いとし、いとしという心

itoshi itoshi to iu kokoro

いとし、いとしという心
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神60
  • 萌×231
  • 萌21
  • 中立4
  • しゅみじゃない5

--

レビュー数
26
得点
491
評価数
121
平均
4.1 / 5
神率
49.6%
著者
かわい有美子 

作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます

イラスト
南田チュン 
媒体
小説
出版社
リブレ
レーベル
ビーボーイノベルズ
シリーズ
いとし、いとしという心
発売日
価格
¥900(税抜)  
ISBN
9784862636010

あらすじ

京都の格式ある名旅館「井筒屋」の若き当主が亡くなった。彼を密かに恋い慕っていた侑央は悲しみにくれる。一方、葬儀で帰省してきた当主の弟・千秋は、次男として当然経営を継ぐと思われていたが、旅館を売却すると言い周囲を驚かせる。かつて一途に兄を想う侑央の想いと秘めた欲望につけこみ、関係を持っていた千秋だが、今度こそその心ごと自分のものにするため、侑央にある提案を──。乱れる心と身体は誰のために…書き下ろしあり!
出版社より

表題作いとし、いとしという心

29歳,京都の老舗旅館の次男
28歳,老舗書道具店の息子

その他の収録作品

  • 夕化粧
  • あとがき

レビュー投稿数26

京都なんです

もどかしいけど、もどかしいけどエロい。あまりにもどかしいので萌評価にしちゃおうかと思ったんですが、大変印象深い作品でもあったので、神にしました。

老舗旅館の次男・千秋と隣家の商店の一人息子・侑央のお話ですが、旅館の長男・荘一(故人)の存在を無視しては語れない、ややこしい関係になっております。
家人から大切に育てられ、期待され、仕事もでき、性格も申し分なかった荘一。
男は二人要らないと、明らかな区別をされて育ち、独力で生きてきた千秋。
小さい頃から荘一のことが好きで、恋い慕ってはいたものの、思いを打ち明けることもできずにいた侑央。
その侑央のことが千秋は好きで・・・

まず印象的だったのは、舞台が京都なので全編京都弁でお話が進んでいたところです。
正直申し上げて、関西系の親戚がいるわけでもない私にとって、京都弁のニュアンスまで推し量ることができないもどかしさはあったし、なかなか読みすすまなかった原因の一つでもあったんじゃないかと思うのですが、“京都”の雰囲気十二分に感じることができましたし、二人のまったりした会話の裏に潜む思惑やら戸惑いやらをよりいっそう感じられてよかったです。もし、これが標準語仕立てであったら、エロさも半減していたかもしれないと思いました。

もう一つが“着物”です。
荘一の葬儀の際の喪服から始まり、季節ごとの着物の数々とその着こなしや崩され方が華を添えています。
侑央は凛としてたおやかな色気を放ち、千秋のおしゃれは、大人の男をより際立たせているのです。

そして、(あとがきでかわいさんが言っている)“喪服未亡人”侑央が兄に片思いをしていることを知っている“狡くて、酷い男”(帯にでかでかと書かれているほどの…)千秋が、いかに侑央を絡めとっていくかが一番の読みどころだと思うのですが・・・

頭脳派の千秋なので、何につけ抜け目がなく、そこに持ってきてなかなか辛辣な言葉を吐くものだから、侑央ばかりが責められているように思えて、“弱っているところにつけこんだ”様なシチュエーションなのですが、
私としては千秋ほど努力家で辛抱強く、真面目でいいヤツはいないんじゃないかと思うわけです。
エッチシーンのほとんどは、千秋から無理強いされているような状況なのですが、彼が侑央を脅すような態度の裏に、糸を引くような甘さを感じ取れるのは私だけではないと思います。
この甘さこそが「いとし、いとしという心」なんだと思いますが、どうでしょう?だから悩むこと無いじゃない、甘えちゃえばいいじゃないって侑央に言いたくなっちゃいます。

いやー、読み応えがありました。

18

血の繋がりがあればこその嫌悪が共感

全編、京言葉で展開されています。
それがこの作中の人の内面の薄暗さや老舗の古い慣習にあっています。
かわいさんの作品では多いですが、受け攻めの両方からの視点で読むことができます。
この辺りもお気に入りな点です。


