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tsuki ni warau
作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます
九年の歳月を描く、というところに惹かれて読んでみた。始まりから中学生たちのいじめが描かれるので、読むのが辛い。が、後半は嘘みたいに精神的には穏やか。下巻で痛い展開がくるのか?と、怖いような楽しみなような。
路彦はいじめに遭いながらも、人に期待する気持ちを持ち続けていそうなキャラ。どうなるか分かっていて加害者に会いに行き、懲りずに何度もボコられる。
それでもなお優しくしてもらえるかも、と自身を下に置いて縋るような思いでいるのは、逆に怖い。
信二は年上だけど、精神年齢は路彦と同じくらいに感じられた。中学校という狭い世界しかしらない路彦と同じくらい狭い世界で生きている。ヤクザの特殊世界しか知らないのかな、と。
二人が出会い、信二に執着していく路彦は、不思議と安定して見えた。たまに我儘だったり、図々しかったり、失礼だったり。この遠慮のなさは本来の路彦の性格なのか。依存とは違う、絶妙な距離感と関係性が良かった。
後半は信二視点。こうしてみると、信二の方が不安定っぽい。信二の磁石理論には、なんらかの諦めが潜んでいるのかな。精神的にも成長する路彦と、ずっと変わらない信二。
そんな信二に訪れたのは、組の解散から東京行きという環境の変化。路彦以外に未練はないと語るシーンは、挿絵が良すぎて強く印象に残った。
出会ってから会わない時期・離れていた時期もあるが、そのときの二人の様子は描かれず、さらっと飛ばして再会したり、気付けば路彦が東京に来ていたりする。会えない間の心理描写も読んでみたかった。
ちるちるでこの作品を検索すると、“「人間」を描き切った作品”とすごいアオリ文付きで表示された。これ公式の宣伝文句なのかな?下巻がとても楽しみ。
「灰の月」を読もうとしたのですが、さきに「月に笑う」を読んだ方がいいらしいとわかったので購入しました。
上巻には、「月に笑う1」「月に笑う2」「月に笑う3(途中まで)」が収録されています。このうち雑誌掲載は1のみで、2と3は書き下ろしです。
1は中学時代の路彦の話で、学校でのひどいいじめが描かれてまして。理不尽な要求を拒めず易々と暴力を受けそんな毎日も自分もいやで、誰にも相談出来ずどうしたらいいか分からない路彦の前に、偶然現れたチンピラの山田。四歳年上の山田は口が悪く下品で口より先に手が出るタイプですが、山田との交流を通して路彦は閉塞する日々において少しずつ呼吸ができるようになっていく。
ざっくり言うとそういうお話です。
そして、続く2は路彦が高校生、3は大学生です。2と3は、1と違い、山田視点で綴られます。
上巻ではまだBLのLがうっすらとしか無く、身体の方だけ先行展開してます。
ちるちるの攻め受け情報では、路彦×山田となってますが、上巻の時点では山田×路彦(厳密には指しか挿入してませんが)ですね。下巻で路彦×山田になるので、リバがいやな方は注意してください。
私は1で、いじめの渦中にあった路彦が、山田が自分と同じ歳だったらよかったのに、と述懐する場面にぐっと来ました。そしたらこうやって喧嘩しながら学校に通ったりして楽しかったのにな、と。
後から思えば、この時に路彦には山田という存在が刷り込まれ、嘘も上手になっていったのだなと感慨深いです。
読む順番間違えてスピンオフの灰の月から読んでしまい、灰の月上巻の巻末SSでこの2人の行く末を知ってしまってから過去を読む感じになりました。
木原作品は、読むのしんどい。これは、BLなのかと自問しながら読む事が多いですが、こちらは意外にも青春BLです。クライム作品っぽさは薄め。
チンピラやくざと中学生の交流。
出会いは、路彦14歳中2、信二18歳から4年間のお話。
学生とヤクザでお互い世界が違うのに、一緒に居ると楽しかったり構いたくなったり可愛く思ったりする。
前半は、路彦視点、後半は信二視点で2人共の気持ちがわかる。
今まで読んだ木原作品は、受け攻めどちらかがクソデカ感情持ちでもう1人は鬼畜な程に好きになってくれないパターンだったから、読むのがとてもしんどかった。
