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ayakashi chouto kieta hatsukoi
片想い相手への報われない恋に、苦しむ主人公。
「人の心を食う」と言われる美しい蝶に、いっそこの気持ちを食べてくれたらと願うんですね。
すると、本当に恋心が消え失せて・・・。
と言った、ちょっぴり不思議な現代版ファンタジーになります。
私は海野先生の大ファンでして。
今作も当然チェックを入れた上で、勝手にラブコメを想像して楽しみにしてたんですよ。
や、あらすじ等から、受けの一途な恋心の上に胡座をかいて、好意を当たり前に受け止めていたズルい攻め。
そんな彼が、突然受けから興味を無くされ「え・・・? ええ?」って感じでショックを受ける。
そう、ムカつく攻めが痛い目を見るお話ね!的な。
こういう、要は攻めザマァ、大好きなんだけどー!的な。
が、内容的には確かにその通りなんですけど、実際はラブコメってよりどちらかと言うとシリアス寄りだし結構苦しいお話なんですよね。
でも、めちゃくちゃ深くていい話なんですよー!
なんと言うか、人を好きになるって苦しいし、怖くもあるよね。
でも、とても素敵な事だよねと。
えーと、そもそもですね、主人公である朝陽ですが、重度の昆虫オタクで変わり者なんですよ。
で、周囲から浮いてしまうそんな彼を、唯一受け入れてくれたのが攻めとなる国吉。
ただしこの国吉、誰に対しても平等に「優しい人間」でして、逆に言えば特別な相手が一人も居ないんですね。
こう、朝陽の「大好きだ!」と言う告白に対しても、いつも笑顔で流してって感じで。
で、そんな彼への片思いに疲れてきていた朝陽・・・。
繰り返しになりますが、私は攻めが痛い目を見るのが大好きなんですよ。
気持ちを失ってからの朝陽ですが、奇行が無くなった事で周囲とも上手く付き合え、更に国吉の言動に振り回される事も無くなってと、全てが順調に見えるんですよね。
で、逆に国吉ですが、朝陽から急に相手にされなくなってショックを受けと、その毎日は精彩に欠ける。
普段ならこの展開って大好きでして、意地の悪い喜びに浸ってるハズなんですよ。
ハズなんだけど、今回は読んでてひどく切なくて。
や、何でか考えたんですけど、朝陽の告白を受け流しとズルい事を繰り返してるクセに、国吉の言動って朝陽への深い愛が感じられるんですよ。
どんどん感情を無くして人形のようになって行く朝陽に対して、必死で働きかけ続けてって感じで。
また、海野先生と言うと、しっかり掘り下げた心情描写が素晴らしいと思うんですよね。
国吉の本当の気持ちと言うのは後半で分かりますが、だからザマァ状態の時に嬉しいどころか切なく感じたのか!と。
彼は、思ってたよりずっと不器用だし、臆病だったんだなぁと、ここでガラッと印象が引っくり返ると言うか。
そして逆に、主人公の強さに感嘆すると言うか。
えーと、テーマと言うのがですね、「感情」がある事が幸せか否か?になると思うんですよ。
最初こそ、感情を無くした事が幸せだった主人公。
それが、やがて失ったものの大切さに気付き、後悔する。
何より、大事な人の為に取り戻したいと強く願う。
こう、すごく心を打たれて。
もう、めっちゃいい話ー!
とにかくめちゃくちゃいい話ーーー!
ちなみに、毎回思うけどオチが秀逸でしたよ。
「そう来たか!」と、思わずニヤリとしましたよ。
その後の展開には、萌え転がっちゃいましたよ。
朝陽、それは可愛いすぎるわーーー!と。
そう、気持ちってどんどん溢れ出るものなの!と。
若干、と言うかかなり攻めはヘタレだと思うんですよ。
あと、どちらかと言うと結構切ないと言うか、重めのお話だと思います。
でも、めちゃくちゃ心に響く素晴らしい作品だと思う。
シリアス系が苦手じゃなければ、ぜひ読んで。
心の準備が出来なくてなかなか読み始められなかったのですが、読みだしたら止まらない!ハラハラで一気読みでした。
もう序盤の朝陽が泣けて泣けて。コミュ障空気読めない個性的すぎる浮いてるマニアに、笑顔で話を聞いて楽しそうに付き合ってくれる人が現れたんだもん。そりゃあそうなるよね。
国吉が好きすぎて辛いのも可哀想で。
カマキリみたいな国吉に恋をしてしまった朝陽は毎日ずっと国吉のことで頭がいっぱいで視界に入ろうと必死で毎日恋心も更新されて。
こんなに苦しいなら蝶が朝陽の想いを食べてくれたら…。
その後の朝陽が自分の変化に戸惑いはするけど、わりと人並みに青春してて逆に良かったのでは?なんて思っていたら…。
朝陽の変化に苦しむ国吉の本音や事情。
国吉がそんなふうに考えていたなんて…。
朝陽は恋情がなくなってもやっぱり朝陽で。
そんな朝陽だから国吉もどうしても頑張りたくて。
狭い空間でイジメられたら無視されたら、二人のやり方は違ったけど高校で偶然交わって救われましたね。
まるごと受け止めてくれる人がいてくれたら、好きにならずにいられないなあ。
クライマックスから最後までもとっても良かったです。
好きなものがあるから頑張れる、そうだよね!
