月に笑う 下

月に笑う 下
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神86
  • 萌×230
  • 萌20
  • 中立3
  • しゅみじゃない6

--

レビュー数
32
得点
613
評価数
145
平均
4.3 / 5
神率
59.3%
著者
木原音瀬 

作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます

イラスト
梨とりこ 
媒体
小説
出版社
リブレ
レーベル
ビーボーイノベルズ
シリーズ
月に笑う
発売日
価格
¥950(税抜)  
ISBN
9784862637000

あらすじ

組を移った信二と、大学に進学した路彦。それぞれの新たな生活が東京で始まったが、二人の関係は穏やかに続いていた。組に疑似家族を求める信二は、組長の息子・惣一につくことになって以来、洗練された惣一に傾倒していく。しかし、組の仕事に路彦が偶然にも関わりつつあると知り…!? 失ったものを取り戻すんじゃなく、お前が心底欲しかった――上下巻合わせて380ページ超書き下ろしで2冊同時発売!
(出版社より)

表題作月に笑う 下

大学生
経済ヤクザのボディーガード

レビュー投稿数32

生への執着を見せる描写がすごい

ヤクザな展開がいっぱいで、ハラハラしながら一気に読んだ。甘さのないヤクザなので、犯罪だろうと倫理観無視で好き放題やってる。二人の逃避行と、その後の再会からの流れがとても好き。

下巻はずっと信二視点。東京に来てからの信二は、急激に惣一に心酔していく。
弱った心の欲する場所にぴったりだったのか、宗教にハマる人のようでもあり、心配になる。路彦が信二を求めるのとは違って、自身の心を無防備に明け渡し過ぎた危うさが見えそうな。

ヤクザを家族と言い、美化しているところのあった信二の理想は、あっけなく崩れ去る。惣一側の事情や考えは分からず何とも言えないが、必死に走り回る信二は、余裕を失くしながらも洗脳状態から復帰していく。

当然待っていたのはヤクザらしい残酷さ。追い詰められ、生への執着を見せる描写がすごい。生きるために、人はどれだけみっともなく縋りつけるのか。醜さ、惨めさ、情けなさ、そうしたものの全てを見せつけられている。

信二が最後に助けを求めたのは路彦で、その時にはもう、信二の中には路彦以外誰も残っていなかったんだろう。
信二にとっての路彦のような、最後の砦のような誰かがいると、人は強くなれる気がする。路彦にとっての信二も同じだろうと思う。こういう関係性を描いてくれる作品がとても好き。

逃避行から服役を経ての再会では、信二の臆病さが際立つ。精神年齢は完全に路彦に追い抜かされており、もはや大人と子供。信二がやっと正直に内面を見せ、二人が心を通わせるまでをじっくり読めて良かった。

エピローグは平和に口ゲンカしながらの旅行デート。主導権は路彦が握ってるっぽい。切ない終わり方で、読後感も良かった。
番外編の後日談とかないのかな。あればぜひ読みたい。

0

山田信二の成長物語

すごくよかったです。
上巻には「月に笑う1」「2」「3」が収録されていましたが、下巻は全部が「3」でした。いやもうそんな構成なんてどうでもいいです。面白くて、続きが気になって、一気読みです。

「1」ではいじめられっこで弱くて泣き虫だった路彦が、下巻では大学生~社会人、しかも頭が良くてなんだかんだ度胸もあり、目端が利いてすごく出来る男になっている。それもこれも全部山田信二のためなのが、すごくよいです。しつこいし焼きもち妬きだし、中学時代の刷り込み故か、山田のことばっかりなのが可愛い。小さくて細かった体格が、長じて山田を凌ぐのも、思いが強すぎて山田を犯すのも、最高過ぎました。
対して、山田はいつまでも中学生のときの可愛い路彦のイメージがあるのか、可哀相と思ってか、挿入を指までしか出来なかったのも良かった。(路彦が、山田のを入れてくれるのを待ってた、と言うのもよかった)
 ※リバがいやな方は御注意ください。
山田が路彦に初めて身体を開かされたとき、「異物が進入してくる感触に、覚えのあるそれに背筋がゾクリとした」と書いてあったので、かつて誰かにされたことがあったのかなと思ったのですが、その辺りのことは書いてませんでした(見落とし?)。勝手に美濃部かなあと想像してます。

