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解ける様に語られる噺上手・山九亭初助の
語られざる陰の物語。
それは、人と言う玉を磨く為の技術の物語。
男を惑わす艶を如何にして際立たせるかと
言う術を静かに伝える物語。
絶品、でしょうね。
この作品、「座布団」の続編なんですが、CDになった「座布団」を聴いて、どうしても読みたかった本。
「座布団」の本そのものは、オクでむやみな金額になっていたりするので、ほぼあきらめていますが、こちらは、偶々、中古本値段で見つけて、小躍りしながら買って帰った次第。
お話は、一色というルポライターを狂言回しに、初助師匠が亡くなった後(現在)と要の二つ目時代、初助師匠の若い時代と、過去から現在を行きつ戻りつしながら進みます。
初助師匠は、ドラマCDの三木眞をイメージに置いて読むと、凄絶色っぽい。
この続編「花扇」も、是非ドラマCDにしていただきたいものです。
BL小説にあって、剛しいら先生の「花扇」「座布団」は、 耽美小説の代表と書かれていたので、本を探すことから作業して読みました。
結論だけ読めばよいと思って、クリスタル文庫の「花扇」だけ古書店で探して読みましたが、讀んだら、書評で得た期待以上で、やっぱり「座布団」も読みたくなり買いました。
過度な性描写がない、耽美小説と言える名著の一冊かもしれません。活気があった頃の浅草や日本橋界隈の様子が描かれています。
一風変わった噺家、初助師匠の伝記を書きたいルポライター、一色
一色の初助師匠の想いでを聞きたいと要望を受け浅草で面談。
息子代わりの要が、一見冷淡で移り気な遊び人に見えた初助師匠に実は「心の操」を立てた想い人がいたことや、謎の父、非業の死を遂げた母と生い立ちについて、回想しながら物語は進み、最後に弟子の要が師匠の真の姿=誠を貫いた生涯だったことを知る、という展開で進みます。
一色達と飲む場所は、浅草の露店の飲み屋。(吉原があった所、酉の市に近い所だと思う)
文章の描写からだと、牡丹と獅子の入れ墨をいれた寺田は、高倉健のような人?。
初助師匠は想像しにくい、強いて譬えるなら 歌舞伎役者の女役の誰か? 私は、勝手に玉三郎さんを脳内妄想して読みました。
タイトルの「花扇」は、初助師匠が大事にしていた扇子。壊れた口座ようの扇子の代わりに寺田が贈った牡丹柄で、寺田の背から肩にかけて牡丹と獅子の墨に合わせた柄。
物語の最後に、生前のままに保存している初助師匠の家へ赴き、寺田が居なくなった数日後、要が訪れた時の情景を思い出す。
「暫く居候しましょうか」と尋ねると「寂しいのにはなれてるよ」と言った後、いきなり初助師匠が顔を覆って泣いた。(慟哭と書かれていない)
和風の家屋と手入れされた小さい庭に面した縁側、香や茶の香り、しまい忘れた秋の風鈴。
生前に寺田が手入れした滑りの良い引き戸や襖。(音を連想)
・・・亡くなった人の生前の名残を感じる描写が、昔よくある景色でもあるので懐かしさを感じて切ないです。
上野から鶯谷界隈で、文豪が住んだ家がまだ残されています。あの街並みの何処かであったかもしれない純愛物語と思うと、ぐっと胸に来ます。
作者は、ちょっと昔の景気良かった時代の遊びを詳しく調べていて、御座敷遊びの色々が描かれていました。
板橋芸者の子の知人がいます、昔でいう、置屋の子、吉永小百合風のすごく綺麗な女性で、日舞の心得がある人は、指先の所作が綺麗。
初助師匠の何気ない艶っぽい仕草の描写がありますが、生まれてすぐから芸事の中で育った人の身に沁みた芸が醸す雰囲気は独特でなにをしても綺麗。溜息一つでさえ仕草が綺麗でした。
芸者や芸人を座敷に呼んで遊ぶなんて、今できる人はいるでしょうか?
野暮を嫌う遊びの通、料亭が密会の場所に使われたのは、芸者も芸人も心得があるプロで、口が堅かったから。
だから、要が初助師匠の真の姿を一色に書くことを止めたのは、花柳界の常識です。ホステスの蜂の一刺しは、昔の花柳界にはあり得ない、今はどうか知りませんが。
今は不景気で接待禁止もあったり、場を提供する料亭も殆ど閉店、芸人を育てるパトロンも希少です。この本には、戦後の一番日本が活気づいた良い時代の様子が生き生きと描かれていました。
旧版のクリスタル文庫には挿絵が有るけど、最近出た単行本は、表紙の絵は芸人の品格を感じる良いものに変っていますが、何故か挿絵が入っていないので、在庫があるなら絶対にクリスタル文庫が良いと思います。
作者と打ち合わせた作画された挿絵なので、作者が抱いていた人物のイメージを知ることが出来ます。
想った事を書き足して行ったら、奇妙なメモになってしまった。終り。
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耽美派:耽美主義(たんびしゅぎ、英: aestheticism)
道徳や常識を超越し、社会常識や道徳・規範を敢えて度外視しても美意識を追求する、いわゆる「耽美主義」的な考え方が根本に据え置かれた小説を指す言い方。あくまでも美を追求した文学のこと。
耽美派の第一人者と称されるのは谷崎潤一郎。
「寂しい」と「淋しい」の使い分けポイントは【涙】
寂しい:常用漢字 声がなくひっそりとしている、静かでものさびしい・・孤独
淋:水をそそぐ、うるおす、ぬれる、したたる、したたり流れる・・水=涙
泣くという作用は、「眼構造の刺激を伴わずに、涙器から涙が流れることを特徴とする複雑な分泌促進現象」と定義されてきた。
寂しいと淋しいの使い分けより引用
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★この本、昭和の風情がよく描写されています。江戸東京博物館に置いてもらっても良いのじゃないかと思います。
剛しいらさんの文章力には、いつも驚かされます。
シリーズによって、違う方が書いているのではないかと思うぐらいです。
剛さんの書かれるコメディー系は苦手なのに、シリアス系がいつも好みに合うみたいです。
昭和初期が舞台で、落語の噺家の話です。
落語のことがわからなくても、大丈夫です。
難しい話なのではないかと苦手意識があったんですが、読んでみたら話に惹きこまれて夢中で読みました。
弟子の要の口から語られる初助師匠は、じぶんの魅力を十分承知で男を喰う魔性の男のような存在。
芸の方はそれ以上に達者で、シャレが効いた言葉と歯切れのいい喋りで、なにかの語りを聞いているようでした。
その初助師匠の生涯を、あえて別の人の口から聞かせると言うのが、魅力をより増していたような気がします。
子別れ
元兄弟子・広沢寒也(明朗攻め)×落語家・森野要(強気受け)
要の兄に子供が出来て、やっぱり子供が出来た方がいいんじゃないかと邪推されて、いつもの犬も食わない喧嘩だったはずなのに。
寒也の家に、寒也の子供だと言って女が子供を置いて行って実家からは歓迎されるし、子供の父親を奪うのは可哀想だしと、雲行きが怪しくなって。
要の意地と師匠の人生訓がきらりと光る話でした。
花扇
初助師匠には似つかわしくないような華の扇子、おままごとのような夫婦茶碗、ボランティアの刑務所慰問。
全ての意味がわかる瞬間、師匠の人生が迫ってくるようで美しかったです。
物語があって、感情があって、その後に行為がある。
しっぽりと色っぽい和風で耽美な話です。