こちらの2人はお互いの好き度がちょうどいい感じで読んでて甘酸っぱくて心地よかった。友達以上恋人未満性欲のままに求め合うけど、罪悪感にも苛まれてない。
割といい家庭の子である路彦くんが、夜中に呼び出されて車で峠攻めドライブしたり、塾をサボって2人で過ごしたり。10代の頃に親の目を盗んで遊ぶのって無理しなきゃいけなくて相当ストレス掛かると思うんだけど、それ程信二との時間は魅力的だったんだなー。
「お前が女だったらな」って信二が路彦に言うシーンがあるんだけど、女だったらそのまま学校行かなくなって妊娠して10代で出来婚する流されるパターンだったろうから男同士でよかったよ。
女のカラダを求めるような事を信二に何度か言われる度に、「胸にシリコン入れた方がいい?」「僕が女の人になった方がいい?」みたいに路彦が聞くんだけど、「絶対すんなよ?お前はそのままでいい」って答えるの、何だか灰の月の惣一の伏線みたいだなと思ってしまった。
信二と路彦は、不器用で未熟ながらもコミュニケーションが取れていたからこんな関係性だけど、
嘉藤と惣一は、行き着くとこまでいってしまった。
最後の方で、惣一があんな風になってしまうキッカケの早乙女が出てきた。この時の遺憾かと。
何事も繋がってるものだなと思わされた。
惣一の下に付くことになった信二がどんなスーツ買えばいいか悩んでて、路彦がピタリと言い当てたって面白かった。私もありきたりは嫌だって思ってしまうタイプだからわかるー!って思った。
[サラリーマンにもヤクザにも見えない、かっこいいお洒落なスーツ]どんなとこでどんなスーツ選んだのか気になる。伊勢丹に行ったのかな?
一日で読んでしまいました。
ヤ●ザとかヤンキーとか個人的には萌えない属性なのですがストレスなかったです。
すぐ機嫌悪くなるし(手加減しつつも)手は出るし口悪くて下品な山田ですが…
木原先生の作品の人物って一小説の登場人物…ではなく現実にいそうな人間味あふれていて好み関係なくなんだか魅力的に見えちゃうところってあるんですよね。
っていうか今表記見て気付いたのですが、山田が受けなんですね…そうなんですね…逆だと思いつつも加納くんが大きくなってきてからもしかして…なんて気もしていました。
ヤ●ザとひ弱な優等生という奇妙な友人関係を時間の経過を経てしっかり書いてくれているので感情移入できるしヤ●ザという仕事柄危険な香りを感じつつもこの関係が壊れなければいいなと願わずにはいれません。
上巻では恋人でヤるようなことを友達のまま行っている二人に萌えました。
関係を進展させるとか…そんなステップアップやら甘苦い駆け引きなどはなく…一緒に寝てくっ付いて…それ以上のことをする。
だからといって恋人にとかなんだとかラブロマンスな流れにはならない。
だからこそ先が見えずに面白い。
どうせこうなるんでしょ…という気持ちを読み手に抱かせない。
下巻も早く読みたいです。
汚いところや痛みも含めて人間というものがリアルに描かれているからこその、木原先生の作品らしい読み応えと充実感を味わえつつ、最後は幸せな結末で、緊迫シーンや痛いシーンの辛さや疲労感を引きずらずに比較的爽やかな気持ちで読み終えられました。苦さと甘さのバランスがちょうど良かったです。
そして、個人的に新鮮だったのがリバ要素です。私はリバ要素を含むものはあまり得意な方ではなくて、なんとなく自分の中で地雷認定されてしまっていました。今作は、買う前にある程度情報を仕入れていたこともあり、リバ要素を含むことは知った上で覚悟して読みましたが、いつものような違和感や抵抗を感じることはなかったです。多分、私がリバ要素を苦手としていたのは、今までに挑戦したリバ作品の多くが、受け攻めが逆転することでどうしてもある程度キャラの印象は変わるとしても、その変化があまりに急かつ不自然でキャラがブレて崩壊してしまっていたからだと思います。その点、今作は、泣き虫で子供だった路彦が頼り甲斐のある攻めに変わっていく過程が、成長という自然でかつ確かなプロセスだったのと、山田もまた路彦の成長を感じて、自分が強がってでも守らなきゃという存在から助けを求めることのできる存在に変わっていったのだろうなということが自然に読み取れたので、すんなりとリバ展開を受け入れられたのだと思います。
