愛に執着するあまり、心がすれ違う男たちのたどり着く結末は・・・!

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レビュー数
22
得点
299
評価数
79
平均
3.9 / 5
神率
46.8%
著者
木原音瀬 

作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます

イラスト
藤田貴美 
媒体
小説
出版社
蒼竜社
レーベル
Holly Novels
発売日
価格
¥900(税抜)  
ISBN
9784883863891

あらすじ

片思いしていた男が死んだ。篤は男が育てていた姉の子供を、彼と思い引き取って育て始める。少年は篤にまったく打ち解けなかった。
やがて子供は大学生にまで成長したが、愛した男の面影は見えなかった。
篤は自分の役目が終わったことを感じ、結婚して身を固めようとするが・・・。
書き下ろし20~30ページ!
木原音瀬、衝撃の問題作!!
(出版社より)

表題作HOME (新装版)

片想い相手の甥・18歳
弟の恋人の甥を引き取った会社員・33歳

その他の収録作品

  • HOME 2
  • HOME others
  • あとがき

レビュー投稿数22

いたずらがすぎる…

期待を裏切らない、斜め上からくるオチ…、ピリっときました。いえ…、
”ぎゃーーーーーーーー!”
と叫びたくなりました。”神”でもいいのかもしれませんが、、個人的にはどうしても攻視点がほしかったな~、、と思ったので、”神”寄りの萌2とさせていただきました。

攻受どちらもヤバいひとです(笑)。キャラクターは割と木原先生の定番の印象で、、ちょっと”COLD”を彷彿とさせるところもあったりするのですが、、今回のオチは今まで読んだどの作品よりも怖かったです。”そっち行くのか…(絶句)”と。読者すら絶句させるような行為に対して、当事者は軽い悪戯をして、”ちょっとやってみたかったんだよね~”という態度なので、その温度差に震えて叫びたくなったのかもしれません。ちょっと受が不憫に見えるところがあるかもしれませんが、自分が進んで背負った重すぎる十字架に振り回されている、まさに望んで振り回されているので(たぶん)、そんなに可哀想じゃないです。

書き下ろしは10年後の二人なのですけど、まぁ第三者の視点が2人を的確にとらえてますね→”頭おかしい”と…。でも、他人がどう思おうと2人は幸せそうです。間違いとか正しいとか、常識とか非常識とか、当事者にしかわからない幸せのかたちがあるということを改めて思い知らされる、地味にパンチの効いた作品でした。

0

究極な、言わなきゃわからない説

木原さんの作者さま買いです。
昔買ったものを読み返してレビューです。

やはり薄暗さ満載。読み応えあります。続きが気になりますが一気読みは無理な作品でした。
決して、ダラダラして一気読みが無理と言うのではなく、繊細な気持ちのすれ違いや感情に、押しつぶされてと言うかなんというか。。文章も割とぎっしり。情景などダラダラではなく前後の文章でわかるような、作品。

よく振り返ると言わなきゃ気持ちは伝わらないなぁと思いますが、その究極なお話です。執着がお互いすごい。ちょっと実際に会ったら関わりたくない感じな方ですね。笑。それくらい怖い。。

やはり最後はハッピーエンドですがそれまでが本当に薄暗い。笑。

兄弟間での劣等感などがとても繊細に書かれていて、かなり共感しました。
好きになった人は自分を見ていないその切なさ。
自分も辛さを知っているのに、同じことをしてしまう人の弱さとかも細かく描かれていて胸が痛くなりました。

最後のオチがまさかの整形で、酒乱で見間違得たのではなく実際にその実らなかった初恋の彼の顔にしていたという。。なんとも切ないけど怖い。
またそれが超美形から、普通の顔にへの整形と言うものは、最後のothersで明るい学生のキラキラした世界の中でめっちゃ薄暗い怖いものが見えて、ぞぞっとしました。しかし、キラキラした世界にも普通に薄暗いものってたしかにあるわね。と共感もしました。女の子のあざとさもよく出ていてこの最後のothersも良かったです。