攻めの千秋は細面の整った容姿で、京都の高級旅館井筒屋当主・荘一の弟。
東京の大学へ進み、そのまま都内の大手銀行へ就職した29歳。

受けの侑央は紙専門の家業を手伝う、冴えた美貌の28歳。
千秋兄弟とは隣同士の幼馴染。
万事、控えめな性格で、昔から荘一へ叶わぬ想いを抱いていました。


話は荘一が早世し、千秋が東京から戻ってきたことから始まります。

長男の荘一への讃え方とは違い、まるで空気のように、目に見えないもののように扱われてきた千秋。
常に曖昧な笑みをたたえ、自身の置かれた立場やそれに対する憤りをすべてその下に追いやってきた千秋にとって、侑央だけは兄に渡せない譲れないたった一つのものでした。
もちろん荘一は侑央のことは幼馴染であり商売繋がりのある相手というもので、恋愛感情などというものは微塵もなかったとしても。
太陽と月のように、決して生きる世界が交われない兄弟の狭間に置かれていたのが、侑央でした。

千秋の井筒屋での処遇については、繰り返し書かれています。
自身のことでないのに、ひじょうに読み手を物悲しくさせるかわいさんの手法には脱帽です。
千秋が家族と井筒屋に対し、「可愛がられへんってことはそういうもんやで」というくだりは同調してしまいました。

高校時代の千秋と侑央の関係は侑央目線で書かれていますが、わたしは、荘一だと思っていていいと優しく手で侑央の目を塞いだ千秋の想いに切なくなりました。
この作品は完全にわたし、千秋目線で読んでしまっているようで(苦笑
切ないですが、読み応えがありますのでオススメです。

8

受けを手のひらで転がす攻め

京都はまったく詳しくないですが、はんなりとした攻め受けの京都弁のニュアンスは伝わってくるので、攻めを京都弁といえばあの方の声で…!と脳内変換しながら読みました。

物腰柔らかで腹黒な攻めと、大人しくてこう…押しに弱いと言いますか…そんな受け…
とても好きなカップリングでした…!
攻めがもうもう受け一筋で受けの小さな変化にもすぐ気付いて見逃さない所とか…
攻めの思い通りにはならないと受けが抵抗していても結局思い通りにされてしまうような…
攻めはまさに受けのことが愛しくて愛しくてたまらないのだと…

活字が少し苦手なので、本の厚みが結構あるな…と思ったんですが、京都の雰囲気がよく味わえたし思ったより読みやすかったです。
何よりメイン二人に魅力を感じたので!

6

2巻の前半→1巻→2巻の後半 の順に読むのがオススメ 二冊通しての感想

かわい有美子先生は作家買いしている作家さんです。今作は、リアルタイムで追いかけていたわけではなく、完結してから購入し、たまたま2巻の方が先に届いて1巻が届くまで待ちきれなかったので、レビュータイトルのような読み方をしてみましたが、結果的に大正解でした。

というのも、2巻の前半は、攻めと受けの高校時代のお話なので、幼馴染みとしての関係性(攻めは幼い頃から狙ってたわけですが受けにとっては)から1巻前半での危うい関係性に変化していく過程を詳しく書いてあり、ここから読んだことで1巻でのお互いの心情がつかみやすくなったと思います。

そもそも、今作を後まわしにしていた原因は、攻めの性格がよろしくない、いやいや受けの方が狡いよという感想を色んなサイトで時たま見かけたからでした。基本的にあまり歪んだ人は好きではないので、もしやこれはどちらも応援できないパターンなのでは・・と思い、今まで購入をスルーしていました。でも、高校時代を読んでから1巻を読むと、攻めの気持ちも受けの気持ちも理解でき、キャラとして嫌いになることはなかったです。

2巻の後半は、1巻の最後で少しだけ受けが攻めに振り向きかけた後の話になっているので、1巻の後に読むのをおすすめします。

また、情景描写がくどいという感想も時たま見かけましたが、情景描写の美しさはかわい先生の十八番(だと私は勝手に思っている)なので、むしろストーリーに彩りを添えている感じで私は好きでした。

5

風情があり、とても良かったです!