新たな作品との出会いを楽しみに私も生きてます。
重度の虫オタクの受けと、聞き上手な天然人たらし攻め。受けが長年攻めに片思いしているんだけど、不思議な蝶に受けの心が食べられてしまいその気持ちや、様々なことへの興味関心が薄れていきどんどん無気力状態になってしまう話。
受けにとって攻めは自分の話に付き合ってくれる特別な存在だけど、攻めの周りには他にも沢山の人で溢れていて皆に平等に優しい。攻めはなんて罪な男なんだ…。その割には受けが攻めへの関心を失うと急に追いかけてくるし、何故???って感じだったんだけど理由がわかってくると攻めの状況がとても切ない。
目に見えて受けの気持ちが日々離れていくの見てるのつらいし、攻めの理由もわかるけど、やっぱずるいよ〜という気持ち。
記憶はあるのに、そこに感情を伴わなくなっていく描写がとても印象的だった。最初は脱変人、脱片思い、で日常に支障はないし寧ろ解放されたような気持ちだったのにそれがどんどん恐ろしく思えていく展開が良かった。
そしてちょこちょこ挟み込まれる虫の豆知識も面白かった。アリの巣の崩壊の展示は昨年実際に多摩動物公園でやってましたね。そこに日参する受けの姿がありありと想像出来ました。
昆虫オタクの朝陽は
昆虫と高校からの友達の国吉の事が大好き。
だけど好きオーラを日々出しても、国吉には本気と捉えられなくて切ない片思いをしています。
国吉の家は神社で、裏山があります。
そこで朝陽は光る蝶の群れを発見します。
国吉からその蝶に“心を食われる”と忠告を受けますが
昆虫好きの朝陽は何度も見に行ってしまい、本当に心を食われてしまいます。
明確に心を食われる描写はなく、あやかし蝶も幻想的で怖い感じはないです。
日常から突然少しずつ何かが抜け落ちていく感覚や、好きなものを好きと感じなくなってしまっている朝陽の心の中の世界が丁寧ですごくわかりやすかったです。
記憶はあるので、今までの自分や辛かった葛藤も憶えています。
だからこそ、今までの必死だった気持ちと、空洞になってしまった心の変化が明らかですごく切なかったです。
昆虫や国吉に興味がなくなってしまった事が、すぐに言動に出た朝陽。
大学の同級生や、何より国吉が驚きます。
博愛主義者な国吉は、来るもの拒まず去るもの追わずなのですが、何故か朝陽には必死に今までの気持ちを取り戻してもらおうとします。
必死な国吉と、恋愛感情が全くなくなった朝陽。
今まで朝陽の気持ちに気付かないふりをしていた感のある国吉が、今更必死になっても、、、とは思えない必死で優しい国吉。
ほんと切なかったです。
最初は変化に不便を感じなかったのですが、徐々に心が噛み合わなくなって苦悩する様子も描かれています。
国吉が諦めないでいてくれたことで朝陽は救われて、ほんとに良かったです。
偏りがなく上手く人間関係を築ける事も大切ですが
周りを気にせず何かに夢中になれるって誰にでもできることではないし、強い人だからできることなんだな
と思わせてくれました。
心理描写を深く描かれていてとても素晴らしかったですし、切なさや安堵感、共感を感じられてほんとにいいお話でした。
全体の萌えは少ないかもしれないですが
最後の国吉と朝陽が可愛いくて萌えまくりました!
