過去のないαと未来のないΩの永遠

kakono nai alpha to miraino nai omega no eien

過去のないαと未来のないΩの永遠
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神33
  • 萌×28
  • 萌3
  • 中立2
  • しゅみじゃない3

--

レビュー数
9
得点
208
評価数
49
平均
4.3 / 5
神率
67.3%
著者
片岡 

作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます

イラスト
yoco 
媒体
小説
出版社
心交社
レーベル
ショコラ文庫
発売日
電子発売日
価格
ISBN
9784778135706

あらすじ

αで人気俳優の瑛理は大のΩ嫌い。Ωは短命だが、性交によってαの寿命を奪う忌まわしい存在だからだ。だが舞台の稽古中に衣装が切り裂かれ、瑛理はΩであるデザイナーの蓮と出会う。瑛理は蓮を辞めさせようとするが、蓮はαの瑛理を恐れない。ある日、瑛理が渋々デザインを褒めると蓮は心から嬉しそうに愛らしく喜んだ。蓮を見る目が変わり実力も認めた瑛理は、彼の寿命を延ばしたいと願ってある提案をするが…。

表題作過去のないαと未来のないΩの永遠

29歳,モデルで人気俳優,Ω嫌いのα
28歳,デザイナー,訳ありのΩ

レビュー投稿数9

オメガバース 作品トップレベル!

あらすじは、他の方のレビューにもあるので省略しますが、もう本当に最高!!簡単にオススメポイントを3点レビューします!

①後半にかけての秀逸な伏線回収!
大抵の小説は、中盤あたりで結末までわかってしまう事多いですが、この本は本当にラストまでドキドキハラハラしました!そして、序盤から中盤にかけて、色んなところに仕掛けられた伏線が、ラストにかけてどんどん回収されていく、、、普通の小説としても面白い、しっかりとしたストーリー構成!!伏線回収後味スッキリが好きな方、ストリーも重視したい方にオススメです。

②不憫健気受け好きは必読!
オメガバース好きな方は、不憫受けが好きな方が多いイメージですが、受けの蓮くんはThe不憫受け!ただ、不憫なだけじゃ無い!!とにかく健気!!!!とりあえず不憫健気受けが好きな人は読んでください。

③美しい絵
言うまでもなく、yoco先生の絵。麗しや。

オメガバース以外に、この小説独自の設定がいくつかあります。(漢字が多い手術の名前?とか)ですが、内容自体は非常に簡単で理解しやすいです。オメガバースの基本設定を分かっていれば、初心者の方でもスラスラ読めます。そして、オメガバース作品マスターの方には、逆にそれがスパイスとなって、楽しんでいただける作品だと思います!

5

めちゃくちゃよかった!!!

オメガバースものはそこそこ読んでいるけど、
ここまでΩが可哀想な設定の作品は初めてでした…

最後をのぞいて、全編通して受けの蓮に対する周り(攻めの瑛理含む)の反応だったり態度が、まぁひどい。完全にΩが差別対象になってる設定です。

そんな周りのことなど気にせずコツコツ仕事に打ち込む蓮の姿がいじらしくって…
だからこそ最後の展開に心からよかったと思えました。

時間をかけて読もうと思っていたのですが、気がつけば一気に読み切ってしまいました。

yoco先生が描かれた挿絵が作品の雰囲気とも合っていて、表紙は最後まで読んだ後見返すとグッとくると思います。

片岡先生の作品は初めて読んだんですが、他の作品も読んでみたいとおもいます!