その後2人が幸せに執着しあって生きているのだろうと、ハッピーエンドで良かったです。

0

書き下ろし

最初はあまり惹かれない作品だったが、書き下ろしで印象ががらりと変わった。
エゴだらけの恋でも、本人達が幸せならそれでいいのかなと思えるようになった。
書き下ろしが主役視点の話ではなく、第三者の視点で進むのも予想外でびっくりした。
客観的に見ても理解できない・ありえない関係の二人なのに、それを納得させる先生の力量に感動。
最後の独白がこの作品のすべてを物語っているように思える。
とても人間らしい、素晴らしい作品だった。

1

気持ちを伝え合わな過ぎだよ

“同じ腹から生まれ、同じ容姿で、それでいてどうしてここまで違った運命を辿るのだろう”

今回も凄いですね…
「美しいこと」は主人公のもともと持っていた顔のつくりの美しさを利用し、そこから始まった恋や愛のお話。この作品では顔が瓜二つだけど正反対の性質の双子と、顔が全く違う叔父と甥の運命が描かれます。
コンプレックスを持つ人達の話で、大体の人は「整形をする」と知ってからこの作品を読むと思います。
どちらの作品も結局中身が大切で、見た目なんて中身程重要ではないという筋になるのですが、こちらはより狂気だっていてゾッとさせられます。

主人公である篤はそっくりの双子の兄 隆と正反対で、言いたい事を言えない静かで思慮深い性質。好きなようにやっていて周りから構われ好かれている隆を見て、自分より隆が愛されていると僻んでしまう篤。感情や欲するものを口に出来ない気持ちがとても共感出来て、そして自分に一番近い人間が自分よりも愛され好きな人と結ばれている辛さが痛くて痛くて、最初の30ページで読むのが辛過ぎました…。
ハッキリと区別はしても誰も表立って「隆の方が良い」とは言わない、でも感じ取ってしまう篤。初めて認めてくれた人(伊沢)が同時に否定を決定的にした事で、他の人に告白されても、30代になっても自己否定を引きずっている。
墓参りにすら同じ顔だから出ないというの、辛い…

でもそんな、特徴が余り無いような、BLにならなそうな普通でしかない人でさえ、木原さんはいつもその人だけの魅力を説得力をもって描いて愛おしく思わせてくれるしBLになるので、それを希望に読み進めました。だから彼女の本は好きですし、ネガティブな自分も救われます。

篤にした直己の暴力は本気で駄目だと思います。
もうずっと立原にしか加担出来ない。
でも篤は隆と自分を比べてずっと選ばれない人間だと決めつけて生きてきました。そんな人なので、たとえ自分に酷い暴力した相手だとしても自分だけを頼り甘えられてきたら、それに抗えないなとも思います。
とにかく篤も直己も、自分の気持ちを言わない!分かってくれと思ってるけど理解し合わない!
作中で「こんな自分、もったいぶることなんてなかった。」という言葉があるように、もっと自分の事を言わないとこれだけすれ違って幸せになるのもなれないよ!という教訓のようでした。

そして書き下ろしのお話で、凡庸である篤、激情の直己もまた普通の学生から見れば冴えない講師でしかないことが描かれるのが良いラストだと思いました。どんな激しく逸脱した人生で強烈な思いを抱えていても遠くからは見えないことにホッとする気持ちと、彼らでしか分からない狂気の秘密とで、余韻が凄い。
それでいいのかっ理解出来ん!!という気持ちに何度もなるのですが、結局は二人が良いなら外野は要らないんですよね。

0

この二人じゃなきゃこうはならなかった

終始心がジクジクして痛みを引きずっていました。
だけどそれがいい。
中毒のようにその痛めを求めてしまう。
そんな欲求にどの作品でも潤いをくれる木原先生に頭が上がりません。


今回のお話。
前半はなかなか考えが読めない直己(攻め)の姿もあって、メイン二人が幸せになるビジョンが真っ暗でなかなかに戸惑いました。

好きだった男の面影を探すばかりで直己自身を見てあげてはいなかった。
衣食住をしっかりさせても、篤(受け)は無自覚ながらも直己の心に触れ合うことはなく…直己がそう育ってしまったのも無理ない部分が感じられるからこそ直己の凶行(レ●プ)も読者としては酷い奴だと蔑みきれなくて…。

