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ai no uta
「あいの、うた —the end of youth—」
木原音瀬先生 読了
一言で言うと、かわいかった…。もう最高!
簡単にストーリーを整理すると、本の前半と後半が2つの話に分かれていて、わたしから見ると前半のほうがスピンオフで、後半が本篇のような気がしますね。
前篇は隠れゲイの音楽雑誌のエディターと野良猫のようなボーカル(ノンケ)の話。なぜかストーリーを読んでいると久保山が野良の黒猫に見えて仕方がありません(笑)。特に小菅に追い出され駅前で丸まって寝ている久保山が最高にかわいかったです!残念ながらこのシーンはイラストがないんですが、黒猫のイメージが勝手に頭に浮かびます(笑)。いくら下手に出て謝っても「一生行くか」「あっち行け」とか言って拗ねている久保山が本当にかわいすぎます!(←語彙力が乏しい)
でも最終的には飼い主が無事に野良猫を手馴してよかったです(笑)。小菅の腕の中で文句を言いつつも撫でられるがままでいる久保山に萌え禿げましたm(_ _)m最高な終わりです!
一方、後編はその音楽雑誌の編集長の学生時代を遡り、昔から自分だけに執着する変わった男との話になります。これはあくまで個人的な感覚ですが、力っていう人物像はすごく「箱の中」の喜多川を連想させました。(もし先生のご本意ではなかったら、大変申し訳ありませんでした)というか後編は全体「箱の中」を彷彿させました。もし同じ意見を抱く方がいましたらぜひ語り合いたいです。
しかしな…自分を裏切った田頭をそう簡単に許してしまった力には少し不満だった(笑)。靴の裏を蹴るくらいって力が優しすぎます!w木原先生の作品なら(←)もうちょっと懲りてやってもいいじゃん…と思ってしまう自分にゾッとした(汗)。
すごく心に染み付くやさしい話で、とても癒されました。BLによくあるアイドルとかキラキラしたスターたちの話ではなく、ごく普通な男たちの恋愛像で、普通こそ最高で神評価とさせていただきます。今回も、素敵な作品ありがとうございました。
木原作品としては、あまりレビューもついておらず神評価も少ないために読む前の期待はなく本を入手後もすぐに読まずにおいていました。サラッと読みたいなという気分の時にページを開いて読みだすと、おもしろくてスルスルと進んでしまいました。
「あいの、うた」は、感情のまま自分を偽らずに生きているボーカリスト(作詞作曲もする)と極小?音楽雑誌エディターとのジワジワとつめてゆく愛の話。正直にそのまんまのタイトルが邦画っぽくて好きです。
「The end of youth」は「あいの、うた」の主人公の勤め先の編集長・田頭が17歳の高校生~27歳のおちぶれミュージシャンだった20~10年前のお話。友達の一つ年下の弟が強烈な性格で田頭を煩わせつつも、その誰にも劣らない真っ直ぐな個性でやがては田頭の拠所となっていきます。青春の果てに青春は終り、音楽の才能なく夢破れた田頭ですがこのお話の終盤で田頭はコンビニで誰の歌かもわからない歌を耳にして、歌を「聴きたい」と渇望します。自分が歌を歌うこと作ることは諦めてもまだ音楽を手放せないラストは余韻を残しました。
登場人物はどれもありがちな人々ばかりだけれど、この作者さんは無駄な説明などなくとも情景描写に長けているため、シンプルな文体の一般小説として十分に読めます。
この作者の中でも、リバーズエンドの中の「god bless you」「箱の中」などの淡々とした描写を折り重ねていく文体で綴られています。とても読みやすく、おすすめです。
万人にはオススメしません。
夢を失うことの怖さがリアルでした。