2回目になりますが、ほんとにいいお話でした。
どうなるの〜とページを巡る手が止まらなかったです。
ナルホド、そういうことか。
さすがというか、海野先生やっぱりスゴい(≧▽≦)
受け様は、昆虫が好き過ぎる朝陽。
攻め様は、聞き上手で無類の人たらしの国吉。
高校で出会い、同じ大学に進んで、朝陽は“虫と国吉を発見する目ざとさは右に出るものはいない”と友人達に言わしめている日々。
受け様の朝陽視点で進むお話で、冒頭から朝陽の国吉への愛が濃ゆい。
全身で国吉への愛が溢れてて、もう〜国吉が大好きなんだねぇ、とにっこにこしちゃう( ´∀`)
でも、国吉の方は、来る者拒まず去る者は追わずのスタンスで、朝陽だけでなく、皆に公平平等。
朝陽は、好きだと伝えても流されてしまい、国吉の特別にはなれない、と苦しい想いも抱えている。
そんな中、朝陽は“心を食う”と謂れのある蝶と出会い、本当に好きだという気持ちをなくしてしまう。
朝陽の興味を失って、驚愕と焦燥の国吉の様子に、攻めザマァな気持ちで、ふふふーん、とニヤついてたのですが。
朝陽自身も、自分の中の空洞が悲しく苦しんでいて、攻めザマァを楽しむ気持ちどころではなくなり。
どうなっちゃうの~なんとかなるの~、と私もドキドキハラハラでした(´゚д゚`)
ナルホドな展開に、さすが先生!
朝陽の偏執的であっつい感情を食べた蝶は、さぞ美味だっただろうなぁ、なんて。
“好き”っていう気持ちは、元気やヤル気の元で、明日への活力になるんだよなぁ、としみじみ実感しちゃいました。
私もこれからも好きだという気持ちを大事に、BLを楽しんでいこう└( ^ω^)」
イラストはCiel先生。
表紙から雰囲気あってステキ。
口絵も美しいです(*^^*)
今回は誰にも好かれる大学生と昆虫オタクな大学生のお話です。
攻様と昆虫が大好きな受様がご神体とされるな蝶と関わり
不思議な体験をする顛末。
受様は虫と攻様が大好きな大学生です。
朝6時に起きる受さまが最初に目にするのは
天井に張ったA1サイズの甲虫60匹のポスターで
次に目にするのは
昆虫図鑑や小さな標本が並ぶ本棚に置かれた
高校の卒業式に取ってもらった攻様との写真です。
攻様は受様の同級生で頭が良くて知識の幅も広く
笑顔が素敵で面倒見がよく誰にでも好かれる好男子です♪
加えて無類の聞き上手なため彼の周りには
自分の好きなものに情熱を傾ける人間が集まります。
受様は幼い時から虫が好きでそれ以外の趣味がなく
小学生の時に虫好きだった友人との仲を拗らせて以来
高校1年生まで周りに解けこめずに過ごしていましたが
高2で同じクラスとなった攻様と友人なった事で
文化祭で昆虫相撲の実況中継イベントをこなし
他の級友にも声を掛けられるようになったのです。
やがて受様は攻様に恋心を抱くのですが
彼女もいた攻様にとって受様だけが
特別な存在ではありませんでした。
なので受様は卒業を機に諦めるつもりでしたが
攻様は同じ大学の機械工学科に合格していて
受様は想いを捨て去ることができません。
そんな受様でしたが
攻様の実家である国吉神社の裏山で
神社の御神体とされる蝶と遭遇した事で
ある不思議な体験をすることになります。
攻様は「あの蝶は人の心を食う」と言い
「俺は食われた」と囁きます。
果たして不思議な蝶に関する逸話は本当なのか!?
蝶を御神体とする神社の息子の攻様と
攻様と昆虫好きな受様の恋物語です♪
受様が攻様を大好きすぎるというふりで
攻様はそんな受様の気持ちを知りながらも
全くその気はないというスタートなので
受様が右往左往するとか
攻様が振り回されちゃう系のラブコメだよね♪
と思って読み始めたのですが
めちゃくちゃ深く考えさせられるお話で
頁を捲る手が止まりませんでした ヾ(≧▽≦)ノ
国吉神社のご神体の白く光る蝶は
1所に長く留まらず回遊していて
前回来たのは攻様が小学生の時でした。
攻様は自分が何事にも執着しないのは
その時に出会った蝶に心を食われたからと言います。
蝶が集う場所は
神社の関係者しか辿り着けない場所ですが
虫好きな受様は野生の勘だけで辿り着き
観察していたのですが
ある時をきっかけに受様は虫に対する興味を失い
攻様に心惹かれる事がなくなっていきますが
受様はその変化を特に"変だ"と思わないのです。
そんな受様にショックを受けるのは
受様の恋心を分っていながら放置していた攻様でして
ココからのターンがとっても見事でした。
受様が変わった原因は蝶なのか
攻様は受様を元通りの受様に戻せるのか
少しづつ謎に迫る攻様ですが
ご神体である蝶は次の飛来地へと向かい始めて
もうハラハラMAX!!