言葉が足りなくて(山田が)、癇癪起こして暴力になる(山田が)ことから、二人は喧嘩も絶えないけれど、路彦が山田と一緒にいると喧嘩してても楽しいって言うから、もう二人にはずっとこうやって居て欲しいなと思いました。
上巻で、山田が自分と同じ歳だったらいいのに、って路彦が述懐する場面がありますが、あれがほんとに個人的にぐっと来たので、年齢は同じにはなれないけど、こうやって一緒に居られるようになって良かったなあとしみじみします。

下巻は、山田が成長する話で、読みながら目が離せませんでした。
短絡的ですぐ暴力に訴えるし、危なっかしいし、人を見る目も怪しいところがあるし、それでも根が真っ直ぐで優しいから、一度懐に入れた良太や路彦を自分の身を投じても助けようとする。そういう面があるから寄り添って読書でき、どきどきはらはらでした。(木原先生は、どう落とすか分からないし!)
色々あったけど、最終的にはこのような結末で本当によかったです。
表紙も、上下巻が対になっていて、すごく素敵です。イラストの梨とりこ先生、絵柄が美しく官能的で素晴らしいです。山田の背中の彫り物、見とれてしまいます。

0

上下巻の感想です

最初、学生モノかな…とおもいましたが。
足掛け十年以上。路彦と山田の関係が変化しながら最後、エンディングに向かっていくまで一気に読み進められるのは、さすが木原音瀬さんです。

いじめられっ子で、良いとこの坊ちゃん的な路彦ですが、山田と出会ったことから自分で立つ、というのか自立というのか、そういう気持ちを持ち始めたような気がします。きっかけは窓から飛んだ人の死を目にしたこともあったでしょうが、子供ながらにいじめの構造や、人の関わり、希薄な関係…をちゃんと感じ取っているからこそ、山田という人間の情に惹かれ続けたのかな。
山田は結局ヤクザとは言え、最後の一線を超えられない、人としての情を捨てられない人だったんだと思います。だからこそ、路彦が思い続けた。

BL的な感想で行くと、最後まで受けは路彦だ他思いながら読んでいたので「え?あっそうなの?!」という驚きもあり。ただ、それも流れというかシチュエーションが自然ですんなり受け入れちゃいましたが。
そこに至るまでのイチャイチャ(とは言わないか、抜きっこですかね)、早いとこやっちゃって!とか思いながら読んでた私は腐ってますね(笑)
でもだからこそのストーリー展開になるので、あー、なるほどねぇ。って木原さんに唸らせられるわけです。。

そして、今回のお話は、結構みんな幸せになりますね!
路彦と山田のCPもですが、良太も美玲も上手くいってるし、そして良太の母親も。さらには玲香ちゃんも新しい彼と上手く行ってるぽい。
痛さのあまりない(登場人物の怪我や刃傷沙汰はありますが)ってのは珍しいかも。

月に笑うでも重要なポジションを飾っていた惣一。彼の変態さんについては、別のお話があるようなので、そちらを読みたいと思います。コレまた楽しみです♪♪♪

1

やっぱりヒリついた

上巻は、青春やん♡なんて思ったけど、下巻はそんな甘くなかった。ヤクザの世界だもんね。
惣一の下で働く事になった信二。
ヤクザっぽくないインテリな惣一に心酔していく。
先に灰の月を読んでしまってる私としては
あの、惣一やろ要注意よと思ってたら案の定部下に対して無慈悲な対応。
これは、下がついてこんよ。どんな事があっても離れない嘉藤は奇特な人よ。

家族や仲間に憧れのある信二は誰かのために命をかけたいと思って、惣一はそれに値する人物だと思ってたのに、自分の舎弟がピンチの時や、大事な路彦をヤクザの世界に踏み入れさせたくないって願いをことごとく踏み躙られる。
子が困ってる時に見捨てる親にショックを受けてしまう。信二、義理と人情を大事にしてるんだな。だから、惣一を許せないし悲しいしなんだな。