この、フンづまりのような展開…嫌いな人は嫌いなんだろうなァ。個人ブログやAmazonでレビューを見てると、木原音瀬さんを苦手にしてる人も相当数いるみたいですが、木原音瀬フリークな私からしても、『分かる分かる』と思ってしまいますw
つくづく木原音瀬節です。
売れないミュージシャンや一発屋のミュージシャンを、とことん突き落として突き落として、結局浮上させてあげなかったり。
暴力的でエキセントリックで、ちゃんと愛を返してくれるのかも分かんないような男を相手役にしてみたり。この小説なんて、相手役は、アスペルガーもしくは境界性人格障害だとしか思えなかったよ…w
私も若いときに、全身タトゥーでチンコにまでピアスつけてる気合い入ったバンドマンと付き合ってたことがあるんだけどw、彼らのプライドの高さとか音楽への情熱とかって、一種独特なんだよね。仲間で語りはじめると、入りこめないし。
なんかイロイロ思い出しちゃって、まともに読めなかったかも。ただ胸がヒリヒリしました。
例によって例のごとく木原音瀬先生の作品の中から選びました。私は購入の際はあらすじや評価を丹念に読みますが、購入後は一切の情報を忘れるよう努めます。今回もあらすじを読まずに読了しました。後から知ったのですが、あらすじとして紹介されているのは「The end of youth」の方のみなのですね!本書は2話に分かれており、したがって2CPが登場します。いわゆるスピンオフ作品です。
目次
・あいの、うた(攻め・小菅博近×受け・久保山明人)攻め視点(44%)
・The end of youth(攻め・小日向力×受け・田頭眞一)受け視点(50%)
・その後の…The end of youth(受け視点)5%
・・・・・・chapter1(受け・田頭視点)
・・・・・・chapter2(受け・田頭視点)
・あとがき1%
・あいのうた
あらすじ
小菅博近(攻め)はエディターになって3年の25歳。大学時代にバンドをやっていた影響で音楽に携わる仕事をと思い、小さな雑誌社で働いています。187cmと長身の小菅はゲイです。編集部一押しのバンドSCUAの良さが分からない、いわゆるアンチSCUAです。
ある日、そのボーカルの久保山(受け)に自分の音楽観を語ったところ、短気な彼に顔を殴られボコボコに。その頃から小菅のコンサート通いが始まります。才能のない奴らだと烙印を押す、その目標を胸に。ところがあるキッカケから久保山が小菅の家に泊まることが多くなっていき…。
感想
面白かったです!今回は音楽ネタです。しかも!売れないミュージシャンのお話し。サクセスストーリーではありません。そのため全体的に重々しく、厳しい現実感を見せつけられます。
SCUAのボーカル・久保山は28歳。170足らずの身長で線が細く、顔も小さい。プライドが高く自分の曲に対して絶大な自信を持っています。すぐに血が上り、手も早い。一方的な喋り方をするし、頑固ですがとても繊細。
でも小菅は久保山と接していくうちに、いつの間にか好きになっていくのです。BLだしゲイだから当たり前の流れかもしれません。でもそれまでは嫌いだと思っていた相手をいつの間にか好きになる過程が素敵で、応援したくなりました。
SCUAは今年でデビュー6年目になるバンド。けれどもヒット曲もなく、レコード売り上げも芳しくありません。しかも今年の9月で事務所との契約が切れてしまいます。そんなSCUAの窮地を救うべく奔走する久保山ですが、現実はあまりにも厳しかったのです。
一時は何もかも上手くいくかにみえた久保山の努力。ところがその努力も一瞬にして海の藻屑と消えていきました。小菅自身も会社が窮地に陥り…。でも今はまだ先が見えないものの、BL的には最後がとても良い終わり方でした。
とはいえちょっと攻めが強引に迫った為、嫌いな方は嫌いかもしれません。言うまでもなく私にはめちゃくちゃ好きなラストでしたがね (ノ≧ڡ≦)テヘペロ
・The end of youth
あらすじ
