽く読んで妄想の世界に・・・とはなりません。
木原音瀬さんは大抵が痛い、辛い、と評されますが、箱の中は本当にしんどい作品でした。
詐欺師に騙される母親、その要因には甘さ、普通さ、一般社会での常識が招いた、刑務所の常識を知らない、冤罪で収監されている本人。
でもこのエピソードが全体のアクセントになって喜多川との関係が際立っています。また、後で出てくる大江と喜多川の物語にも繋がっていると思います。
檻の外で、やっと二人に少し平和な時間がやってきます。文庫版では目次を見たところその後の「雨の日」と「なつやすみ」が入ってないようです。(私はホリーノベルズを図書館で借りました)
この後日譚で救われました。
木原音瀬さんのお話は「美しいこと(の後日譚、愛すること)」もそうですが、最後まで読まないと底から光が見えなくて辛さだけが残るように思います。
文学的にそれもアリだと思いますが、BLとするならやはり喜多川の一生と次の世代への光を読むことで落ち着くんじゃないかなと思います。
箱の中を読まれるなら是非、文庫版ではなくホリーノベルズのものを檻の外と一緒に読まれた方が良いです。
そしてBLの枠から出て評価されても良い作品だと思いました。
刑務所で出会う2人というあらすじを見て、読み始める前は木原先生お得意の極悪キャラが主役なのかなと思っていましたが、全然そんな事はありません。
主人公2人とも純粋で騙されやすい男です。
2人が愛し合ってから結ばれるまでがかなり長くて、その間に2人が失ったものは多すぎて涙が止まらなくなりました。
かなり長いので読む前は不安でしたが、読み始めたら一瞬です。バッドエンドでは無いけども登場人物のほとんどが不幸になってしまい胸が痛くなりましたが、それでも本当に読んで良かったと思える作品でした。
箱の中はこちらの本で読みましたが、檻の外は旧版を手に入れたので、後日談も読めました。
講談社版の箱の中だけだと後日談が読めないのがわかり、色々探しました。
旧版の檻の外でレビューをしようと思ったのですがそういう仕様のようで、できませんでした。(ちょっとショック)
後日談込みで読まないと、尻切れとんぼと言うかなんと言うか。
二人を最後まで見届けてこそだと思います。
BLの枠組み以外で新版が出るのは、全然良いと思うのですが、BL仕様の内容の旧版が読めなくなるのはちょっと悲しいので、どうにかならないですかね。
後、三浦しをん先生の解説が読めると、ワクワクしていたのですが、電子版には無かったんです。無いなら購入前に知りたかった。
最初から紙本にすれば良かったと。
個人的感想は、後半堂野に喜多川が「子供作る時は教えてくれ」と頼む時に号泣してしまいました。
「お前の子供に生まれ変わるから」と。
どこまでも堂野を慕う喜多川にやられました。
頼むから幸せになってくれと。
全体の本の内容のレビューは皆様の素晴らしいレビューにお任せです。
色々愚痴ばかりになってしまいましたが、
とにかく木原先生の作品の中で一番好きです!