絶体絶命!ドキドキハラハラ展開が中盤からずーっと続き読むペースが上がりました。
中学生の時あんなにいじめられっ子でヘタレな僕ちゃんだった路彦がとても包容力があって、先導してくれる頼もしい年下ワンコに成長してます。
信二は、すぐにカッとなって物に当たり散らすし、暴言吐くし、暴力も振るうけど、言い返して喧嘩しながらも気持ちをぶつけ合っていく2人がいいなぁと思いました。
長く一緒に居れば、言葉にしなくても察するなんてやっぱ無理。ちゃんと言葉で伝えないと気持ちは伝わらないと2人に教えてもらいました。

ほんとは抱かれるの待ってた路彦が逃亡先で信二を抱くシーン映画のようでとても昂まりました。

何年も掛けて結ばれて、同棲する様になってもまだ喧嘩ばっかして泣いたり笑ったりしてて
2人が微笑ましいです。

3

おぉ…壮大だった…

受攻情報間違ってませんよ。ビックリ…
ヤクザものは映画でもなんでもどうしても興味が沸かず、今回も路彦と山田は好きでもどうも熱中できず、いつも木原さんの作品は一気読みなのに休み休み読んでいました。
再会涙ラストか、はたまたそのままジ・エンドなのか⁉︎(怖いので何となく最後あたりのページをうっすら確認したりした)結局わちゃわちゃラストか〜と読み進めたら、最後には圧巻のラストが待っていましたね。流石です…なんて美しいんでしょう。

あんなに弱っちかった路彦が山田のために逞しくなって、それでも山田には泣いて縋って嫉妬する。その変わった部分と変わらない部分が愛おしく、この長い作品を完読出来て良かったと思いました。
そして挿絵が美しく、髪型や色、身体の大きさが成長とともに美しく表現されていて、彼らの哀愁や悲しみ、離れられないどうしようもなさがタイミングよく挟まれてとてもドラマチックでした。

ヤクザ・前科なら「薔薇色の人生」のモモちゃんがいますが(名前思い出すだけでちょっとホノボノする)、この『月に笑う』の二人はグラつき、成長とどこか退廃的なムードが激しいです。

1

人間とは。環境とは。

木原音瀬さんの作品を見るたびに、好きじゃないんだよな、という感覚を持ちながらまたしても読み切ってしまった。
あらすじは他の方が書いているので良いとして、木原音瀬作品には一般的なBL作品のスマートさっていうものが無い気がする。
一見スマートないかにもBLに出てくる経済ヤクザ、惣一さえも臆病(追記:灰の月で受けた暴行を見たら臆病とは言えなくなります)で、人への愛情の示し方を知らない不器用さがある。
主役のカップルにもそれは言える。
最後の最後までスマートじゃないけど、人間ってそういうものだよね、とヤクザものなのにほっこりする終わり方です。

2

満足なラスト

上巻同様あっという間に読み終えました。

山田がヤ●ザという仕事柄危険なシーンも多々あるのですが、心臓抉り続けるようなドシリアス爆盛りではないですしこのラストなら木原先生の作品の中でも読みやすい方ではないでしょうか。

う~ん。今回も良かったですね。

泣き虫な路彦好きなんですよね~。
山田が巨乳好きでわんわん泣くし体変えてもいいと思う健気さがね…
女々しいという意見は確かに分かるんだけど私にはとても可愛く見えました。
でもこれって子ども時代からの彼を知っているからってところが大きいんだろうなって思います。
最初から大人のビジュアルでこの性格だったら冷めそうなんですけど、体も中身も確かに成長しているのに、山田とのやり取りは出会いの頃の懐かしさも感じて…。
もはや素が出せる間柄で取り繕うことも必要なく思ったことははっきり言えるようになったところは成長を感じるんですけれどね。

しかし…ちんちんついててごめんねとか胸にシリコン入れる?とか聞いていた子が攻めやってるのは……こうクルものがありますな~~~。
というか上巻読んだ時点での私はここでの表記を見るまでは逆だと思ってましたとも。

