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sayonara no nai kuni de
2015年に刊行された作品の文庫版。旧版も持っていますが、書き下ろしとか加筆があるかなー、と思って購入してみました。
はじめに書いてしまうと、若干の修正はあるものの書き下ろしはありません。それ目当てで文庫版を買われようか悩んでいる腐姐さまは注意が必要かなと思います。
内容は旧版の方でも書いていますがざっくりと。ネタバレ含んでいます。ご注意ください。
自宅でピアノ講師をしている春希には大切な人がいる。
彼が師とも仰ぐ月彦。
母子家庭で過ごし、貧しく、孤独な子ども時代を過ごしてきた春希に、ピアノを教え、そして「愛すること」を教えた男性だ。
が、月彦は5年前に病死。
以来、彼の残してくれた家に月彦の甥である康と共に住んでいる。
心にぽっかりと穴が開いた状態でひっそりと生きてきた春希だが、ある日ピアノの教え子から都市伝説のような話を聞く。
それは、死者と会える「天国ホテル」と呼ばれる場所がある、というもの。
どこか旅行に行こうと誘ってくれた康の誘いに乗り、彼はそんな不確かな情報を頼りにバスで出かけるが、その途中でバスの事故に遭う。春希と康が目覚めたとき、彼らがいたのは、その「天国ホテル」で―。
というファンタジー要素モリモリのお話。
「生」、そして「死」。
重く深いテーマを題材に、彼らと同じバスに乗っていた乗客2組とともに、天国ホテルの謎を追い、そして本当に死者-春希が恋焦がれた月彦に再会することができるのか、を軸に進むストーリーです。
バスの乗客は、広瀬というサラリーマンと、旅行に来ていた藤枝母娘。
彼らにも、どうしても会いたいと願っている人がいて―。
自分を残し、亡くなった最愛の人。
その最愛の人に、もう一度会えたなら。
大切な人を亡くした経験のある方なら共感できるであろう感情をメインに紡がれていくストーリーに胸がギュッと鷲掴みにされました。
が、「死者と再会できるのか否か」というファンタジーものでありながら、康と春希の恋の行方もきちんと描かれています。
月彦を失い、心の拠り所さえも失ってしまった春希。
そんな春希にずっと寄り添い、精神的に支え続けてきた康。
今作品は春希の、今は亡き月彦に会いたい、という想いで成り立っていますが、でも、そこに描かれているのは紛れもなく康の恋の行方です。
康の愛情は、けして見返りを求めていない。
春希の幸せだけを願っている。
一途に、ひたむきに春希だけを愛し続けてきた康の深い愛情に萌えと涙が溢れました。
広瀬さん、藤枝さん、そして春希。
逢いたかった人と再会できて、そしてそこから彼らが導き出した答えは三者三様。
そのどれもが、彼らにとっての最善の答えだったのだと信じたい。
月彦という男性に囚われ続けてきた春希が、康の愛情に救われ、月彦への想いを昇華していく様が圧巻でした。
同じ作品を、のちに改めて読むと感想が変わることはままありますが、今作品は2015年に読んだときよりもずっと心に染みわたりました。年を取ったということなのだろうか…。
葛西さんの挿絵もまた良きなのです。
この作品の持つ世界観にぴったりの、儚くも美しいイラストで、萌え度は確実に上がりました。
「死」を扱う作品で、ゆえにもしかしたら読み手を選ぶ作品かもしれません。
が、沢山の方に読んでいただきたい、素晴らしい作品でした。
めちゃくちゃ泣いた(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)
死者に会える『天国ホテル』を舞台にしたファンタジー作品です。
ピアノ講師の春希は、慕っていた先生・冬彦を病気で亡くしています。
冬彦の甥・康と同居している春希は、康といる事で心を動かされる自分に戸惑うように。
そんなある日、死者に会えるという都市伝説のような『天国ホテル』の噂を耳にしーー…
冬彦に恋をしていた春希と、春希に恋する康。
旅先で起きたバス事故後に、見知らぬホテルに誘われ……という展開です。
春希に、旅行後は自分の事を見て欲しいと伝えた康に対し、
初めから天国ホテルを目指して旅に出ていた春希。
康にとっては絶望感しかない始まりに、初っ端から胸がぎゅうぎゅう締め付けられます。
春希と康、真面目な会社員、母娘ーーそれぞれに共通するのは、
死者に対する愛と囚われ……
その思いを繋ぐのが『天国ホテル』です。
人々のエピソードと死者への思い、それぞれの結末がどれも泣けます。本当に切ない。
帰りたいと本気で願えば帰れるはずなのに、冬彦に再会した春希は未だそれを望まない。
そして、思い出の品を持って泉に飛び込むと死者と魂を入れ替えることができると知り、どうしても春希に現実で生きて欲しいと望む康がとった行動はーー?