後日談で、今まで大変な目にあった幸せな二人を見届けられたので、大満足です。
はあ…号泣です。
鼻水ズルズル、涙はボロッボロ止まらず、目は充血し、
はじめは引っ込めようとしてたのですが、もう諦めて
物語を反芻しながら、思い切り泣くことにしました。
BLというジャンルを超えた一人の男の愛を描いた作品でした。
むしろ、BLという括りがあることで読まれないことがもったいない。
BLとか何も前置きせずに、そっと差し出して読ませてしまいたい(笑)
堂野は痴漢の冤罪で入った刑務所で同房の懲役・喜多川に出会います。
はじめは無愛想で何を考えているかわからない謎めいた男でしたが、
言葉を交わすうちに無垢で一途な人間であることがわかってきます。
本書は一見堂野の物語に思えますが、私には喜多川が初めて愛を知り、
その純粋な愛をどこまでもまっすぐに貫く愛の物語に思えました。
人間の美しさや恋愛の甘さだとかそんなものありはせず、
ズルさや汚さが描かれる中で喜多川だけがまっさらで、
彼だけがただ一人、美しいと思えました。
喜多川は親から愛されず、裏切られた生い立ちから
これまで人の優しさを知らずに生きてきた不幸な人間です。
だからこそ、堂野の「ありがとう」という他愛もない一言に心が動き、
生まれて初めて見返りもなく優しさを与えてくれた堂野が特別な人間に
なったのでしょう。
好きなおかずを分けてあげたり、就寝時に足を温めてあげたり、
風邪をひけば献身的に看病し、堂野を喜ばせるように絵を描く、
刑務所の中で出来うる限りの愛情を不器用に、健気に注ぎ続ける
喜多川に萌えてしまったのはきっと私だけではないはず。
そこそこ年を食った表情に乏しい図体の大きな男が
まるで生まれたばかりの雛の刷り込みのように
一心に堂野を追いかける姿を脳内で思い浮かべ、
いとおしさが溢れ出しました。
ただ、同時に喜多川の愛はときに一方的で強引で、
好意を向けられる相手の事情を汲むことなく、公衆の面前で
キスやセックスを迫ったり、出所後も消息を追うなど
常軌を逸した執着が怖ろしくなることもありました。
一般的にみれば、喜多川の独りよがりの愛の形は
嫌悪を抱かれるタイプなのかもしれません。
けれど、喜多川を突き動かすのは〝堂野と一緒にいたい〟
という、ただただ無垢なる願い。それだけなのです。
そのためには自分の生活も健康も空腹ですらも我慢出来てしまう。
そんな文字通りの「命懸けの恋」に心打たれずにいられませんでした。
堂野もまた喜多川に対して優しくしてやりたいという同情のような、
いとおしさのような思いを何度も抱きながら、その感情が何なのか
わからず、喜多川の愛を受け止めきることも出来ず、苦悩します。
そんな堂野をずるいと、臆病者となじることも出来ますが、
その葛藤も理解できてしまうからこそ、喜多川の出所の日、
日が暮れるまで立ち上がることもできず、一人涙を流す
堂野に私も一緒に涙を流しました。
喜多川の妻に関しては個人的には嫌悪しか抱けませんでした。
彼女にも事情があったにしても、受け容れることは出来ませんでした。
数年越しでやっと迎えた再会の後も、ドラマティックな怒涛の展開に
幾度も苦しみ、悲しみを抱え、それでも一緒に歩んでゆく道を選んだ
二人に、喜多川の祈りがやっと通じたことに悦びを噛み締めました。
最後の縁側でイチャつく場面を読んでいるだけで嬉しいやら
切ないやらで、もう涙がぼろぼろ止まらなくて…
これまでの人生で報われなかった分、喜多川にはその何倍も
幸せになってほしいです。
堂野の最後の選択は逃げや自暴自棄のようにも見えますが、
私は全てを失ったことでずっと目をそらしてきた自分の心に
ようやく素直になることが出来たのだと解釈しました。
他のレビューを拝読し、本書に番外編や後日談作品があることを知りました。
しかし、時すでに遅し。
知ったときには新書版・電子版の販売が終了しておりました…( ;∀;)
いつの日か、電子再販、あるいは番外編の書籍化を願うばかりです。
読みたい読みたい読みたいよう…
読んだのは蒼竜社のHolly Novels『箱の中』『檻の外』だが、現在評価・レビューがこちらにしか書けないようになっているため悪しからず。
全腐女子さん・全腐男子さんに全力で勧めたい。読めばわかる。
私自身以前からこの作品は知っていて、あらすじやレビューを何度も読んでいたのだが、何となく暗そうなイメージで読むのを渋りに渋っていた。
ただ、腐女子として、この作品を読まずして死なないとは思っていたので、「今なら読めるかもしれない」というタイミングで読む決意をした。
どうせ読むなら文庫版には収録されていない短編も読みたいと思い、BLノベルズの方を中古で購入した。もはや本屋や電子書籍では手に入らないので、物によってはプレミア価格でビックリ…
私は今日の今日までこの作品を読むための準備をしていたんだと思った。小6から腐女子の私が10代の頃にこの作品を手に取っていたとして、正直ピンと来なかった気がする。ある程度人生経験を積んだ今だからこそ、心に響くものがあった。5年後、10年後、20年後など時を経て再び読み返した時にもっと違う感じ方が出来るように思う。あぁ、読んで良かった。
文庫版も読んでみようかな。