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London matsuyoigusa
「倫敦夜啼鶯」のスピンオフで、寄宿学校で出会った上級生への、切なく繊細な片思いを丁寧に綴った作品になります。
今作だけで問題無く読めるんですけど、既読だと「倫敦夜啼鶯」の二人のその後なんかが読めて、思わずニヤリとしちゃうんじゃないでしょうか。
ちなみに、ルーイ(前作の受け)の弟分だったサミュエルが今作での攻めになります。
サミュ、立派な攻めに育って・・・!と、こちらも嬉しかったりして。
いやマジで、いい男に育ちましたよ。
わりと受けがですね、面倒臭いタイプと言うか、頑ななんですよね。
その点で好き嫌いが分かれそうな気もするんですけど、個人的にはとても好みでした。
こう言う、傷つくのが怖いばかりに一人で居ようとする受けって、本当はとても寂しがりだし純粋なんですよね。
親しくなればすぐに相手に心を許しちゃうから、最初から関わらないようにしてると言うか。
や、そんな頑なな受けがですね、徐々に徐々に攻めに心を開いて行くのに萌えちゃって。
彼の切なく繊細で、傷つきやすい心の有り様にも陶酔しちゃって。
ふう。片思いって萌えるー!
で、内容です。
名門校に馴染めず転校したルイス。
紳士的な監督生・エバンズに親切にされればされるほど、自身の傷ついた心と劣等感を刺激されて反発心を覚えてしまうんですね。
実は、貧しい家庭から叔父の跡取りとして養子になったルイス。
エバンズと意外な場所で遭遇しと色々な彼を知るうちに、いつしか惹かれている自分に気付きー・・・と言ったものになります。
まずこちら、レビュータイトルに寄宿学校と入れたんですけど、実はメインとなる舞台は寄宿学校の外ー。
攻めの実家となるハクスリー家だったり、ロンドンの街中になるんですよね。
寄宿学校での生活と言うのは、本編の1/5程度しかなくて。
そんなワケで、パブリックスクールみたいのを求めてる方には、ちょっとご注意いただきたいのです。
いただきたいのですが、とにかく上級生と下級生と言う彼等の関係性だったり、階級社会に産業改革にと言った19世紀のロンドンのあの雰囲気たっぷりに進む所が素敵でして。
何かワケありそうな主人公・ルイス。
人当たりが良く面倒見の良い攻め・サミュエルに対しても、決して心を許そうとせずと強い拒絶を見せる。
彼がこれほど警戒心をみなぎらせ、頑なな態度をとる理由と言うのはのちほど語られるんですよね。
ただ、深い心の傷を抱えているんだろう事は匂わせてある為、差し伸べてくれる手を振り払うような彼のやり方と言うのがもどかしくて仕方ないんですよ。
それが、偶然の出来事からサミュエルの実家で世話になりと、普段の「模範的な監督生」では無い、意外な彼の姿を知る。
また、裕福な家庭に生まれ育ちと勝手に思い込んでいたサミュエルの複雑な過去を知り、彼が自分の想像とは違う人間なのではないかと思いはじめる・・・。
こう、本当にスローペースなんですけど、心に傷を負った主人公の頑なな思いが解け始め、やがて攻めに惹かれ始める。
そんな主人公の繊細で傷つきやすい片思いと言うのがじっくり丁寧に語られと、めちゃくちゃ萌えちゃうんですよね。
また、主人公が攻めを意識しはじめる優しいエピソードなんかが印象的に綴られと、これにも萌えまくっちゃう。
ああ、片思いって甘酸っぱーーーい!みたいな。
ちなみにですね、前述した通り、受けはかなり繊細だし臆病だと思うんですよね。
そのせいで、自分の気持ちを自覚してからも想いを封印しようとするし、それどころかわざわざ距離を置こうとする。
これがかなり切なかったですよ。
ただこの二人、正反対に見えて、実はとても似ているんですよね。
