この命を懸け、愛の証をあなたに捧げる――

神に弄ばれた恋 ~Andalucia~

kami ni moteasobareta koi

神に弄ばれた恋 ~Andalucia~
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神19
  • 萌×211
  • 萌3
  • 中立0
  • しゅみじゃない3

--

レビュー数
10
得点
148
評価数
36
平均
4.2 / 5
神率
52.8%
著者
華藤えれな 

作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます

イラスト
朝南かつみ 
媒体
小説
出版社
ムービック
レーベル
LUNA NOVELS
シリーズ
愛のマタドール
発売日
価格
¥857(税抜)  
ISBN
9784896018202

あらすじ

互いに惹かれ合う闘牛士・サタナスと貴族の御曹司・アベル。だがその身分は口を利く事も許されないほど隔たりがあった。
あなたと話がしたい・・・、切なく無垢なる願を胸に、光と闇の狭間でふたりの命を懸けた恋が始まる!!
(出版社より)

表題作神に弄ばれた恋 ~Andalucia~

ヒターノ出の闘牛士,23歳
アンダルシアの伯爵家の一人息子

その他の収録作品

  • あとがき

レビュー投稿数10

神に捧げる……

「愛のマタドール」「裸のマタドール」と読んで、
遡って他レーベルながらリンクしている本作。

天涯孤独なヒターノ(ジプシー)のサタナス。
闘牛牧場を持つ伯爵家の跡取りであるアベル。

10歳の時に出会った二人。
アベルを庇って片目を失ったサタナスは、長じて闘牛士となり
一方のアベルは父の死後抱えた借財の為に、牧場を手放し、
そして事件が起こりサタナスは刑務所に収監される。
その彼が出獄したところから、物語は再び動き出すのだが……

ただ純粋に、相手が生きる全てで、相手を幸せにすることだけを願っているのに、
どんどん取り返しのつかない闇に呑み込まれていく……
そんな二人の物語。

アベルの愚かしい程の純愛。
愛の為ならば全ての穢れも甘んじて引き受ける、仄暗い情熱。
だが決してその想いを口にすることはない。

闘牛という特別な世界を舞台に、愛の光と影を描くこのシリーズ。
この作品は、闘牛に相応しい情念の世界を描いていて
世界観は素晴らしいのだが、マフィアが絡んで大きな話なのに
ちょっと端折り過ぎな感じがあって、その壮大なドラマに乗り切れない感じがあった。

個人的な好みとしては、最新の「裸のマタドール」(萌×2をつけた)が一番好きだが、
隻眼は、萌えポイント。
そして何より、朝南先生の遺作となった華麗だが翳りのあるイラストが本当に素晴らしい。
それに敬意を表して、評価は「神」をつけたいと思います。

12

筋金入りのヤンデレカプ?

タイトルに「Andalucia」とある通り、スペイン南部の雰囲気ムンムンの作品ですが、内容は痛いです。そして攻と受の互いを想う気持ちが切なくて泣けます。最後までハラハラし通しの痛い作品でしたが、凄くお気に入りです。また、朝南さんのイラストがピッタリ嵌まっています。特に表紙イラストとカラー口絵は超絶美しいです。

以下ネタバレしています。

サタナス(攻)は身分の低い闘牛士で浅黒い肌の超美形。アベル(受)は家柄の良いお坊ちゃまで色白の超美形。2人は幼少の頃に街で出会って以来、互いに惹かれあっていますが身分差がありロミジュリ的な関係です。それからサタナスは少年の頃にアベルを暴れ牛から守ったことで生死の淵を彷徨い片眼も失っています。アベルはサタナスが瀕死の状態だった間中、寝食を忘れて「彼のために自分の命を捧げます」と祈り続けていました。このように2人は昔からずっと相手のためになら自分の命を投げ出すことさえ惜しくないと思っています。これを筋金入りのヤンデレと言うのでしょうか?

