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37℃
恋愛模様が丁寧に書かれています。
受けも攻めもどちらにも感情移入は出来なかったけれど、この二人には幸せになって欲しいし、こんな風に(大小じゃなく)人を好きになることが出来るのは羨ましいなとも思えました。
野田の自分の性嗜好に気付かないまま、流される風に結婚して、仕事もそれなりに順調で、なのに過去に重い荷物を抱えたように生きている。そしてその荷物の一つが再び目の前に現れたら…
若杉もあの時に感じていた想いをずっと持ちづづけて、面影を辿るようにして生きている。
長く離れた時間がお互いの立ち位置を変えてしまっている(妻帯者と恋人持ち)が、それが故に?野田は若杉への想いに気が付き、何よりもただ若杉を離したくない離れたくないということを一番に置くことを覚悟した訳で。
若杉はどうにもならない野田の気持ちが自分に向けられていたことを認識し、恋人とも別れて野田を甘やかす。。。いえ、自分だったら野田みたいな奴は付き合いきれないですけどね〜
離婚を承知した奥さんもかわいそうだけど、良い相手がいるなら二人をそっとしておいてあげてほしいな、と切に願います。(実際は義母だけど)
BLというよりも、切ない、でも未来は明るいと思える恋愛小説だと思います。なので萌えない(笑)
終わり方は余韻があるので、モヤッと感はありますが、野田の意気込み?がハッキリしているので、引っ張る感じではないかな。
続編希望が多かったら、その後のストーリー展開もあったのかも知れません。
作家買いです。有難いことに紙の新本がまだ入手可能だったので、名作の呼び声高い本作品、お取り寄せしてしまいました。”神”or”しゅみじゃない”の二択系統です。いつもより読み進むのに時間がかかってしまいましたが、読了して”神”一択でした。”翳りゆく部屋”という昭和の名曲があるのですが、音楽にするとそんなイメージでした…。
大人のベリービターな恋愛小説ですね。”恋愛”の本質小説です。楽しい内容ではないので、誰にでもお勧めできるものではないのですが、読み継がれてほしい名作、こういう情緒が廃れてほしくないという気持ちです。昭和の文芸が好き、とかいう方ならささる気がするのですが。あと、R37ということで…。(37℃なだけに)
一目惚れ!ってヤバいですよね。相手のバックボーン抜きで好きになっちゃうんですもん。俗っぽく言うと見た目なんですが、綺麗にならすと魂レベルということです。見た目に惚れたという野田に対して、同じ見た目で全く違う中身の自分を好きになるのかと若杉が問う場面が印象的でした。形もなにも存在しないところでも野田を選ぶと語る若杉、こんなにもロマンチストで誠実で寂しがりやな男がなぜ野田のような男を好きになってしまったのか、、というこの不可解さこそ恋の醍醐味な気がします。
年齢と経験を重ねるほど、純粋に恋愛をすること自体が難しくなるんですが(実際問題w)、だからこそ10年前に封印したはずの若杉への気持ち、世俗に汚れていない唯一の美しいものを手放したくないと考える野田と、求めても求めてもすり抜けていってしまうような存在に情熱を注ぐ若杉が、心から血を流しながら行う行為が切なすぎました。野田が狡い人間に見えるのですが、実は自分が傷つきたくないと思う分だけ、他の人にも傷ついてほしくないと思っているだけな気がします。両想いなのに自分の幸せだけに酔っていられないほど、野田は周囲の人の気持ちを慮ってしまうのだと思いました。(ある意味、正しい大人なんです。)
おそらく、出会わないほうがそれぞれ完璧な人生を歩めたのかもしれないと思わせるCPです。価値観の相違は別れる前提みたいな設定なんですよね。肌をあわせたときに感じる温度の幸福感が自分のおかれている現実をひととき忘れさせる中毒性のある麻薬みたいものだからこそ、野田はその感覚と正気のはざまでずーっと揺らぐんじゃないかなと思いました。しんどい…でも素晴らしい作品です。
KindleUnlimitedで読みました。挿絵、あとがきなし。
表紙のイラストが素敵なので、中の挿絵も見たかった。ちなみに、杉原先生の作品はこれが初読み。
序盤から、くっついたり離れたりのモダモダがもどかしい。受けが攻めを簡単には受け入れられない理由として、信心深い親に育てられて自分の性癖を責められてるように感じて育った、との記述はある。が、それ以上の具体的なエピソードが語られるわけでもないため、そこにイマイチ感情移入できなかった。
攻めも攻めで、そこまで受けに執着する理由がよくわからない。受けの一人称なので、最後まで攻めの生い立ち、背景が見えないままだったせいか、何を考えているのか掴みきれなかった。
好きだと言い合って、体を重ねても、ずっとどこか不穏な空気を感じるストーリー展開がツライ。結局どちらのキャラにも感情移入できぬまま読み終わってしまい、ぶった切られたような結末にも呆然としてしまう。
この読者の想像に委ねたラストは、前半部分で受けが攻めの愛から逃げたのを見ているからか、どうにも「この二人なら大丈夫、乗り越えられる!」という確信が得られない。しんどさとモヤモヤばかりが残る読後感。
学生時代に出会う攻めと受け。そのときの二人の関係性が何とも形容しがたい繋がりで、読んでいる方は攻めが受けに夢中なのはわかるのに…受けは関係性が曖昧なのに乗じて受け入れない感じが焦れったかったのですが、背景には受けの育ってきた環境、大人になって再開した頃にはまた違う要因があって、どうしても幸せを受け入れられないのが切なかったです。総じて攻めがかわいそうだな、という印象で読み進めたのですが、ラストが思ってた終わり方と違って、なるほどなあと言う感じ。きれいに終わりきれなさそうなのがリアルでした。ハッピーエンドじゃないとダメな人にはおすすめしにくいかな。
切なかった……
ハッピーエンド?メリバ?
