天国までもうすぐ

teppen made mousugu

天国までもうすぐ
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神12
  • 萌×23
  • 萌4
  • 中立1
  • しゅみじゃない1

--

レビュー数
8
得点
85
評価数
21
平均
4.1 / 5
神率
57.1%
著者
五百香ノエル 

作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます

イラスト
藤たまき 
媒体
小説
出版社
心交社
レーベル
ショコラ文庫
発売日
価格
ISBN
9784778113346

あらすじ

同級生の少年と心中未遂事件を起こし、ひとり北海道から上京して叔母の家にやってきた狩野暁。彼は全てを、思い出も夢もそして心さえも、北の凍てつく最果ての地に捨ててきた。最愛の恋人、事件の相手である品川りすとともに。叔母の勧めでモデルの仕事を始めるが、虚ろなままそれでも何かにつけりすの面影を追わずにはいられない自分の心に苛立つ暁。そんな中、りすが突然上京し、ふたりは再会をはたす―――。

(出版社より)

表題作天国までもうすぐ

元同級生で恋人のモデル、16歳
上京してきた元恋人、16歳

その他の収録作品

  • 僕の帰る家
  • あとがき

レビュー投稿数8

未熟な恋人同士の悲恋の後の光が見えるまで

ほろっと泣かせてくれる、そして恋人同士の愛情と家族愛、人と人のつながり、
複雑なようで単純な思いがある一方で、単純なようで複雑な思いも感じる作品。
大人になりきる前の危うい程の切ない恋の行くへ、心に迫るお話でしたね。

父親は不倫相手の所へいき、母親は息子を虐待する、それもアルコール依存から・・・
庇護するべき相手を死の瀬戸際まで追い詰める母親。
壮絶な虐待を受けながらも、母親を捨てきれない息子。
そんなボロボロの状況で出会った二人、互いにどこか寂しさを抱えていて、
いつの間にか唯一の、命と同等だと思える相手との出会い。
自分たちの力ではどうする事も出来ない世界で、必死に手を探り合って・・・
そして、起きてしまった心中未遂事件。
そんな二人は、大人の勝手で引き離され、子供故の愚かさで、離れてしまう。

それでも、互いしか存在しない、相手がいなければ死んだも同じ状況で生ける屍状態。
相手を思い、柵や理不尽な愛情から逃げ出す事が出来ない受け様。
しかし、共にあるはずの存在が消えた事で、全てを投げ出して攻め様の元へ・・・
しかし、目の前に現れた受け様をまるで存在していないように突き放すせめさま。
受け様がトラブルに巻き込まれた時に、何もかも忘却の彼方に於いて来たよな攻め様の
感情が爆発してしまうことになる。
10代の二人の恋愛を中心に、親子の関係や、友人、大人たちと絡まり合う人間関係が
ストーリー全体を構成している。
甘い10代の恋愛ものとは一味違うお話で、惹きこまれるお話でした。

8

青春小説のような

メインカップルは暁とりすですが、物語の最初は暁の従兄弟の五月の視点で始まります。
BL小説で視点を与えられるのはほとんどの場合が受けか攻めなので、あらすじに居なかった五月のいきなりの登場にちょっとだけ戸惑いました。

けれど、そんなあらすじに登場しない五月こそがこの作品の主人公だと私は思っています。
これは暁とりすの恋愛物語によっての五月の成長物語だと。

なので、すごく印象的だったのは五月が母の八千穂のことを「ママ」ではなく「母さん」と呼んだ場面。
多分物語の最初、五月は自分のことを冷静で、色んな社会を知っているような気になっていたんじゃないかと思うんです。
でも、あの「母さん」と呼んだ場面で、五月はりすとの関わって二人の話を聞き“自分はまだまだ何も知らない子どもだと気付く”という成長をしたのだなと感じられました。

そんな風に五月の成長物語として読んでいるので、私にとってこの作品はBL小説というよりも青春小説のような感覚で読んでいます。

なんとなく近い感覚になるのは、非BL小説ですが桜庭一樹「砂糖菓子の弾丸は撃ち抜けない」かな。
この2つの物語の子どもと大人の立ち位置とか、なんだかそういうところにすごく同じようなの匂がするというか。
共通点は実親から虐待される子どもってくらいで、そんなにないんですけれどね。
匂いとか、印象とか、そういうぼやっとしたものが似ている気がするっていう、本当に個人的な感覚です。