田頭眞一(受け)は、一時はアイドルとして成功したことのある28歳。でもミュージシャンとしての才能がなかったため今は落ち目です。でも俳優としての道だったら残されていました。ところが自分には才能がないと分かっていながら音楽への未練を断ち切ることができません。
ある日、高校時代の同級生でありバンド仲間だった小日向優と再会します。田頭は皆を裏切るような形で上京した過去がありました。それなのに気さくに話しかけてくれた優。その後、優の弟・小日向力(攻め)が近くの店でマスターとして働いていると聞きます。
10年経った今も、あのきつい眼差しと、人を食った物言いは変わらないかもしれない。そう思うと会うのが怖く辞退したものの、一緒に行こうと誘われ…。
感想
2話目は、1話目で攻めだった小菅の編集長として登場していた田頭の若い頃のお話です。1話目の田頭は37歳の設定。いろいろあったんだな~、と感慨無量。この2話目こそメインだったのでしょうか。心に残るとても良い作品でした。
とは言え、嫌いな方は嫌いなストーリーかもしれません。過去には、受けの攻めに対する嘘や裏切りがありました。それゆえ若い頃の田頭を嫌いと思う方は多くいらっしゃることと思います。
でも私は小ズルかったり、人を裏切ったり、卑怯なところとかも、案外人間らしくて好きなのです。本当の悪人は私も嫌いです。情がなく、冷酷で、平気で人を殺せるような人。でも少しでも情があって、ある時目が覚め、心から改心し、赦しを乞うようなシーンとかはグッときます。
そうそう攻めの力ですが、標準語じゃありません。それはもうコテコテの関西弁で最初は違和感。そのうち癖になると言うか、力の話し方はこうじゃなきゃ!とまで思うようになりました (。◠‿ ◠。)
・その後の…The end of youth
・・・chapter1
2話目の「The end of youth」から2年後のお話し。田頭が編集プロダクションを立ち上げ、音楽雑誌「move」を創刊。そこでの奮闘ぶりがサラッと描かれています。そして何年か経ったある日、求人を募ります。面接に訪れたのは1話目のメインCP・小菅でした。
・・・chapter2
1話目の「あいの、うた」から3ヶ月後のお話し。田頭は偶然、小菅に会い「山千」で一緒に飲みます。小菅は無事、女性誌で働いていますが、音楽雑誌の仕事への未練を仄めかします。SCUAも新しい事務所が決まったことが分かり、素敵な情報が聞けました。そして小菅らしく正直にカミングアウト。力は相変わらずの力で…。出会って20年経つと言うのに、衰えることのない田頭への執着。ラストがまた、余韻がたまりません…。この物語に続きがあって本当に良かったなあ、とホッとしました (*´◒`*)
芸術を仕事にしている人、しようと思っている人には読ませたくない一品。
それほど心に来ます。
後味は悪い方かと。
題が、青春の終わりですからね、切ない話でした。
最初のあいの、うたは心にじんわりと来るいいBLだと思います。
途中やっていることが何もかも上手くいかないのは解って、先は読めるんですけど、
木原がよく表現しているむき出しの愛が痛いくて愛おしい。
攻めのあいのうたは率直で飾らなくてドキっとしました。
The end of youthは辛い良い意味でBLではない。
田頭の弱っている心に付け込んだ力みたいな。
運と才能を若い頃に使い切ってしまった田頭が不憫。
音楽で食って行こうとした者の末路がリアルすぎて泣ける
最後、編集長どうなったんでしょうか、それが気になります。
音楽に関わり続ける限り彼は永遠に世間一般に思われる幸せにはなれない。
時系列だと、「The end of youth」→「あいの、うた」→「その後の…The end of youth」。
コミカライズ版は「The end of youth」の内容で既読だったので、田頭が音楽雑誌の編集長として音楽に関わり続けていることを知り、嬉しくなりました。