6

私史上最も過酷なオメガバース

αで俳優の瑛理×Ωで衣装デザイナーの蓮。私史上Ωに最も過酷なオメガバースでした。
Ωが迫害される世界、瑛理目線で話が進みますが、瑛理は勿論、周りも蓮への当たりがきつい。そんな状況を淡々と受け入れて、ひたすら仕事に取り組む蓮がかっこよかった。そんな蓮に瑛理は惹かれたんだと思う。
周りの妨害があったり、瑛理が違和感を持つ中で過去が明らかになり、蓮の悲痛な覚悟に泣きました。どうにもできない状況で、それぞれが大事な者を守りたかった。でも歪みがあるから幸せにはなれない。
瑛理が真実に辿り着いて、想いを貫いてくれて本当に良かったです。
ラストのアリサのシーンが印象的、心に沁みました。

yoco先生のイラストが作品にぴったりで、作品を読んで泣き、イラストを見て泣き。

心をぎゅっと掴まれるような、素晴らしい作品でした

6

80頁増加 既刊本の中で一番読後感が良かった

著者は、一年か二年ごとに1冊ずつ商業本を出していて
yoco先生や、みずかね先生といった実力派絵師が挿絵を担当、
出版社がよっぽど力を入れている作家なのだと思う。

未来:Ωの寿命 / 過去:記憶操作
この作品は、既刊本の中で一番読後感が良かった。大満足。

著者のパターンは、”痛ましい過去を持つ主人公が頑張りぬいて 結末ハピエン”。
長編向きの内容を無理に1冊にまとめて、いつもどこか端折られて残念だったけど、今作は80頁増加。

▶オリジナルバース設定:Ωの寿命は30才。
「Ωは、生命力をαから得る」「αは、Ωに寿命を与え短命化」・・命と引き換えの愛。

▶小説冒頭は、誰かの葬儀の後、「連が作った喪服」の話題
・・この伏線回収は「30年後」にある。
前半重い展開だけど、ハピエンなので頑張って読んでみて。

続いて瑛里が演ずるシェイクスピアの演目に沿って展開。
「タイタス・アンドロニカス」:言葉を封じる 
「真夏の夜の夢」:
「オセロ」:イアーゴの台詞。邪推の毒。

---

●最上瑛里:α 29才 :過去の記憶がない。
「Ωはαの寄生虫」だと嫌う、モデルで俳優。
185センチ以上の長身、瞳と髪は茶色。
Ωの漣に衣装を担当され憤慨。

●最上雄一郎:α 政治家 瑛里を溺愛する父親。

●榊 正敏:α嫌いの衣装担当 二人の過去を知る人。

●久瀬 蓮,:28才 Ω
デザイナー。 表紙の衣服を抱く人物。薄い色の瞳と白い肌、金色の髪。
榊正敏の優秀なスタッフ、最上瑛里の衣装担当。
15才の時、瑛里から命を奪いたくないと、番の瑛里と関わりを絶つ。

▶違法の「側頭葉認知機能除去手術」:
特定の記憶を消去する医療。記憶障害の副反応がある。
瑛里の父親が手配。瑛里から連の記憶を消す。
担当した菱川医師は逮捕、獄中死。

●鴨原華南:α一家の中のβ。瑛里の婚約者。父は、警視庁次長。

●最上瑠衣:一族に愛されて育った、瑛里と蓮の息子。

●アリサ:蓮の衣装作成のアシスタント。

---
・30years later(30年後)・・ 「三番目の夢は喪服」
・SS:それから少しあとのこと

2

3冊目が1番好きでした!

「いつかあなたに逢えたなら」「善き王子のための裏切りのフーガ」とこちらの作品で3冊目になり、前作から1年半あまりの新作でしたがこの作品が1番好きでした。

人気絵師さんばかりに挿絵を描いて貰っているので、とても期待されている作家さまなのだと思うのですが、今作でその実力を発揮していると思いました。

どちらかと言うと作風は決して明るくなくて、時には読むのが辛くなる描写が多々あります。なので木原音瀬先生辺りを好まれる方にはハマるのではないかと思いました。

今作では冒頭の初老の女性と青年のシーンが、巻末の「30 years later」で昇華していて見事だとしか言いようがありませんでした。

こちらのお話ですが蓮がオメガとして酷い目に遭って来たからこそ、結末に安堵し涙が出るのだと思いました。

瑛里がどんな態度を取ろうが一貫して仕事に誠実であろうとする蓮が強くてとても魅力的な人物なんです。どうして蓮が強い気持ちを保ち続けられるのか、瑛里が何故オメガ嫌いなのかは後に秘密が明らかになります。