私はどちらも大好きで、どちらも何度も読んで何度も泣いているので「砂糖菓子~」が好きでBLも好きな人にはぜひ読んでほしい作品だと思っています。

3

大人を信じられない子供たち

実に奥が深い物語だな。。。それが第一印象。
彼等の、特に受け子となる”品川りす”の境遇はあまりに悲惨すぎて、彼等の行動もだが大人の対応の理不尽さばかりが目について、ひどい、ひどいじゃないか!!
きっと、子供を持つ親の人が読んだらまた親としての立場で色々な想いを抱くんだろうなとも思える。
だけど、ここに登場する子供たちも特殊な環境にあるために、また普通ではないような気がする。
子供がゆえに未熟で、それを導いてやれない大人たちもまた未熟で。
色々な山谷がありながらも着実にハッピーエンドに行く普通のblストーリーからしたら、この話は現実味からは多少離れているものの、現実の人間の気持ちに近い、当身大の大きさの思考でできている物語なんじゃないだろうか?
だからそれだけに、イライラが募る。
客観的に見てしまえば、大人も子供もバカだなーと思ったりもするのだが、それだけ現実は都合良くないってことです。
主人公は受け攻めの二人なんだが、第三者として攻めの従兄弟である狩野五月視点で物語は進行している。
この第三者を使った表現はとても効果的だと思うのです。
彼は読者の代表でもあり、主人公たちを一番冷静に見られる大人と子供の間にたつことのできる人物でしたから。
キャラ萌えとか、やはりこれもそういう次元の物語ではないです。
同性愛の物語というのともちょっと違うような気がします。
互いに互いの存在が自分の一部でもあり、なくてはならない存在というのでしょうか。
そういう点でJUNE的ともいえるのでしょうか?自分の好きな展開と物語です。

心中未遂事件を起こしたとして、北海道からモデルエージェンシーを経営している16歳未婚で子供を生んだ叔母の元へ送り込まれる狩野暁。
彼は元恋人にも裏切られたと傷つき、大人も信用できないと不信感を持ち、それでも金を稼ぐため、叔母の勧めに乗り、モデルをしながら高校生活を送り始める。
もう死んでもいいとさえ絶望している彼の元に、心中未遂の相手:品川りすが現れる。
彼に拒絶されたと思い込んでいる暁は家に戻らず、声だけがりすに似ているモデルの風鈴の元に入り浸り、りすは、狩野家の家政夫として家にやっかいになることに。

その日常の中でりすが五月に語る形で彼等の本当の過去が綴られていきます。

旦那の不倫でアル中になり、りすに暴力を振るうようになった母親。
ボロボロになり人からなんと言われようとそれを受け入れ耐えているりすが、弱音を吐いているところで出会ったのが同級生の暁だったのです。
彼等の関係は、暁がりすを守ってやりたいと思ったこと。
りすは暁にだけ弱っていてもその顔を見せることのできる受け皿。
大人たちは本当の彼等を見てくれない、信用できないと、最初から彼等は大人を頼ることをしない。
二人でなんとかしようとしてしまう。
だけど、大人も子供を理解しようとしないのです。
りすは、母親への巻き込まれの共依存の関係もあったかもしれません。
彼は優しいのです。
東京へ出てきても、彼等は大人たちと腹を割って話そうとしなかったために、りすは傷つきます。
彼の虐待のあとを見て初めてわかる、暁とりすの事情。
ここでやっと、進展をみせるのです。

ただ、りすの境遇がかわいそう、とか引き裂かれた二人がわいそう、ではなくて、
彼等にはどうすることが必要だったのか、
それを知らされる物語でした。


 

7

絡まりあった感情や人間関係の中、もがく10代

藤たまきさんのファンタジックな表紙に惹かれて手に取りました。

故郷の北海道で同性との心中事件を起こし、
東京でモデルエージェンシーを営む叔母に預けられた高校生・暁。
恋人にも世の中にも裏切られたと傷つく暁の元に、相手のりすが状況してきて再会するが…