「あいの、うた」
クールな視点が持ち味の音楽雑誌のエディター・小菅(隠れゲイ)が、荒っぽくて純粋なボーカル・久保山(ノンケ)を少しずつ理解し、やがて恋に落ちる話。
久保山の音楽を全く理解できない小菅は、編集長・田頭の「お前の中に受け皿がないからだ」という言葉に反発し、久保山のバンドのライブに通うようになります。やがてメンバーの一人・井上と親しくなり片思い。井上と関わりたくて、生活力のない久保山を自分の家で世話します。しかし、井上にゲイだと知られ失恋。悲しく寂しい夜、変わらない久保山の態度に慰められます。そして久保山が作った小菅の失恋ソングは、粗野な外見からは信じられないほどの優しさに満ちていて‥。
これまでクールに音楽に向かっていた小菅が、音楽を聴いて恋する描写に胸が熱くなりました。恋は特別な受け皿でだと思うのです。久保山も小菅の隠れた優しさを理解していたからこそ、優しい失恋ソングを作ったのでしょう。歌を通して近づいていく二人の描写にドキドキしました。
最後、紆余曲折の末に発売されることになったCDを手に訪ねてきた久保山を小菅が強引に部屋に引き入れる場面が、とても好きです。「俺の言うことをきいて」と久保山を抱く小菅がとても情熱的です。そして久保山が即興で作ろうとした曲は、きっと小菅へのラブソングで…。
小菅との恋で久保山の曲想が広がって、人気バンドになったらいいなと思いました。
「The end of youth」
小菅の上司・田頭の若き日の話。高校時代、仲間とバンドを組んだ田頭は一人だけスカウトされ華々しくデビュー。しかし呆気なく落ちぶれ辛酸をなめます。スタジオミュージシャンとして細々と暮らすある日、かつての仲間・小日向と10年ぶりに再会。懐かしさと気まずさの混じる昔話をしながら、自分に恐ろしいほど執着した弟・小日向力のことを思い出します。
変わり者で自己中心的。怒りっぽいのに、純粋で繊細な力のキャラクターが、とても魅力的に感じました。孤独な力が綴る美しい詩を読んでみたいと思いました。
田頭が、力が怒っていると分かっていても、話したいと思った気持ちが分かるような気がします。自分が作った曲を横取りした芸能界の嘘に落胆した田頭は、嘘のない力の言葉に触れたかったのだと思います。
「かっこよう生きていこうや。歌を辞めて、何してええのかわからへんのやったら、とりあえず俺を愛してみいや。…俺はあんたを裏切らへんで。」力のこの言葉にしびれました。頑固な男の言葉を支えに、田頭はやっと歌うことを手放せたのでしょう。
青春の終わり。区切りをつけたからこそ見えるものがある。そんなラストは、胸に迫るものがありました。
田頭は、力の詩のように、音楽を何かの形に昇華したいと考え、それが音楽雑誌の仕事につながっていくのです。自分にとって力がかけがえのない存在だと気づいたから、田頭は「俺はお前を、愛してるんだと思うよ」と告げたのでしょう。その言葉で、きっと力は田頭が音楽が聴こえるものを買うのを許してしまうのでしょう。こんなやり取りを繰り返す二人を想像すると、楽しくてたまりません。
「その後の…The end of youth」
小菅と田頭の出会いに力の詩が関わっていたという印象的なエピソードと、力・田頭のその後の仲睦まじい様子が描かれています。田頭が、自分だって相当な難物の力と一緒にいながら、久保山に振り回される小菅を心配するくだりに、クスっと笑ってしまいました。
歌で結ばれた小菅と久保山、歌を辞めて力と結ばれた田頭。愛の形は違っても、それぞれのやり方で好きなこと、好きな人を追っていく彼らがまぶしく、羨ましいと思いました。
先に宮本佳野先生のコミックス「The end of youth〜あいの、うた〜」を読んでおります。
