前作は、全体的に暖かい雰囲気の中に各々の冷たい部分が蟠っていて、それを出会った二人で共に取り除いていく。そんな印象でした。取り巻く人々も愛すべきキャラで、話としては完結感がありましたが、なんと続編があったとは。
しかし、往々にして続編は期待値が上がってしまうもの、どうなのかと少し不安もありましたが、そこはさすが天才!三田織先生でした。
豊と穣のその後の進展速度は緩やかながらも着実に距離を縮めていました。目に見えた熱情的な展開でないものの、二人の愛は確実に熱い!暖かな熱さで包まれているようでした。
そこにキーパーソンとなる人物も現れ、三田織先生の作品では珍しいようなキャラクターで、なんとも言えない不気味さがありました。そんな不安も二人の熱さで跳ね除けていけるでしょう!
読んでいて、勝手に安心してしまいます。それだけ、二人の関係性の温度がこちらまで伝わって来るのです。
今回も種くんやおとうはナイスアシストだったり、出てくるだけで涙が出るほど可愛いし、そして、おばあちゃんついに登場でこれまた素敵なマダムで、草村礼子さんを彷彿させました。(続編の実写化あるならぜひ!笑)
漫画とはいえ三田織先生の作品は、モノローグが毎回素晴らしいのです。今回も一語一句を大切に読みました。
それだけ素晴らしい言葉に溢れていました。
ニュースを見る度に滅入る気持ちになる事もあるけれど、幸せな日常が詰まった物語に浸れる事もまた幸せなのだと噛み締めます。そんな作品をぜひ多くの人に読んでもらいたい。
奇跡の一枚と言う奇跡の出会い。
蓮くんも鷹宮先輩も奇跡の一枚で大きく運命を変えていく。
蓮くんは、奇跡の一枚が無かったら平穏な学生生活が遅れたかもしれない、でも先輩には出会えたかわからない。一方先輩は、奇跡の一枚を撮るまでの、動かしようのない母の死に向き合えなかったかもしれない。
登場人物の、かもしれない運命が奇跡の一枚によって好転的に向かった。そこに青春の眩しさや儚さをこれでもかと詰め込んでいる。
そして特筆すべきは、全ての登場人物のキャラ立ちが素晴らしい事。主要キャラ、中でも沢井君は言わずもがなだが、幼なじみやクラスメイトのモブキャラや蓮くんの祖父母、写真部の顧問などまでしっかりと人物の性格が描かれていて、さすがnoji先生といったところ。
読後の爽快感は他と一線を画している。
最初の出会いからして衝撃的だ。普通ならば山の上の夜景スポットでそれぞれ夜景を観て、もう一方は涙をしてもう一方は偶然にそれを目にしてしまい、そこから恋が始まって、そんなありきたりな出会いはなく、運転中のボンネットにゾンビの如く現れる。ホラーです。
それからなぜかなし崩し的に同居が始まり、ドクズのヒモ男美空はクズなのに憎めない、でも発言はやっぱりクズ。そんな美空をいとも簡単に懐に入れてしまう雪。
この雪がまた、クソ真面目で見た目に反して重い男。読んでいくうちに美空も雪も本当の愛を知らないが故に拗らせてしまった。その互いの足りないものを何とか埋めていくのだが。やはり人に一度植え付けられた愛という芽はそんな簡単にくたばらないもので。。。
心根は優しい二人の不器用だけど泥臭い生き方は、ラストに報われます。そういう世の中であって欲しいなと願う。
初コミックスとは思えない作者の才能の渦に飲み込まれた。
前作では、姉の婚約者が実はアカサギでお金だけでなく見事に主人公の心も奪っていった、井川こと辰巳。
お金を返してもらいたいのか、本心を知りたいのか分からないまま夜の街で本当の辰巳を探す姿は、森村誠一の小説さながら。
主人公の危機に助ける姿はダークヒーローそのもので、その後の展開も本格的な社会派推理小説。ラストもよくあるご都合主義でないところが、もうBLの枠では収まらない作品だった。
そして本作、いやもうこれは松本清張賞か鮎川哲也賞受賞でもおかしくない作品。
前作の事件から半年後、二人は歪ながらも平穏な日々を過ごしていたけれど。やはり、過去にしてきた行いと言うのは中々消え去ってくれないもの、例え不可抗力だと自業自得だろうと完全には消滅しない。二人で過去の亡霊と闘うわけだが、ここに来て全く予想だにしない展開がはじまる。まさかモグラが出てくるとは、、警察小説のようなストーリー展開でそのまま2巻終了。
2023年の締めくくり、最後の最後に最高の読後感。
続きはもちろん気になるが、300ページ近くに及ぶ上質な作品を堪能出来たことに喜びが勝る。