心を許すのが怖いから、最初から人を拒絶する主人公に、同じく心を許さない為に、笑顔でシャットダウンする攻めと言った具合に。
そう、互いに心に欠けた部分を持っていて、だからこそ、強く惹かれあうんだろうなぁと。
この二人の恋、繊細な作品の雰囲気にもあって、めちゃくちゃロマンチックでうっとりしちゃうじゃないかよ。
ところでこちら、タイトルにある「待宵草」ですが、別名が「月見草」で花言葉が「ほのかな恋」との事なんですね。
その花言葉にぴったりな、儚く美しい恋物語に酔しれました。
なんかこのタイトル見覚えあるような・・と思っていたら「倫敦夜啼鶯」のスピンオフでした。あらまあ大きくなって・・と遠い親戚の子の成長に感嘆する心地。今回の受けの子のぐるぐるがつらかったので中立より萌にしました。本編300Pほど+あとがき。夜啼鶯を読んでなくても問題なく読めますが、読んでいた方が楽しめることは間違いなし。
父を亡くし母と兄弟姉妹で困窮していた中、跡取りを探していた叔父に引き取られたルイス。最初に入った学校ではいろいろあって馴染めず、転校。その寮で出会ったのは親しみやすい雰囲気のエヴァンスで・・と続きます。
攻め受け以外の登場人物は
受け叔父、ハクスリー+ルーイ(夜啼鶯のカプ)、ヒューバート(受けが最初に入学した学校で親切にしてくれた先輩)など。ハクスリーはより素敵に、ルーイもしっとり大人になっていてとても嬉しい。
++攻め受けについて
前作でちび助だった、あのサミーが攻めに。なんとまあ立派に。と、おかんな気分になりました。ティーンなんで百戦錬磨感はもちろん無いですが、色事シーンも頑張ってこなしてます!穏やかなよい青年になりつつあって本当に嬉しい。超優良物件に育つこと間違いなしです。
受けがね。貧乏だったところから一人だけ引き取ってもらったことに引け目感じているのやら、最初の学校で先輩から嫌な目にあわされて、もう人に弱みなんか見せるもんか的意地っ張りなところとか、少し昔のロンドンの困窮する世帯の苦しみやら人権のなさそうな扱いやらあたりが、つらくて。受けのぐるぐるも長くて、読んでいるのが少し嫌になったところもあったのですが、サミー!に全部吹っ飛ばしてもらえました。
倫敦夜啼鶯が好きだった方にはおすすめしたいなあ。あと健気さん大好きな方にも。
「倫敦夜啼鶯」のあのサミィの成長した姿が読めて感無量でした。
でも何ていうか…「倫敦夜啼鶯」の時も受けのルーイが頑なで意固地でしたが、こちらのルイスは更に輪を掛けて意地っ張りでした。
サミュエルは前の学校のいけ好かない貴族のヒューバートとは違うんだから、ちゃんと向き合ってと何度こころの中で叫んだ事か…でも、これも夢乃咲実先生の策にはまってるって事なんでしょうね。
サミュエルことサミィがドクターとルーイと幸せに暮らしながらも、密かに抱えていた思いが切なくてルイスを求める気持ちにグッと来るんです。
途中でルイスの叔父に恨みを持つ人物達によって、ルイスは絶体絶命の危機に落ち入りますが、サミュエルが助けに来て二人は無事に逃れる事が出来るのですが、その時にやっと気持ちを通わせる事が出来るのです。
そして、その出来事がキッカケで叔父の本当の気持ちを知る事で叔父とルイスは歩み寄る事が出来るのでした。ここでドクターがとてもタイミングよく良いことを言って、ルイスの心配ごとが解決するんです。ドクター流石でした。
頑なだったルイスがサミュエルと出会って、人を信じる事が再び出来る様になったことがキッカケで、全てが良い方向に向かうというお話でした。
なので、LOVE度はかなり低いです。なんなら途中までルイスにかなり苛つきます。でも、読後感が凄く良い作品でした。
でも夢乃咲実先生の作品で「遍歴の騎士と泣き虫竜 ~のらドラゴンのご主人さがし~」を超える作品がまだ無いんですよね…。