その視点で読むと、はじめに収録されている「あいの、うた」に少し驚く。
あの、繊細で打たれ弱かった田頭(たがしら)が、小規模ながらも月刊の音楽雑誌の編集長として部下を率いている…!随分骨太になったなぁ、と。
さて、元々のメインストーリー?の「あいの、うた」は、その音楽雑誌の編集者、ゲイの小菅と売れないバンドのフロントマン・久保山の物語です。
はじめ小菅は久保山のバンド・SCUAも、久保山自身も嫌いなんですよね。久保山の方も元々ノンケだし、小菅のことなんか何とも思ってない。そもそも他人と上手くやっていけるタイプじゃない。
なのに、すぐ手が出る激しさや人の都合を考えない勝手さやそんな嫌だと感じていた全てが、クルリと裏がえるように小菅は久保山を好きになる。
しかし、状況は厳しい。
音楽雑誌は廃刊、バンドは全く売れず契約が切られようとしていた。そんな中でいがみ合って喧嘩別れみたいになるのに、人の結びつきって不思議だ…
何も知らせずに引っ越した小菅の部屋をわざわざ探して訪れる久保山。恋人しか部屋に入れないと言う小菅。ラスト3ページでの恋の成就が物悲しいような甘苦しいような。
「The end of youth」
こちらは先に宮本佳野先生によるコミックスを読んでいるのですが、凄いですね…小説の方を読んでも、読んで感じることが全く同じ感覚です。コミックスの方のレビュー参照ください。
小説の方が、高校生時代の力(ちから)の自分でも制御不能の田頭への執着心が強めに感じました。
だから田頭が力を鬱陶しく思い見捨てていくさまもより非情に感じます。
「その後の〜The end of youth〜」
時間軸がまた現在に戻っての、力x田頭。
「The end〜」の自信もなく未来もない弱い田頭を読んだ後の、しっかりと音楽雑誌編集の仕事を自分で立ち上げポリシーを持ってやってきた田頭の姿は非常にたくましい。
その裏には、力の存在があったからなのでしょうか。今、雑誌が廃刊となり無職の田頭に、力が「砂漠、見となってん」と旅に誘うのです。多分田頭は行くのでしょう。そして2人真っ黒に日焼けして、また新しい世界を見て今までと違うアプローチで世界を見るようになるのでしょう。
まず表題作。ぼんやりしているように見えて冷静・辛辣な音楽ライターの小菅が、売れないバンドボーカルで乱暴だが媚びない正直過ぎる男・久保山に徐々に惹かれる段階に説得力を感じました。特に『落ちた』切欠が、小菅の失恋を綴ってつくった久保山の歌というのが良いです。山手線三周分の涙とかいいじゃないですか…。
そして、久保山のバンドがタイアップというチャンスで希望の光が見えたところで、小菅の所属する編プロの音楽雑誌が廃刊、タイアップも中止という展開が容赦無いなあ…と思いました。だがそこがいい。作品自体が淡々としているというか、音楽を、雑誌をつくる人々の描き方が良いというか、次第に寄り添う二人の雰囲気がさりげなくて良いというか。
The end of youthについて。
青春の終わり、ですよ。登場人物の名前を覚えるのが苦手なのと、表題作とこちらを読むのにインターバルがあって、主人公が雑誌『move』の編集長だと最後の方まで気付きませんでした。
こちらはなかなか痛いというか、田頭の仲間に対する裏切りがキツかったです。力に対しても酷いですが…。鬱陶しいならそうと言えばいい!が、人間関係を拗らせることをはっきり言えないのも分かります。また小日向力というキャラがなかなか強烈なので、ひたすら逃げ腰になるのも仕方ないのかな。
そして自分の才能に見切りをつけることができない痛々しさ。いっそ認められた俳優業をやればいいのに、と安易に思うのですが、本人にやる気が無い以上いずれは行き詰まるのだろうし…。売り込んだ曲が正当に発表されないというのは流石に気の毒でした。それで落ち込んで力に寄り掛かろうとするのは…分かるがしかし都合が良いというもの。で痛い目見るわけですね。しかし、最後には甘える術を身に付ける主人公がしたたかです。何でこんなに人間臭いキャラクター造形をするのだ木原先生は…。