前半の各所に散りばめられたヒントに「多分こうじゃないのかな?」と想像出来るのですが、その答え合わせをする為に読むのが凄く面白いのです。もちろん瑛里と蓮のキャラも魅力的でした。他にも蓮の師匠の榊とかアシスタントのアリサも魅力的なキャラでした。

オメガを憎み蔑むとても未熟な世界ですが、中には己の考えを改め悔やむ瑛里の父親のような存在がいることが救いでした。

α至上主義の家庭に産まれたβの悲劇も気になりました。

11

忘れない

yoco先生おっかけで購入。多分忘れない一冊だなと思うのですが、このお話の世界が好きかと言われると絶対ヤダなので、萌2にしました。オメガの扱いが酷くても平気な方限定で、シリアス話が大好物な方にオススメです。本編280頁ほど+あとがき。

ベテラン演出家の企画公演に参加している舞台俳優の瑛理(えいり)。ある日本番直前に瑛理の舞台衣装が切られたと騒ぎになったのですが、その対応に当たったのは漣というオメガ。オメガが大嫌いな瑛理は文句を言うのですが、聞き入れられず・・と続きます。

攻め受け以外の登場人物は
榊(舞台の衣装責任者)、アリサ(蓮のアシスタント)、与良(攻めのマネージャー)、華南(かなん、モデル、瑛理の婚約者)、攻め父ぐらいかな。華南がなあ・・・

++苦手だったところ 好きだったところ

オメガは通常30歳ぐらいで内臓がいかれて死に至るって設定。ただし「アルファと交わればホルモンバランスが安定して長生きできるのですが、代わりにアルファがオメガと性交することで寿命が短くなる」っていうのもあって、なんじゃそりゃ!?です。オメガが圧倒的に悪者になっちゃうんです。だからオメガって判定されたら人権ほぼ無し状態。ひどい。まあ吸血鬼みたいな存在に見做されているんですよねえ。でも自分の子供をオメガに産みたくって産んだわけじゃないのに、オメガになった途端、人扱いされなくなるなんて・・・母親だったら発狂する。やっぱりこういう社会はどうしてもイヤで受け入れがたい。

ってところが苦手でした。他の本でもオメガが酷い目にあうのは読んでいたのに、この本のがどうしてこんなに嫌なのかは、自分でも今一つ分からないんですけど。

救われたのは、そんな状況なのに、なんとか見出し、本来落ち着くべきところだった関係に戻り、本当に幸せそうに過ごす二人がいたから。二人穏やかにカレーを食べながら「結婚するか」と切り出すところが何とも沁みました。

好きな人と一緒に過ごせて最後を看取れるというのはうらやましい限りです。きっと回り道した分、穏やかな時間が多かったんだろうと思うのです。二人の幸せそうなところを見て「まあ」と涙ぐむアリサとシンクロし読み終えた一冊でした。

ドシリアスでちょっと変形オメガバ大丈夫な方でしたら是非。おススメしたいです。

9

めまぐるしいラスト

施術によって記憶を選んで蓋をすることが出来るほどに医学が進んでいる現代に近しい世界観でのお話。
記憶に蓋をすることで、欠けた記憶の整合性を取るために気が狂うひとも多く出た為、人道的倫理的観点から見て取締の対象となっています。
蓋をすることが出来るということは、別のものを代わりに埋め込むことも可能で、これは更にもっと危険視されており、偽りの思想を植え付けられることで人格に問題が出ることもあり、過去に闇医者たちが一斉摘発された事件も。