ちるちるユーザーの人のオススメで手に取りましたが、大正解でした。

まるでドラマを見ているかのように、京都の老舗の跡取り達が家業と古都の伝統を守りながらも、新しい時代の変革を入れつつ奮闘していく毎日が描かれていて、非常に味があり、楽しめました。古都の文化風俗や伝統を大事に思う気持ちや、関わってくる色々な職人さん達へのリスペクトも表明されたこだわりのある文章で、読んでいて気持ちよくなりました。人物設定やストーリーも練られているので、ドラマを見たかのように、読了後強く印象に残りました。

兄弟ものとしても共感できる部分が多かったです。老舗旅館の跡継ぎの長男と家庭内で格差をつけられて育った次男の千秋の捻くれっぷりがツボでした。家の諸事情に振り回されたり、千秋が想いを寄せる幼馴染の侑央も長男への想いの吹っ切れができずで、なかなか可哀想な役回りですが、めげずに計算高く既成事実を積み重ねていく千秋の逞しさが良かったです。純愛ストーリーと言いにくい話ですが、恋愛感情はドロドロ生々しい部分もセットになる事も多いので、これもアリかなーと。

子供時代や高校時代の三人のエピソードも楽しめました。しんみりした人生模様が味わえる一冊でした。それにしても、長男がああなってしまったのは、若くして跡を継いだ事について、想像以上の重責があったんだろうなーと考えると辛くなります。まさかの続巻もあるようで、続きが気になります。
京都弁オーバーな気もしますが、愛嬌かと。あとがきを読んで、「喪服未亡人萌え」がお題でこの作品が生まれたようで、BLも奥深いです。

3

京都弁が美しい


『戀という字を 分析すれば 糸し糸しと 言う心』

タイトルは本文中にも出てくるこの都都逸が基になっています。ぴったり。

京都の老舗旅館『井筒屋』の若き当主、荘一が亡くなる。彼に密かな恋心を抱き、悲しみに暮れていた侑央の前に現れたのは荘一の弟、千秋だった。次男として家族に愛情を受けずに育ち、東京で銀行員として成功を収めている千秋は後継ぎを望まれながらも、旅館を売却するつもりだと周囲に触れ回る。旅館を潰すわけにはいかないと井筒屋の女将から説得を頼まれた侑央に、千秋は「侑央が自分のものになること」を条件に旅館を継ぐことを持ちかける。荘一が大切にしていた旅館を守りたい侑央は千秋に身体を差し出し、以来2人は身体の関係を持つようになるが…。というお話です。


執着攻め×健気受け。幼馴染、再開もの。上下巻で物語が完結します。

舞台が京都なので登場人物のセリフがすべて関西弁で繰り広げられるんですが、これがめちゃくちゃ艶っぽかったです…!登場人物たちが古い慣習やしきたりが色濃く残る地域で育ってきた人たちなので、何気ない会話や情事の際のやり取りにも品や奥ゆかしさが見え隠れしていて、ものすごくときめきました。

攻めの千秋が策士に見えて、ものすごく不器用と言うか、普段は何でも卒なくこなして見せるのに、昔から侑央の心だけは思うようにならず、なんとか手に入れようと躍起になっているのが不憫で可哀想で萌えました。侑央に好かれるためなら何でもする千秋。嫌いな実家と決別する意味で1から積み上げてきた社会人としての自分の地位も侑央のためなら簡単に手放すし、幼いころから劣等感の原因でもあり恋敵でもある兄の声や口調を侑央の気を引くためにプライドかなぐり捨てて真似て、侑央を抱いているときに「目ぇ、閉じとき。そしたら兄貴としてるみたいやろ?」とか言ったりするんです…。なんて健気な執着攻め…。

受けの侑央も気が弱そうな受けに見えて身持ちが固く強かで簡単には流されない頑固さがあり良かったです。幼馴染としては確かに誰よりも信頼を寄せているのに、自分とは違う思いを千秋から向けられて思い悩む彼の葛藤が良かった。下巻の高校時代のエピソードで変わってしまった千秋にを思いを馳せ、過去の幼馴染である千秋を恋しがって「…千秋ちゃん、…どこ…?」と呟く彼の台詞が切なかったです。千秋は確かに侑央から求められているのにそれは恋人としてではないという…。ううう切ない…。

受けの視点でも攻めの視点でも物語が描かれているのでどちらにも感情移入しやすかったです。(不憫な分、どちらかと言うと攻めの千秋に肩入れして読んでしまいましたが)あらすじだけ読むと攻めが無理やり迫って受けを翻弄している構図なのかなかと思いきや、どっこい読んでみればなかなか振り向いてくれない頑固で頑なな受けに攻めが振り回されているという構図で、力関係は完全に受けの侑央が上でした。惚れた弱みと言うやつですね。受けが機嫌を損ねるとすぐに自分が折れて謝ったり、あれやこれやと手法を変えて侑央が喜ぶ方法を考えたりする千秋が可愛かった。押して押して押した千秋に最後はほだされた侑央と言った感じでちゃんと結ばれました。長年の想いが実って良かったね…!