以前、リバ好きな方の書きこみをどこかで拝見したことがあったのですが、そのときに、「自分が気持ちのいいことを相手にもしてあげたいという気持ちは自然なもの、せっかくblを読んでいるのに受け攻め固定の男女の恋愛のような関係性を絶対的に求めるのはもったいない」というご意見が説得力あるなと思ったのですが、今作を読んでよりそう感じました。結局のところ路彦は、山田が自分に挿入してくれるのをずっと待っていたけれど、路彦を自分のものにするあと1歩を踏みだせない臆病な山田に代わって、成長した自分が山田を抱くことで望んでいた関係性を手に入れようとしたので、自分が受けにまわるか攻めにまわるかなんて気にしていなかったわけですもんね。愛し合うという関係性の中で、どちらが受けか攻めかを固定する必要なんて、確かに全くないよなと納得しました。これを機に、避けていたリバ作品も少しずつ挑戦してみようと思えました。
出会いは偶然であまりいいものとはいえなかった2人ですが、いじめられっ子だった路彦にとって山田は世界の全てとなっていき、人との確かなつながりを求めていた山田にとっても路彦は無条件で自分を慕ってくれる可愛い存在になっていきます。物語が進むにつれて互いがどんどんかけがえのない存在になっていく様が丁寧に描かれていて、満足度の高い作品でした。イラストも綺麗でよかったです。二冊合わせて表紙が完成するデザインも素敵でした。
それにしても私は、立派な攻めにたくましく成長していくのびしろのある年下キャラは大好き(秀良子先生のstaygoldの駿人とか)なので、このリバは良かったです。正直上巻のままの路彦が受けというお話だったら、結構苦手なタイプの受け(女の子っぽい思考回路で弱々しい感じ)になっていた気もするので笑
下巻、未読です。
裕福な家に育ちながら、中学ではいじめられているひ弱な秀才・加納路彦。ある夜、いじめっ子の命令で学校に忍び込んだときに、同級生の女子生徒の自殺を目撃してしまいます。いじめられていた女子生徒。やりきれない思いを抱えながらも自身はいじめグループに逆らえず、公園で暴行されます。そのとき路彦を助けたのが、若いチンピラ・山田信二。その後も山田は路彦の周辺に現れるようになり、路彦は山田から喧嘩だけでなく、夜遊びや性の手ほどきも受け、兄貴と弟分のような友人関係になっていきます。やがて、級友の死の真相を捜査する刑事の手が山田に迫り…。
一度は引き裂かれた二人でしたが、路彦が全寮制の学校に入っても二人の付き合いは続きます。海で花火をしたり、アパートで互いに体を触りあったり。夏祭りで屋台を出した後、河川敷の影で挿入寸前の行為をしたり。ただの友人とは言えない関係に変化していきますが、山田は自分の気持ちにふたをし続けます。路彦に本心を聞けないまま、組が解散した山田は居場所を求めて、弟分の良太とともに東京へ。
その後路彦が東京の大学に進学し、二人の付き合いは途切れることなく続きます。組長の息子の下につくことになった山田のために、路彦がスーツを選ぶアドバイスをするところで、次巻へ。
山田との出会いをきっかけに成長する路彦の描写が鮮やかです。
女子生徒の死に薬物が関わっていたことに気付いて山田を守ろうとしたり、子どもの事情を軽く考える刑事に反論したりと、それまで弱さの影に隠れていた勘の良さと行動力を発揮します。山田とドライブで見た夕日と朝日を比べて、「同じ太陽でも、始まりと終わりじゃ色が違う。全然違う。」と詩的に感動したり。自殺した女子生徒を取り巻く先生・生徒への偽善を感じ取るなど、もともと感性は豊かでしたが、山田との付き合いで感情を思い切り出すように。東京へ出てきてからは、生活力もつき、ますます頼もしく成長していきます。
一方、東京に出てきてからの山田は、組織の中で心酔できる誰かを求めていますが、見つからないまま美人局をして上納金を稼ぐ日々。路彦との行為はほぼセックスになっており、自分の方がはまっているにもかかわらず、気持ちを認めようとしません。最初の頃は圧倒的に優位だった路彦との関係が逆転されつつある…そんな焦りが感じられます。
山田の背中の彫り物、月と惨めに笑う龍は、路彦と山田の関係を象徴しているかのようです。