2人の恋の行方が気になりまくりで
大団円までとっても楽しく読ませて頂きました。
最初は不思議だったタイトルも
読み終わって納得!! でした (^-^)v
先生買い。じわわっと感情の波が押し寄せてきて、とても良かったでしたので神にしました。現代日本でちょっとファンタジー&昆虫さんが大丈夫な方に超おすすめしたいお話です。私は、虫、大嫌いですが、無問題でした!本編260Pほど+あとがき。海野先生のお話、ほんと好き。
高校2年生の時に同じクラスになった国吉に恋心を覚えるようになった朝陽。一度はあきらめようと思っていたのに、同じ大学に通うようになり、今では誰よりも早く国吉の姿をキャッチし、大好きな昆虫のことを語って聞いてもらうことが何よりの楽しみ。ただ人の話を聞くのがやたら上手い国吉は、自分の興味あることを熱く語るタイプの人間に大人気で・・・と続きます。
攻め受け以外の登場人物は
大学仲間(含む女子)、攻め父(宮司)ぐらいかな。
++ より内容に触れる感想
攻めの実家が妖の蝶を人々に近づけないために設けられた神社で、その蝶のせいで、受けが熱烈に愛していた国吉や昆虫への想いを失ってしまう!というお話。
受けは根っからの昆虫好き。昆虫のことを語りだしたら止まらないオタクで、周りが「なんのこっちゃ?」と思っていても構わず国吉にムシ愛をぶつけ、受け止めてくれる国吉に「大好きだ!」と大っぴらに叫ぶ方。会えてうっとりしている様子をみて「アイドルに会ったみたいだな」と人から言われると「アイドルじゃない、オオクワガタだ」等と訳わからん独自理論をカマす方です。面白すぎる。その方がとある理由により、その恋心を見失ってしまうんですよ・・その失っていく過程もきゅうと胸は痛むんですが、それを取り戻した時!そこが抜群に好き。かつての自分の感情を思い出し、「そうだ、心臓が焼き切れるぐらい好きだった」っていったあたりの下りは、こっちもその想いでぐわーっと流されてしまいそう。ここほんと良かったです。
攻めも理由ありなんですが、やたら人受けが良い&ある種熱い情熱をもったオタクの愛をめちゃくちゃうまく受け止められる方。なので、あっちこっちのオタク(数学愛、映画を愛する方の愛、受けのムシ愛等々)から「結婚してくれ!」とプロポーズされてしまう方。歴代彼女からは「私を一番にしてくれない」という理由で振られるんですよね、わかるわ。
そんな二人の恋物語です。恋心がせつせつと伝わってきて、ほんと読んで良かった!!!!!と思った一冊でした。多くの方に読んでいただきたいです!
大の昆虫好きである大学生の朝陽は好きなものに熱中しすぎてしまい、周囲の人間に敬遠されがち。高校の時独りぼっちだった自分を救ってくれた国吉に、予てから思いを寄せているが、彼は天然の人たらしで…。
国吉の周りには常に人に大勢の友人が。聞き上手で人当たりのいい国吉に朝陽は意を決して告白しても、「知ってる」と笑顔で返されてしまう。
もうこの恋を諦めるべきかと悩む中、国吉の実家の神社で“人の心を食う"という美しい蝶に出会い、いっそこの気持ちを食べてくれたら…と願うと忽ち国吉への気持ちが消えていって…!?