過去に「お嫁に来てくれる?」と路彦は山田に聞きましたが結局、完璧に家事をこなす路彦を見て山田が路彦をお嫁にもらった気分になってるところとか…彼ららしくて特に好きですね~~~。
他作品だと攻め受けって結構重視しちゃうんですけど、これに関しては肉体的精神的どっちがどうでもいいじゃんって気持ちにさせられます。


これで心置きなく「灰の月」に進められます。
それにしても惣一さんのキャラ光ってましたね、スピンオフになるはずだわ。
ペニバンつけた女におかされないとイケない…ってなかなか刺激的で性癖が前面イメージになってしまったがいいかんじの顔の良さと性格に難アリ加減…そして木原先生お得意のクズの匂い……とても楽しみです。

1

満月の下、やっとたどり着いた幸せ

最後の一線を越えないながらも、ほぼ恋人という微妙な距離を保っていた山田と路彦。ヤクザが自分の生きる道と思い定めていた山田ですが、路彦が組の仕事に巻き込まれたことで、気持ちが大きく揺らぎ始めます。
東京の組に移った山田が仕えたのは、組長の息子で、仕手師を囲ってスマートに莫大な金を稼ぐ惣一。頭が良くヤクザ然としない惣一に山田は心酔していましたが、かたぎの路彦を巻き込まないでほしいと頼んでも聞き入れてもらえず、弟分の良太も見捨てられたことから、惣一への不信感が決定的になります。惣一の元を離れる罰として裏切り者の仕手師を殺すよう命じられた山田でしたが、果たせず、逆に自分が組から追われる身になってしまいます。路彦の助けで二人の逃避行が始まるのですが、やがて追いつめられて…。

家庭に恵まれなかった山田がヤクザに求めていたのは、義理、恩、信頼で結ばれた疑似家族。しかし、それらはボス・惣一の一声で吹き飛ぶような脆いものでした。拠り所にしていたもの全てを失ったとき、山田に残されたのは路彦だけ。「…俺さぁ、お前のこと好きだと思うんだよ」。山田がやっと認めた本当の気持ち。家族を求めていただけでなく、山田は大きな組織に身を置くことで、自分を大きく見せたかったのでしょう。ちっぽけな自分に気付いて初めて、路彦に助けを求めることができたのだと思いました。
上巻ではいじめられっ子だった路彦に、山田は「自分のことぐらい、自分で始末つけろ」と言ったのですが、すっかり立場が逆転してしまいました。路彦が大きく成長したのは、いつか山田の力になりたいという思いがあったからのような気がします。

逃避行の中、それでもまだヤクザを辞めると言えない山田を、路彦が無理やり抱いて自分のものにする描写が圧巻です。路彦は山田が最後までしてくれるのをずっと待っていたのに。それができなかったのは臆病だからだ、と山田の弱さを暴き、「全部僕のせいにしていいよ。」と言い訳までくれる路彦が怖いほど雄で。ずっとヤクザのものだった山田を、路彦は抱くことで自分のものにしたかったのだと思います。路彦のこの行為がなければ、山田はヤクザと決別できなかった気がします。誰かのものになるとは、そういう不思議な力があるのでしょう。

山田が本当にどうしようもなく臆病で。路彦が撃たれた時も拘置所に逃げ、4年たって再会したときも、路彦に泣かれて抱きしめられてキスされて、失うのが怖いからそばにいられないのだと、やっと本心を吐き出して。臆病なうえに強情なんてどうしようもないですが、そこが山田の可愛いところで、きっと路彦もそんな山田だから放っておけないし、好きなのでしょうね。
路彦の言葉「寂しい思いはさせない。たとえ僕が先に死んじゃっても、一緒にいたことを後悔させない。」は、もうプロポーズの言葉にしか聞こえませんでした。
山田は、路彦から離れていた4年の間に、良太が生きのびて美鈴と幸せに暮らしていること、縁が切れたと思っていた叔母が実家を手入れしていてくれたことを知ります。大切なものが簡単にはなくならないことを実感したことも、山田の強情さを和らげたような気がします。ヤクザを辞めて自力で暮らすことも必要だったのでしょう。路彦の気持ちを素直に受け入れるまでに、長い時間がかかったことも納得できます。