ここが本当に泣けた。
愛する人のために自分の命も厭わない健気さ、献身的な想いに胸打たれました。
本当は康を大切に思っている春希は、康の行動を止めることができるのか……!と、続きます。
痛みも苦しみもさよならもない世界には死もないけど、
同時に生もないのです。
生きている人よりも死者を求めることなど、本当は愚かなことなのでしょうね。
それでも会いたい人がいる、その事実だけで胸が苦しかった。
死者と向き合うのは、自分自身と向き合う事だと思います。
『天国ホテル』は死と生を繋ぐ場所でありながら、死と生を分つ場所でもあるのでしょう。
心から愛する人の死を受け入れられた時、きっと新しい人生が始まる……そう思わせてくれるラストに胸アツです。
読後は胸がいっぱいになります。
BLらしさはほんの少しですが、ストーリー自体が非常に面白かった。
このまま映像化出来そうなほどで、映画を1本見終わったような感覚になりました。
文句なしの神作です。生きるって何か、家族って?愛って?とたくさんのことをこの本は投げ掛けてくれます。
レビューが既にたくさんついているので私は既読者向けにこの思いをまき散らしたい!
月彦さんは心が凪いで全幅の信頼を置ける相手だったけど、康は春希にとってまさに太陽だったんですね。日向に連れ出してくれる人。(ここら辺ツリーハウスの描写からもよく分かります)
月彦を失って自分の殻に閉じこもろうとしていた春希に大切な人を失っても、もう一度生きること教えてくれた人。そんな人のこと好きになってしまいますよ。
この物語は死者に会って過去に生きる後ろ向きな物語かと思いきや、最後まで読むと分かるんですが春希がもう一度人を好きなるために過去に決別し前を向くための、実はめちゃめちゃ前向きな話なんですよね。
そりゃ人間だから心が揺らぐことがあって春希も月彦に会ってもうこのままでいいやって一瞬思った。だってそこには変化はないけどその分穏やかでいられる。でもやっぱり現実に引き戻してくれるのは康なんですよ。心を動かすことは生きること。それには大変なエネルギーがいる。けれど康といたらそれが楽しいと思える、生きたいと思える。
生きるってなんて素晴らしいのか。
楽譜のシーン
春希の『違うんだ』ってセリフ最初読んだ時は何が違うの?早く正気に戻って!って思ったけど、これは本当に違くて、天国ホテルに来た春希の目的は月彦とずっと一緒にいる事じゃなく、この曲を完成させる事だった…。
もしかしたらそれは意地のようなものだったのかもしれない。けど春希にとってはこれを完成させなければ前に進めない重要なアイテムだったんですね。
またここでうまいなと思ったのはそんなに完成にこだわっていたのに結局天国ホテルでは完成には至らなかったわけです。ちゃんと現実に戻ってきて、最後は自分の手でこの曲に終止符を打つ。これでもう月彦がいなくても大丈夫なんだなと、やっと思い出にする決意がついたんだな、と。そしてこれがラストの『終止符を打つ』にかかってくるわけです。
終止符を打つ、過去と決別し、新しい物語を始める。まさに2人の物語はここから始まるんです。もう先生の文章のうまさに膝を打ちました!!!これはやられた!
最後のセックスシーンですが、いろんなレビューサイトで綺麗なこの作品に取ってつけたようなセックスシーンはいらないってよく目にしました。
とんでもない!