最初、いとこの五月が主人公かと思ったら、あれあれ?
視点が変わっていくのについていくのに苦労して、
ちょっと読みずらい印象は最後まで続きましたが、
逆にそれがこの話の一筋縄ではいかない分かりにくさや割り切れなさを、
感じさせてくれたかもしれません。

閉じた二人だけの世界で、理解されることを求めず、大人に助けを求めることも厭う、
暁とりす。
あまりにも若く、青く、大人から見たら滑稽な程の真剣さが、切ない。

弱くてずるいりすの両親には勿論なのだが、
虐待に気がついても通報しなかった医者や(虐待防止法以前の作品ではあるが)、
学校に腹が立つ。
歯がゆかったり苛立ったりする場面が重なっていく作品だが、
きれいサッパリのハッピーエンドじゃなく、
傷を抱えながら少しずつ明るい方に登って行く感じがいい。
結局叔母の理解があってこそ、活路が開けるところ、
人前では必要以上によそよそしい二人というのも、なんだかリアリティがある。

書き下ろしとペーパーでは、その後の二人が読める。
暁の独占欲は若いうちはかわいいけれど、いいのかなぁーw


※タイトルの「天国」を「てんごく」ではなく「てっぺん」と読ませているところに
 味わいがあると、個人的には思っている。

4

久しぶりに読み返してみて、やはり痛かった・・

この作品を初読したのは、メインのカップルの暁やりすより年齢的に少し上の時でした。それからかなりの月日が流れ、久しぶりに読み返したところ、印象が変わった所と感じ方が変わっていない部分もあり新鮮でした。五百合先生の作品の中で、個人的にいつまでも強烈な印象が残る一作です。また何年かして読み返してみたくなります。

母親からの虐待を受けるりすと人知れず愛を育んでいく暁の二人の軌跡が、暁の従兄弟の五月視点から描かれます。後半にかなり心が痛いシーンが出てきます。内容をすっかり忘れていたせいか、痛烈でした。この作品がトラウマになる大きな要素だと思います。

今回は親世代視点の心境で読みました。若さゆえに突っ走る二人が眩しくも先行きに危うさを感じつつ。自分の人生を自分の思うままに生きるには、まずしっかり自立するしかないなーと実感します。暁の選択がどうであれ、「息子を見捨てる気はない。」と言った暁の母の愛情にジーンときました。りすの母親と対象的なので余計に切なくも元気づけられました。五月の母も自分で人生を切り開いて来た女性だけに二人を積極的にバックアップする姿を頼もしく感じました。

今回も残念ながら暁のように、りすに萌える事は無かったです。暁は声フェチ??と納得しています。それでも人前では、教室で一言も話さないクラスメイトのように距離を置く不器用な二人の関係にたっぷり萌えさせてもらいました。二人がイチャつくシーンが直接的に余り描かれないのもこの作品の特徴ですが、だからこそ余計にお互いへの激しい想いが確認できる所が新鮮で良かったです。



1

映画のシナリオのよう

前半は「中立」、後半は「萌x2」…で、中を取って評価は「萌」です。

小説の魅力って色々ありますが、その一つは登場人物の内省的な描写だと私は思います。コミックやテレビドラマ、映画では、登場人物の表情、動作、コマ割のバリエーション、音声、カメラワーク、BGM…なんかで見る側が察する必要のある「心の声」。それが小説では文字として明確に表現されているゆえに、より深く感情移入したり共感できるというのが魅力の一つだと私は思っています。

そのためか、小説を読む際は、一人称にしろ神視点にしろ視点を一人に固定した作品のほうが読みやすいと感じる傾向があります。視点が切り替わるにしても章ごと(せめて段落ごと)でないと妙に読みづらい…というか、誰に感情移入すればいいんだかモヤモヤしてしまうのです。

