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kikyou
短編の良さが最大限に発揮された作品だと思った。とある一瞬を迎えるために、モヤを一つ一つ晴らして進んでいくような、丁寧な描写に引き込まれる。
現在軸で見ればほんの短い間のことで、失恋相手に再会してくっつく話、と一言で終わってしまう内容。だがその瞬間を感動的にしてくれる構成で、そこに辿り着いたときには、到達感に似た感覚があった。
八年ぶりの再会を果たしたショーンとミッチ。現在と過去のさまざまな事情が明かされ、小さな駆け引きめいたものを楽しみつつ、お互いが同じ場所に向かっていく。親族が全面バックアップ体制なのが微笑ましい。
ラストはエロと連動した心理描写で、両方が一番盛り上がったところでスパっと終了。そして読後には邦題の「帰郷」からたくさんの意味を感じ取れる、この余韻も良い。
何度か出てきた「座標」という単語の使い方もとても好きだった。
ってまた言ってしまった。
モノクロームロマンスの電子短編小説。
8年ぶりに2週間の休暇で故郷のオーストラリアに帰郷したNASA勤務の地質学研究者・ショーン。
故郷で再会するのはずっとずっと恋している相手・幼馴染のミッチだ…
さて、この作品の空気感はやはり日本の小説群とは大きく違いますね。
ショーンの家族は全員、両親姉弟甥っこに至るまで全員が、ショーンがゲイでミッチが好きなことも知ってて、おせっかいにも大応援までしているのです。
日本的感覚から言うとこんな風な「公認」は痛し痒し…
当時ミッチは他の男性と付き合っていてショーンは告白せずに諦めていた、またNASAでの勤務はショーンの夢だった。
そんないきさつがあっての今の再会なんだけど、ミッチはすでに恋人とは別れ済み、ショーンが地元の企業から引き抜きのオファーがある、という設定で、ミッチがショーンにNASAに戻らず自分と付き合って欲しい、と口説いてくるわけです。
ミッチだけでなくショーンの家族もみんながショーンが地元に帰ってきて欲しいと願っている。
この辺の家族愛ってやっぱり外国の感覚なのかなぁ。
ショーンが愛かNASAか、さあどうする⁉︎…というのは読んでもらうとして。
私はこの家族観がなんか合わないし、夢はもう8年働いたしいいだろ?みたいに思われてるのも引っかかった。
救いは引き抜こうとしている地元企業が高給という事ですね。