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shakousen
沙野作品の粒子が大きくて密度の高い雰囲気を存分に堪能できました。
全体に重苦しいのだけれど、粒子が大きいからちゃんと呼吸ができるし、その隙間から差し込む光が秋の午後の日差しのように、どこか尊く懐かしさをおぼえるもので、不思議なすがすがしさがありました。
物語の最後に「斜光線」の意味が語られ、それまで感じていたものとタイトルとの結びつきに唸りました。
これほど意図したとおりの印象を与える作品を書けるなんて!こんなに相性のいい作家さんと巡り合えてうれしいです。
この作品の雰囲気とともに、この二人のことがとても大切になってしまって、お話の内容についてどうこう言うことができなくなってしまいました。
過去に傷を持つ二人が一緒に傷を乗り越えていくお話です。二人とも、癒えていない生々しい傷を抱えて、その傷をお互いにこすり付けあうようにかかわっていくのが痛々しい。しかし、なぜか殉教者のような崇高さがありました。それはきっと、精神的な死と再生のお話だったからでしょう。
そこにストイックな梨とりこさんのイラストが良く嵌まっていました。
純粋に相手を愛する、なんてわかりやすいものではない、大人の尊さが素晴らしい作品でした。…エロエロなのに。
初読後は1年ごとに読み返しているのですが、いつ読んでも好きだと思う作品です。読み始めるとすぐ作品世界に引きこまれるのですよね。
攻の塔野相手に、心はどこまでも対等であろうとする受の和叉が非常に好ましいです。生真面目で冷静で頑張り屋さんの和叉は細くて美しくて、しなやかに強い絹糸のようだと思います。野性的で俺様な塔野は炎のように熱く激しいようでいて、触れると凍えるように冷たい感じがする人だと思います。
最初から最後までタイトでハードで痛いですが、それらの痛みの先には「再生」があるのでホッとできます。心にも身体にもキズを負った者同士が互いのキズを舐め合って共依存…というラストではないのが良いです。互いの手を取り合って、それぞれが自分の足でしっかりと立ち、未来に向かって一緒に歩き始めるラストは感動的でグッとくるものがあります。
魅力的なキャラたちと心に響く内容。大好きな作品です!梨さんの絵がピッタリだと思いました。
かなり改稿後の再販との事でしたのでどれだけ変わったのかと思って読んだのですが
話の本筋は変更がなかったので、新たなって感じはしなかったですね。
細かい修正はあるようですが、作品自体の印象は特に変わりないと思います。
ただ、書下ろしがプラスしていて、甘い雰囲気がプラスになっていて
読み応えがあるストーリーに仕上がっていたように思います。
受け様は学生時代に同級生からのレイプを経験していて、挙句その瞬間を撮られ
ながらだった事から、カメラのフラッシュやシャッター音で自分を撮影されることに
恐怖を覚えるようなトラウマを抱えているんです。
そんな受け様は父親が経営する出版社の立て直しのために、証券会社のディーラーを
辞めて副社長として仕事をすることになるんです。
そして、出版社の命運をかけるような戦場カメラマンとの出会いで受け様の
運命が大きく変わっていく事になるんです。
そして、攻め様もまた、大きな傷を負っているんですよね。
戦場カメラマンとして仕事をしていた時の悪夢にうなされる程のトラウマです。
攻め様は受け様の中に自分と同じような痛みを見つけたかのように受け様を
自宅に無理やり住まわせ、モデルと称してシャッターを切る。
その度に受け様は過去に捕らわれ・・・
ある日攻め様が戦場で負ったような傷が痛むと、受け様を無理やり犯します。
その日からモデルと身体の関係を・・・・全ては写真集を出す為と・・・
受け様の会社で不穏な出来事が続き、それが過去に受け様をレイプした
同じように出版社を経営する同級生の仕業だと気が付く、過去のレイプの事を
脅迫材料にされた受け様、さらに攻め様の写真集を諦めなければ攻め様と
自分が抱き合っている写真までネタに脅迫されるんです。
そして受け様は攻め様のスキャンダルになるかも知れないと攻め様の写真集を
諦めることになってしまう。
受け様はいつの間にか攻め様を好きになっていたんですよね。
でも、受け様が思う以上に傲岸不遜で勝手なふるまいをする攻め様はそれ以上に
受け様を思ってるんです。
互いに痛みを持っているから、そして互いに癒せる存在なんです。
二人の過去からの脱却みたいな、新たに進むための心の再生のようなお話でした。
あと、忘れてはいけないのは読み終わった後は必ず本のカバーを外して
攻め様視点のエロショートを忘れずにお読みくださいね。
カバー下にショートがあることに、買ってから数年経つのに気付いていませんでした・・・
教えていただいてありがとうございます!