萌えというのとは少し違う気もするのですが、表題作の雰囲気が何となく好きだったのと、宮本佳野先生のイラストがたいへん馴染んでいると感じてこの評価です。特に口絵(二人とも後ろ向きですよ!)と、65ページの挿絵が好きです。
もう少ししたら漫画版発売とのことですので、読んでみようかな。
先日、宮本さんのマンガで出たのは田頭眞一と力の「The end of youth」ですが、巻頭の表題はその後の田頭が立ち上げた音楽雑誌のライター小菅とミュージシャン久保山のお話です。
二組の愛の形、それぞれに違うようでいて何気に近しいものを感じてしまう、そんなお話でした。
小菅は編集長の眞一はじめ編集部一押しのバンドのインタビューにピンチヒッターで出かけるのですが、好きでない音楽だったのでボーカルの久保山からの印象は最悪、小菅もいい印象を持ちませんでした。
しかし、眞一のインタビューを聞いて気になり始め、またバンドのベース井上に恋心を抱いたことから、足げにライブに通うようになり、久保山は小菅の住居に通い出すようになる。
小菅がゲイと知っても、何の偏見もなく来る久保山。
反発しあう二人、でも井上への恋心が敗れた日、久保山の歌を聞いて涙する小菅。
久保山は小菅といることが心地よかったのです。
それが、好きという感情であっても愛であったかどうかは言いきれないのですが、小菅の感情に押され、そして小菅を失いたくなかったのだと思います。
小菅がゲイであることから、この二人の関係は当然のごとく恋人関係になるのではありますが、小菅勝ちだなという印象を受けました。
気持ちの触れ合いがあれば性別は関係ない。
BLには当たり前のように存在するセオリーですが、こんなロマンティックでもない生の感情のぶつかり合いの愛は日常的で親近感が持てます。
一方、田頭眞一と力の関係は、高校時代にさかのぼった力のすさまじい眞一への執着愛です。
一旦途切れ、再会、そしてどんなに拒否されようと力の発言が、態度が、他人から聞かされれば反発するのに、力からなら素直に受け入れることができる。
「お前を愛していると思うんだよ」という最後の告白に、高校時代の一方的にさえ見えたこの気持ちは、眞一に深い影響を与えていたんだと思わせました。
都合のよい眞一だな、力も見捨ててもいいのに、とさえ思えるこの二人の関係なのですが、本当の自分を見つけることが出来た眞一は幸せなのかもしれません。
「その後の・・・」で編集部を廃部になった眞一の姿が描かれて、眞一と力の関係がよく見えました。
力は死ぬまで離さない、深い愛で眞一を包んでいます。
自分を見つけた眞一も自分の足で生きています。
二人に幸あれ・・・
宮本さんの漫画があったおかげで眞一と力の姿がより理解できて、評価が萌えに上がりました。
物語は始終淡々としていて、夢に破れた男達の話が延々続きます。
それはもうしつこい程に。もうわかったら、その辺で傷口に塩すり込むのはやめといてあげて……と思わず木原さんの背後から肩を叩きたくなるような気分。
いつものような痛い描写があるわけではないんですが、随所に出てくるセリフに、胸がクサっと突き刺されるような気持ちになります。
傷つくとかそういった感情ではなくて、せつなく優しい、そして歯がゆい。
どうしようもない感情からこぼれでた言葉が自然で、不意に涙が零れます。
あぁ、まずい、そろそろ泣くかも……と自覚して泣くのじゃなくて、ホントにその文章読んだ瞬間、急にこみ上げてきてぽろっと涙が落ちるようなそんな感じでした。
「なに泣いてんだよ」
「俺、ゲイだから」
ここの台詞で参ったってなる。
読後もすっきり爽快とはいきませんが、精神状態の良い時に読むとそんなに削られずに済みます。