終わりの始まり?
読後の余韻は不安いっぱいでしたが、作品自体は愛に溢れたものでした。
若杉みたいな男にここまで愛され、求められたら幸せだと思う。
意地っ張りだった野田の心境の変化を、とても丁寧に描写していました。
心変わりじゃなく、10年引きずった初恋だと思う。
若い時には分からなかったことが、年をとると分かってくる。
それは絶対にある。
色々な経験をして辿り着いた答えが、「若杉」で「野田」で。
出会ってから10年経った今だから結ばれた2人なのでしょう。
その過程で傷付けた人がいたとしても、出会うべくして出会い、再会した2人だと思う。
野田の業は、離婚する前に若杉と付き合ったこと?
それとも、ゲイなのに女と結婚したこと?
ただ、どんな業を背負っても若杉と別れないという野田の強い気持ちは伝わった。
同じような状況で逃げ出そうとした、過去の野田はもういない。
これからどんな事があっても絶対に離れない2人だと思うし、そう思わせてくれるだけの熱量を感じました。
熱くもなく冷たくもなく、でも決して冷めない温度。
それが、37℃なんだと思う。
イライラしながらも、最後までドキドキさせられました。
綺麗事じゃない、年相応の大人の恋愛を見た気がします。
「萌」や「萌×2」などという生半可な評価を許さない作品だな、と感じました。
「神」か「趣味じゃない」かのどちらかしかない。
「趣味じゃない」が選択肢に含まれる最たる理由は、あらすじ・冒頭部を読んで抱いていた印象と、実際読んだ内容が180度違ったから。
あらすじと冒頭部を読んだときは、「いい加減で酷い人間なのに、どうしようもなく魅力的な悪魔のような攻め」に魅了され、翻弄されてしまう「真面目で純朴な受け」の話かと思ったのです。
しかし実際読んでみたら違った。
攻めはとても魅力的な男性だけれどもそれ以上にやさしく情があって、受けのことを受け止めたい、どうやったらいいのかと悩む真摯な人物でした。
むしろ、真面目で純朴そうな(そして真面目で純朴では、ある)受けの方が悪魔のような人間だった……。
でも受けも、ただ酷い人間なわけではない。
受けの中にどうしようもない暗くぽっかり空いた穴があって、それを自分でも扱いかねているのがよく伝わってきました。
そんな受けを、攻めはなんとかしてやれるんじゃないか、うまく接することができるんじゃないかと期待し、しかしやはり自分の手には負えないと絶望する。それが繰り返される。
そんな作品でした。
趣味か、趣味じゃないかと問われたら間違いなく「趣味じゃない」。重くて苦しくてつらい。
でも、受けの苦しみも、攻めの苦しみもわかる。人間のエゴイズムを描き出した、見事な作品だとも思う。
なので、悩みに悩んで「神」評価にしました。
系統としては、もだもだ系。
だけど、イライラはしないです。それよりもむなしさが残る。
心理描写の壮絶さはまさに杉原先生の真骨頂!