はっきり言って、塔野は最低な男だ、と思います。
過去のトラウマから写真は嫌いだと言っているのに無理矢理モデルにして和叉が吐くまで写真を撮り続けるし、写真集を橘出版から出すことを条件に和叉を自分の家に住まわせて性的な写真は撮るし、そのうち無理矢理ヤってしまう。
その後も、写真集出版をチラつかせて和叉に奉仕を迫って、もう最低としか言いようがない・・・のに、読んでいて嫌いになれませんでした。
酷いことをしながら和叉のことを心配しているからなのか・・・上手く表現することが出来ませんが、塔野が魅力的に思えるんです。
「剥き出しの真実」を撮りたがる塔野は、自らを不要なまでに偽ることをせず、ありのまま、欲望にさえ忠実に存在しているから、他人の目ばかり気にする私には眩しく魅力的に見えたのかもしれません。
塔野は自身の戦場写真以外は、他人の評価が高い写真でも納得していません。それを隠そうともしません。
周囲に媚びることもしないし、合わせることもほとんどない。自分のやりたいように自由に生きているように見えます。本当に孤高の獣のように。
だけど本当は、強くて気ままに生きているように見える塔野が、体だけじゃなく、心に深い傷を負っていて、その傷に縛られて苦しんでいます。
その塔野が、傷を明かせて、寄り添うことを許せたのが、同じように傷を抱えている和叉だった・・・二人とも自分の傷を独りで呑み込んで苦しんでたんですよね。
清水が、塔野のことを「身体が固い一匹狼」和叉のことを「その飼い主」に例えるけれど、和叉も「身体の固い一匹狼」だったと思います。
傷を舐め合うというより、和叉の傷は塔野によって抉られて毒を流しきったように。塔野の傷も和叉によって癒えていったのが『夢見心地』で分かって、待つことになる和叉は心配が尽きないでしょうが、本当に良かったと思いました。
全体を通してエロ多めだし、心が痛む過去や描写もあるのに、読後感が救われた気持ちです。
ずっと降り続いていた雨空に、すっと光が射して綺麗な夕焼けが見えた気がして、『斜光線』というタイトルがぴったりだと思いました。
沙野風結子先生の作品は複数、拝読させて頂き、今作も作家買いさせて頂きました。
個人的、各項目5段階で
無理矢理 4
エロ 4
痛々しい 3
救済 3
な感じだと思います。
元戦場カメラマンの塔野さん×橘出版の副社長の和叉さんのカプです。
まず初っ端から、高校生時代の和叉さんが同級生からレイプされている描写があり、トラウマとなる写真も撮られてしまうので、精神的に痛々しい描写かと思います。
その後は、大人となり橘出版の副社長として、塔野さんの風景写真集を出す為に1ヶ月間、塔野さんと過ごしモデルをすることになりますが、そこでも、塔野さんによって無理矢理身体を暴かれていきます。塔野さんとのはレイプって程酷くはないと思いますが、嫌がっている和叉さんに触れたり、トラウマとなっている写真を撮ったりするので、無理矢理感は強めかなと思います。
でも嫌がっていながらも身体が反応を見せたり、徐々に感じるようになる和叉さんなので、そこまで可哀想だなと思わない絡み描写でした。
無理矢理で強引な塔野さん。だけど、塔野さんの方も心にも身体にも痛々しい傷が残っているようで、本編で塔野さんのことを「身体の固い一匹狼」と表現しているのが、更に痛々しさが伝わってきます。
塔野さんの傷と和叉さんのトラウマを、癒し救済していく描写が、お互いがかけがえのない存在になっていく過程に引き込まれました。
細かな心理描写や和叉さんを翻弄し暴く、荒々しくも官能的な絡み描写など、読み応え充分です。因みにカバー裏にSSが書かれていますのでそこも忘れずに、是非とも読んでほしいです。
07年のラピス文庫を大幅改稿して改稿した作品になるそうです。
元を読んでいないのでどこがどのようにかは解りませんが、あとがきで作者さんが構成から見直したと述べられていますし、主人公の年齢を引き上げたともありますので、きっと大筋は同じでもかなりの表現の部分が変わっているのかな?と思われます。
とにかく、主人公・和叉が、彼には無自覚の被虐趣味があるんじゃないかっていうくらい、相手の嗜虐趣味をそそる人に描かれてます。
別段何をしているわけでもないのに、いわれない嫉みを買ってしまうと思うととても可哀相な人なんですが、
身も心もボロボロになりながら、それでも彼は強かったんですね。
例えにサンドバックという表現が使われていましたが、ほんとうにその通りです!
