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ひと夏2週間の出来事を描いた作品。
都会から離れた別荘、それもひと夏という限定された時間と真夏の雰囲気がよく出ていて、こういう刹那的な作品はとても好きです。
夏休みを叔父の別荘で過ごす事になった高校生、佑一と、同じくそこに滞在中の高校生、晶、叔父の息子であり佑一の従兄弟にあたる宏昭の微妙な関係が描かれていて、ちょっと鬱々したところもある作品ですが、綺麗で純粋な恋心も描かれています。
青春小説、という感じです。勢いでガーッとかいた、ていうような感じがしたのですが、これが発売される10年以上も前に作者さんがまさしく勢いで書いたそう。
子供の時にしか出せない青さややるせなさが綺麗に出ています。
主人公の佑一が心を病んでいくので、爽やかで、甘いものが読みたいって方にはちょっと苦手に感じるかもしれません。
私は苦手というよりも、祐一の悩みとかいろんな事が、90年代のちょっと古さのある青春ドラマのように感じました。
家族のことや従兄弟の姑息なイジメに悩み、自傷に走り、学校に行かなくなり…でもそれが子供故のやるせない辛さかというとそれだけではない。
佑一がこうなっていった過程にはもっと複雑な思いがあるのだという、キャラクターの心情がなかなか難しい作品です。
そこに晶という、家族の、ごたごたとは関係のないキャラクターを入れてるのがよいです。
佑一にとって晶が特別な存在になっていく過程はとても描写が丁寧です。
佑一と宏昭だけ見たらよくあるBLぽい。
力で無理矢理抱かれ、でも抵抗しきれない佑一と宏昭の関係は、昔書いたときはこれでよかったけど、作者さんは今はこれではダメだと思い直して晶というキャラをメインにした作品に置き換えたそうですが、実際晶というキャラは微妙なポジションにいます。
最後まで何をするわけでもありません。
佑一と宏昭の関係に気づいて助けてくれるわけでも、佑一が病んでリストカットした理由を尋ねるでもありません。
でもそれがよいかも。家族や宏昭のこととは関係なく、自分の悩みと晶が好きだということは別々の問題だと佑一が考えているから、やはりいなくてはならない存在なのだと思います。
晶はあんまりしゃべらない寡黙なキャラでちょっと神秘的なのですが、もしかして一番普通、というかただのどこにでもいる高校生なのではないかとやっとラストのほうで気が付きました。
ただ、ラストが綺麗にまとまり過ぎてる気がします。
間がハードだった分、終わりが、え?こんなにあっさり終わるの?という感じでした。そこがもう後一押し欲しかったかも。
後半の短編で晶視点のお話が読めます。
これを読んでいたら、佑一からもちかけた関係なのに、晶がはまっていってる様がよくわかる。
佑一視点の時はわからなかったけど、他人の目線で見たときの佑一の危うさは、見ていて不安になります。
すっきりと何もかもうまくいった!てラストでは、ないのですが、この不安定さも含めて雰囲気の一貫した素敵な作品だと思いました。
未来ある若い二人、て感じのラストです。
宮本さんのイラストがとても雰囲気にあっていて、それもよかったです。
大好きな作家さんです。作品の世界観、ストーリー、キャラクター、言葉の選択や組み合わせが格別に個性的というわけじゃないのだけれど、作家さんの感性そのものに惹かれます。ものの感じ方とその扱い方がとても繊細で、それがきちんと伝わってくる丁寧な物語を描かれている印象です。個人的にボンヤリとBLに求めている、言葉で表しにくい正体不明のキモを表現してくださっている作家さんの一人でもあります。
雑誌に掲載された作品を改稿し、さらに後日談の書き下ろしが収録された文庫本。他のレビュアーさまがご指摘されているように、宮本佳野先生のイラストがとってもマッチしていて、両者のファンとしては地味に悶えちゃうコンビネーション。この物語は核にあるテーマが「家族」であるため、ある種の重苦しさや痛々しさが底辺に潜んでいます。さらりとしているようですが、テイスト的にはJUNEに近いかもしれません。
主人公は複雑な家庭環境に身を置く高校二年生の佑一。近い将来母親の再婚相手となるであろう、美容院を経営する秋庭の別荘で夏休みを過ごすことに。そこで事情があって食事作りのバイトにやって来た同い年の晶と出会う。晶は美大志望だった。
それぞれの視線の行方や、何をどういう目的で見つめるのか…といった描写が、若過ぎる二人なのに色っぽくてドキドキさせられます。「見る」行為は恋愛の始まりを予感させますから…。両者が好意を自覚するまでの段階、あるいは好意を伝えたいけど伝えられない葛藤など、素直になれないキャラクターの心情が生々しく、未熟さゆえに透明で美しいものとして伝わってくるのが素敵です。
晶がツンデレくん。そのツンデレ具合も、意図せずどうしてもそういう態度になっちゃうのがよくわかって可愛かったです。幼かったり、まだ若いのになぜだか父性溢れる包容力のある子っていますよね。晶はそんなタイプの男の子に思えて、わたしの目には魅力的なキャラクターに映りました。
苦しくて出口が見えない時に、必要で大切だと思える相手に出会えた僥倖。この二人みたいな関係にとっても弱い。。古い作品に加筆修正されたものですが、違和感無くまろ〜んとした作家さま独特の作風を体感できると思います。
義兄の宏昭と佑一は、小さな頃から親同士の付き合いで仲が良かったが、宏昭の父親が離婚し、夫をなくした佑一の母親と結婚することがきまり、離婚前から二人が付き合っていたことを知った宏昭は、その怒りを佑一に向ける。自分たち親子に向けられた宏昭の根深い憎しみを前に誰も傷つけられたくなくて自傷してしまう佑一。休学してしまった夏休み、別荘で再び巡り会うも、こじれてしまった関係は修復することはできず、壊れそうになっていたところに、晶と出会う。ぶっきらぼうで無口で、愛想のない晶だったが、彼の木訥な優しさが深く傷ついた佑一の心をいやし始める。
宏昭もまた、小さな頃から慈しんだ気持ちとと、父親を奪い取った憎しみの気持ちに揺れていて、優しい言葉をかけることもあるが、酷いセックスを強要することもある。
晶は何もいわずただ佑一の傍にいてくれて、宏昭よりも傍にいたいと思うようになりやっと宏昭と決別することができた一夏の物語。
杉原節が冴えわたってました。素晴らしかったです。
いままで読んだ杉原さんの本のなかでは、『37゜C』の次に好きでした。
しかしなんという文体の美しさ。うっとり酔っ払いそうでした。
杉原さんの文章は、ずーっと読んでいたい感覚になってしまう。ほんとに好きです。
もうさー、杉原さんの文章ならどんなストーリーだっていいって気分なんだけどw、ストーリーじたいも本当に良かった。
少年の傷ついた心が流麗な文章の行間から匂いたってくるような、ステキなお話でした。
イビツな三角関係のお話です。
明るくて人懐こい主人公が抱えてる傷の正体は、長く好きだった相手からの手酷い裏切り。
夏を過ごすことになった某避暑地で、主人公は無愛想な少年と出会う。そして急速に惹かれていく。
でもそこに、自分を裏切った相手がやってきて――。
三角関係を形づくる一点が、主役二人をくっつけるために存在するような、ただの当て馬じゃなかったのが良かったです。
三者三様の思いがきちんとあって、それが噛みあわさることでストーリーが進んでいくのだ。
読後しばらく空中見つめてポカーンとしてました。
キュンキュンというより、ジンワリって感じ。胸がジンワリする作品です。