ここらの塩梅が絶妙なんですよね。
どんな奴でどんな事を仕出かそうと心から憎みきれるキャラがいない…先生のマジックとも思う。


お弁当の話は心に残りました。
男が作った弁当だとからかわれないように気を使ってこだわって。
見た目も栄養もきちんと考えていたんだろうな。
でもきっとこれが直己の好物だから多めにいれてあげようとか直己の喜んだ顔とか考えることはしていなかったんだろうな…と思うとまた痛みが…orz


しかしそれでも好きになる流れの欠片が見えてきて…あれ木原先生にしては緩やかで穏やかじゃね?と思った矢先の直己の事故…。
突然の衝撃、悪夢。
中盤早々死角からパンチぶっ込まれましたよ。

それから後はずっとずっとつらい…胸が痛いしか言っていなかったです(私が)

両想いなはずなのにうまく噛み合えない。
根本的に合わないところは確かに存在していて…それを覆す術をもたずともそれでも好きが消えずに光見えぬところでもがいている姿に胸が締め付けられました。

直己と篤。この二人じゃなければこんなことにはならなかっただろうな…というありきたりさを感じさせない展開……たくさんの人に読んでほしいです。

終盤は眉間の皺が取れてきて良かったです。ホッ。

0

そうきたか!

木原先生にハマり、立て続けに数作読みました。その中でも1位2位を争うのではないかというほど、驚愕に次ぐ驚愕…
主役の2人もかなり歪んでいて、何度も「ひーーッ」と読みながら叫びました。ほんとに。
攻めの直己が可愛らしくいじらしい姿を見せても「いやいや、ほんまはなんか裏があるんじゃないの?」とつい疑ってしまう。なんか薄ら怖い。篤に愛されたいが故の行動がぜんぶ怖い。

はっきり言って「ときめきたい」人は読むお話ではありません。そんな生半可な気持ちで読むと痛い目に遭います。ほんとに。
だけど、とにかく面白い!そう、面白いんです!
展開がまるで読めないし、私たちの持つ「BLってこうだよね〜」みたいな馴れ合いを全て蹴り飛ばしてくれる。新鮮な驚きが絶対にある。
なんだか、BLとしての新しい在り方を見せられたような気がします……

木原先生は、ほんとに天才だと思いました。

0

成長のない人たち

だけど、世の中成長できる人達ばかりじゃない。とあとがきを読んで、確かにその通りだ。と、深く納得しました。


事故が、事故さえ無かったらなぁ〜
なんて思ってしまうけど、それが無ければ話も進まないから仕方ない。

途中で本人も気付いてたけど、篤が一度は反省?してたはずの直己への接し方と同じ事を繰り返しているっていう腹立ち( -᷄◞ω◟-᷅ )

何をやってるんだい!って言ってやりたい…。

直己の篤への想いは、いじらしいを通り越して痛ましかったですよ˚‧º·(˚ ˃̣̣̥᷄⌓˂̣̣̥᷅ )‧º·˚
辛い事たくさんあったけど、それでも最後が幸せそうで本当に良かった。。

0

二人の強い執着が羨ましい

篤と直己は、気持ちが伝わらなくても傷ついても、相手へ執着し続けます。
直己は篤を振り向かせるために無理やり体をつなげたり、果ては篤が昔好きだった男の顔に整形してしまいます。篤は直己に食べてもらえない食事を作り続けたり、喪失感から逃避するためにアル中になってしまい…。

そういう「好き」にはゾッとしながらも、強い執着を羨ましく感じます。
特に篤が、なぜ直己を諦められないのか、なぜ自分は悲しいのかと、自問し葛藤する描写にはとても共感しますし、そういう生き方は真面目で不器用だけれど、とても好ましく思いました。過去の恋に執着して直己を引き取らなければ、直己を好きになることも過去に決別することもなかったでしょう。
直己の振る舞いは乱暴ですが、それは篤にもっと自分を見てほしい、愛してほしいという叫びであり、直己にそうさせてしまったのは篤だったのですね。過去の想い人の面影を直己に求めて、直己自身に関心を向けてこなかったから。引き取られた理由を知り悔し涙を流す姿は、小さな子どものようで、可哀そうでかわいい。ハンストしたり、「あんたのココロが欲しいな」と言う直己もいじらしくて。
互いに強く執着するからこその二人の苦しみや無様な姿が、とても愛おしいと思いました。
恋愛において執着は甘く苦いエッセンスなのかもしれません。強くなればなるほど、より甘くより苦くなる…。