だけど、ラストには彼は叩かれているだけのサンドバックじゃなくて、相手を受け止めるクッションになっていたんですよ。
それがラストだと思いました。
この徹底的に、やられてばかりいる主人公に耐えられないと、このお話は例え結末はハピエンでも気持ちはそこにたどり着けないかもです。
高校の卒業式の時、卒業写真を撮ろうと親友だったはずの同級生に誘われた体育倉庫で強姦され、証拠写真を残された主人公・和叉。
彼は中堅出版社社長の息子で、跡を継ぐ気はなかったが社長である父親の体調不良により、ディーラーの仕事から出版社の副社長に就任することになる。
彼は、卒業時のトラウマで、カメラに撮影されることに酷いトラウマを抱え、PTSDのような症状を発してしまうのだが、
それが人気カメラマンの塔野の写真展での席上であった。
斜陽気味の会社の為にどうしても塔野の写真集を出したいことから、それ以来和叉に絡む塔野のいいなりで、彼の撮影モデルをするという名目で、彼の家に住むことになる。
カメラに撮られることに苦しむ和叉と、そうなっても彼を写真に撮る塔野は、和叉に無体な事をしいて、まるで当たり散らかすかのように和叉を疲弊させる。
更に、卒業時に彼を辱めた元同級生でライバル出版社の息子が、その時の写真をタテに和叉を脅してくる。
とにかく冒頭に述べたサンドバック状態の数叉が悲愴です。
それに加え、性的に弄られる事に快感を覚えてしまうことにも、それを自分でいけない、いけない、と思う気持ちも働いて、それがより塔野の嗜虐を煽るのです。
トラウマも含め、そういった重いものを背負いながらも、平気な振りをして弱音を吐かないから余計に憎たらしいのかもしれない。
しかし、塔野も最初は八つ当たり気分で、和叉を苛めるのだが、それによって、心の均衡と平穏を保てているのは確かだった。
塔野は元戦場カメラマンで、それを辞めた原因というのを、トラウマで持っている。
和叉もまたトラウマを持っている。
トラウマ×トラウマで、それが相殺されればいいのだが、和叉に倍返しな感じでダメージが行くから、救われない男だよな~なんて思ってしまう。
勿論、ラストまで救われないんじゃないかと思うのだが。
有坂というバカな野郎が登場したおかげで、彼等は近づく事ができたんですね。
塔野にとっては和叉がその苦しみを吸収して受け止めてくれたおかげで、そして彼の自己犠牲的な部分があって和叉が特別な存在になる、という風には見えたのですが(もちろん、アッチの具合と相性もwww)
和叉は、つり橋効果のような気がしないでもないが、無理矢理撮られる事でトラウマを少克服できたような感じもする。
ただ、サンドバック状態になったことで、免疫がついて柔軟な人間になったことは確かで、会社の仕事というものにも影響を及ぼしたのは、彼のトラウマからの脱却が人としての成長部分もあるのかな?とも思えるのでした。
読んでいる時は、苦しくて、痛くて仕方なかったのに、読み終わって振り返ってみると案外そうでもない?なんて思うから、
自分が現金なのか、始まりが始まりだっただけにその印象に囚われ過ぎたのかも?なんて思って、痛さを忘れてしまうのです。
しかし、久々にこれでもかこれでもかな、肉体&精神的に痛い主人公だった気がします。
自分は結構好きですよ。やられまくる受け、これでもか~な受けと傲慢で酷い攻めw