好きなシーンは上巻の大晦日を二人で過ごすシーンと、そのすぐ後電話で二人が会話するシーンと下巻の二人がようやく結ばれるシーンです。とてもよかった…。文の端々に現れる小物や着物、和の色の名前なども物語の奥行きを広げ、より世界観を立体的にする役割を担っていました。京都の静かでどこか柔らかい雰囲気が一貫して物語の中に流れていて良かった。京都行きたいです。とてもいい作品でした。すごーくおすすめです。

2

京言葉のはんなり

京都の三大老舗旅館が舞台の物語。
京都が好きな人なら、惹かれる物語で、京都の商人の風習がもり込まれていて、京都弁の新旧の商人言葉が会話に綴られています。
---
▶「大和湖(奈良湖)=奈良盆地」
★京都と奈良は、大和湖(奈良湖)を干拓して造った盆地で、施工にあたったのは渡来人達。諍いを嫌う渡来人が衝突を避ける為に、はんなり文化が生まれたと聞いています。

---あらすじ
死んだ兄の後を継いでほしい。兄が継いだ老舗を継がず、売却処分を次男の千秋が提案。
店の跡を継いでほしいという希望を呑む代わりに、自分のものになれ、とずっと片思いをしていた美貌の想い人に要求する。
こういう形でなければ言えない千秋は、不器用な人。悪人ではないです。
こういう内容を「未亡人もの」と言うらしい。
未亡人とは、ユキちゃん 侑央のこと。
「京都のぶぶ漬け」、京都人VS京都人の心理戦みたいな想いの探り合いが、とても面白かった。
---
▶都々逸「戀という字を分析すれば 糸し糸しと言う心」(作者不詳)
三味線と共に歌われる俗曲、 音曲師が寄席や座敷などで演じる出し物。
都都逸は江戸文化だと思っていましたが、上方にもあって、名古屋や神戸で盛んだったらしいです。
---
しっとりした粋な物語ですが、誤字誤用が確かにムードを下げています。誤字が一桁以上あると、作品の格をさげてしまう。Amazonのレビューで指摘された誤字。・・・誤字、そのままありますねぇ 
電子版にするときに、校閲したらよかったのに。
----
「内容はさておきちゃんと校閲してほしい。」
「ずらりと背の高い一人の男」・・「すらり」に濁点が入ってる。
「脱いだ仙台平の高価な縞袴を脱いで」→「脱いだ」が二度
---
この作品に限らず、BL小説は一般小説より誤字脱字、慣用句の誤用が多いと思う。特に、なろう系小説の商品化に目立つ。
同じパターンの誤字・脱字が続くのは、多分作者の誤字の書き癖なんだと思います。・・こんなことをココに書いても仕方ない。編集宛てに意見しなきゃ。
もし、編集部宛てに誤字訂正を希望しても、為されないなら、それは、作品を書き捨ての一時の商材と捉えている証で、著者自身も残したい自分の作品と捉えていないゴミと同等のものと考えていると、解釈します。

2

攻めの片想いが最高に切なくてグッときた。。

新刊を読んでから、どっぷりかわい有美子先生の世界観に浸りたくなり、こちらも購入して読んでみました。

もう、もう、”受け君をひたすら追いかける攻め(=執着)”大好きな自分の癖に突き刺さるお話だった…

亡くなった兄に長年片想いしているユキ。そのユキにずっと恋焦がれ、強引な手段で体から奪った千秋。二人それぞれの想いが最高に切なくて、胸が締め付けられた…

全編、京言葉で語られる二人の会話も最っ高に艶やかで粋で、方言憧れ族として本当に感謝感激しかない作品でした。

お互いに「ユキちゃん」「千秋ちゃん」って呼び合ってるにも激しく萌えた…

最初は千秋と、簡単に体から籠絡されてしまった自分を激しく拒絶していたユキが少しずつ千秋を違う目で見るようになる、その変化がごく自然に描かれていて、いけ好かないと思っていた千秋を後半は一生懸命応援してました。