これは愛の行為なんですよ、果てしなく。
春希は生を感じるものを嫌悪してましたよね。生肉、卵…。セックスなんて『生』の行為そのものですよ!そんな春希が全てを受け入れて人を愛して、愛されることを知って、ああ生きてて良かったなって、この温もりを失わなくて良かったなって想ってることが痛いほど伝わる。なんて尊い行為だと涙して読みました。
BLの萌的な意味だけでなく絶対必要だったと私は思いましたね。
作家買いです。
ソフトカバーも購入していたのですが、冒頭が重くて当時は挫折、なんとなく読まないまま月日が経ち…。というところで文庫版を見つけて購入しました。
この作品は『生とは何か。死とは何か』を考えさせられるようなお話でした。高遠琉加さんがあとがきで書かれていたのですが「死」よりも「死なないこと」の方が怖い、と。それが如実に描かれている作品でした。
最初に述べたように、冒頭が重い。あまり気持ちがいいとは言えない恐怖が、背後からじっとりと忍び寄るような感覚。あまりの息苦しさに、前半は20ページほど読むと一旦本を閉じて時間を置いてから読む、を繰り返していました。
同時に天国ホテルにたどり着いた、主人公を含めた3組の「生きた人」。それぞれの死者との関係性。三者三様の選択。
最後、康がどのような選択をしたか気付いた時には思わず涙が出ました。
ファンタジーとはいうけれど、どこか哲学的。
BL小説というよりは「たまたま主人公が同性に恋をしていただけの一般小説」と表現した方がしっくりくるくらいです。
重苦しくて、人の生き死にだなんて盛大なテーマを掲げていて、ほとんどはっきりとしたBL色は感じない。万人に受ける作品ではないでしょうが、私はとても好きでした。
是非、余韻に浸れる時に読んでいただきたいです。
物語を想像させるタイトルに惹きつけられ、挿画と装丁の美しさに見惚れ、物語の儚い美しさにため息が出る。
それは、どこか高い山の上にあると言う。
都市伝説のように語られる「天国ホテル」
そのホテルでは死者と再会し、共に暮らす事が出来る。
高遠先生の余情的な文章と繊細な表現で、哀愁や儚さ、物語全体を包む幻想的で夢を見ているような雰囲気に次第に飲み込まれていく。
読みながら、あまりの情景や心情描写の見事さに所々で鼻の奥がツンとした。
「死」や「別れ」を扱った難しい設定ではあるものの、重たくなりすぎずに読ませてしまうのが流石。
SFとファンタジーの中間のような感じでしょうか。
個人的にはダークさは感じませんでした。
大切な人や大切な存在を亡くした事がある方は胸に来るシーンもあるかと思います。
「天国ホテル」
死者に再び会いたいと切望する人々にとってはきっと夢のような場所なのでしょう。
愛する人が生前の姿のまま現れ、そこで生活をする様はまさに「さよならのない国」です。
死者と再会し、心のどこかで願っていた日々を過ごす人々。
しかし、徐々に天国ホテルの謎や違和感の正体が判明していく。
同じ1日をループするかのような生活。
翌日には魔法のように消えてしまうメモや音符達。
温度を感じず、味も香りもしない食事。
1日に数回だけ鳴る柱時計。
さよならはないけれど、未来も無い。
「死」という言葉を使わずに、彼らはもう死者なのだと、生きている自分達とは違う存在なのだと思わせられる表現がとても上手い。
共に眠りにつき永遠を生きるのか、未練を断ち切り元の場所へ戻るのか。
同じバスの乗客・広瀬の選択も藤枝の選択も、どちらも理解が出来るものでした。
もし私が生と死の狭間にあるこのホテルに辿り着いたら、一体どんな選択をするのだろう。
登場人物それぞれの人生ドラマが濃く、BL小説作品というよりも文芸作品として楽しんでしまいました。
ホテルシーンの合間で現在と過去と視点が入り乱れるので、慣れるまでは読み難く感じる方もいらっしゃるかもしれません。
ピアノをBGMにした音声ドラマでも聴いてみたくなる作品でした。
そして最後に。
果たして、春希の月彦に対しての気持ちは恋情だったのか。
私には春希は無意識に月彦へ父性のようなものを求めていたようにも感じられたのです。
恋ではなく、広い意味での愛情というか。
月彦への想いの強さが伝わって来るだけに、BL小説なのですけれど…終盤の康と春希が恋に落ちる描写やベッドシーンはこの作品には不要かなと。
入れた事によって美しく丁寧に描かれた雰囲気が崩れてしまった。
無い方が綺麗なまま物語に幕を閉じられたのではと思います。
2015年単行本で出されたものの文庫化。単行本の方を読んでいないので詳細わかりませんが、加筆されたそうです。ハラハラ引き込まれて、いい話だなと思いますが、話の筋として驚きはなかったので萌2にしました。本編380P弱+あとがき。ラブなお話は少ないですが、ダークよりなファンタジーお好きな方でしたら是非。
