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大御所の文章に魅せられた1冊です。
タイトル通り、また英田先生もあとがきに書かれていましたが、ヤクザもスパイも出てこない、普通の男たちのお話です。
それなのに引き込まれます。
一気に読み終えてしまいました。
先生と元教え子。
過去の傷により臆病で頑なになっている先生。
まんべんなく愛せるけど恋に狂ったことがない棚橋。
恋心を自覚するも、それぞれが1歩踏み出せない。
棚橋が踏み越えてからも先生の頑なさと言ったら…!じりじりしました。
が、ただの男たちの葛藤が丁寧に書かれていて
すごく良かったです。
小山田あみ先生の絵も言わずもがなの美しさ。
読み終えてからしばらく余韻に浸ってしまいました。そしてまた最初から読み返したくなりました。きっと、これから何度も読み返すと思います。
わりと身近にありそうなラブストーリーですが、言語化しづらいところの恋愛の本質が見事に描かれていました。英田先生の他の作品に比べたら、事件もイベントもなくて地味なのかもしれないんですが、この偉大なる地味!日常の細部にこそ見過ごせない真実があるのではないでしょうか…!(笑)
ままならない恋の緊張感を追体験してしまいました(引っ張るぅ~)。”いつか終わる恋のために”は攻(棚橋)の一人称・僕がとても新鮮です。前半の棚橋は一見いい人そうだけど、計算高くてまぁまぁ嫌な男だなと思いました。が、そんな社会的優等生が、元担任・水原を好きになり計算ができなくなって感情で動いてしまう。順風満帆に周囲が望むような人生を歩んでいた男が、”どうした俺?”とコントロール不能な恋の沼に落ちていく過程にワクワクしました。一緒にいるとしっくりくる心地よさというのは、まさに”相性”なんだろうなと。なんで好きになった?(5w1h)をきちんと説明できる客観性は恋に必要ありません。(なので棚橋は正解)恋敵・大竹の言葉でスイッチ入る棚橋の行動が怒濤すぎて萌えました。
タイトルの”恋ひめやも”は受視点。この一冊で攻受両視点って本当に佳き!水原ってそもそも恋愛体質なんですよね~(奪う体質で奪われたがりww)。大人になればなるほど、経験が行動の枷になるので、水原が若い恋人の出現に戸惑って動けなくなるのは、自分の両親の事情とあいまってとても自然なことなので、若い棚橋に誠意(と根気)と情熱があったということが、この2人にとっての僥倖だったし、運命だったんですよね。そして、(やっと)初めてのスケベでの水原の魂の叫びは、声に出して読みたいくらいいいんですよ!
恋はいつか終わるのかもしれないけれど、始めないまま終わる虚しさを抱えるよりは、終わった後の喪失感を抱えたほうがいいし、2人で見た景色や一瞬一瞬を積み重ねることで、また違う関係性に発展できるはず!(特に水原、頑張って…。)と気分が高揚するようなラストでした。
サスペンスなし、日常あるかもしれない状況設定での恋愛小説。
各章の小タイトルは内容を掴みやすい構成。分かっているのに、読みながら心を掴まれてしまうのは、著者の巧みな文章力のせいなのかな?
「いつか終わる恋のために」・・棚橋の気持ちが軸
「恋ひめやも」・・水原の気持ちが軸
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かつての教え子・棚橋が同窓会で担任教師だった水原と再会する。
水原の外観が変った事から関心を持ち、読書好きの棚橋は水原と本の貸し借りで交流しだす。
ある日、水原のマンションに向かうと、情事の後らしい水原の姿を見てしまう。
増えすぎたら古い本を棚ごと一気に棄てるのに、不倫相手との関係を清算しきれない水原。
好きな本は何度も読み返す棚橋は、水原の過去を知るにつれ放っておけなくなり、気持ちが心配から恋に変わっていく。
棚橋は、本嫌いで結婚願望高い友梨奈と結婚を約束していたが、水原への気持ちを押さえられなくなる。棚橋は悩んで、友梨奈へ土壇場にきてやっと自分の気持ちを伝える。
「コイメヤモ」
冒頭で、「生きめやも」の解釈についての会話がある・・「めやも」は水原の逃げ口実になっていそう。
一見一方的に惚れているのは棚橋に見えるけれど、実は逆なのではないかと思う。モダモダ年上男に年下の世話やき執着男が、肉体関係なしにモダ男に心をからめとられていく展開。
水原のようなダメモダ男を魔性と言うのかもしれない。
実は水原の運命の蜘蛛の巣にかかっちゃった棚橋。
二人の恋は読者の涙をそそるような焦れ焦れに展開していく。
これでよかったのか‥?読後モヤモヤ。
ホントで購入した電子書籍には、イラストがなかった。この作品は紙版の購入をお勧めします。
モダモダは苦手なので萌2.