そんな作品です。
お話は3部構成になっています。
大学時代に出会った二人の10年に渡るお話です。
二人は両片思いどころか10年前から両思いなのだけど両思い感はなく、ずっとお互い相手に対して実らぬ恋をし続けている……そんな気分になりました。
というのも、受けが凝り固まって捻くれためんどくさい男なんですよ…。
攻めはお互い魂だけの状態になったとしてもきっとお前だと見つけられる、というほど受けのことを愛しちゃってる男。
だけど受けは人一倍臆病で、自分の奥底に潜む願望に蓋をしてクールで理性的であり続けるのでそこが読んでて何とも焦れ焦れするし、何かと攻めの前から逃げようとする姿に、ハラハラさせられます。
もちろん攻めの元カレの存在や別居中の妻の存在があるのもわかるのだけど、いつも問題を先送りにしているような感じで、いつになったらこいつは素直になるんだ?いつになったら燻り続けるこいつの心に火は点くんだろう?と思いながら読みました。
そう考えると「37℃」というタイトルは何てピッタリなんだろうって思いました。
平熱ではない。
かと言って、お熱でもない。
消えそうでいて消えない大人の恋。
私は最後の展開がすごく好きです。
大団円的なハッピーエンドではないからこそ、色んな余韻がありました。
これから二人は茨の道を進むと思うんです。
きっと社会的に色々なものを失う事でしょう。
だけど今まで逃げることしかしてこなかった受けが、攻めさえいてくれればその他の全てのものを失っても構わないとまでに覚悟し、初めて逃げない道を選ぶ。
お前がいつ逃げるかわからないからと、受けよりも後に寝て受けよりも早く目覚めていた攻めが、何も知らずに初めて見せる熟睡する姿。
それが嵐の前の静けさを際立たせていて何とも切なくて。
だけど、攻めは受けの覚悟をその重みを実感しながら受け入れてくれるはず。
そして10年かけてようやく変化した二人の絆はこれで切れるどころか、一層強固になるだろうなぁ、そうであって欲しいと思います。
個人的には50代を迎えた二人が、あの頃は大変だったよな…的に振り返りつつ、二人程よく枯れつつも仲良く一緒にいる…といった続きが読みたいなって思いました。
電子なので本の厚みなどでボリュームを実感できないのですが、凄くボリュームがあったというか読み応えがありました。
ーーーー
ぶっちゃけ感想。
妻に出て行かれて結婚生活はとっくに破綻してるのだから、とっとと離婚を切り出せばいいのにと思った。
別居中とはいえまだ離婚していない状態で、攻めとアレコレする前にとっとと目の前の問題片付けろよ……とモヤっとしたのも事実。
でも自分から別れや離婚を切り出すって大変なことですよね、きっと。
自分からは言い出す資格がない…みたいな感じで切り出さないけれど、切り出す辛さを背負いたくないみたいなやはり「逃げ」を感じました。
ゲイなのに認めるのが怖くて結果的には偽装結婚のような感じで妻を傷つけ…相手の親も傷つけ。
逃げていたツケが回り回ってのラストなので、すんなり離婚できた〜ハッピー〜!的な終わりではなくて良かったなぁと思います。
冷たく固まってひねくれた男野田と、情熱的な男若杉との10年愛。
I
10年前、関係を持っていた男若杉との再会と邂逅。
若杉と野田は、全くその持って生まれた性質が違う。だからこそ惹かれ、わかりたくて近づき、理解し難くて反発する。
若杉の愛し方は甘く官能的で、でも野田の欲しい愛し方は無理矢理で乱暴で酷くして欲しくて。心では若杉の愛し方を望んでもいた、でも好きと言われるのも優しいキスも嫌がっていた日々。
再会して、またつかの間同居して、あの頃とは違う目で自分を見る。この自分の心の中にも恋という場所があった事を。
II
10年前とは全く違う温度でまた恋をしている二人。
野田視点なので若杉の心中は定かではないけれど、野田の方はかつて男の熱情に引き込まれまいと逃げていた感情に進んで落ちていくようで。
そんな時、若杉の別れた恋人が野田の前に現れて『別れてくれ』と懇願する。
そこからは混乱して話も聞かず一人で抱え込む野田と、そんな野田を手に負えないという若杉の、いわば修羅場。
別れたい。別れたくない。
もうお前を追わない。俺はどうしたらいい。何を望んでる?