HOME2の最後で、篤は直己に「帰っておいで」と言います。篤は直己のHOMEになるためにどのように変わったのか?具体的なエピソードを読んでみたいと思いました。厳しく叱るとか、どうしてダメなの?と踏み込むようになったのかしら。本編とはうって変わってほのぼのとした話になる気がします。
書下ろしのothersでも直己の毒舌ぶりは相変わらずですが、生徒の前でゲラゲラ笑ったり、整形したのは好きな男のためだと話したり、だいぶくだけた感じがします。でも元の顔には戻していないところに、篤への「ずっと自分を好きでいてほしい」という強い執着が垣間見えて、やっぱり直己だなと笑ってしまいました。

2

愛情の表現って難しい

こちらのお話、めっちゃ好きです。木原音瀬さんの痛々しいまでのパンチの効いた話が読むのをやめられなくしてしまう。すっごく単純な「好き」っていう気持ちを自分で気づいたり、伝えたり、分かったりするのにどうしてこんなにも傷ついて傷ついてお互いをここまで落としてしまうのか…人間の良くも悪くもの内面がよく描かれた作品で旧作も手元にありましたが新装版が出版されるにあたり改めて購入しました。その後の2人が気になっていたので、書下ろしが読めたことが嬉しかったです。

3

凄いということと、好きだということ

木原さんの作品とは相性が悪い。
読む作品読む作品、筆力には脱帽しながらも
肌に合わないというか、好きじゃないというか……
でもコミカライズをきっかけに一気読みした「吸血鬼と愉快な仲間達」が良くて
じゃあ、久しぶりに何か読んでみようかと手に取ったのが、本作。

好きな藤田貴美さんの挿絵。
表紙の淡い色合いを見ながら、イヤ、こんなはずないでしょ?と読み始めたのだが
こんなはずないどころか、ほのぼのしたタイトルと表紙とは真反対の作品でした。
油断させられて突き落とされる的な?衝撃的なある意味木原さんの凄さ全開の作品。
ああ……

               + +

一卵性双生児の篤は、親や世間の顔色を見ながらビクビク生きている。
そんな自分をちゃんと見てくれたと感じた相手に恋をするが、
彼は、同じ顔だが性格は対照的なの双子の片割れと恋人同士になってしまう。
諦め切れず気持ちの折り合いをつけられずに過ごす日々、
そんな時事故で二人が一度に亡くなり、
彼らが育てていた恋する人の甥・直己を引き取って育てることにする。
年月が過ぎ、子どもだった直己が高校を卒業する年齢になったところから
物語は始まる。

愛を求めて暴力的な行動に走る、寡黙な直己と
相変わらず顔色をうかがって生きる篤。
恋した相手の面影を求めて引き取った故に、
ちゃんと生身の直己に向かい合わず年月が過ぎ、
一つ屋根の下で暮らしながら、様々なボタンが掛け違っていく二人。

一途というか自己中心的な直己の愛は、ある意味ホラーだが、
本当にどうしようもないのは、更に自己中心的で自己完結している篤。
そういう意味では究極の似たものカップルなのだと思うし、
これからも強固な閉じたHOMEの中で生きていくのだろう。


お互いにそれで幸せならば、傍からは何も申せませんが、
正直、私は見たくないというか、見せられたくないというか……
だからこそ、閉じた輪の中から篤を救おうとして力及ばなかった立原に
いたく同情してしまうのだった。

               + +

人の幸せや愛の形なんて、本当に様々で、それを評価する権利なんて誰にもない、
分かっていてもモノ申したくなる、そんな自分の中の驕りや偏見に満ちた思いが
あぶり出される気分が不快なのかもしれない、と、思いながら本を閉じる。
それをあぶり出す木原さんの筆は凄いと思うが、
好きと思えるかどうかは、全然別の問題なのだといういつもの結論。

3

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