その後、成長したサタナスはアベルが望んだ通り闘牛士となり華々しく活躍します。そんなサタナスを金銭面でもスポンサー面でも支え続けるのがアベルです。この職業は旅費・指導者への報酬・試合や衣装の代金など、とにかく金がかかるらしいです。そのためアベルは自身の全財産を注ぎ込み、男たちに身体をも投げ出していました。ある日、行為の最中をサタナスに見られてしまい、その時のいざこざで人を殺してしまいます。彼の現状を知ったサタナスは、身分の低い自分が殺人罪で刑務所に入ったら二度と出て来られないことを承知の上でアベルの代わりに服役するのですが、アベルは今度はマフィアに身を売ってサタナスを出所させてしまいます。マフィアと関係をもったせいで最終的には危うい立場に追い込まれてしまうアベルですが、サタナスはマフィアを手に入れて救い出してくれます。以後、サタナスは闘牛の指導者とは手を切ってアベルと2人だけでスペイン各区地を巡り始めます。

この作品中で最も印象的だったのは、闘牛中にアベルがサタナスの命を奪おうとするシーンです。ここでは背筋がゾッとしました。獣医師でもあるアベルは闘牛の管理をしていてサタナスが闘うことになっている牛に細工して彼を殺そうとします。理由はサタナスを自分だけのものにするために。しかしサタナスは最高の闘牛士だから牛の状態くらい容易に分かります。上手く躱すものだと思っていたら・・・躱しませんでした。自分にとってはアベルがすべてだから、アベルが望むのなら命を捧げることさえ惜しくないからという理由で。サタナスの死が予測されるシーンにハラハラさせられましたが、我に返ったアベルがサタナスを庇うために飛び出して行き、サタナスは死ぬことをやめました。ここの2人の病み具合が凄いと思いました。
アベル「僕だけものにするために君を殺すよ」
サタナス「あなたのためになら俺の命など惜しくはない。捧げよう。」(いずれのセリフも私の創作です)といった感じの2人でした(苦笑)

11

シリーズ?通して、乾いて熱いです!

華藤えれな先生の作品は、総じて、しめしめと湿度が多く私には合わないかな~って、全作売りに行った覚えがあります。…が、このマタドールシリーズ?と言っていいんでしょうか?スペインの気候風土のせいか、作者様の思い入れのせいか、乾いて熱いです!!(神に弄ばれた恋)(愛のマタドール)(裸のマタドール)…と、それぞれが珠玉のお話しだと思います。…あ、なかなか200文字に到達出来ません。(~。~;)?まだまだ、「熱く語る…」には、道は遥かに、険しいです。

7

隠れた名作だと思います

ベタベタではございますが、運命に翻弄される悲劇の恋人達と言うのが大好きだったりします。

この二人の出会いって、不幸を通り越して悲劇なんですよ。
共に居たいと純粋に願っただけなのに、殺人犯にまでなってしまうサタナスに、由緒正しい貴族と言う身分から、マフィアの愛人にまで堕ちてしまうアベル。
愛すれば愛する程、互いを不幸にしてしまう・・・。
それでも魂で求め合うような二人の姿に、胸が熱くなるのです。
苛烈過ぎる愛の形に、心が震えるのです。

そんなワケで私と同じ悲劇の恋人達に滾る方、ぜひご一読下さい!!
超おススメですよーーー!!

で、こちら、既に素敵なレビューがたくさん書かれてるので、印象的な部分のみ語らせていただきます。

まずですね、二人のすれ違いがとにかく切ないんですよ!!
もの乞いと貴族のお坊っちゃまとして出会った、少年の頃の二人。
互いに強く惹かれ合いながらも、身分の違いから話す事すら出来ないんですよね。
もの乞いであるサタナスが、貴族であるアベルと唯一対等になれる方法ですが、この国で闘牛士となる事ー。
その為、二人は決意するのです。
サタナスは闘牛士になり、アベルは彼を闘牛士にする為に全力で支える。
これが悲劇の始まりとも知らず、純粋に夢を語り合う二人がひどく切ないんですよね。

ヒターノ出身のサタナスは、正闘牛士になっても差別からは逃れられず、いつまでも上には行けないまま。
また、父親が死に、没落してゆく中で、男娼のように自身の身体を切り売りして闘牛の為の金銭を工面するアベル。
そして、アベルが自身の為に、男達に抱かれている現場を見てしまい、怒りから剣を振り上げるサタナスー。
この時点で相当切ないのですが、これでまだまだ序盤なんですよね。

この後、サタナスを救う為、マフィアの愛人となるアベル。
出所し、闘牛士として華々しく活躍するようになるサタナス。
と言った流れなんですけど。

アベルはですね、サタナスを生かす為だけに、自身の気持ちを隠して彼に闘牛をさせるのです。
そしてサタナスは、アベルを腕の中に抱くために、命を懸けて闘牛をし続けるー。
この二人は、互いに誰よりも求めあってるのです。
それなのに、互いを求め合うほど、どんどん相手を不幸にしてしまうー。
憎みながら愛するようなサタナスも切ないのですが、サタナスの為に全てを投げ打ちながら、愛してる事を決して悟られてはいけないアベルもめちゃくちゃ切ない・・・(ToT)
もうさあ、互いに愛し合ってるのに、何故これほどまでに、運命は共に生きる事を許さないのかー、みたいな。
しつこいんですけど、二人とも互いの幸せしか望んでないのに、自分の存在が相手を不幸にしちゃうんですよ。
これは本当に切ない・・・!!
もう勘弁してあげてーーーー!!