殺してくれ……生きてくれ。
III
別居中だった妻と離婚が成立できそうで、野田は若杉と生きる事を考えていた。二人ともやっと思いの通じた恋人のように甘い時間を共有していたのに。
事件が起きる。
今までの野田だったら全てを捨てたかもしれない。でも今の野田なら…若杉から『生きてくれ。俺のそばで』と請われた野田なら。
『大丈夫だ ここにいる。私は、ずっとそばにいる。』
若杉が芝居の脚本家兼役者、という設定のせいかどうか、文章を読んでいると演劇的というか、舞台で俳優がこの「37℃」という芝居を演じているのを観ているような気分になりました。目に浮かぶ、というのかな。
野田が変化して若杉を求める熱量のようなものが、ただの文章だけでなく実体を持って迫ってくる。
決して甘い物語ではないけれど、重厚感、読み応えのある小説でした。
文体がとても綺麗です。
読んでいるだけで、違う世界にきたような気持ちになりました。
「小用」という言葉を見て、びっくりとともに楽しい。
野田の独白で話がすすめられるので、心情を理解しやすかった。
読んでいて、互いの心の隔たり、葛藤に
どーして、言わないのー。
とじれったくなります。
SMシーンは軽めで、痛い汚い感じはしませんでした。
背徳を感じさせる美しい描写で。
どちらかといえば、自己保身ばかりの野田の方が若杉への放置プレイ気味だったような。野田の冷たさや弱さが際立っていました。
野田の妻や若杉の恋人など、関わった人間の心情はあまり語られなかったので、理不尽に2人に振り回された気持ちを知りたくなりました。
妻の側へ知られてしまったことで、野田が不安定になるのでお互いの対決を読んでみたいと思ったからかも。
ラストは続きが気になる余韻でしめられ、どうなったのかと嬉しいもやもや。
ただ、前向きな選択をしそうな印象を受けました。
続きがあれば、読みたい作品です。
迷ったけどやっぱりすばらしい作品だと思ったので神評価で!
大人になってから、学生時代、体の関係だけ持った友人と再会するお話。
主人公の野田は屈折した性格で理解しがたく、非常に面白いです。
最初は若杉のほうが変わったキャラクターなのかと思いますが、読んでると次第に野田がどれだけ面倒なキャラかわかってきます…。
大人になって再会し、いろいろあって、学生のころのあれは恋だったと今更ながらに理解する野田。
けれど今若杉と恋人になろうとするには歳をとり過ぎていて、会社での地位の事、妻の事、それらを無視することは出来ないという大人の恋のお話だと思いました。
心の中の若杉を好きな部分は綺麗なもので、でもそれを素直に出せるには外の世界は厳しすぎて、現実と自分の心の内とでぐるぐると気持ちを持て余す、全体的に野田の心理描写を追った静かで綺麗な作品でした。
まだ色んな問題は残っていて、でもそこを安易に終わらせない所でこの作品の完成度が高まっている気がします。
少し物足りないのは、「体もなにもないものになっても相手を探し出せるか」という深いお話までする2人ですが、野田の一人称のお話なので、肝心の若杉の心理が野田ほどに理解できなかった事でしょうか。
でもこれは野田の綺麗な独白でこそ成り立つお話なので難しいところです…。
心の中に、マーブル模様が渦巻き続けるような感覚を覚えた作品でした。
水と油のように、決して混じり合わないのに、複雑に絡みあって一つになる。
そして美しく繊細な模様になって、人の心に浸透してくる。
そんな二人の物語でした。
何だか久しぶりに読んでみたくなり、引っ張り出して読みました。
杉原理生先生は、本当に大好きです。
野田が大学生時代、共通の友人を介して知り合った若杉。
生真面目で繊細な空気を持ち、色白で本人的には平凡な見た目の野田。
人を惹き付ける外見と劇団脚本家としての才能を持ち、淋しがり屋で恋人が出来るたびに家へ転がり込む若杉。
ささやかな切欠で、周囲に内緒で同棲をはじめた二人。
本当はゲイの野田と、男女問わないバイの若杉。
肉体関係だけで繋がる二人。
片方の隠された性癖と、普段のあまりにも冷たい距離感の中で。
二人の精神は、少しずつ磨り減っていきます。
やがて時がたち。
野田は、別れてから十年間何の音沙汰も無かった若杉から、突然しばらく泊めて欲しいと頼まれます。
野田が今妻と別居中であると、噂を聞きつけたからでした。
若杉も若い恋人(男)と別れたばかりで。
二人は以前の関係とは違い、純粋に友人として暮らしはじめます。
そこから始まる、二人のお話。
読んでいて意外なのは、ええ加減そうな若杉は細かいところにきっちりしていて。
几帳面な野田は、意外と面倒ごとを先送りにするタイプでした。