次巻では、二人の力関係が逆転するのかもしれません。
二人とも相手に嫌われたくないと思っているし、路彦は体をつなげてもいいと思うほど山田を好きなのですから、あとは山田の気持ち次第。二人の関係と山田の属する組織とがどうかかわってくるのか。
昔、山田、良太、路彦の三人で海で楽しんだ花火のような、切ない終わりにならなければいいなと思います。
上下巻まとめての感想。
内容は、さすが木原先生読ませるなー!といった感じでした。
ただ「面白い」のではない。「人間」が描かれている面白さ、といったらいいのでしょうか。
一気読みしました。
なのに「神」評価にしなかった理由は2つ。
①前半と後半で受け攻めが逆転
受け・攻め両者にとっての成長物語なので仕方ないのですが、前半では、とても可愛くて受け的立場(的立場なだけで、最後までしてはいない)にあった路彦が、後半成長し攻めに転ずる。
それでも愛があればいいのかな、と思わせてくれるのはさすが木原先生ではあります。
リバが地雷なので「うおっ」とは思いましたが、不快感はなし。
②信二がヘタレ化する
前半の、幼く弱い路彦視点においては、自分勝手でも魅力的で、路彦に「全てを与えてもいい」と思わせた信二が後半、頼りないヘタレ化。ちょっと情けない。
しかし信二か怯えてヘタレるのも、路彦を大切に思うからで、逆に路彦が躊躇いなどを振り切ってしまえるのは、そうしないと信二を繋ぎ止められないから。
①も②も、決して作品にマイナスとなるものではなく、むしろ根幹を支えていると言ってもよいポイントではあるのですが、私の「萌え」にとっては少々マイナスでした。
生きた人間って完璧な萌えキャラでは決してなくて、変化したり、恐怖に打ち勝てなかったりするのが本当の「生きた人間」。なので、「人間が描けているか」の評価なら間違いなく「神」評価なのです。
しかし「萌え」度数評価ならば、「萌2」かな、と。
萌え重視小説では決してない。
人間というものを描こうとして、描き切った作品だと思いました。
ただ今、木原先生の作品群を読み漁っております。今回も電子書籍化されている未読の作品の中から、「月に笑う」を選びました。まず美しいタイトルに心惹かれ、次に梨とりこ先生の表紙イラストに魅せられました。温もりのある暖色系の柔らかなトーンが私好み。加えて二人の男の子たちがまったりと可愛いく一目惚れしてしまいました。
目次
月に笑う1(加納路彦(攻)視点)上巻(55%程)
月に笑う2(山田信二(受)視点)上巻(30%程)
月に笑う3(山田信二(受)視点)上巻(15%程)+下巻(100%程)
上下巻とも読了!最高に面白かったです♪9年に渡る2人の愛の軌跡を描いた超大作。上記目次をご覧になればお分かりの通り、長さから言ってもメインは「3」。「1」と「2」を上回る面白さです。もちろん「1」と「2」も大変面白く、これらを読まずして「3」を読むなどあり得ません。
「1」と「2」は比較的スローペース。対し「3」は、後半どんどんハイスピードになります。ハラハラドキドキと手に汗握り、ページをめくる指も速まります。レビューも興奮のあまり長くなり過ぎました。よって、上巻であるこちらに「1」と「2」のレビューを、下巻に「3」のレビューを書かせて頂きました。
●「月に笑う1」のあらすじ(路彦14-16歳・山田18-20歳)
深夜の学校で偶然クラスメイトの女生徒の転落死を目撃する路彦。その女生徒の交友関係を探ろうとする4歳年上のチンピラの山田。二人は偶然の出会いから交流を深めることに…。
実はヤクザものってちょっぴり苦手だったりします。平気で人殺しをするなど凶暴なイメージがあるからです。それになかなか小説のヒーローにはなり得ない職業だと思うのです。しかも山田はヤクザの大物ではなくただのチンピラ。大抵は小説の脇役として「覚えてろよー!」の捨て台詞を吐いたまま消えていなくなる存在。
ところがこの小説は、そんなヤクザでチンピラな山田を主人公の一人に据えるのです。やっぱり木原先生はただ者ではありません。路彦も、ヤクザに関しては一般人と同様のイメージを持っています。でも本人に向かって直接「ヤクザって、人を殺すの?」と聞くあたり肝が据わっているなと思いました。こんな事言ったらぶん殴られそうと思うのは私だけ?