そこまで医学が進化を見せた世界にあって、寿命が30年と定められているのが、Ωです。

番がいない、αと交わることもないΩは、華奢で虚弱になりがちな身体的体質と発情リスクにより揃って短命で、成人前のバース分岐が起こってから10年そこそこで命を落とします。

そんなΩが生き延びる方法はただひとつ、αとの性交で精を受け、生命力を譲り受けること。

αは精を与えることで、寿命を分け与えることが出来ます。平均寿命90年のαは、平均寿命30年のΩと寿命を分け合い、両性平均寿命60年、と。現代の平均寿命から見れば、それなりに早逝と言えます。

それ故、Ωはαの命を搾取するものとして、忌み嫌われ拒絶されることが多く、本作の受様も例に漏れず、悪意に囲まれながらも、夢を抱きながら、定められた余命の中を生きています。

舞台を愛し、モデル出身でありながら舞台俳優として成功した攻様の舞台衣装を作ることが夢の1つ目であった受様。
人一倍努力を惜しまず、ストイックに技術を磨き、正当な評価を得て、仕事にあたっています。
けれども、Ωという色眼鏡で判断し、受様を妬む同僚達の嫌がらせは酷く、開幕間際になって、攻様の衣装が引き裂かれる事件が起きます。

その事件をきっかけに、攻様は受様と出逢います。

かねてより、アンチΩの考えを持つ攻様は、Ωの受様が自身の衣装を担当していることに嫌悪感を抱きます。
衣装が引き裂かれた事件も、真犯人への憤りの前に、Ωが関わったこと自体が原因、と、些か頭のかたい論調で責める言葉を投げ掛け続けます。

そんな、Ωだというだけで全てを嫌悪するような攻様が、「仕事にストイックで、誠実な対応を崩さず、最上の成果を見せる受様」をゆっくりと知っていき、凝り固まった嫌悪を崩していく過程がとても丁寧で良かったです。

すべきこと、したいことを、余生の限られた時間を無下にすることなく生きている受様の姿を、攻様を通して読者も知っていきます。ものすごくかっこいい受様です。

頑ななまでにΩと言う性別に拘り、斜に構えて受様を見る攻様の視線ではありますが、アンチΩ思想を持たない神視点の私からすれば、どんどこどんどこ上がる受様の好感度ですよ……!

受様の人となりがわかり、攻様の気持ちが受様へと傾き始めた頃、そろそろ読者はこの二人の本当の関係性に気づきはじめるだろうと思います。私自身は、タイトルから予想していましたが、その予想が当たっていた確信を得ていきました。

ここで、受様に視点が移り、過去が見えはじめます。

「それ」が正しいと判断した受様は、相手の気持ちそっちのけで決断するなど、若干の頑なさはありますが、そう決めて、選んだその選択は一途な愛情の証明で、ここが一切ぶれないことが本当に潔くかっこいい!
その選択をするまでの迷いや苦悩がもっと見たかった気持ちもありますが、それまでもここぞの選択は自分の判断だけで下してきた過去も書かれているだけに、無理矢理感や唐突感はなかったです。

自分が想う相手に対する、自分が考える最適を選ぶ、ある意味では傲慢な受様を、健気と取るか、自己満と取るかは、読み手によって分かれそうですが、個人的にはそのぶれなさが良かったです。

攻様が受様に惹かれる過程と、受様だけが覚えている攻様との過去を、じっくりと丁寧に描いてくれていただけに、二転三転が起こるのが余りにも終盤に怒涛過ぎた印象です。
転、結があまりにもめまぐるしくて、丁寧の過程との対比があまりに大きかった。
個人的に、二人が二人で生きることを決めたあとの事件と、その顛末は、その文字数の倍は使って展開させて欲しかったです。
後書きで80ページ削ったようなことを書かれていましたが、その80ページがここのことなら、その80ページは必要だったと思います。
丁寧に関係を描いてくれていただけに、最後の事件は駆け足過ぎて若干蛇足にも思えたのだけが残念でした。