ミステリーとしても世界観を楽しめる一冊です。
私はですね、犬の追いかけっこみたいなのが大好物なんですよ…
追いかけてきたと思ったら、追いかけてこなくなって、気になって追いかけちゃう…みたいなね。あれ、お前俺のこと好きじゃなかったっけ?みたいな。
人間って欲深く、傲慢ですよね。でもそこがいい。自分に向けられていたはずの熱い想いを感じられなくなった途端、
またその熱が欲しくなって求めてしまう。
以下ネタバレです。
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光る蝶に心を喰われた朝陽は、好きだった昆虫にも、あんなに目で追っていた国吉にも全く心を奪われなくなってしまいます。
虫の話を聞いても、いつもなら走って観察しに行ったのに、そうかと聞き流すばかり。教室に国吉が入ってくるなりすぐに見つけていたのに、国吉の存在にも気づかない…
朝陽はその変化を重く受け止めていませんでしたが、国吉を含む周りの友人は心配するばかり。
「自分の感覚が揺らぐ。当たり前に持っていたはずの感情が薄れていく。
胸の底に残っていた感情を絞り尽くされるようだ。名前はつけられなくても手触りだけは知っていたはずの感情が、全て消える。忘れてしまう。(p.152より)」
しっかりと自分の中に在ったはずのものが、思い出せない。心にぽっかり穴が開いたみたいに、自分の真ん中を風が通り抜けていく感覚。
在ったはずのものがなくて、空洞で、何もない。でもそこには在った。なにが在ったのかは、思い出せない。
やがて、「在ったこと」すらも忘れていく…。
それがどんなに怖いことか。
国吉は朝陽の気を引こうと昆虫の本を読んでネタを収集したり、朝陽を昆虫園に連れて行ったりと、元の朝陽に戻ってほしくて奮闘します。
しかし朝陽は国吉が期待している反応を見せず、好きだった昆虫園すらすぐに飽きてしまう始末。
理想と現実の差に落胆する国吉でしたが、二人は意を決して再度光る蝶のいる山に入り、解決法を見つけようとします。
そして突然、朝陽の首から光る蝶が羽化し、美しい翅を羽ばたかせながら遠くに飛んでいきました。光る蝶が餌にしていたのは、朝陽の「感情」でした……。
そして朝陽は昆虫愛と、国吉への想いを取り戻します。
腐女子の方でなくても、ミステリー小説として楽しめる作品なのではないでしょうか。光る蝶という不思議な世界観と、各所にちりばめられた昆虫のうんちくは読者を飽きさせません。
何より私がお気に入りだったのは、朝陽が国吉への想いをなくした後の国吉の反応です!
じっと朝陽を不満げに見つめたり、朝陽を狙う女子の邪魔をしたり…。
国吉の視点で書かれていないのにもかかわらず、心情・表情の変化が手に取るようにわかります。
執着攻めが好きな方へぜひ!おすすめの作品です。
作家買いです。海野幸先生はお気に入りの作家さんなので、楽しみはもう少し後に取っておこうと思っていましたが、我慢しきれずに読んでしまいました。
途中からは想像以上に切なくて苦しくて何度も泣きましたが、すごくすごく良かったです。
冒頭から朝陽の変人ぶりが際立っていて、度を越した昆虫好きであることと国吉のことが大好きであることが、たった数ページでこれでもかというほど伝わってきました。
この二人は両想いじゃないの? と思わせるような朝陽と国吉のやり取りにニヤニヤさせられ、国吉は朝陽の昆虫を交えた独特な表現を瞬時に理解し、朝陽は昆虫好きであることを肯定してくれる国吉に堂々と「好きだ」と言い、それに対して国吉は平然とした態度で「知ってる」と返し、周囲にとっては日常の光景なので誰一人として突っ込みません。
ところが国吉は朝陽だけと親しくしているわけではなく、不特定多数の人たちにも分け隔てなく接します。趣味に熱中する人の話には興味深く耳を傾け、何かを相談されたら真剣に対応し、困っている人やポツンとしている人がいたら自ら声をかけるのです。
誰もが自分は国吉にとっての特別ではないかと夢を見ますが、時が経てば国吉はただ誰にでも優しいだけという現実を目の当たりにします。朝陽もその内の一人です。
だけど朝陽はそんな国吉を否定せず、同じクラスになった高二以来ずっと恋心を持ち続けていました。その国吉の優しさがなければ朝陽は孤独のままで、今の関係もなかったからです。
高三でクラスが離れてから、自分から会いに行かない限り国吉と接点を持つことができなかった朝陽は、本来なら高校卒業を機に国吉をあきらめるつもりだったのに、国吉は朝陽と同じ大学を受験していたのです。しかも同じ学部なので、朝陽は国吉の近くにいるのに特別になれない切なさを大学生になっても感じ続けることになります。