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万葉集
額田王、
【あかねさす紫野行き標野行き野守は見ずや君が袖振る】
額田王の歌をうけて皇太子(大海人皇子)がお答えになった歌
【紫草のにほへる妹を憎くあらば人妻ゆゑに我恋ひめやも】
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タイトルと内容の原案は、万葉集の大海人皇子と額田王との詩。
かつて恋人同士だった二人が別れた後、当時の恋人・天智天皇も同席する宴会で、ふざけてかつての恋人に額田王が歌を送る。その返歌。
個人的にはとてもよかったです!
英田先生の作品として考えると、物騒な事件が何も起きないので地味と感じる方もいるかも。
元生徒×高校時代の教師
本気の恋をした事がなかった男が、感情を抑えられないほど人を好きになってしまう。
これは恋なのか、なんなのか。
恋人がいて結婚を考えていたのに、揺れる感情。
相手が異性だったら結婚をやめて気持ちに素直になるのに、惹かれているのは同性で脈なんてない相手。人生の決断。
女の子の立場になったら溜まったもんじゃ無いのですが、人間の感情の複雑な揺れ動きに引き込まれます。
絵が綺麗すぎて受けである先生があまり地味に見えなかったくらいで、後はほんとうに凄いの一言。
BL小説好きなら読んでおく一冊だと思いました。
ちょっと厳しめの中立。
これはなんというか、ある意味英田さんということで買ってしまったようなものですが、習作かな?と思うほどの作品でした。
あとがきで書いておられますが、サスペンスもファンタジーでもない市井の物語。
その設定は全くもってよいのです。同窓会で再会した冴えない先生と、立派に成長したいい男との恋。
しかしこの先生が、めんどくさすぎる。というか、地文がめんどくさすぎる。
感情の起伏がほとんどないけど、ぽつっと放つ言葉は辛辣でも的確で優しい、そのキャラはすてき。しかし地の文の思考がいじけた乙女そのもので延々同じところをループするので読んでいて疲れました。
ひたすら、攻めの棚橋の忍耐にかかっているお話。こちらの忍耐が持たなかった。。
文章もいつもの切れがみられずテンポもよくない。
やはり英田さんはコミカルを入れないとのらないのかな。
でもDEADLOCKはコミカル要素なかったなー。
攻め視点の「いつか終わる恋のために」、受け視点の「恋ひめやも」の2編で構成されています。
「いつか終わる恋のために」
主人公は、そろそろ結婚も考えている25才のリーマン・棚橋。
高校の同窓会で7年ぶりに担任だった水原と再会し、彼女がいるのにどんどん水原に惹かれていく様が描かれます。
この棚橋がね〜。リアルっちゃあリアルなんだけど。
彼女がウザい、先生といる方が楽しい。
でも僕はゲイじゃないからこれは恋愛感情なんかじゃない。恋だとしても一時の気の迷いだ。
彼女と別れる気なんてないし、僕は悪者になりたくない。などなど。
自覚もしてるけど、かなりの最低男です。
自分から離れようとする水原に『そばにいさせてください』なんて言ったり。
一度は離れてこれで良かったんだ、とグチグチと。
挙句に遂に彼女と別れて。
水原の言う通り『自分さえよければ、それでいいのか?』
この話がここで終わったら本当にトンデモ男でしたよね。
「恋ひめやも」
こちらは受けの水原視点で進みます。
「いつか〜」の後、棚橋が彼女と別れて告白してきてからの展開です。
水原は一見毅然として棚橋を拒絶しているけど、その内面は、棚橋の恋人を傷つけ、棚橋の将来を歪め、いつか棚橋に捨てられる事を恐れ、そんな自分が嫌だという負の世界に陥っています。
そんな水原の元に懲りずに棚橋はデートに誘い、部屋を訪ねてくる。優しい棚橋の存在が辛い。
イジイジしている水原の面倒くささ。
でもこの水原のやるせなさがあって初めて、この一作が重層的になって迫ってくる。
ただ、やっぱり棚橋の行動はイマイチだなぁ。女の子を抱いてきた、なんて言って。わーイヤだ、と思ってしまいました。
このお話はエロシーンはもっと抑えめでも良かったかもしれませんね。
登場人物はほぼメイン2人、そこにおまけ設定程度に攻めの彼女と受けの元彼がいます。その両名とも、完全な当て馬。
結果、攻めと受け共々、自意識過剰な中学生レベルの恋愛観でしか行動していないように思いました。
こんな人たちに振り回される周りは大変だわ。
ノーマルだった攻めが受けの先生を好きになった経緯がゆるすぎてよくわからず、先生がこの攻め君を好きだったんだか好きになったんだかのアレも、なんだか曖昧すぎてよくわかりませんでした。
この先の幸せをあんまり思い描けない2人です。
でも、生徒×教師っつーシチュエーション萌えなので、それはそれでいいか。
棚橋は結婚も考えていたノンケだったのに、同窓会で水原先生に再開してから、水原先生にはまっていきます。
一方の水原先生は恋に臆病。
いつか終わる恋で自分が傷つくことも、自分が誰かを好きになることで相手やその周りの人を悲しませんることも耐えられません。
過去のトラウマから本当は好きなのに素直になれない先生の葛藤がせつなかったです。
最初は彼女と別れないまま「好きだ好きだ」と水原にせまる棚橋の強引さに共感できない部分がありましたが、自分から殻を破れない先生だったので最終的には良かったように思います。
いつか終わる恋かもしれないけど、水原先生には「恋してよかった」と思ってほしい!!