この野田の性格が、後の様々なトラブルの根底に隠されています。
端から見たら水と油な雰囲気の二人ですが。
微熱を帯びた恋の病に溺れて。
溶け合うことは無くても、美しい模様となって絡み合い、決して離れられなくなっていく。
それが幸せなのか、不幸なのかは読み手によって感じ方が違うかもしれません。
私は好きだなぁ、と思う作品でした。
タイトルにふさわしく熱をはらんだ読後感でした。
学生の頃に関係を持っていた野田と若杉は10年振りに再会します。
再会してしまったことで否応なしに野田はあの頃のことを考えます。
別居中の妻、若杉の若い恋人。
そして、野田が若杉と生きることを認めたとき共通の友、堀越から若杉の本を見せられます。
「変わってほしい・・・要するに、そう願ってしまうほど、僕は彼のことが好きだった」若杉が書いた言葉が印象に残ります。
この物語の結末は書かれていません。
ふたりが熱から覚めるとき・・・それがこの物語の終わりなのかと思います。
文字も小さくないし、ページ数も多くない、だけれど、とても重い何かがこの作品には詰められていたとおもいます。
このお話は、単純に切ない恋というだけではなく、三十路を超えた、「社会」の枠組みの中に支配された一人間としてのリアリティーがとても重視されていて、まるで、自分が経験しているかのような辛さと憂いと喜びを感じられました。
両想いなのに片思い。素直になれない現実主義者の野田さん(受)と、いつまでもロマンチストで一途でさみしがり屋な若杉さん(攻)、そうやって言葉にすれば簡単に図式化できてしまうのに、そう、うまくいかない。お互いの気持ちがわからなくて、もどかしくて、人生に保守的になってしまって…。
それは、生きる人間特有のことだと思います。生きて、必死になって、もがいて、苦しんで、そうして経験して。そういった「生きる」ことをこの本の中の世界は表わしていて、だからこそ、厚みや重みがでるのかなと感じました。
そういった意味では、ホラーとも取れました。
まったく不明確な未来。真っ暗な世界。孤立した不変を望む社会。
それらすべてがのしかかって、幸せの絶頂にいるとおもえば、突然の崩落があり、そこから愛が芽生えれば、唐突にそれを覆されたり…。
正直、読んでいて「ここで読むのをやめたい」と思ったのは初めてです。次にくる真っ暗なものが怖くて、このまま二人を幸せのまま終わらせてあげたくて、何度も何度もため息をつきながら読みました。(良い意味です。)
それぐらいリアルで、投げ出したくなる本の中のキャラクターたちに何度も共感しました。つらかったです。でも、それがこの本の醍醐味というか、良いところなんだと思いました。
BLとしてはいまいちきゅんとするものだはありません。どちらかというと、そういう枠組みじゃないと思います。萌えるか萌えないかではなく、その世界に入るか入らないかみたいな印象を受けました。
ですが、とてもおすすめしたい一冊です。
少々お値段が高めになっていますが、買って損は絶対にありません。
この本を手にとったなら、ぜひとも開いてもらいたいです。
とても素敵な本と出会えてよかった。
ありがとうございました。
37℃というタイトルの通り、ずっと微熱のような雰囲気を漂わせた物語だと感じました。
10年前、ほんの短い間だけ野田(受)の許に居候していた若杉(攻)。自分の感情を直視しない野田と、自分に素直で淋しがり屋な若杉。2人は身体を結ぶが、結局分かり合えずに別れてしまう。10年後、妻と別居中となっていた野田の許に、若杉から電話がかかってくる。「俺をしばらく泊めてくれないか」再び一緒に暮らし始めた2人は…?というお話。
両想いなのに片想い、帯にそうありましたが、本当にそんな感じです。
野田は自分の感情から目を逸らし、若杉は感情を殺している。そんな気がしました。
2人の不器用な性格のせいか、物語全体が不思議なもやに包まれているような感じでした。
ラストもモヤモヤした曖昧な感じで、でもそれが逆にいい。
文章も綺麗で丁寧で、クセがなく読みやすかったです。
イラストも繊細なタッチで、物語に合っていました。
37℃というタイトルが本当に秀逸です。
平熱よりも少し高い、1番タチの悪い温度。
熱に浮かされる、といいますが、この物語に出てくる人たちはみんな熱に浮かされているように感じました。
言葉にしにくいのですが、彼らは一種の病にかかっているようなものなのかなぁと。
不思議な引力があって、読み出したら止まらない。引き込まれていく。素敵なお話でした。
こんなにレビューしにくい作品はない…。
読んでみてください。読んだら絶対にこの魅力、引力がわかります。
先ずこのタイトルが良いですな。