あとですね、終盤でかなりのどんでん返しがあります。
私はこれにすっかり騙されてたクチなんですけど。
若干イラつく部分があったサタナスなんですけど、ここで「うおおー!!」と胸を熱くさせてくれるんですよね。

で、二人のすれ違いに、散々切なくさせられた後の大団円。
これなんですけど、何回読んでも泣けてしまう・・・(TдT)
やっと、二人の幼い頃の夢が叶ったんだなぁと。
アベルの願いは神様に届いたんだなぁと・・・。
ホント、心が震えるラストなんですよ。
このラストを見届ける為に、ぜひとも読んでいただきたい!!

と、個人的に神作品なのです。
これ、本当に隠れた名作だと思います。

7

闘牛愛に溢れています。

スペインに旅行をされる方には是非!読んでいただきたい。
闘牛ってよく分からないけど、なんか怖いわと思っている方にも是非、読んでいただきたい。

スペインの伝統文化である闘牛を描いた作品といった方がいいかもしれない。
BL要素はこの作品を盛り上げる調味料のようなもの。
BL作品を作る為に闘牛が背景にあるのではなく、闘牛作品を作るためにBL要素が使われた、そんな印象だった。

スペインの貧困層がそこから抜け出すためには、サッカー選手になるかマタドールになるのか、そこまで身近にある闘牛士という職業。
闘牛士になるには、なった後は、一流という名声を手に入れるためには何をしなければいけないのか、どれだけ過酷な状況に置かれているのか、体感温度50度の中で繰り広げられる死闘、そこで熱狂する人々。
熱い!暑い!アツい!
何が一番アツいって、華藤さんの闘牛にかける思い・情熱・愛、それが一番あつい!
それはもう細かいことはもう棚に置いておこうと、これは闘牛本なんだと、闘牛のあれこれが分かって更にBLも読めるお得な小説。

ああ、そう思わないともっと書き込んで欲しかった要素がたくさんあって、いつの間にか過ぎ去ってしまっていたりするのですよ~。
裕福な家がが没落していきそれでも、闘牛士のパトロンでいたいが為に主人公が何故にマフィアの愛人になったのか、そこまでの葛藤、そこでの葛藤とか、マフィアで過ごした日々、マフィアのドンを薬漬けにできた経緯とか~。

ああ、もっと読みたかった。

しかし、もっと読みたかったと思わせてしまうほどに闘牛士に関することが細部まで練られ、描かれているのです。
おもしろかった。
そして、挿絵も最高でした。
朝南かつみさんしかありえない、本当にぴったりでした。

13

死神と悪霊が運命の出会いをするとき

魂の底から惹かれあう二人、でもその二人が共に或ることで
互いを呪縛しているかのような狂気にも似た執着が不幸を連鎖的に
呼び込んでしまう。
互いを思い合うゆえの行為が互いを不幸にしてしまうお話で
離れなければ安寧の道が見えないという悲しく苦しい愛の形です。