初見でも国吉はずるいなと思いましたが、国吉の事情を知った読後の今はさらにそう感じます。
朝陽の恋愛感情に気付いていながら、特別扱いすることも突き放すこともしないなんて、いつまでも生殺し状態の朝陽が本当にかわいそうでした。想いには応えないけど、自分の振る舞いで朝陽の心を乱して、それでも朝陽に想われ続ける立場はさぞ心地よかったことでしょう。
だから、国吉神社に現れた蝶が人の心を食べることを知った時、真っ先に朝陽の国吉への恋心を食べられたらいいのにと私は思ったのです。その後も朝陽の精一杯の遠回しの告白を受け流した時は特にそう思いました。
いわゆる攻めザマァ展開になればいいと安易に考えていましたが、実際に朝陽の感情がなくなってしまうと想像以上に悲惨な展開でした。
まず、朝陽が失ったのは恋心だけではありません。昆虫への興味関心までもが奪われたのです。朝陽の人生を彩ってきたものはなくなったのに記憶だけは残っていて、時が経つほどそれに苦しめられ、オスのセミは体内が空洞で、それがまさに自分のようだと揶揄する朝陽の姿が辛かったです。
そんな朝陽に追い打ちをかけるのは国吉です。こちらは完全に自業自得ですが、朝陽が変わってから必死に追いかけます。でも朝陽には片想いで苦しんだ記憶がしっかり残っているので、国吉の変化や昆虫関連も含めて記憶と現実のギャップの大きさに戸惑いと苛立ちばかりが生じます。
そこまで朝陽に執着するなら最初からもっと朝陽を大事にしなよ、と思ったのは私だけでなく朝陽もそうでした。
まあ国吉も自業自得とはいえかなりかわいそうな目にあっていたので、この辺で朝陽を元に戻してあげてと思ったけど、海野先生は容赦しません。夏休み前から朝陽をどんどん心の死へ追いやって友人と疎遠にさせるし、国吉はいくら朝陽に拒絶されても毎日メールを送ったり家まで行くという献身的な姿を見せます。
親の心配が深刻になってきた頃にようやく国吉が朝陽の部屋まで入り、そこで朝陽が感情を爆発させた場面はとても良かったです。
国吉の過去や事情も、もっと前から朝陽に話しておけば良かったのにとは思ったものの、打算的だったり八方美人な部分や、それら全てを肯定してくれた朝陽のことを好きになり、恋人になれば別れがくるから友人のままで一生途切れない関係でいたいと臆病になるのも、どれも共感できました。
海野先生の作品は両想いが確定するまで丁寧に書いてくれるので、それだけで心が満たされ、個人的に性描写はなくてもいいとすら思うのですが、本作の朝陽が元に戻ってからの性描写は結構好みでした。早く相手を自分のものにしたいという執着心が二人とも出ていたのが良かったです。
その後の二人も上手くやっていけそうで安心しました。国吉はきっといい執着攻めになれそうです。
朝陽が心を取り戻す場面は想像したらゾワッとしますが、何らかの「思い」を養分にしていた説は幻想的で素敵だなと思いました。
作中で鬼の話が出てきましたが、私は妖怪とかの類いではなく、やっぱり蝶は国吉神社の御神体(縁結びの神様)だと思っています。
朝陽は蝶を見つける前に御神木に触って国吉を想っていたので、それを神様が成就するように取り計らい、二人に試練を与えてくれたのではないだろうか。実際ああでもしないと朝陽と国吉は永遠に結ばれなかったと思います。
蝶の数だけ誰かの恋が叶った、もしくは真の愛を見つけた、と思うとロマンチックです。
お話だけでなく、Ciel先生の絵もどれも本当に素敵でした。
電子ですが、あとがきの後の絵でさらに余韻に浸ることができていい演出だなと思いました。
虫好きではないけれど、知らない虫が出てくるたびに怖いもの見たさでネットで検索するのをくり返したのですが、初回のモモチョッキリで早くも挫折しそうになりました。モモがつくから勝手にかわいいイメージを持っていた私が悪いのです。
でも不思議と愛着がわいてきて、昆虫博物館に興味を持ってしまいました。
すっっっっごく面白かった!!作者様の作品は以前から好きでよく読んでたけど、今作はこれまでで一番好き。キャラクターがすごく魅力的で受けの朝陽くんの一生懸命なところが可愛いこと可愛いこと…。
攻めの国吉くんは一見クールで、中盤までは本当に何を考えてるのか分からないところがあるのですが、その想いが明らかになったときはかなりグッときた。
謎めいた蝶のエピソードもすごく心を掴まれましたし、イラストもすごく綺麗で大満足。強いていうならば、もっと二人のラブラブが見たかった。でもお話のバランスとしてはちょうどいいと思った。