受様の夢の結末について触れていたのが、個人的にはとても良かったです。二人の人生を見届けることが出来て良かった。

10

感情が揺さぶられたという意味では神評価

タイトル・表紙・帯
どれもが切なさを予見させるようになっていますが、
読後にじっくり見返すと更に深みが増しました。

評価はものすごく迷います。

泣ける物語としては迷うことなく神一択。
前半の攻め視点で散らばった欠片が、
後半の受け視点ですべて繋がって全容が見えてくる。
これには、ただただ号泣でした。

この作品のオメガバースには独自の設定があります。

・Ωは30歳前後で死ぬ
・αと性交によって寿命が延びる
・Ωと性交したαはΩに命を与えた分、寿命が短くなる

個人的にこの設定がどうしても受け容れられなかった。

αとΩには番というシステムがあるけれど、
この世界ではαにとって何一つメリットがありません。
【Ωはαの命を奪う相手=敵】という認識が一般的で。

αを脅かすΩは虐げられて当然な社会になっており、
社会に弾かれ、発情は1人で耐え、30歳で死んでいくΩ達。
なんでそこまで追い詰めた設定なんだろうかと悲しくなる。

また、他人の寿命を奪うというのもどうなんだろうか。

愛する人と抱き合う度に相手の命を奪うんですよ?
セックスシーンが数回ありましたが、
純粋に"愛し合えて良かったね"って思えないんですよ!!!(;ω;)

(発情した受けが「もっともっと」となる度に、)
(え?大丈夫?ってスン顔になっちゃうっていう…泣)

持てる者が持たざる者に分け与える。
愛があるからこそ攻めは迷いなく自分の命を削る。
愛する人を守るための行為は非常に尊いものです。

実際、物語を読んでる間はすごく泣きました。

攻めに命を削って欲しくないから…と身を引いた受け。
死んでしまう30歳までに叶えたい夢を支えに、
後悔を残さないように生きている胆力に感動します。

攻めも攻めで色々あって何度も受けを傷つけるけれど、
受けに生きて欲しいと願う気持ちに心打たれます。

でも頭の片隅で"この設定必要?"と思えてしまって。
(こんなの言い出したら元も子もないですが;)
(物語は物語と割り切ればいいのはわかってる)

愛し合う2人にはセックスが純粋な行為であってほしい。
やはり私は、独自設定をどうにも嫌悪してしまいます…。
あと記憶操作もね。割り切れない気持ちが残る。無理。

設定を抜きにすれば萌えツボにハマるお話でした。
表紙で受けがスーツを抱きしめている意味を知ると泣けます。

他、攻めと受けが切磋琢磨する関係がとてもイイ!
自分の能力に傲ることなく邁進を続ける力・強さ。
仕事へのプライドなどすごくカッコ良かった!!!

あと個人的になんですが、
【受けを嫌う攻め】に非常に萌える質で…(∩´///`;)
嫌いからの変化だったり、過去が明らかになったり、
もぉぉぉめちゃくちゃ萌えましたね!!!!(大の字)

評価は文字通り『中立』で。
のめり込んで読んで号泣したのも事実で、
感情が揺さぶられたという意味では神評価の作品です。
しかし独自設定が生理的に合わず嫌悪感が出てしまい…。
評価下げてすみません。

15

切なくも深い愛情を描き切った神作品。

作家買い。
片岡さんの新刊はオメガバものです。

片岡さんは切ない系のお話を描かれる作家さまのイメージが個人的に強いのですが、さらに今作品はオメガバースものということもあるのでしょうか。そのイメージを損なうことのない、切なく、けれどん深い愛情お描いたお話でした。

