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この人の悲しみをどうか一緒に背負わせてください――
作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます
『梔子香る夜を束ねて』紘彦×春洋の続編です。
紆余曲折を経て、やっと恋人らしい時間を持てるようになった二人。
擦れ違いの時が長かった分、貪りあうように互いを求める蜜月を迎えます。
永遠に続く甘い時間を夢見ていた二人でしたが。
紘彦の兄が亡くなり、状況が一転します。
亡き兄の代わりに、家業を継ぐことになった紘彦。
そんな紘彦には、同性の恋人である己の存在が邪魔になると思い、
春洋は身を引く決心をしました。
この「相手の将来を思って身を引く」という展開はありがちですし、
前作『梔子香る夜を束ねて』とも被ります。
ややマンネリというか……ワンパターンを感じました。
紘彦は春洋との関係を続けて行く覚悟は出来ているように見えるのですが、
肝心の春洋が逃げるんですね。相手の事を思って…と言いつつも、自分が
辛くなりたくない・傷つきたくないという感情の裏返しのようにも思えます。
それだけ弱くて臆病な人だということなのですが、オチがあっさりしすぎていて。
今までの葛藤はなんだったのだ!?と、少々思いました。
しかし相変わらず文章が色っぽいというか。
作品が醸し出す大正浪漫な雰囲気が大好きなので。
やや甘い評価ですが「萌」にしました。
シリーズ三作目は、前作の紘彦×春洋の続編。
前作で恋人となった彼らが一難去ってまた一難乗り越え、生涯の伴侶としての絆を深めるような物語です。
春洋(受け)は、駆け出しの画家として活躍。
紘彦(攻め)は、「川並」という貯木場の木材を筏に組んで卸す職人の見習いとして修行を積み、益々逞しい大人の男へと成長していきます。
建築士を目指していた紘彦ですが、紘彦の兄が他界し、実家の材木問屋を継ぐことに。
そして、未亡人となった義姉と甥の面倒を見るよう親に頼まれる。
それを知った春洋は、情人がいると嘘をつき別れを切り出します。
それから3年後、再会する二人ですが…。
何事にも情の薄い紘彦が、春洋にだけ見せる一途さ。
本心を見せることを恐れ、狡い大人を演じ続ける春洋の不器用さ。
それぞれの人となりが前作以上に丹念に描かれ、読み進めるほどに彼らに愛しさを覚えていきます。
詩的表現を駆使した情趣豊かなモノローグの数々も、二人のお互いへの強い想いを表すのに一役買っています。
しかし展開は前作と似通っており、ややワンパターンな面も。
紘彦の幸せを思って身を引く春洋が、紘彦の一途な愛に根負けして元鞘に…というパターンは完全に前作を踏襲しています。
人の性格はそう簡単に変わらないことを思うと、春洋が二度逃げてしまうのも仕方ない…のかな?
別れと再会を繰り返した二人だからこそ、今後は熟年夫婦のように安定した関係を築いていけそうな気がします(実際、次巻に出てくる二人はとんでもなく可愛い…)。
◆余談◆
春洋が見ていた画集の絵は、イタリア・ラヴェンナのモザイク壁画「羊と山羊を分けるキリスト」でしょうか。
天使も元々は悪魔だったことを思い起こし、自分も悪魔になって紘彦に別れを告げようと決心する春洋。
春洋の覚悟が伝わってくるこの切ないエピソードが、本作の中では一番好きです。
前作「梔子香る夜を束ねて」の続きです。
誤解とすれ違いの果てに恋人同士となった紘彦と春洋。
だが、運命はいまだ春洋につらくあたる。
紘彦は材木商の次男で、兄が家業を継ぎ妻も跡取りももうけていたのだが、その兄が事故に遭い儚くなってしまう。
そうなれば次男の紘彦が家業に染まらざるをえない。
それを知った春洋は、またぞろ身を引くわけで。
「家」なるものを背負う紘彦の傍に自分がいるわけにはいかない…
それってさ…
健気で、自己犠牲で、愛ゆえに身を引く姿。それは確かにある意味美しく哀しい。
だけど!だけど!
美しすぎて遠い彼方の景色のよう。
春洋の硬い決意に言う通り離れた紘彦だが、彼の幸せはどうしても春洋と共にある。
だから「また」数年を経て、「また」春洋に寄り添う。
そして「また」それを受け入れる春洋。
春洋の考え方はわかるけど…まどろっこしい!同じ事を何度繰り返すのか。
いのちが長い、という前提のようなこの展開がモヤる。
誰の上にも、いのちの明日はわからないんだよ?時間は有限なんだよ?
愛を今、燃やし尽くせ!
春洋への、私からのエールです。
…と、ぐじぐじした物語の流れは中立。麗しい美文に見惚れて「萌」で。
際2作につづき、紘彦×春洋の完結編。2冊揃えてから読んだ方がいい。
すれ違っていた二人。最初は何者でもないときに出会ったから、そのままハッピーエンドとはいかなかったろう。
今回は、画家となった春洋と、跡取りの自覚が出てきた紘彦の再会。過去の誤解の種明かしに、事件を経てようやく素直になる二人、という展開。こちらもお約束ですな。
春洋のいじいじにイライラさせられた分、すっきりとハッピーエンドでやれやれと一安心だが、はやり京介×啄馬のストーリーにはなかなか及ばなかったかな、というところ。