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作品を売る姿勢について

全体的に甘くてかわいいエロがあります。
絵も綺麗だし、ストーリーの展開も悪くはない。

今回のコミックスでピンとこないのは、表題作の「三度目の痛み」です。
表紙を飾っている二人。涙を流している受けとその涙を拭おうとしている攻め。
痛みを乗り越えて、二人にどんな絆が出来るのか…それが見えにくいです。

個人的に思うのですが、表題作に持ってくる話の重要さについて改めて考える作品です。
受け入れてもらえないのに身体を繋げてしまう、受けの辛さも傷も涙も、話からは見えてこない。痛みを喚起するのが表紙だけだったら、読む意味がないのです。

ストーリーのなかで、キャラクターが本当に涙を流すコマを絶対に描かなくてはならないという決まりはありません。彼がとても苦しいんでいる姿を想像できる「何か」があればいいのです。
「痛み」というものがストーリーの中心でないのなら、表題作のタイトル、表紙絵。そこから変えた方が良いと思います。

何故なら、読後の印象が下回る事は、作者さんにもレーベルにとっても決して良いとは言えないからです。特にこういう売り方は作品を作り、売る作者さんの今後にも繋がります。

この作者さんがかわいいエロしか今後も描かないというポリシーなら良いのですが、
人の心の痛みを表現したいと思うから、出来たタイトルだと想像します。
エロに実力があるというのは、とても強みなのですから、売り方などももっと工夫してほしいと思いました。

NightS コミック

ヨネダコウ 

それぞれの個性が生きている

ヨネダコウ先生の短編集。

「NightS」
漫画としてとても緻密です。
キャラクターのポーズが一つ一つ萌え。凝っているのです。
だから内容がうまく流れてきて、唐島と穂積が少しずつ近寄っていく関係性が見えていきます。視界が少しずつ広がっていく感じです。
最初は単に「運び屋」と「依頼する者」の関係の二人がどんな風にお互いに興味を持つのかが読んでいてわかります。
この二人、かなり良いカップル(もしくはコンビ)になるのでは?

「感情スペクトル」
青春という名の青臭いなかでの関係性がうまく見えます。
恋に協力をしてやろうと思った相手を好きになったら、苦しくなって、相手は実は、という流れは割と王道っぽいのですが、ちょっと俺サマな久郷、シャイな笛吹、明るいバカっぽい仲屋、というそれぞれ違う三人がいるからこその関係性がステキです。
きっと、これは「きゅんきゅん」します。

「リプライ」
話としては、実は一番好きです。
「女を好きになるみたいに初めて男を好きになった」
そう告白する関に対しての高見の彼の見方が、恋愛とそうでない関係の危ういところにあってそれがとにかく面白いのです。
実はとても営業マンな性格の高見の物言いや、職人気質なエンジニアの関のちょっと不器用なところを見ていて楽しいです。

ふたりのピントが合う楽しさ

美大生と准教授の物語。
美大生の佐々木はずっと准教授の梶ティーにアタックをしていて、梶ティーの家に押しかけて住んでいるくらい。
梶ティーが、家に住み着くことを許している時点で佐々木くんはもっと梶ティーの気持ちがわかればいいのにと、最初は思います。
だけど、佐々木くんに梶ティーに気持ちがわからないのは当たり前なのだと思いました。

梶ティーが自分の気持ちを自覚するようになるのは冒頭ではなく、
いろんなふたりの出来事が梶ティーの気持ちを確立させるようになります。

誰かを好きだと自覚する気持ちは、きっと若者の方がキャッチしやすいのが常。
おじさんな梶ティーは、そんな瞬発力はないのだけど、そんなところは佐々木くんがリードしてくれています。

コマや台詞なども凝っていて、作者のかたが楽しく描けたのだと思います。
「萌」という一文字がよく似合う漫画です。

初めての「愛」でした

高校生というまだ心が発展途上のなかでのふたりの関係。

浩一が逝って、残されたみっちゃんの心に果たして何が残ったのでしょうか。
初めて「好きだ」と言われた言葉。
浩一の体温。
たとえ、死者と生者であっても、ふたりの関係は、絆は、きっと「愛」だったのだと思います。

ラストにみっゃんが零した笑み。
彼のなかで浩一は永遠に心に残っているのだと思います。

ふたりが作り上げた初めての「愛」がこの物語のなかに沢山あふれています。
出会ったことを後悔したくない、失ったことはすごく悲しいんだけど。
そんなみっちゃんの深い悲しみも、浩一をちゃんと愛していたあかし。

愛が伝わるから、こんなに涙が込み上げてくるのだと思います。

力を抜いてみる

いつもはある程度は内容などを把握して購入をしていますが、
こちらは表紙を見て購入。

たとえば、絵の美しさというのは漫画の世界では強みではあると思います。
だけど、たとえ絵の世界であっても、台詞回りやどうして「エロ」に発展するのか
などという流れは大切だと思います。

表題作のリーマンの話は作者のかたが少し気合が入りすぎているというか、
すごく良いものを持っているのに、作者の「リーマンBL」の固定概念が強すぎて、
この作者のかたが描く必要性が果たしてあるのかと思います。

現に、他の収録のもので、リーマン×学生の話のほうが流れがスムーズですし、
心のそこから楽しいと思える作品です。

今回は少し辛口ですが、絵が美しいというスキルをさらに伸ばして頂きたいという意味での「中立」です。

不幸は幸福のはじまり

主人公の矢代はドMで因縁のネコ。
痛くされて、悦ぶという性癖は周囲から見たら滑稽だったりもします。

だけど、その心の奥を知ると、本当の「傷」があるのだと思う。
その傷を見てみないふりをして、過去にたった一人を好きになった矢代。
そのたった一人に対する愛情も歪んでいて、他の男をあてがってみたりもする。

矢代に惹かれていく百目鬼に矢代はこう言います。
「お前は優しそうな普通のセックスをしそうだから嫌だ」
ひどく、激しくされるセックスが矢代にとって本当の「愛」になるかはこれからのようです。

投げかけたこの台詞が少し痛くて悲しくて愉しくて、
不幸を邁進した彼がどうなるのか見ていきたい第一巻。

魔法のような言葉だな

これはきっと半分はギャグ漫画だと思います。
「ぬこぬこぬこ」「トゥギャザ…」「俺のハバナにハバナイスディ」。
エロは昔から笑いに繋がる事は多々あって、
だけど、必死なそれには笑いはなく真剣に向き合う事が出来ます。
それはエロを作っているキャラクターもだし、読者もです。
言葉にセンスがあることに気がつくと、なお一層楽しめます。

ちなみに、笑いも勿論ありますが、少々きついところも。
吉宗のイレズミを止めるおじさんの台詞。
「ちゃんと日の当たる所に戻りな」
好きだった人を忘れた方がいい、忘れないといけないんだよな。
そんな涙を流した彼の事をもっと知りたくなります。



かさぶたのような恋

初めて目を通した時に、涙した本です。
嶋は過去をひきずっていて、もうノンケは嫌だと思っていて、それでも外川に惹かれていきます。
外川はちゃんと嶋のことが好きなのに、嶋は受け入れる事が出来ません。

明確な関係性を示した言葉(恋人とか)は最初は出てこなくて、それでもふたりが惹かれあっている事は読んでいて判ります。
関係性を一度明確にしようとして、関係が壊れて、そしてまた…。
涙が出るというのは、きっと傷つけあった経緯がとてもリアルに感じるられるからかな、と思います。