燃える様な熱情とまではいかないんだけど、少し微熱なその恋愛感情は37℃という体感温度にぴったり。
その辺りは読んでる内に段々とタイトルと内容がしっくり来ます。
ほぼ野田[受]視点で書かれているので、彼等の10年前の出会いと関わりや、現在の彼の心情が読み手に分かりやすい。
野田という男はどちらかと言えば感情の振り幅が低い己を客観的に見つめる事が出来るタイプの男で、対する若杉[攻]は彼よりは感情的でれ恋愛感情にのめり込むタイプ。
一見合わなそうでいて、一緒に居て自然体でいられる2人の関係がいいです。
心底から悪い人が出てこないというのもこの作品にはあってました。
ラストは離婚寸前の妻と義妻に若杉との関係が知られてしまうも、それでもこの男の側に居たいとしみじみ思い決心する野田の姿がいいです。
主人公の野田の「私」という一人称からか全体的に文学っぽい印象を受けた。
臆病だからこそ自分の幸せを受け入れ切れない野田は、些細なことをきっかけにぐらぐらと揺れる。
対する若杉の優しさも野田の言うことを受け入れる優しさであり、逃げる彼を追わない優しさだ。
この行き違いがとても切ない。
そういう微妙で繊細なゆらぎを読ませてくれる作品だと思います。
結末は、正直そこで終わるの!!?とすごくびっくりしました。
ハッピーエンドはまだまだまだ先にある感じです。
二人の関係も不安定で脆そうで……だけど、だからこそすごく綺麗だ。
この曖昧さはすごく心臓にわるいけれど、その分印象深い。
あああ、もうなんだか上手く言えなくて悔しいです。
とにかくこれは読んでみて欲しい。
あなたの目で、心で確かめて欲しい。
そんな作品です。
はて?37℃とはなんぞや?って思って手にしたんですけど
ちょうど人間にとって「熱がある」という頃合の温度ですよね。
男前で寂しがりの若杉と平凡で臆病な野田
ふたりは、学生時代に恋の病に罹って
ずっと長い間、病に冒されているって話なんじゃないかと思いました。
またこの37℃っていう温度が性質が悪いw
若かりし頃、一度は別れたふたりが30代という年齢になり
ふたたび身体を重ねる。
若い頃に見えなかったもの、見ようとしなかったものが
少しずつ見えてくるのが、ちょうどこのぐらいの年齢なのかもしれない
そうやって、ふたりの気持ちがわかりあえたときには
お互いの抱えている社会がネックになっている
そんな30代ですよ・・・
急速に物語は展開せず、酷く臆病な受けの“私”語りで綴られてて
ずるずると読みすすまなくてはいけません。
だがしかし!それが、まさに37℃!
じわじわ~と身体の芯から、熱に冒されるv
ちょっとけだるい雰囲気が、私にはしっくりきた。
ただの恋ではありません。
野田はかなり捻れていて、人と向き合うことも、想いを言葉にすることも、自分自身に向き合うことも不得意で、それなのにその時々の自分の気持には後先考えず流されてしまう・・・
かなりタチ悪いです。若杉に言わせると・・・
「優柔不断だし、世間体は気にするし、すましてるわりにはいやらしいし、 おまけに手のつけようのないドMだし」
あまりな言われよう(笑) でもそんな野田が、「俺の好きな男だ・・」と若杉は言うのです。
なんて健気で忍耐強くて優しいんだ!この若杉は!
でも、こういう捻くれた覚悟の決まってないMくんは扱いがほんとに難しい。
若杉は優しすぎて、とことんMな野田の性癖の為だけに利用されていると悩んだりしつつ、酷い男は演じきれない・・・「責めたりしたくない、優しくしたいんだ」と、逆に野田を追い詰めて別れを切り出されてしまうんですね。
Mな野田は、若杉を好きになればなるほど、ぐるぐるとドMスパイラルに入ってしまい、一度同棲を解消。
しかも、「お前と本気で付き合うつもりなんかない」なんて言ってひどく若杉を傷つけて。
責められている方が気が楽、とかいうのはよーーーくわかります。優しくなんかされたくない、好きなようにして、こっちに気持を要求しないでほしい、というのも。
もちろん相手を好きでないわけじゃないから、またややこしい。
要は、好きな人の愛情を受け取ることを自分に禁ずるところに快楽があるわけですね。
でもその性癖で、心優しい攻め君をこんなに振り回したり、傷つけたりしちゃあ、イケマセン。
野田みたいな男は、ちゃんと愛で支配してくれるご主人さまを見つけた方がいいんです。
野田が自分に夢中で当たり前、とドーンと構えて、不安を抱かないような男を。
優しくさせてくれ、俺を愛してくれ・・・と願わない男をね。
でも若杉は優しく粘り強く、時に昏い怒りと熱情をもって10年もあきらめず・・・
「変わってほしい・・・そう願ってしまうほど、僕は彼のことが好きだった」こんな言葉を本に残すほど。