共に暮らしていた月彦を失って5年。彼の住んでいた家に、月彦の甥である康(こう)と暮らし、ピアノ講師や作曲をして生活していた春希でしたが、気持ちを切り替えようと誘われ、二人でバスに乗って出かけます。途中の山道で運転手が意識を失い、バスごと谷底へ落ちると思ったのに、気付けば生垣で出来た迷路の中に横たわっていて・・・と続きます。
攻め受け以外の登場人物は
月彦(攻めの叔父、故人、春希に音楽を教えた人)、響子、紗彩(バスの乗客親子)、広瀬(バスの乗客)、学生服を着た少年等、ホテルの滞在客複数。
**以下、より内容に触れる感想
本筋から少しそれるので先に。音楽に関する描写が、本当に好きでした。月彦と春希の最初の出会いのシーンで登場するのですが、音の奔流を「きらきらしぶきをあげ周りで跳ね回った」だの「雨粒が葉っぱをたたき、無限に重なり、森を震わす轟音になる」だの、「旋律が見える、聞こえる」という気がして、とても良かったでした。
それはさておき。攻めは人たらしワンコという印象。受けはいわゆる薄幸美人タイプに分類されるのかなと思うのですが。攻め受けどうこうというより、お話にとてもシンクロして、しんどかったです。
生きるのがややツライ状況だった子供時代に、音楽という自分の芯になるものを教え、沁みこませてくれた恩人であり、大好きな人だった月彦を失った春希。その彼の気持ち、月彦を大切にして、いつまでも泉の底に沈んでいたいという気持ちが前半ひたひた打ち寄せて、わかりすぎて、とてもとても囚われてしまいました。
生きている間はご飯食べて働いて笑って泣いてと、懸命に生きていかなければならないのは正論としてあるけれども、でも「もういい」と思う気持ちを捨てきれない。そんな春希の葛藤に巻き込まれ、加えて響子の母の愛にとどめを刺されて号泣。そして広瀬と佳世の想いも辛くてやっぱり涙。不倫すんなよと強く思うものの、どうしようも無かったんだなとも思う彼の人生、いつか許され二人で転生できることを心から願います。
月彦と春希の関係性も濃いし、サブキャラたちの人生もエピソードとしてとても強く響いて、なかなかどっぷり浸ってしまうお話でした。
春希が「月彦にお礼を言う」のを目的として、天国ホテルに行くと決めていたなら。そして「ソナタを書き上げたら言いたいことがある」等と言ってくれていたら。もう少し救われた感があって嬉しかったかなと思いました。私の読み取り不足かな。
なかなかしんどいお話なので、大切な方を亡くした経験のある人にはツライお話になるかもしれません。ハンカチをご用意いただければと思います。時のないホテル。さよならのない国。いつか行きたくなることもあるかもしれないです。
怖い話、不思議な話を好きな方にはお勧めです。生と死の間のような世界の「天国ホテル」。あらすじではどこかロマンチックな話かと思ってましたが、ほぼホラーです。ホテルにいる人とか雰囲気がとにかく不気味で素敵。「シャイニング」みたいなホテルて…恐怖しかないでしょ。
主人公の受け攻めだけじゃなくエリート風サラリーマン、訳ありそうな母娘連れなど他の登場人物の運命も気になって気になって…BLというより一般小説のような流れでした。途中から死者を蘇えらせる方法みたいなのも出てきて「ペットセメタリー」みたいになっとる!とゾワッとしました。まあ人じゃないものになってこなくて良かったけど死んでた人が生き返るってなんか怖い。
最後のエッチシーンはBL小説だから仕方なくとってつけたような感が少しありました。いや、それはBLだから必要なんだけどそれまでのホテルの不気味ワールドとトーンが違うのでちょっと戸惑いました。私はS.キングの話をイメージしながら読んだので恐怖部分を楽しみましたが、元ネタを知らない人には「?」だったかもしれませんね。
でも最後に音楽家の受けが天国ホテルで作った楽曲というのはロマンチックで素敵な曲なんだろうなあと思いました。
閉ざされたホテルに集う死者と、迷い込んだ生者。
読んでいて景色が浮かび、ピアノの音まで想像できて、映像作品を見ているようでした。
あらすじから、そうは言ってもどうせ生きてる人間の方を選ぶんでしょ、と高をくくって読み始めたのですが、作中どんどんダークな雰囲気になっていき、春希にとって亡き月彦がどんなに大きい存在だったかを知ると、もう春希は康を選ばないのでは・・・とはらはらしてしまいました。さらに死んだ人を生き返らせる方法まで出てきて・・・結末には心底ほっとしました。
BL色は少なめです。
恋愛ではあるのだけれど、康と春希がもう何年も一緒に暮らしているからか家族のような雰囲気すらあります。
ずっとBL色控えめでお話が進んでいくので、最後二人が結ばれる描写は唐突感があるかも。キスだけで終わっても良かったのかな、それだと物足りないかな、悩ましいところですね。
それでも充分心に沁みる物語であることは確かです。読み終えた今も、「天国ホテル」はどこかにあるような気さえします。私はまだ行ってみたいとは思いませんが。