表題作と続編の中編二本立てです。
棚橋(攻め)の彼女と元彼女、水原(受け)の元彼氏が登場します。直接の描写はなくても、それぞれと肉体関係はあっただろうなという感じはありますので、苦手な方はご注意ください。
「いつか終わる恋のために」
棚橋の目線です。同窓会での再会を機に、元担任の水原の家を訪問する仲になります。棚橋は親しくするうちに、いつしか水原に惹かれてしまいます。しかし水原は、以前不倫で付き合っていた大竹と寄りを戻すと言い…。
「恋ひめやも」
水原の目線です。前作の続編になります。
好きだと言う棚橋に、水原は素直に俺もだと言えず、優しくされるのが辛くて泣いてしまい、棚橋の気持ちが迷惑だと言ってしまいます。それからしばらく棚橋の足は遠のき、久しぶりに家に来たかと思えば、女を抱いたと言い…。
もう、ひとつひとつがツボでした。セリフ、描写、イラスト、何もかもがです!携帯電話を額に押し当て、目を強く閉じた棚橋の姿が目に浮かび、涙腺が緩みました。棚橋に、何故大竹先生に抱かれたふりをしたのかと問われ、水原先生が返したセリフで「だって」が2回繰り返されているとか、可愛すぎます。
彼女がいるのに、同性である水原に惹かれていく棚橋の心情が自然でした。棚橋は結婚を前提に付き合っている彼女を、親に紹介する直前にフリます。私はあまりそういう展開は好きじゃないのですが、棚橋を酷い男だと思えませんでした。仕方がない、と思ってしまうほど、彼の心情に流されてしまいました。
水原は恋に臆病なうえ強情で素直になれず、偽りを口にしては容易に本心を見せません。そんな水原を慎重に観察し、今だと思えば機会を逃さずどっと攻めていく。棚橋は優しいけれど意外とハンターだなと思ったものです。両思いになってからのベッドシーンでは、「先生」呼びなのに、先にイッてしまった水原を「仕方がないなぁ」というのが微妙な力関係を表しているようで、とても萌えました。
恋はいつか終わる、永遠を約束してくれないというのが二人の認識で。
でも、恋が終わっても傍にいてくれる。そんな予感がする、というのが胸にきて泣けて仕方がなかったです。
元生徒の年下攻め、教師の年上受け、優しくて丁寧口調の攻め、素直じゃない受け、両思いになるまでの経過が好きな方に、絶賛お勧めです!
余談ですが、私はこの二人が好きで好きで好きで!
特典ペーパーとか、フェアの小冊子とかにSSが載っていないかと探したのですが見つからず。唯一発見したのが、2010年発売のドラマCDのブックレットに掲載されていた「恋ひ恋ひて」でした。今日現在は作者様のブログに掲載されておられます。「恋ひめやも」の後日談で、お正月の二人の幸せそうな様子に泣きました。最後まで泣かされた作品でした(笑)
ちょっとした衝撃でした!
英田先生の裏社会物ではない普通の?物語とのことで急に読みたくなって電子版で読んだのですが…
(最近電子版に手を出すようになってちょっとヤバいです。簡単に購入出来てすぐ読める。でもどんどん口座からなくなっていくものがw)
元担任教師でゲイの水原先生と婚約者がいる元教え子の棚橋の物語。
同窓会で再会してから、棚橋は水原先生と過ごす時間が少しずつ増えていきます。
先生の元カレ、棚橋の婚約者、それぞれ切り離せない人たちがいて、二人はそれぞれの中でブレーキをかけようとする。
それでも止められない気持ちを棚橋が告げますが…
それが物語の中盤、そこからワタシがダメでした(T_T)
なんかそのあたりからずっと泣き通しで。
切なすぎる。でも、二人の気持ちが凄くわかる。
これはもう男同士だからということも関係なく人としてどう誠実でいるべきかってことでもあるから。
少年時代のトラウマとか元カレとの関係とかいろんなことが絡まって、水原先生は棚橋を突き放してしまうんですよね。
棚橋は一大決心をするのですが、先生は受け入れられない。
でも棚橋はあきらめない。もう切ないっす。
「紫草のにほへる妹を憎くあらば 人妻ゆゑに我恋ひめやも」
「長月の有明の月のありつつも君しきまさばわれ恋めやも」
本の貸し借りをしている二人が「風立ちぬ」の話から上記の句を引用して話すシーンがいいです。
先生の苦しい胸の内がわかります。
最後の最後、棚橋の想いが先生を溶かしてようやく素直になります。ちょっと強引に迫ったりもしてね。
もう良かったよー。また泣いたよ。
こんなに心をかき乱されてそして穏やかな気持ちにさせられて、あぁ「恋」って凄い!って思わされた素敵な小説でした。