その甲斐あって、野田もやっと、愛されることを受け入れ、甘美なMスパイラルに逃げ込まないようになり、
32にして初めてきちんと相手と向き合う恋をするわけです。
この本はまるで、M性癖の治療書ですね(笑)
魅力的なドM君に恋している人は、この本をぜひお読みいただき、
こんだけ時間と手間がかかるんだ・・・と思い知るといいと思います
凪いだ海の様に静かに坦々と物語が進んでいるように見えて
でもその水面の下は、激しい感情が渦巻いている。。。
そんな印象を受ける作品でした。
お互い、体だけの関係と思い込もうとしていた大学時代から10年の月日が経ち
相変わらず、自分の気持ちと上手く折り合えないもどかしさから開放され
お互いの事を強く求めるようになってもなお不安は拭えず
なかなか次のステップに進めずに行きつ戻りつするふたりにヤキモキさせられます。
10年という年月で
二人の気持ちは変わらなかったけど
彼らを取り巻く環境が大きく変わっていた為に
二人が幸せになるために払わなければいけない犠牲が増えてしまってたんですね。
いままで、そういう痛みから逃げていた野田を変えたのは
いろんなしがらみにがんじがらめの「タチの悪い男」を
10年変わらず求めつづけた若杉の愛だったんだな、と思います。
ノベルス化の際に書き下ろされた第三話のラストでさえ
二人周りのさまざまな問題は積み残されたままでしたが
それでも「もうこの二人は大丈夫」と思えるほど
二人の関係は揺るぎない物になったのではないでしょうか。
読み終わった後も、静かに余韻に浸れる
そんな雰囲気を持ったいい作品でした。
アダルトな世界でした。
繊細で流れるような文体に、うっとり酔いながら読みました。
比喩の使い方とか心理描写とか、いちいち美しくて、ああ、私もこんな文章が書けるニンゲンになりたい。
今まで読んだ杉原作品のなかで、ピカイチに好きでした。
主人公の受けは32歳の銀行マン。うほっ、アダルト!ゲイなのを隠して結婚し、妻とは別居中です。
そんな主人公のもとに、10年ぶりに電話をかけてきたのが、大学時代に付き合っていた攻めでした。
終わったはずの関係が、時を越えて再燃します。
屈折しまくった主人公の心理を、攻めはなかなか掴めません。攻めだけじゃなく、読者にも分かりづらいです。けど、なんとなくは分かる。この『なんとなく』がイイ。杉原さんの文章は、この掴みどころのない『なんとなく』な心理を、ねぶるようにジワリジワリと書きあげていた。
ラストもかなりモヤモヤの残るラストですが、私好みのモヤモヤ感でした。
このあとに待つのは修羅だと思う。
下手なホラーよりもずっと怖いリアルが、二人を待ち受けている。悩み苦しむだろうけど、選択したことを後悔だけはしないと思う。
大萌ー!
同人で読んだ??との既視感もあっさり押し退けるほど、夢中にさせてくれました。
一度終わった恋愛が年月を経て再熱していく様は、焦らしプレイのような不思議な高揚と充足感がありました。はあ~満足。
妻と別居中の野田の元に、昔関係をもっていた男から突然の電話が舞い込む。宿なしだと言う男、若杉を家に上げたことから封印していた10年前の記憶が蘇っていく。そして野田は過去に引きずられるように若杉を意識していくが…。
やけぼっくいに火が、とありがち設定ながら野田の一人称で進んでいく二人の関係は、心情面にじっくり重点を置いていて実に濃厚でした。
うまく言えませんが、文芸的な色気があるというか、とても雰囲気がある作品なんです。
それにしても野田という男、若杉が度々言うように恋人にするには相当厄介な相手だろうなぁと。冷めてるのかと思えば熱くもある、常識的だがアブノーマル、優しいかと思えば酷薄、理性的だが感情的。
相反するものが混ざらずに同居しているというか…それが矛盾に感じられないのは著者の力量でしょうか。
捕らえ所のないこういう複雑なキャラクターを主人公に据えて、書ききっているのに拍手したいです。
無機質な印象の野田が思わぬ情熱を見せる瞬間、異常に興奮してしまいました。
そのたんびに振り回される若杉は不憫ですが、それがまたたまらんのです。
過去、あんなにも頑に臆病だった野田の変貌に、静かな感動を覚えました。
静かな熱にうかされるような後読感、まさに37℃という題そのもの。
そして北畠あけ乃さんのイラストも恐ろしくぴったりです。
楽しくサラッと読めるような話ではありませんが、一度入り込んでしまえばどっぷりと浸れる良作。他の杉原さん作も読みたくなってきちゃいました。
木原先生との合同誌に書かれた作品ですが、合同誌の条件は「オヤジ」