その世界観をyocoさんが描いてくださっていて、もうもう…!と言葉にならないほどの切なさと、そして萌えに終始襲われながら読破しました。

ということでレビューを。ネタバレ含んでいます。ご注意ください。





人口のほとんどはベータ。
アルファはそのうちのたった2%。オメガも、同じく2%。
その少ないオメガは、多くの人から嫌われている。

オメガは発情期があり、その時はアルファを性的に誘惑し襲わさせる(見方によってはオメガがアルファを襲っている)ことが、その原因の一つ。

そして、オメガは発情期がなくなる30歳くらいになると内臓が衰えてき、そのまま死に至る。が、それを回避する方法が一つだけある。
それは、アルファの精液を摂取すること。が、それと引き換えに、アルファは少しずつ命を削られ、最終的に早死にしてしまうのだ。

つまり、オメガはアルファの命を奪って生きながらえる、という点で、オメガは嫌われ、侮蔑の対象になっているのだった。

という、少し特殊な世界観を孕むお話です。

主人公はアルファの瑛理。
人気俳優で、家柄も良く、見目も良い彼は今人気絶頂の俳優だ。そして彼は大のオメガ嫌いを公言している。

そんな彼は、大きな舞台を控えていたある日、オメガと遭遇してしまう。
舞台衣装を切り刻まれるという事件が勃発。そして、その衣装を治すためにやってきたのがオメガの蓮だった。オメガに自分の衣装を触られることすらおぞましく感じる瑛理だったが、それをきっかけに蓮とのやり取りが始まる。

そして、蓮を少しずつ知っていくうちに、オメガに対する差別、そして蓮に対する感情も変わっていき―。

というお話。

オメガバものは作家さまによって、あるいは作品によって若干細かい設定が異なりますが、今作品はオメガはアルファの精液を体内に取り込まないと死んでしまうという、ちょっと独特な設定のお話です。

読み始めたとき、瑛理のオメガに対する差別、蓮に対する暴言、などなど、なんて酷い男だ!と思ったんです。その一方で、どれほど侮蔑的なセリフを言われても、自身の仕事にプライドを持ちコツコツと仕事をこなす蓮に対する好感度は爆上がり。

傲慢でクソでクソな攻めさんが、受けさんの想いに触れ、そして更生していくお話かな?

そんな風に予想しながら読み進めましたが。

えー。
えー?そんなお話?

という、二転三転するストーリーに翻弄されっぱなしでした。

蓮は28歳。
つまり、彼の寿命はあと1,2年くらいしか残っていない。
短い生涯を、己の信念に従い懸命に生きる、そんな連がカッコよくて。けれど、彼の清廉な想いは、もっともっと深いところにある。何を犠牲にしても、彼には守りたいものがあった。

そして、緻密に紡がれていくストーリー展開も素晴らしい。
あちこちに巻かれた伏線を、少しずつ回収しつつ進む展開で、あ、あれはこういう意味か―!と分かった時の感動と言ったらなかった。

そしてこの素晴らしいお話に、yocoさんが色を付けて描いてくださっているという眼福さよ。相乗効果で萌えがストップ高です。

一番最初に、どなたかの葬儀があったのだとわかる描写からスタートします。
これが最後に繋がっていく。いやー、うまいです。

あともう一点。
オメガバものはアルファ、そしてオメガに目が行きがちですが、ベータにはベータの苦しみや葛藤があることもきちんと描かれています。

その一方で、中立なベータだからこそ俯瞰的に物事を見ることができるのだということも。
差別的に、あるいは色眼鏡をかけたまま、自分自身で考えることなく世間の意見に惑わされることの愚かさも。

色々なものがぎゅっと詰まった作品でした。
個人的に、蓮の上司(というか師匠と言った方が正解か?)の榊さん。彼がめちゃんこドストライクキャラでした。本当の優しさを持った、強い男性でめちゃめちゃカッコよかった。

読後、yocoさんの描かれた表紙を見ると、これがまたグッとくる。
蓮が、どんな想いであの衣装を抱きしめているのか―。

キャラ良し、ストーリー良し、設定良し、さらに挿絵良し。
オメガバものらしい切なさもありながら、そこに片岡さんらしいエッセンスが盛り込まれた良作。

文句なしの神作品です。

11

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