良く当たると言う占い師に幼い時に不吉な未来を示された二人
攻め様にとって受け様は死神、受け様にとっての攻め様は悪霊
神に祝福される穏やかな未来を得るためには二人は一緒にいては
駄目だと占い師に言われるが幼い二人には意味が解らなかった。
初めに惹かれたのは貴族の息子の受け様、攻め様の姿に心惹かれ
そして攻め様に自分と似た感情を見つけ共にいたいと焦がれる
初めに悪霊に魅入られてしまった受け様には逃れる事が出来ない
運命だったんですよね。
そして攻め様に生きる事に初めて希望を与えてくれたのが受け様
攻め様に闘牛士になることを願い、その天使のような心根と容姿に
攻め様は身分を超えた思いを抱くのです。
そして受け様を助けるためにその身を楯にして大けがをする攻め様
そして受け様は自分の全てを掛けて攻め様の命乞いを神に捧げる。
この時点ではまだ幼い子供だった受け様のヤンデレ的な狂愛はかなり
怖い感じです。
ただ、攻め様が好きで好きで一緒にいたいと言う思いは大人になっても
思いに陰りが下りることが無い程激烈なんです。
攻め様を1番の闘牛士にすること、それが幼い時からの二人の願い
それは身分違いで口さえ聞くことが出来なかった二人が唯一共に
いられる為の方法でもあったんですよね。
そして後半で解るのですが受け様は罠にはまってしまってるのです。
それも本人も気が付かないような巧みな罠なんです。
それが原因で受け様の家は没落し金銭的にも困窮しますが受け様は
攻め様だけには知られないように一流の闘牛士にするために
自分を犠牲にし始めて破滅の道に進んで行くのです。
そして攻め様に男に嬲られている姿を目撃され、攻め様が撃たれそうに
なった時に受け様は相手を銃殺してしまうが攻め様が身代りに
そして全てが終わってしまったと思っていた時にまた運命が動き出す
終身刑の攻め様を釈放させるために受け様はマフィアの養子にまで
なってしまう、もちろん愛人としてですが、さらにはそのマフィアを
攻め様の復活の為にクスリで廃人同然にしてしまう程汚れてしまった
受け様なんです、その姿に絶望してしまう攻め様ですが攻め様もまた
常に受け様の幸せだけを願っているんですよね。
攻め様の為に愛していると口が裂けても言えない受け様の悲観が
心に沁み込んでくるほど切なかったですね。
二人には破滅の道しかないのだろうか?生きている限り幸せになれない
やはり占い師の予言通りなのかと痛く、切なくなるストーリーです。
それでも、最後は攻め様の反則技的裏ワザで新たな道が開けてくるが
それは受け様を幸せにしたい為の手段、でも受け様は離れるくらいなら
相手を殺し、自分も死ぬ覚悟で最後の攻め様の闘牛を見つめる。
攻め様はそこで、神の啓示を受けるかのごとく全てを受け入れ
破滅の道でも二人で共に或ることを選ぶのです。
ラストギリギリまで安易な二人の幸せが見えてこないシリアス展開
でも何故か泣けてくるそんな余韻の残るラストに仕上がっていました。
とても素敵な作品でしたね。

11

魔王というあだ名の隻眼闘牛士に萌えた!

ジプシーと貴族の身分違いの恋。
お互いにどんな自己犠牲も厭わない、貫き通す二人の恋心。お互いを大切に想うが故に擦れ違い、不吉な予言に翻弄されてゆく。
想い人の貴族アベルと対等の立場を手に入れ、二人で一緒にいる…ただそれだけの為にサタナスは闘牛士を目指し、アベルは彼を闘牛士にするため没落し爵位を奪われてしまう。アベルは身を投げ出してでも援助し続ける。そんな中でサタナスは刑務所に収容され二人の夢は絶たれてしまいます。それでもアベルは負けなかったのです。
子供の頃は綺麗で純粋な恋心を育んでいたのに…成長したら二人とも見事な病みっぷりで、歪んだ愛が花開きます(´∀`)
闘牛に関する知識が皆無な私にとっては、闘牛に熱狂しまくる人々、スペイン文化、歴史的背景を思い描くのに一苦労でした。私には、ちょっとハードルが高いように思えたのですが…気を緩められない展開が続き、いつの間にか物語に引き込まれていたようです。
疲労感を感じながらも読んでいて楽しかったんですよ…終盤までは。
個人的な意見で申し訳ないのですが、終盤からの展開にちょっとガッカリでした。アベルを護るためには仕方なかったとは思うのですが…もうちょっと何とかならなかったのかなぁ。

官能的な描写、スペイン背景の描写はさすがです!素晴らしいです。
朝南かつみ様の美麗イラストも物語にマッチしていて素敵でした。

10

魔王は総ての王

華藤えれなさんの、熱い熱い愛のこもったマタドールシリーズ。
この本はヒターノ出身、隻眼の闘牛士、魔王サタナスと、グラナダで闘牛牧場を持つ伯爵家の嫡男アベルのお話。
先に、同人誌「生と死」で「あの日、流された血のために」としてさわりの部分が書かれていた物。
「生と死」を読み直した勢いで、この本も積み本箱から発掘。
「あの日、~」はサタナス(同人誌ではイヴァン)の出所からマドリードでの再デビューまでがメインで、子どもの頃の出会いの話がちょっとと、再デビューの闘牛に勝利したところで終わっていたが、さすがにこれだけの分量のノベルスとなると、いろいろ前後にエピソードが増えている(ついでに、主人公が隻眼設定になってる)。
このお話、書こうと思えばアベルがマフィアの世界にはいるまでとか、サタナスが大逆転でファミリーを手に入れる話とか、それだけでノベルスがもう1冊分くらいのストーリーはありそうだけど、何と言っても、あくまでもメインは闘牛の話なので、そんな裏ストーリーはざっくり省略。
この作品、今の状態でも充分お腹いっぱいになるので、これでよかったと思う。