イジメから救って貰い、喧嘩の仕方やHなことを教わり、だんだんと山田を好きになっていく路彦。小さくて喧嘩が弱くて、でも頭が良くてお金持ち、厳格な医者を父に持つ路彦。普通だったらこれ程の優等生がヤクザと交わることはないと思うのです。でも路彦にはお友達がおらず、山田が唯一のお友達です。
そして路彦と言う人間はとても意思が強く、一度こうと決めたら誰が何を言おうと変わりません。今のご時世、平気で裏切り嘘をつく人間が多い中、路彦の決然とした信念は目を見張ります。路彦が良いです。どんどん好きになっていく自分を止められません。特にラスト近くは感動。
山田の兄貴と称する男は、例の転落死した女子高生と関わり合いがありました。ある日、路彦のせいで山田がその兄貴からフルボッコにされます。警察に助けを求めたものの、あまりに無残な山田の姿。路彦は大人たちから、山田が死んでしまったと思い込まされました。そして歳月が過ぎ、高校進学。入学式を目前に、偶然デパートのトイレで死んだはずの山田と再会。嬉しかったです。
タイトルの意味が分かるくだりがあります。山田はTシャツを捲り上げ、路彦に背中を見せます。まだ塗り絵のようで色がついていない刺青で、龍の絵が描かれています。山田自身は「月に吠える龍」がカッコイイと思っています。でも路彦は正直に自分の感想を述べます。「…この龍、笑ってる」と。そう、「月に笑う」と言うタイトルはこの山田の刺青の龍のことだったのです。その何気ない会話にほっこり。
●「月に笑う2」のあらすじ(路彦17歳・山田21歳)
山田と、山田を「兄ぃ」と慕う良太と、路彦は待ち合わせ場所から海を目指してドライブ。花火遊びをして、バカ騒ぎをして楽しみました。山田が久しぶりに組事務所に赴くと、他の構成員たちは辞めた後で、早くも若頭となるのですが…。
山田は身長が170cm。そして路彦は山田の背丈を抜かし、なんと数cm高くなったのです。私はこの小説は路彦の成長物語だと思っております。出会った頃は小さくて、喧嘩が弱く、泣き虫だった路彦が、だんだんと大人の男になっていきます。その変化が楽しくて、まるで母親の様な気持ちで見守ってしまいます。
ある日とうとう山田の所属する組事務所が解散。山田は東京に進出することに。けれどもなかなかそのことを路彦に切り出せず…。ようやく東京に向かう車の中、パーキングエリアで告げます。「そんなの聞いてない」路彦は怒り、泣き出してしまいます。ホント!なんでもっと早く告げてあげなかったのでしょう、路彦を不憫に思いました。でも山田には自身の過去や故郷への想いがあり、それに訣別するための時間が必要だったのだろうと思いました。
そして路彦とは、永遠の別れと言うわけではなく、今まで通りメールや電話で交流を続けていけるのです。山田は路彦から「学校が休みになったら会いに行く」という言葉を引き出すことに成功。ようやく生まれ育った街への未練を断ち切り旅立つことが出来ました。
山田の生い立ちを読むと結構壮絶で、胸にポッカリと穴が開いたような虚しい気分になります。こんな愛のない家庭に育ちながらも、一時は叔母の愛を浴びたことのある山田。だからこそ山田は心底悪人にはならず、情のあるチンピラになったのでしょう。それにこれからは路彦がいます。路彦の愛が山田の人生を救います。そう言えば、「1」では路彦が、山田を「守りたい、守りたい」と言っておりました。この路彦の守りたいという気持ちが、「3」での活躍に繋がるのです。