物語の最後、路彦が山田に語りかける「これからも一緒にいてね。…一緒にいたいよ」が、とても胸に沁みました。
一緒にいたい。路彦のその強い想いがあったから、二人はずっとつながっていられたのだと思いました。月夜に裸で泳いで笑い合う二人。タイトルは、二人がやっとたどり着いたこの幸せのことだったのですね。
ただ息をひそめていじめに耐えていた中学生の路彦を変えた山田との出会い。それが路彦にとって、どれほど大きなことだったか。一緒にいるのが楽しくて、初めてキスした人で、性の喜びを教えてくれた人。偏見なく相手の本質を見る賢い路彦が山田を好きになるのは、自然なことだったのでしょう。山田も同じ気持ちでいたけれど、認めるのに長い年月が必要で。そんな山田の心の動きを描いた作品だったのだと思います。

誰かと関わったなら、自分もその人の中に温かい何かを残せたらいい。そんな気持ちになりました。

4

ドキドキハラハラ、読後はシアワセー (*˘︶˘*).。.:*♡

上下巻の下巻。完全に続き物ですので、上巻を購入の際には下巻も購入されることをお勧めし致します。なんかレビューというよりは、あらすじになってしまったかも…。ネタバレが含んでますので、嫌な方はお気を付けください。


●「月に笑う3」のあらすじ。(路彦18-23歳・山田22-27歳)
山田は良太と、その恋人の中国人留学生・美鈴(メイリン)の3人で、美人局を始めました。
      美人局(つつもたせ)=男が妻や情婦に他の男を誘惑させ、
      それを言いがかりにし て、その男から金銭をゆすり取ること
      (語源由来辞典より)
これは組への上納金の主な収入源。山田はそのお金を納めに組を訪れます。すると制裁を受けボッコボコになった男が床に倒れていました。その後、よろよろと男は出口に向かいます。そこへちょうど入ってきた惣一とぶつかります。惣一は組長の一人息子。大卒で頭が良く、株取引で莫大な資金を稼ぎ出します。惣一は呟きます。「ケジメをつけさせろ」そして男は小指を1本失いました。

惣一。私の抱くヤクザのイメージとはまた少し違い、洗練されています。しかし、この冷徹さがめちゃくちゃ怖い。ひょんなことから、山田はこの惣一の下で働くことになります。情があり根は優しい山田と違い、この人の非情さは本物。そう感じたため、山田に何事もなければ良いがと祈る想いで読み進めました。

山田がスーツを購入するエピソードが楽しかったです。今までスーツを買ったことがないため、選び方が分からないのです。早速駆り出された路彦。すんなりと店員さんと話をつけ、無事スーツを購入。実は路彦も東京の大学に進学。近くの引越センターでアルバイトをしています。そのお蔭でしょうか。背が高くマッチ棒のような風貌だったのに、徐々に筋肉に覆われてきました。私の路彦への評価は高まるばかり。

さて、ここまでが上巻。いよいよ下巻です。

君嶋という仕手師の世話係、それが山田のお仕事です。この君嶋ですが、30前後のハゲデブのオタク。山田は年がら年中アキバにフィギュア等を買いに行かされます。お陰で路彦にも八つ当たり。

ある日惣一が襲われそうになった時、偶然傍にいた山田が庇い倒れます。手術した上30針縫う大怪我。路彦はボロボロ泣きました。大好きな山田がこんな目に遭ったのです、路彦の気持ちがよく分かり切なくなりました。山田が疑似家族と称するヤクザの世界。それは勘違いなのだと気付き、足を洗ってくれたらという思いが強く膨らみます。