木原先生のオヤジスキーの影響で、仕方なしに書いたオヤジですが・・美中年とつぶやき続けて書いただけあり、美しいオヤジに仕上がっています。
30代半ばオヤジですが、作中で「学生の時と同じく肌も白くつややかだ」と言わせて、少しでもオヤジ臭さから脱却しようとあがいているところが、なんとも杉原先生のかわいらしい所です。。
実は同人誌では40歳でした、木原先生は「NowHere」で同人誌より年齢がアップしましたが、杉原先生は同人誌より若返っています・・やはり杉原先生オヤジは苦手なようです。
しかし、オヤジスキーの読者には、枯れかけていたのに、再燃してしまった美中年の葛藤がなんともいい味わいでして。。
勢いだけではこえられない、生活や、社会のしがらみにあがく、大人の男のいじましさが、よかったですね。
帯にも「ずるい大人の恋物語」とあるように、両想いなのに、はっきりさせるのが怖くて、ずるい大人でいたがる、臆病な男の話です。
杉原作品は
長い年月をかけて、自分の心の中にある恋愛感情の存在を認めて、分かちがたい伴侶として共に生きていく道を選ぶ。
という、ジリジリ物のお手本のような作品が多い。
それが同級生だったり、幼なじみだったりすると、友達のポジションから、恋人になるまでの、何年にもわたる危うい心の揺れをジリジリと描き続けて、最後の最後でようやく結ばれたりする。
そんな中で、この作品は珍しく、最初にセックスだけがあって、そこから別れて10年、再会を期に解凍された当時の思い、現在の思い、
離れていた年月に,結婚も別居も経験し
野田はようやく自分の本当の気持ちに気付きます。
それがアカルイミライではなくても、自分が本当に欲しいものを選んだ野田。
この世の中に、だれもが幸せになるハッピーエンドはないけれど、選んだからには絶対手放さずに生きていくと決意します。
ジリジリしたいけど、やっぱり何のエロもないまま読み続けるのは辛いなって方にオススメ。
乱暴に酷く扱われることに性的興奮を覚える野田。
恋愛体質で好きな相手には甘えたい・甘やかしたい若杉。
どう考えても付き合いが上手く行きそうにない二人。
趣味も考え方もまるで違う。好みのタイプでもない。
それでもどうしようもなく惹かれてしまうもどかしさ。
10年という長い年月を経て、やっと恋をすることが出来る
不器用な大人達の姿に萌えました。
全体的に静謐な雰囲気で、登場人物(特に野田)の枯れ具合や厭世感が、
オヤジ好きにはかなりツボだったのですが。
野田が32歳・若杉が34歳。意外と若いんですよね。
だいたい30代半ばというと、男は働き盛りですし。
個人差もあるでしょうが、枯れるにはまだ少し早いような気がします。
なので二人が40過ぎだったら、もっと説得力があり、
私にとって「神」作品になったかもしれません。
ぐわーっ!と熱く勢いよく胸に迫るものはありませんが、
気がつくとじわじわと微熱のような切なさがやってくる作品でした。
大学時代に一時期、身体だけの付き合いをして別れた男と、十年ぶりに再会して、恋をするお話です。
(萌え属性の項目、「幼馴染・再会」が一括りになってるのですが、当てはまるのは「再会」の方で幼馴染ではありません~)
同人誌として発表されたものに、加筆修正し3話目を書き下ろして単行本化したそうです。(あとがきより)
もうほとんど両思いだろう、という二人なのですが、主人公の野田は別居しているとは言え結婚しており、若杉にも野田との再会後に別れましたが、同じ劇団にいる男の恋人がいて、二人の行く末に影を落とします。
このままダメになっちゃうんじゃないか、破局するんじゃないかと、後半に差し掛かるまでハラハラしながらページをめくりました。
それだけではなく、野田は学生の時も、同性愛に対する後ろめたさと言うか、「この関係は今だけだ」みたいな思いを抱えています。
それで十年前も別れてしまい、再会後も若杉と正面から向き合うことへのためらいを感じています。
奥さんとのことや、若杉の元恋人との接触とか、外部要因にもハラハラするのですが、野田の煮え切らなさにもジリジリしました~!
まあ、十代の少年みたいにストレートにぶつかってはいけないよなあ、とは思うんですけどね。
でも、かつて目をつぶって見えないフリをしていた想いに、時を経てようやく気付き、伝える事が出来たのにはよかったなと思いました。
時間を置くことで、みえてくるもの、というのもあるんだろうな、と思います。
単純に、それでめでたしめでたし、とはいかないのですが(奥さんの事で…)、それでも一人じゃなく、一緒にいたいと思う相手とならきっと乗り越えて行けると、そう思えるラストでした。
しっとりしたお話が好きな方にお薦めの作品です。