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kimi ni aitai
1冊ぜんぶ表題作です。月野(受け)の視点でストーリーは進みます。
月野は同じ会社の先輩である尾上(攻め)が好きです。恋人にフラれた場面に偶然でくわしたのをきっかけに親しくなりますが、月野と尾上の部署は社内では対立していてます。そんな中で、月野は同期の荒井に、二つの部署を仲良くさせたいと頼まれて…という話です。
月野は「どんどん嘘つきになる」と自嘲しますが、酔った尾上との夜を夢だと装う以外はそう目立った嘘はありません。尾上と逢うために、尾上の好きな映画のビデオを苦労して準備したくらいの可愛いものです。
月野は気がつきませんが、読者には尾上が冒頭から月野にアプローチをかけているのも誤解した理由が分かりますので、ラストの両思いへの展開も唐突に感じません。
赤バラの花束はキザにも思えましたし、仕事を休んだ月野の体調を尋ねることなくベッドに押し倒すような尾上ですが、そういう強引さも面白く読めました。尾上がちょこちょこ月野を触るシーンも絶対わざとだなと分かり読んでいてニヤけてしまいました。
あとがきで実はもう1カップル潜んでいると書かれていて、間違いなく犬猿の仲のあの二人だと笑いました。そういうのを推測しながら読むのも楽しかったです。
「アベック」や携帯電話が普及してないなど、90年代当時を感じさせる言葉や場面がありますが、それほど気になりません。ただ、「映画のビデオをダビングする」の意味が分からないとキツいかなと思います。
健気な年下受け、一枚上手な年上攻め、社内恋愛カップル、受けが攻めを襲う設定(しかし逆転される)がお好きな方にお勧めだと思います。あと月野の「神様はどうして性別なんて作ったんだろ。これは差別だよな…」は密かに名言だと思いました!