さて、次は「愛のマタドール」を探してみようかな。
レビューしてないけど、一度読んでいる気がするのだが、、、
いったいどこにあるやら。
いっそ、改めて買うか?

9

生と死と情念の世界

華藤さんの闘牛シリーズ、記念すべき第1作目。
故・朝南かつみさんが挿絵を手掛けられた貴重な一冊でもあります(続刊の挿絵は葛西リカコさんが担当)。

「魔王」と呼ばれるヒターノ出身の闘牛士・サタナス(年上攻め)と、彼のパトロンで元貴族のアベル(受け)の主従・下克上モノ。

物語は、ある事件で刑務所に入っていたサタナスが出所したところから始まり、その後アベルとサタナスの子供時代へと遡ります。

貴族とヒターノ。
身分は違えど幼き頃から想い合っていた二人。
しかし、アベルの家の没落、そしてサタナスを闘牛士にするためアベルが男たちに身体を売っていたことから、二人の関係は大きく変わってしまいます。

アベルを侮辱し陵辱するサタナスですが、根底にあるアベルへの想いは幼き頃のまま。
アベルのため罪を被り、アベルが望めば死をも厭わない彼の、不器用な献身ぶりが切なくも愛おしいです。
敬語をやめ横柄な口調でアベルに奉仕を命じていた彼が、本心を見せ昔の口調を取り戻していく展開に萌えました。

様々な要素がドラマティックに絡み合う展開がいかにも華藤さんらしく、荘重かつ華やかな一冊。

しかし、マフィア組織内の抗争に多くの頁数が費やされている割に、細部の描写は随分あっさり。
一介の貴族や闘牛士がマフィアの要人になるという、ただでさえ現実味の薄い展開を描いているのに、その過程が丸っとカットされているため、益々リアリティに欠ける話し運びとなってしまいました。

また、マフィアの世界と闘牛士の世界とが同時並行で描かれているため、シリーズ3作目の『裸のマタドール』等と比べると、闘牛成分は薄め。
業界の厳しさや試合の緊迫感など情報量は多いものの、関連作の同人誌や上記作品で闘牛の世界に浸った後に本書を再読すると、やや物足りなさを感じてしまいました。

朝南かつみさんの挿絵は本当に美しく、必見。
色々と詰め込みすぎな感はあるものの、華藤さんの情熱が伝わってくる素敵な一冊です。

6

スペインの空気感に浸る(紙の本をお薦めします)

評価が高評価に偏っているのがよく解る!
このお話を通して描かれているスペインの空気感が、大声で叫びたくなるほど「ヨイ!」のです。
闘牛場は暑いのです。そして、砂塵が舞っている。
そこに集まる人々の熱狂も、熱いけれどやっぱり乾いている様な気がします。
素晴らしい闘牛を行なえば熱狂的に持ち上げ、無様な様を晒せば地の底まで闘牛士を貶める。
湿度の高い日本で育った私には、この空気はとても魅力的でした。

そんな乾いた空気の中で繰り広げられるものですから、ヒターノ(ロマってことで良いのですよね?)のイヴァンと貴族のアベルの子どもの頃から続く恋、と言うか『本当は互いを崇拝する様な関係なのに、セフレのふりをし続ける』というウェットぶりが美しく際立つと思ったんですよね。
これもヨイ!

ただ、残念なことに尺が短すぎると思うんです。
闘牛というものの背景がよく解らない私が想像で補えない部分が多くて。
興業としての闘牛にどうマフィアが関わっているかとか、闘牛に関わるためにアベルが払った『代償』とかの部分が、よく解らないと乗りきれない部分がいくつかあったのです。
特に、スペインでの男性同性愛ってどういう位置づけなのかがよく解らなかったので、アベルが行なったことがとても愚かな行為に思っちゃったんですよね。

あと、私の読んだ電子版では朝南画伯のイラストがなかったので。
レビューでは大絶賛をしている方が多いので、非常にもったいなかったなぁ……紙の本にすれば良かった。

3

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