もきゅ子
◆花葬りて、夜(表題作)
話の展開はすごく好みだったのですが、だからこそもっと深くこの作品に浸りたかったなというのが正直な感想。内容の重さに反して少し駆け足気味だった印象があります。確かにこのページ数の中では無駄もなく綺麗にまとまっていたけれど、せっかくなら読み終えた後にもっともやもやした気持ちを重く残して欲しかった。朔のこれまでの人生や、弓越との一筋縄ではいかない関係性などが本編でしっかり描…
◆つける薬がなくても
こじんまりとした個人医院の先生と、サーフィンが趣味の患者という組み合わせがとっても素敵でした。ゲイをカミングアウトすることの是非は人それぞれ考えがあって当然だと思います。仁科のようにひた隠しにすることも、柚瀬のように敢えて最初に宣言することも、自分が傷付かないための知恵。どちらの生き方にも共感できました。それでも、今まで窮屈な人生を送ってきた仁科が、新しい考えに触れて、少…
刃渡がかなり年季の入った作家なので、序盤ではストーリーが良かったとしても萌えられるかな?と少し不安に感じましたが、何ということもなく読み進められました。紫煙を部屋中に燻らせた中で行われる、刃渡と若尾のやりとりが何とも言えずもどかしく、ドキドキしましたね。刃渡がこんなに色っぽくても、ゲイの気質はまったくなく、中盤で若尾に迫られた時は「男は好きになれない」と無慈悲に一蹴するところも現実的で良かったで…