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くもはばきが描く絢爛な近未来遊郭絵巻。月だけに咲く恋の花が開く。
tsuki no kuruwa ni saku hana ha
地の文も会話文もテンポがよく、言い回しが洒脱で気づけばまげもん町にいるような気持ちでおしまいまで読み終えていました。
挿絵も美しく、本文268ページの展開と、269ページの挿絵が本当に最高にリンクしていて、泣きながら読んでいました。ぜひぜひ、ここはゆっくり読んでいただきたいです!
私はものすごく好きです。素晴らしかった!
BLっちゃBLだけど、攻・余市と受・朔花(としておきます。名は変わっていくので)の話、というよりは、一人の"まげもん"の物語。
場所は月面にある遊郭街。子作り禁止のため、同性を抱く世界。
3部構成で、それぞれ置屋が変わる。置屋が変わると名も変わる。
小笹屋-朔花。
月生まれの朔花は背が非常に高く、気性もなかなか。お茶挽き。
まげもん町の習わしや月面と地球の関係、朔花の人となり、余市との出会い。ベースとなる世界観を知る章。
朔花が付いている竹鶴おいらんの恋の物語。
新川屋-みや稀。
色モノ揃いの置屋でそれなりに売れ始める。
古林という講談作家と出会い、恋を知る。
この、古林がクセ者で良いのよ〜。
色を売ること、生きることの価値観が揺らぐ時期。
余市とは仲良しだけど色っぽいのは無し。
言祝屋-勝山。
大店の花魁になる。
クライマックス、感情揺さぶられまくりの第3章。書くのが惜しい。から読んで欲しい。
とにかく。とにかく読んで欲しい。
生き様…!みたいなのが好きな人には刺さります。
月を見上げ数万年。人類が月に憧れを持って幾許か。
やがて、月面に住むことが可能になった未来の人類のお話。
舞台となるのは月面に作られた、かつての吉原を模した遊廓街・通称まげもん町。色が躍る其処では男が男を抱き、女が女を抱くという。
くもはばき先生による、構想8年にも及ぶ近未来遊廓もの。
月で生まれ月で捨てられた月面残留孤児・朔花。やや気が強い彼が遥か遠い地球に憧れを抱きながら、遊廓街・まげもん町でまげもん(男娼)として生きていく様が描かれています。
ひと穴ひと竿派の方にはおすすめ出来ませんが、ちょっぴり変わった遊廓ものが読みたい方にはぴったりかと思います。
ものすごく正直なことを言うと、慣れるまでは非常に読み辛かったです。未来設定なのだけれど、吉原を模した街が舞台だからなのか…誰も彼もがべらんめえ口調なものですから。
独特の会話の言い回しに慣れるまで少々時間がかかりました。
ただ、こちらの作品は設定が面白くて。
地球から月に移住した者が月で子を産む。しかし、その子は地球の重力に耐え切れないために地球には行けないと。
そうした様々な理由から月に残され捨てられた子供を月面残留孤児と呼んでいる。主人公である朔花もそうですね。
幼い頃は保護施設に。10歳で名を変え遊廓で色子として働きながら、地球と海に憧れる日々を送る朔花。
そんな朔花の「まげもん」としての数年間と共に居るのは幼馴染の余市。朔花と余市の関係性を追いながら、朔花のすぐ近くを淡く通り過ぎていく憧れを追うことになります。
設定は一見奇抜なようでいて、蓋を開けてみればなんだかとても純粋な気持ちと、切ない夢と憧れが詰まっていた作品だなと感じました。
朔花の数年間を追う度に変化していく、身を置く置屋と自身の名前。朔花の周りを思わせぶりに通り過ぎて行く客たち。
海が見たい。人を愛したい。色を売りながら願うささやかな夢はなかなか叶ってくれません。
唯一変わらない幼馴染の余市との関係性も相まって、なんとも切なくもどかしい気持ちにさせられますし、序盤のやんちゃな朔花からの変化にはグッとくるものがあります。心理描写が素敵でした。
と、設定は面白かったのですが、近未来感を期待するとやや首を傾げるかもしれません。スパイス的に近未来要素が入った遊廓ものとして読むのならありかなと。
終盤は昨今の情勢に配慮してエピソードをまるまる変えられたとのことです。私は変更前の落とし所の方が好みかも。
変更後のエピソードも平和的で良いものなのですけれど、ちょっとあっさりと上手くいきすぎかなとも思ってしまいます。余市にはもう少し早めに頑張ってほしかったかなあとも思い…うーん。
やや気になる点もありつつ、やはり朔花の切ない心理描写が良かったので萌寄りのこちらの評価になりました。
今回はバイオ研究で生まれた花を売る花屋の息子と
まげもん町で生きる月面残留孤児のお話です。
まげもんとなった受様が突き出しから花魁となり
唯一とした相手の手を取るまで。
人類が月を見上げて数万年、居を構えるに至り数十年、
新天地の開発バブルは古の遊郭街までも復刻させます。
江戸の信吉原をモデルにしたまげもん町は
昼夜も老若男女も人種も目的も問わず
観光客で賑わっています。
ただ月で生まれた子供達は地球の重力に潰されて
死んでしまうと月面残留孤児が増えすぎ
月での子作りが禁止されているため
まげもん町はかつての公娼街とは違い
男が男に抱かれ、女が女を抱く決まりです。
受様もそんな残留孤児であり
受様は地球の海を見たいという望みを果す為
10でまげもん街の置屋・小笹屋に引取られます。
小笹屋は華奢で可憐な色子を揃えている置屋で
受様も当初は見込み通りの容姿でしたが
にょきにょきと背が伸びた16の今では
無駄飯食いのお茶っぴきとなります。
受様が活躍するのはエンタメ化した「足抜け茶番」の
抜け番くらいなのです。
その日も置屋の主人と大喧嘩を演じて店を飛び出し
大門を目指した受様でしたが
予定の逃走ルートをふさぐ花屋の第八車がいて
目付け役に捕まってしまいます。
結果的に色子の足止めをした人物こそが
今回の攻様になります♪
攻様は幼い頃に受様と同じ月面残留基地の
保護施設にいた事がある幼馴染の友人でした。
攻様の両親はバイオエネルギーの研究者で
月の砂から特殊な花を作る商売を広げ
攻様も家業を手伝っていたのです。
攻様は賞金を使って小笹屋に来てくれますが
攻様は受様を床を共にすることなく帰っていき
まげもんとして生きる受様の矜持を深く傷つけます。
果たしてこんな2人の間に恋の花が咲く日は来るのか!?
デビュー作を書かれたころに書いた同人誌を
改題、改稿、加筆修正し手の商業誌化で
月面で生まれた為に月から出られない幼馴染2人の
近未来遊郭を舞台にした恋物語になります♪
物語は3部仕立です。
1部は受様が最初に身を置いた置屋・小笹屋が舞台で
受様を可愛がってくれた花魁の恋、
2部は次に移った置屋・新川屋にて受様の太客の
戯曲家によって仕組まれた虚実の恋、
3部は言祝屋に住み替えて花魁となった受様が
実業家による受様の身請話から自身の想いを知る最終章
後日談短編がついてのラストです。
それぞれの恋を通して受様が変わっていく様子と
変わらない攻様の恋が描かれているのですが
遊郭が舞台であるが故の理不尽や非情が見られますし
何より受様がべらんめえな男前さなので
お好みは判れるかと思います。
私はそれぞれの矜持と鈍感さで
なかなかな進まない2人の恋路のジレジレさを
楽しいと思ったので面白かったです。