上下巻とボリュームたっぷりで、上巻読み終わったら下巻がめちゃくちゃ
気になって、結局やっぱり一気読みをしてしまいそうです。
何が素敵ってこの本の装丁、上下巻をぴったりひっつけると、1枚の絵になるようになってます。そ
れも、出会いから9年間の歳月を描く壮大なストーリーになるそうなので、上巻は出会った年、そして下巻では9年後の年が描かれてるんですかね。【美しいこと】みたいでドキドキしました。
ヤクザものなため、その手の残虐描写も結構多いので、読んでていろいろと痛いんですが、上巻は下巻の布石的展開になっていて導入部分という感じです。
二人の間はまだ微妙な関係であって、決定的なものはない。
下巻に期待。あー…どきどきするなー。読むのがこわい。
どうか恐ろしいエンディングがきませんように……。
と、恐る恐る下巻を手に取ります。
あらすじは他のお姉様方のレビューを参考にお願いします。私は特に印象的だったポイントをあげたいと思います。
まず、この本の魅力はずばり表紙だと思います。実はこれ、上下でくっつけると一つの龍の絵になるのです。そして、上下で変化する路彦と山田の関係が如実に表現されています。上では、まだ幼い路彦に手を差し伸べる山田が描かれています。一方、下になると路彦が大人になり、山田の方が逆に守られる立場になります。それがとても美しく表現されていて、本当に素敵な表紙だと思いました。
また、キャラクターの魅力も多い話でした。路彦の中学時代は「〜もん」という語尾が多用されていてとても可愛いかったです。
一方ヤクザの下っ端である山田は路彦の涙に弱く、泣かせては機嫌を取り、お菓子を買い与えるという下手な子守りをしていて面白かったです。
そんな二人が怪しい雰囲気になる場面のセリフが鼻血ものだったので紹介します笑
「お前さあ、オトコでよかったな。女だったらソッコー俺に犯されてるぜ」
「僕が女の子だったら、信二さんに犯されて、妊娠して、子供を産むの?」
路彦可愛すぎません?中学生罪や...
「お前キスしたことあるか?」
「幼稚園の時に、隣のクラスの亜由美ちゃんとした」
可愛すぎる...しかもその後キスして
「お前の最初のキスは俺だ。ざまあみろ」
と言う山田に、路彦への独占欲みたいなものを垣間見たような気がして興奮しました。
しかし、そんなことがあった翌朝、路彦が山田の兄貴分の美濃部に殴られます。そこで迷わす路彦を自分の背中に隠して守るところにときめきました。そのあと、ボコボコにされた身で路彦の顔を撫でて彼の心配をする山田に、路彦への愛を感じました。
2章になり路彦が高校に上がった後も二人の微妙な関係は続いており、お互いにシコリ合った時、路彦の可愛い喘ぎ声と色っぽさに山田はノックアウト状態でした笑 それを誤魔化すために乱暴にキスしたり、言葉で嬲って照れる路彦の反応を楽しんだり、完全に惚れてる山田でした。 また、山田視点になる2章では路彦のことをずっと可愛いと表現していて微笑ましかったです。
山田は路彦とのじゃれ合いを、オナニーの延長線上だと自分に言い聞かせていましたが、本当は自分が思っている以上に彼を愛してるのだろうと思います。 また、自分を大切に思ってくれる人がいない人生を送ってきた山田だからこそ、路彦の情にすがって、必死に繋ぎとめてるようにもみえました。一見路彦の愛の方が山田に勝っているようにみえますが、実際はお互いに深く依存しあっているのだと思います。