お買い得商品、セール品、中古品も随時開催中
yoru no hitomi
1冊丸ごと表題作です。
常陸(攻め)の目線でストーリーは進んで行きます。
常陸は大病院のデキの悪い次男と評判の男。製薬会社に勤めていたが、バイク事故で自分は大怪我をし、同乗していた智子は死んでしまう。不正な手段で手術をして目を手に入れてから、常陸は兄の要望に応じて家を出て、定職につかず酒を呑むという自堕落な生活をしていた。きまぐれにバーの手伝いをしていたところ、その場に相応しくない常連の客・有坂(受け)が自分を見つめている事に気がついて…という話です。
有坂は会社のマスコットのようで、社長以下みんなに愛されています。そんな中で有坂は徳田という社員と恋人同士だったのですが、仕事中の事故で亡くなり、常陸に目を移植されます。有坂はそれに気がついて、常陸の様子をうかがっていた…というのは、読み進めれば直ぐに分かります。ただ、徳田との恋人関係を、常陸も周囲も知らないので、なぜ有坂はあんな態度なのだろうと悩むところが、イラつく方にはイラつくかもしれないと思いました。私は逆に面白かったのですけれど。
有坂は常陸を好きになりましたし、徳田は思い出になったと一応の落ち着きを見せました。ですが、常盤の目は徳田の目なのですから、有坂は時々思い出して苦しくなるかもしれませんし、常陸も時々は徳田の影にもやもやするんじゃないかと危惧しました。その辺を払拭させるような後日談ショートが欲しかったです。
それと、常陸と智子の関係がいまひとつ。「恋人というより同志」と言いながらも、作中で「恋人」と呼んでいる場面もあり。友人か恋人かどちらかにした方がすっきりできたのにと思いました。
悪人は出ませんし、ハラハラドキドキの展開でないので、安心してさくっと読むには良いです。ただ、私にはもやもやがちょっと残る作品でした。