そういう点では、この作品はもう読みづらくてしょーがなかったです。一番セリフ量が多いのは暁(攻)のイトコである五月です。攻でも受でもない第三者の視点で進む話も好きなのでそういうタイプかと思えば、そうではなく、同じ段落内で視点がコロコロ変わるタイプの作品で…参りました。名前とキャラクターがかっちり設定されて物語に大きく寄与してくる登場人物が、片手じゃ足りないほど出てきます。序盤は「コレ誰が主人公なんだよ…」と嘆息すること数回。映画のシナリオを読んでいると思って読み進めることにしたものの、りす(受)が登場するまではこれといって面白さを感じませんでした。

しかし後半は、読みづらい文体が気にならないほど面白かったです。暁とりすの想いが青臭くて真っ直ぐで、切ないほどでした。幼いがゆえに、自分のすべてをあっさりと相手に委ねてしまう二人が愛おしかったです。りすのこれまでの人生は痛々しいものでしたが、藤たまきさんのふんわりしたイラストのおかげでそこまで悲壮な雰囲気を感じずに読むことができました。

4

虐待から恋人を救う美少年の話

(感想を書いたら、消えてしまった 面倒だな、と思いながら書く、つまらない内容の感想です。)

物語は、曉君について従弟の五月君の視点で主に描かれています。ドロドロな情交シーン描写が得意な作家らしいのですが、この作品はシーン少な目です。
未成年が主人公で子供目線だと、歯がゆい場面が多すぎるので、私には合わない。
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アル中の母親から毎日暴力を受けていたリスを助けたくて、色々考えたけど、行きついたのが、北海道の氷点下の夜、二人で抱き合い心中することだった。
子供すぎる曉君は、知恵が足りないことの自覚がない。ただ反発して、他人を拒絶するだけ。
東京の叔母宅に預けられて、モデルのアルバイトを始めることになって、そこから色々な人と交流して、理解者を得ることが出来た。
そして、リス君が東京に来て、色々あって解決に向かう。ハッピーエンド。
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どんなことでも、したい事を成すために、自分が不足している事や欠けていることを自覚して、それを補う行動「仲間作り」をしないと、成らない。
外部遮断傾向を持つ曉君は仲間作りをしなかったので、心中しか思いつかなかった
・・・子供で愚かな曉君の選択ミスだった心中未遂。でも著者は曉君の純粋さを拾いたかったんだろうな~と思いました。

★天国とか、あの世とかは、生きている人の妄想。
死ぬ決心をするくらいなら、死んだだつもりで精一杯もがき切るべきです。生きている間にこの世の天国を作らなきゃ。死と戦争は、色々尽くしてダメだった時の最後の道、だと思う。
心中未遂でよかったよ、曉君。
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▶児童虐待:作品を必ずハッピーエンドで〆る「愛の人」だった著者が、この作品でテーマにしたのは「児童虐待」。虐待事件の統計についてメモ。虐待は、加害側も、被害者も、治療が必要な依存症です。

★「Think Kids」;虐待の実際の事例を掲示しているサイト。
https://bit.ly/3j7Yf07
「子ども虐待は家庭という密室の中で、外部に助けを求めることもできない幼い子どもを被害者として行われるものでありますから、児童相談所に通告されるものは氷山の一角」
「医師によると、体のあちこちにあざのあった幼児が病院で治療を受け、医師がその後を心配して家に電話したら、病院から戻ってすぐ「転んで死亡した」と聞かされたりするなどのことはしばしばあることだ」

・・この小説の中のリス君も、毎日が死と背中合わせの状態だったんだと思います。

1

ひりつくような若い二人の恋

五百香さんの初期作品でしょうか。文章がやや持ってまわっていて少し気になりますが、読み進めると気にならなくなります。

語り手はやはり少年で、実家でイケメンを預かることになる、というところから始まります。しかし、この語り手はメインカプを見守る役で、このイケメンとくっつくわけではないんです。そのためか、少年にしては賢く悟っている。

東北の地元で、りすという少年と付き合っていたが、親や学校にバレて、引き剥がされる形で東京に来た暁。モデルをしながら女性と付き合いまくっている。

りすは家庭環境がひどく、でも明るい。暁はそこから救い出そうとしたが及ばず。

しかしりすは暁を追いかけて、語り手の少年の家に居候することに。

結局、離れ難いほど愛し合っている二人は覚悟を決めるのですが。

作者さんらしい痛みはありつつ、ハッピーエンドでした。

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