私が好きなエピソードの一つに、惣一が山田を銀座のクラブに連れて行くシーンがあります。「どの女でもいい。お前に抱かせてやる」と言うのです。巨乳好きの山田は胸の大きな女を指名するものの、最後の一線を越えることはありませんでした。路彦に気を遣い、バレないと分かりつつ胸だけ触ってお仕舞い。山田と路彦の関係はなかなか進展しないものの、精神面ではしっかりいとくっついています。そのことが分かってとても嬉しかったです。裏切らない山田に拍手。

刺傷事件をきっかけに、山田は惣一から圧倒的な信頼を得るようになります。そして山田も、惣一を守るためなら死ねると思うのです。ところが、そんな山田に水を差す路彦。売り言葉に買い言葉の応酬が続き、二人は喧嘩別れしてしまいます。そんなある日、君嶋が大学の後輩を助手につけることになりました。山田はそれが路彦だと知り、大慌て。路彦をヤクザに関わらせたくない。それ程大事に想っているのですね。

されど君嶋はおろか、惣一がそれを許しません。そうこうしているうちに山田のケータイに良太からの電話が入りました。でも電話に出たのは良太ではなく、別の組のヤクザ。美人局の商売がバレ、良太が捉えられてしまいました。良太を救おうと必死に奔走する山田。それなのに惣一はけんもほろろに見放します。

ここで初めて山田は疑問を感じ始めます。組と言うのは疑似家族。こういう時にこそ助け合うものではないのかと。万策尽きた山田が最後に頼ったのは警察。これが功を奏し、無事山田を取り戻します。けれども、組への不信感は消えません。路彦の件と言い、良太の件と言い、自分の本当に大切なものを守ってくれない。そんなボスを信頼出来ない。山田は惣一の付き人をやめたいと申し出ます。

ここからがいよいよクライマックスです。山田の逃避行が始まるのです。山田は惣一から拳銃を渡され、言う事を聞けないのなら「君嶋を殺せ」と命令されます。山田はその命令を実行に移すことが出来ませんでした。それどころか目前にいる君嶋に「逃げろ」と伝え、自身も走ってその場を後にしました。どこを歩いても、組の人間がいるようで、山田と一緒になって恐怖に震えながら頁を捲りました。

慌ただしくスリリング。でも面白い♪このスピード感たるや、まるでジェットコースターに乗っているみたい。途中、路彦と合流。二人で追っ手を撒きつつ逃走します。緊迫感あふれて息詰まる展開が続きます。そうした中、ようやく二人が結ばれるシーンがあり、ラブ&スリルを堪能できます。ここからはあえて解説は致しません。是非ともご自身でお読み頂きたいです。最後はもちろんハッピーエンド♪安心して読めます。

最後になりますが、YouTubeの素晴らしいURLを張り付けておきます。ご興味のある方、または梨とりこ先生のイラストを拝みたい方は必見です。髪の毛がより黒い方が路彦(攻)です。惣一のイラストもあります。
https://www.youtube.com/watch?v=ismOBiyzWbE

4

裏社会の話はやっぱりおもしろい!

真っ先に言っておきたいのは立場逆転の展開本当に神(泣)。ちびで弱くていじめられっ子だったのに、いつの間にこんなに頼もしい男に成長した。しかしいくら大人になっても口調は子供っぽいままで、信二さんの心の中ではまだまだ自分の手で皮を剥かれて泣いている中学生だったのだろうね…路彦が逃亡に力を貸してくれる前では。
信二さんの「君嶋が勝手に死んでくれたらいいのに」のセリフを読んだ瞬間なんか既視感があるって思ったら「…!」と同じことを言った路彦を思い出して、この流れを考えた先生に脱帽。本当に尊い!
信二さん目線もすごく良かった。ヤクザの兄貴、組長、舎弟を家族に思えるのは愛に憧れているのだろうね。子どものころから愛された記憶がないし、愛し方も知らない信二さんは命をかけても守りたいのはヤクザの「家族」そのものではなく、自分が生きていく目的と他人との絆だと思うね。なんて哀しい…
今回のイラストは梨とりこ先生で、繊細な筆触ですごく好み。少しシャープな感じもあって、華奢な中学生路彦のイメージそのまま。
上下2巻一気に読み終え、スッキリした気分。今回も素敵な作品、ありがとうございました!

3

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