心を開きつつはあるけれど、まだ完全には自分の気持ちに整理がついていないユキ。
2巻でさらにどう気持ちが変化していくのかーー
今から次巻を読むのが楽しみです。

1

本当に嫌いでした(笑)

 初めて読んだときに、攻めの千秋が、気の毒だと思いつつ、本当に好きになれないキャラクターでした(笑)
 しばらくしてまた手に取ってみると、実はそんなに彼のことを嫌ってはかわいそうだと思い直せるまでになりました。

 京都で高級旅館「井筒屋」を営む千秋の実家ですが、兄の荘一の死で状況が一変します。

 老舗の井筒屋にとってみれば、千秋が後継者になるのが一番ふさわしいのですが、幼き日のわだかまりから、千秋はなかなか了承しないのです。ただし、千秋は、荘一を慕っていて、大好きだった侑央が自分のものになるのなら、井筒屋を継いでもよいとの条件をつけてきます。井筒屋とは無縁だと言わんばかりの環境で育った千秋に、やっと追い風が吹き始めるのです。

 侑央は好きなのは荘さんであり、千秋ではないのです。千秋は雰囲気や声、仕草を似せることはできても荘さんではないのです。最後まで抵抗する侑央が本当にかわいそうでした。

 千秋にしてみれば、やっと自分のところに運が巡ってきたのです。もう誰も邪魔をするものは居ない状況で、ユキちゃんを確実に追い詰めていきます。「もう逃がさへんで、ユキ」という言葉、そして乱れた襦袢姿がもう何とも言えない気持ちになりました(笑)

 このお話の中で萌だったのは、今まで当て馬の立場にいた千秋の逆転劇、千秋、ユキちゃんの着物の挿絵でもあるのですが、私はユキちゃんそのものでした。荘さんが居ない今、だんだん千秋に傾いていく姿が悲しく、そして時に共感でした。求め合った二人ではないけれど、もどかしさとやるせなさ、そして好きという気持ちが痛いほど伝わってきた作品でした。

4

優しくて強い男×流され絆され受け

弱味につけこんで自分のものになれとは、どんだけ狡くて酷い男なのかと思って読みましたが、むしろ優しくて強い人だと思いました。
強引に体だけでも…とはいってもそうは鬼畜だったり痛いプレイはないので、長年の想いがついに溢れてしまったという愛情が感じられたので、私的には萌えプラスワンな評価です。

千秋は何の罪もないのに、ただ次男だというだけで家族中から蔑ろにされいないものとして育って来て、よくここまでまともな人間になったもものだと感心するくらいです。
まともどころか成績優秀で勤め先の銀行ではトップエリート、なのに兄亡き後代わりに家業を継ぐのが当たり前だと突きつける家族に、いっそ売り払ってしまえと言う千秋に同調しました。
そんなふうに立派にグレもせず成長できたのも、お隣に住む幼馴染の存在とその両親から人に対する思いやりや普通の家庭の優しい雰囲気や気遣いを与えられたおかげなのでしょうね。そういう唯一の安らぎだったり癒しだったりする相手に愛しいという感情が芽生えるのは当然なこと。

若くして亡くなった荘一は哀れには思っても、恵まれた境遇で愛情を独り占めして人の世の美しい面だけを見て生きたのだと思うと、悪意はなくとも人の感情を思いやれず無自覚に傷つける酷い男に思えます。
勿論そういうふうに育てた周りの責任ではありますが…。

京都の町並みや風雅な様子が細かく描写されゆったりまったりと進められます。
大きな事件や混乱もなく、荘一への淡い想いから千秋を受け入れていく侑央の変化が自然な流れで描かれています。
でも、最後までに完全に荘一への想いを昇華し千秋と恋人になれるというのではなくいい感じになりつつあるかなという終わり方なので今後が気になります。
というわけで、続編を続けて読みます。

イラストはあまり合っていないように思えました。
整いすぎて冷たく見えるという侑央や役者のようなイケメンぶりが感じらてず、実はカバー絵の感じからして好みじゃなさそうな話に思えて今まで読んでいなかったので、勿体無かったなと思ってます。

4

この作品が収納されている本棚

レビューランキング

小説



人気シリーズ

  • 買う